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『自分:第1章』

作者:零那
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『拉致』

妊娠が解る少し前、皆のバイト先で待ってた時。
店の外。
怪しいハイエースに拉致られた事がある。
抵抗はせんかった。
諦めてた。
相手は6人。
暴行は受けたくなかった。
殺される危険性もなくは無いワケやし、前より賢くなった。
挑発したりおちょくったりもせなんだ。
ヤブ医者に膀胱炎って言われた後やったし、養父の時の妊娠症状と同じ事に気付いてたし。
おなかを庇いつつ、されるがままになった。
何も見ん。
何も聞こえん。
何も感じん。
とりあえず、悪さしてそうなハイエース系のバン全般的に大っっ嫌いになったのは事実。

事が終わり、降ろされたのは山じゃなく知ってる道路だった事に感謝。
すぐに公衆を探してコンビニに向かった。
時間見て、ヤバイ皆とっくに終わってる!って思った。


流産は嫌だ。
お願い!流れんといて!って必死に祈りながら公衆に辿り着いた。
何処にいるかだけ伝えて、立っとけんなって受話器置けんまま座り込んだ。
少し意識が飛びかけてた頃、涼君が目の前に来た。
『今ユウが水とか手当するの買いよるけん』って。
涼君が着てるパーカーを脱いで零那に着せた。
この時はじめて気付いたけど服とかブラの紐まで切られてた。それを隠してくれた。


特に何も聞かれず、零那も声が出んかった。
手当してくれて体さすってくれて...皆の優しさに涙が出た。
辛くてじゃ無い。
だってレィプなんか慣れてる。
何年間受けてきたと思とん。
今更...


皆の温かさが伝わる。
汚れモンみたいにせん皆が...それが、零那にとっては凄く凄く嬉しかった。

皆に、話はしてた。
個人個人で、お互いに2人の時とかに。
家のこととかやっぱり聞かれるし...流れ的に。
でも、同情とかじゃ無くて、ちゃんと友情が在ってこその語り合いだったから、お互いに受け入れ合えてた。
だからこそ、こんな状況でも皆、何も言わずとも解ってくれたんやなって...


でも、妙にアソコが痛い。
正直、自転車乗れる感じじゃ無い。
だからお礼言って謝ってタクシーで天理教迄帰った。


この街じゃ珍しくない事件。
零那にとっても珍しくない事件。

もうね、聞き飽きてる。
警察の言葉に。

『隙を作る女が悪い』

『ミニスカートの女が悪い』

『キャミソール着てる女が悪い』

『誘惑するカッコの女が原因』

『ヤラレたがる女が実際に多いから女側が原因』

『男が悪いって決めつける女が悪い』


警察の言葉とは思えん。
特に此の街はザコ警察。


 
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