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『自分:第1章』

作者:零那
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『異常/信頼』

赤ちゃんの名前は、お母さんが付けることになった。
お母さんは女の子が欲しかったらしい。
でも産まれたのは息子2人。
零那の赤ちゃんが女の子って解った途端、名付けに関する似たような本を何冊も買ってきた。
零那は既に名前決めてたんやけど...仕方ないか...
ユウの名前も、お母さんの姑が付けたらしいし。


この頃、ユウの晩酌のつまみを作るのが日課になってた。
御飯はお母さんが作ってる。
正直、材料買いに行くだけで動悸や息切れ、更にスーパーで必ず嘔吐。
帰ったら既に作る体力もない。
だからストレスも酷いし体も辛かった。


検診時、医者からは絶対安静を言い渡された。歩くのも極力抑えて、ビルの階段も本来なら危険なので外出しないで。
寝ておれるなら寝て過ごしてって。
それが無理な家庭環境なら即刻入院しなさいって。
でも、お母さんは歩けって言う。
ユウは、つまみくらい作れって言う。
家に居たら洗濯物や掃除もせなあかん思うし動く。
そんな状況を説明した。

そしたら『外出禁止!家の中でも絶対安静!』って紙に書いてハンコを押した。
『これを家族みんなに見せなさい!』って。

何がどう異常なんかは教えてくれんかった。
零那の性格を踏まえて...。

それでも少しは怖かった。


この医者、四国では名の通った人。
技術的にも人間的にも。
それに、零那が居た施設にも来てた。
青少年なんとかって勉強会を開いてくれてた。
性のことから命の神秘、医学のことまで...
児童が質問すれば答えてくれてた。
忙しいスケジュールの中、ボランティアで来てくれてた。
それでも児童とは真摯に向き合ってくれてた。
熱く語ってくれてた。
だから、初めての診察の時、思わぬ再会にビックリした。
この医者なら信頼できる。
任せとけば大丈夫。
不思議とそう思えた。
本人に伝えなあかん重大な事なら言ってくれるだろうし。
でも、今回は『零那ちゃんが赤ちゃんを大事に想って、言いつけを守ってくれたら大丈夫!安心して任せて!ただ、絶対に極力動かないこと!わかった?』って。

零那の生育歴や性格、人格障害、精神異常を知ってるからこその対応。
言わぬ事が正しいとの判断。
ただ、零那自身がシッカリ約束さえ守れば、この人が赤ちゃんを守ってくれる。


妊婦は安定期に入ると歩けって言われる。
運動運動、妊娠は病気じゃ無い。
そんな風に。
でも、中には、そんな風にしたら母子共に命に関わる重大なことに陥る可能性も有る。
零那は、この時そんな状態だったらしい。
むくみの原因は歩き過ぎ。
無理し過ぎ。
異常なストレス。
他の詳細は言われんかったけど、この、むくみってのが意外と恐ろしいって脅された。

とにかく何より絶対安静!
その一点張り。


帰って紙を見せたら、お母さんは『あらっ!そんな酷いんかね!御飯出来るまで寝とけ!』って...
御飯の時も『痛いとかはないんか?おかしい思たら遠慮せんと言えよ!言わんかったら赤ちゃん死ぬぞ!我慢したらあかんで!』って...
今以上に心配&迷惑かけるのとか嫌なんやけど、赤ちゃんの命かかっとるけん頷いた。

医者が詳細を零那に言わん理由もお母さんに伝えた。
お母さんは納得した。
だったら私も敢えて聞きに行かん、あんた達の信頼関係を信じるって。

 
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