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November Rain

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第二章

「スイスよね」
「だからフォンデュもね」
 それもだった。
「美味しいんだよ」
「雰囲気からでも」
「夏は夏でソーセージとか出してくれるよ」
「ソーセージなの」
「ここドイツ料理もやってるから」
 スイス料理だけでなく、というのだ。
「それも美味しいんだ」
「ソーセージね」
「ビールもね」 
 ソーセージとくればだった、まあに。
「そっちもあるから」
「そうなのね、じゃあ夏もね」
「来ようね」
「ええ、けれど今はね」 
 ドイツ料理でなくだった、とにかく十一月で寒くなってきたから。
「フォンデュよ」
「やっぱりそれだよね」
「それを食べてね」
 温まりたい、心からそう思っていた。
「そうしましょう」
「それじゃあね。それにね」
 私達は店の中にいる、まだ座っていなくてお店の中の席を探している。丁渡いい席を見付けたところでだ。
 お店の窓の外を見てだ、こう彼に言った。
「お天気がね」
「悪いね」
「若し雨が降ったら」 
 私は心配を露わにして言った。
「もっと寒くなるじゃない」
「それも嫌なんだね」
「ええ、そうよ」
 困った顔になって俊朗君に言った。
「雨はね」
「冬に雨が降ったら暖かいよ」
「気温はね。けれどね」
「水だから」
「その分寒くなるし濡れたら」
 余計にとだ、私は言うのだった。
「余計に嫌だから」
「ううん、じゃあ降らないうちに」
「食べましょう」
「それじゃあね」
 こう話してだ、そしてだった。
 私達は二人で向かい合って座ってチーズフォンデュを注文した。そして二人でお鍋の中の煮えているチーズの中にパンやソーセージを入れながら食べた。それとワインも忘れなかった。
 フォンデュだけでなくワインも食べてだ、私達は身体が温まった。それで私は顔が赤くなってきているのを感じながら言った。
「温まってきたわ」
「それは何よりだね」
「やっぱり寒くなるとね」
「こうした熱いものを食べて」
「お酒もね」
「ワインとか日本酒とか焼酎だよね」
「ビールは好きだけれど」
 それでもだった。
「冬はね」
「冷えるからね、ビールは」
「ええ、だからね」
 それでだった。
「冬はあまり飲まないの」
「それで普段飲むものも」
「温かいものなの」
 ホットティーやホットコーヒーだ。
「そうしたの飲むの」
「徹底してるね」
「だから寒いことは苦手だから」
 本当にこのことに尽きた、私は。
「気をつけてるの」
「そういうことだね」
「そう、とにかく冷え性だから」
「今もズボンだしね」
「ズボンの下にストッキング履いてるわよ」 
 上も下着の上にシャツ、そしてセーターとオーバーだ。分厚い手袋も忘れていない。十一月のはじめだけれど。 
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