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『自分:第1章』

作者:零那
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『天理教』

モナリザの処には、殆ど帰ってない。
ユウにバレた。
大体こんな処ほんまにズット居たとしたら体壊してるよ...
仕事時間は大体ユウのバイトに合わせてた。
たまに時間が伸びたり、遠出してるって言ったり、前のように毎日毎日一緒ってのは減った。
ユウは、同じビルに居る、屋上行ったら居るって思ってた。
でも居らんかった。
それが許せんかったらしい。

こんな処、寝れるわけがない。
汚いし、寒いし、敷くモノも無い。
大体どうやって寝るん?
病院かからん様にする為には自分が自分を管理せなあかんよね?
泊まらしてくれる人を探すのは当然じゃない?

ユウは暫く考えてた。
で、美容院に連れて行かれた。
みんながいつも行ってる処。
可愛らしい気さくなオバチャンが1人でやってる店。
普段から何でも話してる、みんなのお母さん的存在に近い感じのオバチャン。


ユウがオバチャンに『どっかコイツが住む処無い?』って聞いた。
家出して来てるのは知ってる。
てか、施設出て1人暮らししてた頃から、零那も皆と一緒に来てたから知らん仲じゃ無い。
殆ど話したことは無いけど。

オバチャンは『行ってみんことには解らんけど、お願いはしてあげる』って...。
行った先は天理教。


勝手な思い込み。
宗教差別になるかもしれんけど『何されるんか解らんし怖いし嫌や!!洗脳されるんちゃん!!』って、拒否った。
でも、もう連絡してあるから入るよって。

オバチャンが『奥さん』と呼ぶ人が出てきた。
この家のお母さん。
ユウが言ってた。
中学の同級に此処の娘が居ったって。
子供は7人居るらしい。
気の強いタイプのお母さん。
面接らしきモノをされた。
『何一つ知らん子を我が家に入れるのには、此方もリスクがあります。子供達も居るからね。嫌なこと聞くかも知れんけど素直に答えて欲しい』

いつの間にかオバチャンは帰ってた。

質問には答えたり答えんかったり。
だって簡単に一言で答えれるもんじゃ無いし...
お母さんは、訳ありってのは見抜いてたから『言い辛いならこちらで調べさして貰います』って言って『意味も無く子供達に危害を加えたりするような子では無いと、今話して信用しました。コッチに来て』って言われて、部屋に案内された。

普通の6畳和室。
既に、布団や小さなテーブルが用意されてた。
『布団おろしたし書き物もできるテーブルもどうぞ。必要なモノがあったら言ってみて。可能なら用意します』って...

いやいや、充分です...


此の家のみんなに挨拶した。
お父さんは、威厳ある人かと思えば少々違った感じ。
酒好きのエロオヤジ感が漂う人でした...

此処でのルールやしきたりなど教えられた。
子供達は零那のことを違和感なく受け入れた。
それに違和感を抱いた零那。
それに気づいたお母さん。
『うちの子は慣れてるだけよ。行事には色んな人が遠方からいっぱい来るし、毎日のように信者さんは出入りする。こうして暫く家に置いたりすることもあるからね』
納得。


毎朝毎晩、プラス行事ごとの、おつとめ。
その説明を受けた。
ただお経を読むだけでなく、楽器と舞も覚えなさいって...


ざっくり言うと、天理教は『自分以外の人の無事を、幸せを願い、日々生きてることに感謝する』って感じらしい。
自分に対する願いなどは駄目なんだとか。
『人助けが仕事』らしい。


早朝から掃除しておつとめして朝食。
夕方も同じく掃除からのおつとめで夕食。
昼間も、月に何度も会合やら儀式やらで忙しい。
部屋の準備したり大人数の食事作ったり...
他には、舞や華道、書道なども先生が教えに来てたりする。
いろいろ手伝ったりはしてた。
華道の先生が、零那の部屋に来て、一緒にどうかと聞かれたので行った。

施設でやってたのもあるし、花は好きやから、楽しく活けれた。
華道が好きってのが伝わるって言われた。
花の使い方が上手って褒められて嬉しかった。


おつとめの途中で頭が割れそうに痛いって症状が続いた。
今まで大分我慢してきたけど限界だったんかな。
寺で結婚式や儀式してるときに流れてるような、ちょっと甲高い音を出す楽器...
名称が解らん。
その音が毎日のおつとめで頭を支配してた。
木魚と般若心経に慣れてたからかな?
なんなんだろう、この拒否反応は...


朝のおつとめには出ず、布団にくるまって耳を塞いでた。
仕事には週5位で出てたから、夜のおつとめが終わってから帰るようになった。
掃除は勿論後ほどしてました。
お世話になってる身なので。
おつとめも、時間通りでは無いけど、朝晩必ず、しに行ってた。


お母さんと話した。
体が受け付けんなら仕方ない。
でも、必ず誰かの無事を、幸せを祈って。
今日も無事に終えることに感謝して。
貴女の事、調べました。
貴女の幸せは私が祈り続けます。


零那は歪んでるから、この時、何一つ嬉しくなんか無かった。
逆にムカついた。
解ったような気になって同情してる目の前の人が憎たらしくなった。

『綺麗事ばっかやな。信者集めて他人の幸せ祈って、それが叶うと本気で思てんの?馬鹿やんな?有り得んし!神や仏が願いを叶える?そもそもそんなモン居らんやんな?だいたい神や仏が最良の存在って確証無いやんな?神そのものが悪者かも知れんやんな?』

何に対してこんなに憤りを感じてるのか。
理不尽で矛盾だらけの世の中を恨んで憎んで生きてきて、それでも今の自分は...
今の自分自身は、矛盾だらけだったりする。
それが許せんかった。
どうにもならんかった。
自分も理不尽で矛盾だらけの世の中の一部になってる。
悔しくてたまらんかった。
そんな汚物を吐き出すかのように泣き叫んだ。

お母さんは、背中をぽんぽんしながら何も言わず傍に居た...

我が子でも無い面倒な歪んだガキを...
放っとけば良いのに...


祈りは神や仏に対してするものでは無い。
誰かを大切に想う心そのものが祈り。
でも、祈りを捧げる明確な場所を確立する為に、神をまつって神社や神殿を造ったんかな...

まぁ、全否定してしまえば宗教そのものが何なんか解らんなるし、日本に在るあらゆる文化や風習まで多岐に渡る問題が出てくるけど...


零那には空海しか居らんかったから神様は知らんもん♪

 
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