| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

Epos51悲劇の少女/因果の悪戯~Belkan Größte Stärke~

 
前書き
Belkan Größte Stärke/ベルカン・グレーステ・シュテルケ/ベルカ最強 

 
†††Sideヴィヴィオ†††

フェイトママやアルフのお世話役だったリニスさんと別れた後、わたしとアインハルトさんは、臨海公園にジョギングやわんちゃんの散歩に来てた人たちからおにぎりやパンを恵んでもらった。未来のことを思えば断るのが一番なんだろうけど、そんな余裕もないほどに美味しそうな見た目と香りで即ノックアウト。いただきます、と素直に頂いた。

「――餓死だけはなんとか免れましたね」

「そうですね。詳しい事情も訊かずに助けてくださった海鳴市の人たちには感謝しきれません」

空腹が満たされたことで寄り添うようにベンチに座るわたしとアインハルトさん。空腹問題はなんとかなった。そう言ったアインハルトさんに頷いて同意して「あとは、未来に帰る方法を探すだけですね」と言う。
13年くらいの未来からここかこの時代へと飛ばされて来ちゃった。今度は過去から未来へ帰るための手段を見つけないと。だから今、「クリス。状況はどう? なにか判った?」ってわたしのデバイス――パートナーのクリスに声を掛ける。とクリスはわたわたと前脚を振って、わたしがお願いした調べものをまだ検索中だって教えてくれた。

「そっか。ありがとう、もう少し頑張って、クリス」

クリスがビシッと敬礼して、わたしのお願い事であるわたしとアインハルトさんと同じように未来から転移して来た人の反応の探査を続行。

「ですが一体何が原因でこのような事態になってしまったんでしょう・・・?」

「考えられるのは、やっぱりロストロギア、それか未知の技術ですよね。わたし達だけが飛ばされたっていうのはおかしいですから、この時代に飛ぼうとした犯人が居ると思うんです。その人を見つければ・・・」

あとトーマも捜さないと。リニスさんの話だと、わたしの知るトーマじゃなくて3年後くらい未来のトーマらしいけど。

「なるほど。私たちだけを過去に飛ばす理由がないからですね。時間移動を行った本人を見つけて、帰る方法を教えてもらえれば・・・。あ、ですから今、クリスさんにその調査をしてくださっているのですね」

「はい。と言ってもあくまでわたしの推測ですけど。もしその犯人もただ巻き込まれちゃっただけー、とかなるともうお手上げかも知れません」

「そうではないように祈りましょう。私もヴィヴィオさんも試合が近いですし、それにヴィヴィオさんのお母様や、コロナさん、リオさん達も心配しますでしょうし」

「はい。ですからなんとしても帰らないと!!」

DSAA――ディメンジョン・スポーツ・アクティビティ・アソシエイションっていうスポーツ競技の運営団体が開催する公式魔法戦競技会インターミドル・チャンピシオンシップに参加予定のわたしやアインハルトさん、そしてここには居ないけどコロナとリオ。みんな、来月に開かれる地区予選試合に出場するために日々精進中。このまま帰れないと参加できない。

「はいっ。力を合わせて頑張りましょう!」

アインハルトさんと意気込んでいると、アインハルトさんのパートナーのティオが鳴き声を上げた。しかもなにか深刻そうな声色。アインハルトさんが「ティオ、どうしました?」って訊いたところで、「っ!?」わたしやアインハルトさんは無意識に身構えた。とんでもないプレッシャーがこの一帯を覆ったから。遅れて「結界が・・・!?」張られた。

「何かとんでもない、すごい力を感じます・・・!」

「はい。ティオ、武装形態・・・!」

「クリス、セットアップ!」

なのはママ達だった場合、即座に逃げるためにも変身。そのすぐ後、200mもないところから虹色に魔力の柱が地上から空へと向かって突き立った。その光景にわたしもアインハルトさんも茫然とする。虹色の魔力。それはわたしの魔力光の色だからってこともあるけど、その力強さから言って・・・。アインハルトさんがフラリとあの魔力柱に引き寄せられるように近付いてく。

「アインハルトさん・・・?」

「居ます、あそこに。彼女が・・・」

あの魔力の柱の元、わたしのオリジナルとなった人が――オリヴィエ・ゼーゲブレヒトさん?が居る・・・はず。古代ベルカで、アインハルトさんのご先祖様の覇王イングヴァルト――クラウス、ルシルさんやフォルセティの先祖の魔神オーディン、シャルさんの先祖の剣姫リサと親しい友人であって、アインハルトさんが強さを求める要因になった、あの聖王女オリヴィエさんが。

「・・・わたしも一緒に行きます!」

だからわたしも一緒に会いに行こうって思う。そういうわけでアインハルトさんとわたしは光の柱へと向かってダッシュ。柱に近づくにつれて「重い・・・!」体に掛かる負荷のようなものが重くなっていって、走り辛くなる。

「ヴィヴィオさん、大丈夫ですか・・・?」

「なんとか。アインハルトさんは・・・?」

「私もなんとか。ですが、これ以上近付くとまずいかもしれません・・・! 彼女が、オリヴィエはすぐそこに居るというのに・・・!」

隣を走るアインハルトさんが悔しそうに唇を噛んだ。でもその途轍もないプレッシャーも「え?」綺麗サッパリ、突然に消失した。見れば魔力の柱も消えてる。わたしは歩みを止めて呆けてるアインハルトさんに「急ぎましょう!」って声を掛けて、手を引いて走り出す。

「あ・・はいっ!」

アインハルトさんもまた走り出したことでわたしは手を離す。そしてわたし達は、さっきまでそびえ立ってた光の柱があったと思われる地点に到着して、「っ!」視界のその人を収めた。わたしと同じ金色の髪、紅と翠の虹彩異色。以前、覇王イングヴァルト自身が手掛けた回顧録の複写本を読ませてもらった時、その挿絵に描かれた通りの姿をしたオリヴィエさんが居た。そう、戦装備の姿で。

「っ!!」

「本当にいた・・・!」

鼓動が激しくなる。アインハルトさんもどちらかと言えばトラウマに近いオリヴィエさんを前に、胸を押さえていて息遣いが激しい。そんなわたし達に気付いたようで、オリヴィエさんが虹彩異色の瞳を向けてきたんだけど・・・。どこか様子が変。虚ろと言うか、わたし達を捉えてないっていうか・・・。

「私が、守らないと・・・」

――電光石火――

そうポツリと呟いたと思えば、その姿が掻き消えた。と同時、「わっ?」アインハルトさんに突き飛ばされちゃった。理由もなくそんなことする人じゃないから、わたしは突き飛ばされた体勢を立て直すことに意識を集中させる。そんな中でチラッと目に映りこんだのは、さっきまで居た場所にオリヴィエさんが拳を突き立てていた様だった。

「守るんです、私が・・・みんなを・・・」

――驚浪雷奔――

オリヴィエさんが虹色の魔力を纏わせた拳で正拳突きすると同時、魔力がアインハルトさんの身長ほどに大きな衝撃波になった。アインハルトさんは「オリヴィエ・・・!」今にも泣いてしまいそうなほどに悲しげな表情を浮かべつつ横移動で回避した後、かぶりを振って「空破断!」突き出した手の平から衝撃波を打った。

「私の大切な人たちを・・・」

――砲煙弾雨――

両手に次々と魔力弾を創り出してアインハルトさん、そしてわたしに構想で放り投げて来たオリヴィエさん。アインハルトさんは、魔力弾の弾殻を壊さずに受け止めて投げ返す「旋衝破・・・!」で対処。そんなわたしは走って回避。戻って来た魔力弾を、体を横に向けることで避けたオリヴィエさんが一足飛びでアインハルトさんに向かって突進。

――狂瀾怒濤――

そして、迎撃姿勢に入った直後のアインハルトさんの至近で大きく振り上げた片足を地面へ勢いよく踏みつけた。踏みつけられた箇所を中心に地割れが起きて、地面を隆起させた。巻き起こる砂煙に呑まれた「アインハルトさん!」に声を掛ける。と、「ヴィヴィオさんは下がっていてください!」砂煙の中からアインハルトさんの声が。

「でも・・・!」

砂煙の中から「うああああ!」アインハルトさんが飛び出して来た。すぐさまオリヴィエさんも飛び出して来た。オリヴィエさんの振るわれる拳を、首を傾けて躱したアインハルトさんは即座にカウンターの拳打を繰り出した。それを頭突きで受け止めるオリヴィエさん。

「うぐぁ・・・!」

「旭日・・・」

よろけたアインハルトさんの懐に姿勢を低くしたうえで入り込んだオリヴィエさんの右手の平には魔力スフィアが1基。そして「昇天」起き上がりざまにその魔力球をアインハルトさんのお腹に打ち込んだ。

「ぅう、ごふっ・・・!」

「アインハルトさん!!」

空高く吹き飛ばされるアインハルトさん。オリヴィエさんが追撃するために跳ぼうと足を曲げたのを見て、「ごめんなさい、アインハルトさん!」わたしはすかさず近接砲撃にして高速砲のディバインバスター(スバルさんと同じ、魔力スフィアを殴って発射するタイプ)を発射。

「っ・・・!」

わたしの砲撃に、アインハルトさんの追撃を中断したオリヴィエさんを確認、アインハルトさんが宙で体勢を整えて着地姿勢に入ったのを確認してすぐに「ソニックシューター、ファイア!」魔力弾4発を発射。

「あなたもまた、私の大切な人たちを傷つけるんですか・・・?」

全弾を裏拳で弾いて対処したオリヴィエさんの標的にわたしも追加されたっぽいけど、それでいい。アインハルトさんだけじゃ勝てない。というか2人掛かりでも勝てない。それでもどうにかして退けないと。着地し終えたアインハルトさんに「わたしも戦います!」って宣言。

「ですが・・・!」

「ごめんさない! あ、来ます!」

わたしの側に駆け寄って来たアインハルトさんと話し込んでる余裕が無い。突進して来たオリヴィエさんの姿がまた掻き消える。今度は直感的だけどオリヴィエさんの動きが判った。大きく横に跳び退く。その直後、わたしの居た場所を上段蹴りしたオリヴィエさんが現れた。

「空破断!」

手の平を突き出して生む衝撃波を放ったアインハルトさんだったけど、それをなんてことのない拳打で真っ向から迎撃。そしてお互いに前進して拳打と蹴打の応酬を始めたけど、すぐさま「うぐ・・・!」アインハルトさんが打ち負けた。追撃に入ろうとしたオリヴィエさんに「ジェットステップ!」で高速接近。そこから「アクセルスマッシュ!」魔力を纏わせた拳打を繰り出す。

「うえ!?」

全力で打ったのに、わたしの一撃をパシッと片手で受け止めて、そのままぐいっと引っ張られたから強制的に姿勢を前屈みにさせられた。その上でラリアットを繰り出してきた。掴まれてる右手とは逆、左腕で首をカード。さらに、相手の打撃を受けるその一瞬にその個所に防御魔力を回すセイクリッドディフェンダーを発動。

「うっぐっ・・・!」

「守るんです。私が。オーディンさんが命を賭して守ったモノを、クラウスが生涯を懸けて目指す夢を。私たちが描いた希望を・・・!」

ガード越しから伝わってくるその威力と衝撃。わたしより小さいのにすごい力。踏ん張りきれずに後方一回転、「かはっ」受け身が取れずに地面へ背中から落下して一瞬呼吸が止まる。それでもお構いなしにオリヴィエさんがわたしの首を踏みつけようと足を上げた。思っていた以上に容赦なくてビックリ。

「覇王・・・断空・・・拳ッ!!」

「っぐ・・・!」

それよりも早くアインハルトさんの一撃がオリヴィエさんの脇腹に直撃して、そのまま殴り飛ばした。アインハルトさんに「大丈夫ですかヴィヴィオさん!?」差し出された手を取って「なんとか・・・。あ、ありがとうございます」立ち上がらせてもらう。そして脇腹を押さえながら立ち上ろうとしてるオリヴィエさんへと視線を移す。

「聖王の鎧が無いのが幸いでした」

「アインハルトさん。オリヴィエさんってあんな風だったんですか?」

「・・・いいえ。私の記憶ではあんな様子のオリヴィエは・・・」

アインハルトさんは初代覇王のクラウスの記憶を引き継いでる。だからこそ色々と背負っちゃっているんだけど。でもその記憶の中にも無いってことになると・・・。アインハルトさんが苦い表情を浮かべて「聖王のゆりかごに乗艦した後・・・」ってポツリと漏らした。

「でもそんなことがありえるのでしょうか・・・?」

「乗艦後の過去から時間移動・・・、いくらなんでもそんなことが起きるとは私も思えませんが・・・」

リニスさんのこともあるし、オリヴィエさんも過去、しかもゆりかご乗艦後の時代から来たとなると、過去のゆりかごはどうなっているんだろう。いよいよ混乱してきた。でも考える余裕も時間もない。何せオリヴィエさんが構えを取ったから。

「今はとにかく、オリヴィエを止めましょう。私とヴィヴィオさんの2人で」

「っ。はいっ」

嬉しさが込み上げてくる。それを力に変えてオリヴィエさんを止める。わたしとアインハルトさんは同時にオリヴィエさんに仕掛ける。左右からのアインハルトさんとの連撃。フェイントを交えながらも高速で打ち込み続けているのに、「当たらない・・・!」うまい具合に捌かれて、「わわっ!」「しまっ・・・!」アインハルトさんの蹴りがわたしに、わたしの拳打がアインハルトさんに当たるように受け流された。慌てて止めた時にはもう手遅れ。

「破邪顕正・・・!」

「「うっぐぅぅ・・・!」」

今までに受けたことが無いほどに強烈な衝撃がお腹から全身を巡った。でもようやく「掴まえました!」わたし達はオリヴィエさんの両腕をガシッと掴み取った。

「アクセル!」

「覇王!」

アインハルトさんと一緒に今打てる最高の一撃をスタンバイ。わたし達を振り払おうとするオリヴィエさんだけど、必死に逃がさないように抵抗。

「スマァァァーーーッシュ!!」

「断空拳!!」

2人同時にオリヴィエさんのお腹と胸に拳打を繰り出す。当たる、そう思った瞬間、オリヴィエさんが逆立ちした。空振りするわたし達の攻撃。勢い余ってたたらを踏んで、思わずオリヴィエさんの手を離しちゃった。
でもアインハルトさんは手を離すことなく、「せぇぇい!」オリヴィエさんの腕を引いて地面に叩き付けようとした。それでもオリヴィエさんはしっかりと着地した。そう。魔力を纏わせたその両足で力強く。

――狂瀾怒濤――

わたし達の足元にまた地割れが発生。アインハルトさんもさすがにオリヴィエさんの手を離して、わたしと一緒に急速後退。その直後、「天衣無縫・・・!」わたしとアインハルトさんは気が付けば宙に舞ってた。体勢を立て直そうにも体が動かない。そうしてわたし達は地面に墜落した。

「あ・・ぅ・・・」

「ヴィヴィ・・オ・・さん・・、大丈・・夫・・ですか・・・?」

仰向けに倒れてるわたしの頭上からアインハルトさんの掠れた声が。わたしは「大丈夫・・・です・・・」それだけを返すだけで精一杯。一体何が起きたのか思い返す。オリヴィエさんが地面を踏みしめた後に地割れが起きて、瓦礫と砂煙がわたし達とオリヴィエさんを隔てた。そして、「突進・・・技・・・」を食らったんだ。僅かに動かせる頭を動かして、オリヴィエさんの突進技によって大きく抉れた地面を見る。

「守れた・・・守ることが出来ました・・・」

そんな声が足元から聞こえてきた。必死に頑張って上半身を少しだけ起こすと、オリヴィエさんがこっちに向かって歩いて来てるのを視認。ここで追撃されちゃったら確実に負ける。でもこれ以上は無理。ドサッとまた倒れ込む。

「ヴィヴィオさんは・・もう少し休んでいてください・・・」

「アインハルトさん・・・!?」

さっきまで立つことも出来なかったはずなのに、アインハルトさんはしっかりと歩いていてわたしを抱え上げた。そしてオリヴィエさんから離れた場所――休憩所のベンチのところまでわたしを運んでくれた。

「ティオはダメージ緩和と回復補助能力に特化していますから。ですからあとは、私に任せてください・・・!」

そう言ってまたオリヴィエさんの元へ走って向かって行く。手を伸ばして止めようにもそれすら出来ない程のダメージを受けちゃってて。そしてまた始まるアインハルトさんとオリヴィエさんの激しい攻防。だけどやっぱりダメージの蓄積はあるようで、アインハルトさんの動きが鈍い。

「紫電・・・」

オリヴィエさんの右上段蹴りがアインハルトさんの左側頭部を直撃。アインハルトさんが倒れ込むより早く右上段回し蹴りが、今度は右側頭部を直撃。間髪入れずに顔面、鳩尾、両脇に1発ずつ、計4発打ち込んだ。

「一閃」

「アインハルトさん!!」

電気変換された魔力を纏った右踵落としがアインハルトさんの頭頂部・・・からズレて、右肩に振り下ろされた。踵落としの直撃で地面に叩き付けられるアインハルトさん。とんでもない威力なのに、それでもなおアインハルトさんが立ち上がろうとする。それを見て、オリヴィエさんが拳を振り被った。その時。

『アインハルト!』

「銀十字!」

直上から白い魔力?弾が4発と降って来て、オリヴィエさんの攻撃を中断させた。遅れて空から急降下して来たのは「トーマ・・・!?」のそっくりさんと思える子だった。顔立ちはトーマなのに、髪や瞳の色、それに身長も違うし、そもそも格好が悪役みたい。上半身にはタトゥーのような模様があるし、防護服はゴツイ金属の籠手や具足だし、凶悪そうな大剣を持ってるし。

(あれが2、3年後のトーマ、ってこと? どうしたらあんな悪い子のような格好になっちゃうの・・・?)

トーマ?が「ヴィヴィオ、アインハルト、大丈夫か!?」ってオリヴィエさんと対峙。アインハルトさんが視線で、この方がトーマさんですか?って、訊いてきてる風だったからコクリと首肯する。

「まさかヴィヴィオとアインハルトまで過去に飛ばされてるなんて思いもしなかったよ!」

『でももう大丈夫! トーマと私も手伝うよ!』

声がもう1人分。リニスさんが言ってた未来のトーマの融合騎の人、かな。とにかく、トーマなのは間違いない。そのトーマが「リリィ! ディバイド、スタンバイ!」そう言ってオリヴィエさんへ大剣を振るった。
横薙ぎに振るわれた大剣を一足飛びで後退して躱したオリヴィエさんは、着地と同時に「砲煙弾雨」複数の魔力弾をトーマに向けて放り投げた。それも構わずトーマは大剣をオリヴィエさんに向けて佇んでるだけ。

「トーマ!」

魔力弾がトーマに当たる直前、見たこともない魔法陣?のような小さな紋様がトーマの周囲に発生して魔力弾を防いだ。っていうよりは掻き消した。そしてトーマは「シルバーハンマー!」大剣から砲撃を発射した。
オリヴィエさんは砲撃を横っ飛びで回避。と、『銀十字!』さっきの女の人の声が聞こえたかと思えば、さっきからトーマの側に浮いてた十字架の装飾が表紙にある黒い本から数枚のページが飛び出して来て、その表面から魔力?弾を発射。
オリヴィエさんの周囲を旋回してから一斉に襲い掛かった。それを防ぐために「金城鉄壁」オリヴィエさんが魔力を全身に纏った。防がれる、って思ったけどトーマの攻撃はオリヴィエさんのバリアを無視するかのように掻き消して、「ぐぅぅ・・!」着弾させた。

「今のは・・・!?」

「魔法を掻き消す魔法・・・?」

ううん、トーマのアレは魔法じゃない。魔力を使ってるようには見えなかった。また別のエネルギー。そう、スバルさんやノーヴェ達のようなエネルギーみたいな感じがする。

「クリムゾンスラッシュ!」

振るわれた大剣から放たれる斬撃。オリヴィエさんは真っ向から「驚浪雷奔」拳を拘束で突き出すことで放つ魔力衝撃波で迎撃しようとしたけど、トーマの斬撃はオリヴィエさんの衝撃波を真っ二つに切り裂いた上で直撃させた。

「ヴィヴィオ! なんかヴィヴィオのソックリさんだけど倒しても良いんだよな!?」

トーマからそう訊かれて「えっと・・・」わたしは言い淀んでアインハルトさんを見る。と、「はい。手を貸していただけますか?」アインハルトさんがそう答えて身構えた。トーマも「よしっ」って構えを取ったから、少し休んでことで動けるまでに回復できたわたしもベンチから立ち上がってアインハルトさんとトーマの側に駆け寄る。

(トーマにさっきの魔法を無効化したっぽい攻防がなんなのか聞きたいけど、未来のことだし、やっぱり聞けないよね)

「邪魔をしないで・・ください・・・!」

――意気軒昂――

オリヴィエさんの魔力量が跳ね上がった。そして「電光石火」その一言と一緒に姿が消えた。アインハルトさんが「移動魔法です、気を付けて!」トーマに教えた。頷いて応えたトーマは「全方防御!」そう言うと、“銀十字”って名前らしい本からまたページが、今度は何十枚と飛び出して来て、わたし達を護るようにドーム状に組まれた。その直後、オリヴィエさんの拳打が1枚のページに防がれた。

「銀十字!」

トーマの声に反応して数十枚のページが一斉に動き出した。そして今度はオリヴィエさんを閉じ込めるようにドーム状になった。ページ表面に光弾が発生。それらが同時にオリヴィエさんを襲った。その光景に「すご・・・!」思わずそう漏らしたわたし。わたしの知ってるトーマとは全然違うからビックリしちゃった。

『トーマ、ヴィヴィオ、アインハルト、気を付けて!』

ページは使い捨てみたいで崩れていっている中、トーマの内に居る融合騎のリリィさんから警告が入ったと同時、「天衣無縫」その一言が聞こえてきて、砂煙の中から魔力を纏って砲弾と化したオリヴィエさんが突進して来た。技名の最初の一文字、て、を聞いた瞬間にわたしはトーマの手を掴んで横っ飛び。アインハルトさんは反対側へ跳んで、オリヴィエさんの突進を回避。

「空破断!」

「ディバインバスター!」

「シルバーハンマー!」

突進を終えたばかりのオリヴィエさんの背中に向けて攻撃。

――狂瀾怒濤――

魔力を付加した脚を地面に踏みしめて起こす、地面隆起の技でわたし達の攻撃が全部防がれた。また砂煙の中に消えるオリヴィエさん。

――砲煙弾雨――

「「「っ!」」」

砂煙の中から飛び出して来た虹色の魔力弾。トーマは「クリムゾンスラッシュ!」大剣を振るって斬撃を飛ばした。オリヴィエさんの魔力弾とトーマの斬撃が真っ向から衝突して、さっきみたいに掻き消すようにして斬り裂いた。遅れてトドメのような魔力砲弾1発が飛来してきた。

「ディバイド!」

わたし達に当たるより早く現れた紋様によってまた掻き消された。やっぱりトーマ、魔力結合の分断をしてるんだ。

「来ます!」

砲弾に遅れてこっちに向かって走って来てたオリヴィエさんと再接敵。純粋魔力攻撃は、トーマが居るから通用しないって判断したみたいで、オリヴィエさんは距離を一切置かないインファイト戦法に切り替えてきた。
そして始まるわたし達3人対オリヴィエさんの格闘戦。でもやっぱりベルカ史上最強って謳われたオリヴィエさんで、「うぐっ!」「きゃあ!」「うわあ!」わたし達の攻撃は当たらないうえ、オリヴィエさんの打撃は面白いほど受けちゃう。それぞれ別方向に殴り飛ばされ、蹴り飛ばされ・・・。

「強ぇ・・・!」

倒れ伏してるトーマの呻き声が聞こえた。遅れて『魔法じゃないからディバイダーの意味ないし・・・』リリィさんの弱音も。オリヴィエさんは、トーマには純粋な打撃攻撃を、わたしとアインハルトさんには魔力を用いた打撃と切り替えて仕掛けてくる。流石のトーマも、純粋格闘じゃオリヴィエさんに傷1つ付けられない。

「それでも止めないといけません・・・。オリヴィエは泣いています。私はその涙を止める・・・!」

アインハルトさんが仕掛ける。拳打・蹴打を織り交ぜた連撃を、オリヴィエさんは片手だけで受けては逸らす。わたしも急いで立ち上がって「せぇぇーーーい!」参戦。アインハルトさんとの挟撃を仕掛ける。と、「女の子にやらせて、俺だけが眠ってるわけにはいかないよな!」トーマも参戦。3人で代わる代わる連撃を打ってくけど、正確に捌かれちゃう。

「ダメだ、埒が明かない。ヴィヴィオ、アインハルト、離れてくれ! 巻き込んじまう!」

トーマからの指示にわたし達は素直に頷いた。何か大技を出すんだって理解したから。魔力結合の分断をするトーマの技。たぶん近くに居るとその効果がわたし達にも届いちゃうんだ。オリヴィエさんへの連携を切り上げて一足飛びで後退。した瞬間、オリヴィエさんの上段蹴りがトーマの側頭部を打った。

「トーマ!」

「ぅぐ・・・! これで、どうだ・・・!」

『ディバイド・ゼロ!!』

吹っ飛びながらもトーマは大剣の先端から砲撃を発射した。と、「あれ・・?」一瞬体から力が抜けた。これも今の砲撃の効果、なのかな。見ればアインハルトさんも小さく頭を横に振ってる。

「今だ、ヴィヴィオ、アインハルト!」

トーマの声にハッとして、オリヴィエさんへ視線を戻すと「え・・・?」そこには体が霧散し始めてるオリヴィエさんが佇んでた。倒れ込んでるトーマから「再生してる、早く!」急かされて、わたし達は慌ててオリヴィエさんへダッシュ。わたし達の接近に気付いたオリヴィエさんは崩れては再生してる体で身構えた。

「ヴィヴィオさん。最後の一撃、私に任せてもらっても良いですか?」

「・・・お願いします!」

「ありがとうございます」

――驚浪雷奔――

突き出された拳から放たれる衝撃波をわたし達は左右に分かれて躱して、そのまま接近を続ける。ここで「ソニックシューター!」わたしは魔力弾5発を発射して牽制。オリヴィエさんは魔力を纏わせた両手の裏拳で弾いて対処。
オリヴィエさんが動きを止めた事を確認して、「レストリクトロック!」なのはママ直伝のバインド魔法を発動する。シューター迎撃の為に両腕を使ったことで懐を開けたうえで捕らえた。計算通り♪

「アインハルトさん!」

「はいっ。・・・覇王! 断っ、空っ、拳っ!!」

アインハルトさんの渾身の一撃がオリヴィエさんのお腹にヒットして、そのまま貫いた。その光景にビクッとなるわたしとトーマ。でもアインハルトさんはゆっくりとオリヴィエさんを自分の元に抱き寄せて、「あなたは守ってくれました。ですからもう、休んでいいんですよ」って背中をポンポンと優しく叩いた。

「まも・・れた・・・?」

「はい。守れました」

「よかった・・・です・・・」

オリヴィエさんの表情が和らいで、安心したようにアインハルトさんにもたれ掛った。そしてそのまま「ありがとう、クラウス・・・」天へと消えていった。

 
 

 
後書き
マガンダン・ウマガ。マガンダン・ハポン。マガンダン・ガビ。
はい、今話は残滓オリヴィエを登場させました。にじファン時代にある読者様から、オリヴィエ出したらいいんじゃない?というコメントを頂き、ずっとそうしようと考えておりました。
とは言え聖王のゆりかご乗艦後で本来の力が発揮されない、闇の欠片ゆえの弱体化、などなどのオリ設定で超絶弱くしてあります。えー、そして何故意識の有る彼女を出さなかったかというと、それは後のエピソードの為、と申しておきます。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧