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サラリーマンの願い

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第五章

「神様とかさ」
「神頼みですね」
「直接頼むとか」
「ですから神社に」
「だから契約とかさ」
「契約?」
 そう言われてもだ、サラリーマンはというと。
 目を瞬かせてだ、リドルに言った。
「保険のでしょうか、それとも営業の」
「いや、だから願いを適えるな」
「そういう契約があるのですか」
 全く知らない人間の返事だった。
「それは」
「だからな、契約をして願いを適えてもらうとかな」
「詐欺ではないのですか?詐欺には気をつけています」
「詐欺ってあんた」
「そうしたことは妻と相談してから」 
 サラリーマンは戸惑いつつリドルに言うのだった・
「契約は何でも、それと」
「それと?」
「契約書の内容を確かめて」
 そして、というのだ。
「あと判子を押す時は妻と同席しろと」
「かみさんに言われてるのかよ」
「そうなんです、家に迷惑がかかりかねないと」
「そりゃまた監視の厳しいかみさんだな」
「慎重なんですよ」
 サラリーマンの言葉ではこうなるのだった。
「うちの女房は」
「そりゃまたいい見方過ぎないか?」
「そうでしょうか」
「ああ、ちょっと以上にな」
「そぷですか、とにかくです」
「契約はかよ」
「はい、女房と同席でないと」
 結べないというのだ。
「女房もチェックしますので」
「それじゃああんた個人のことでもか」
「私が稼ぎ手ですので」
 家のそれである。
「いなくなると困るとのことで」
「そうかよ」
「ああ、お願いですと」
 このことに話を戻してだ、サラリーマンが今度言うことはというと。
「お星様に」
「ああ、お星さんにか」
「会社からの帰り道に流れ星を見た時に」
 その時にというのだ。
「時々ですが」
「その時にかよ」
「三度お願いをしています」
「ああ、そうか」
「お給料が元に戻って残業が減って部長から小言がなくなって部下も素直になって女房も昔みたいに優しくなって子供達も可愛さが戻って」
「世知辛いな」
「髪の毛も増えてお腹もへっこんで神経痛やリュウマチも」
「願いごとは多いんだな」
「そのうちの幾つかを三回お願いしています」
「そうか、それで適ってるのかい?お星さんへの願いは」
「適ってくれるといいですね」
 笑っての言葉である。
「私としても」
「そうなんだな」
「そして何よりも世界平和を」
 ここでもこの単語が出る。
「あと阪神の優勝を」
「阪神の優勝は相当難しいな」
 リドルは冷めたクールな目で言い切った。
「あそこは特別だよ」
「そうですか、滅多に優勝しませんが」
「あそこに憑いてるのはとびきりだからな」
 甲子園のそれである。 
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