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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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死銃

 
前書き
遂にヤツが登場します!! 

 
シオンが待機エリアに戻ってくると大型モニターにはまだ一回戦の模様が中継されていた。
どうやら自分の次の相手はまだ対戦中のようだ。

「さて、キリトはどうなっているかな・・・?」

大型モニターに表示されている各プレイヤーの中継を確認する中、不意にシオンの背後から声がした。

「おまえ、本物、か」

「・・・ッ!?」

シオンは反射的にその声の主から距離を置く。その声の主の姿は全身をボロボロのマントで包み、顔を覆う金属製とおぼしきフルフェイスの仮面からは赤い眼が不気味に光っていた。
そのプレイヤーに対してシオンはあえてポーカーフェイスで答える。

「本物っていうのはどういう意味だ?」

「試合を、見た。あの、身のこなし、あの、器用さ・・・」

『コイツ、まさか・・・』

ボロマントのプレイヤーは更にシオンに近づく。そしてボロマントはウインドウを呼び出し、BOB予選の組み合わせのリストを出してEブロックにいる【Shion】の名前をズームした。

「この、名前。あの、動き。・・・お前は、本物、か」

『SAO生還者(サバイバー)・・・』

ボロマントの事をSAO生還者だと確信できたのは彼の手首のタトゥーにあった。西洋風の棺桶、蓋にはニヤついた不気味な顔が描かれている。そしてその蓋は少しずらされ、その間から白い骸骨の腕が出ている。
そのタトゥーにシオンは見覚えがあった。《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》、そのギルドの名が頭に過った瞬間、シオンは自分の背中に嫌な汗が流れるのを感じた。

「質問の、意味が、解らないのか」

「解らないな。お前が誰を探しているのかは知らないが、キャラネームが被ることはよくあることだ」

シオンは自分の感情が悟られぬよう平静を保つ。
自分の心拍が上がる、しかし呼吸を乱せば相手は自分の嘘に気づいてしまう。

「・・・なら、いい。でも、名前を、騙った、偽物か・・・もしくは、本物、なら」

ボロマントは去り際に振り向きながら最後に一言言った。

「・・・いつか、殺す」

「ッ・・・!」

ボロマントの一言にシオンはまるで心臓を掴まれたように苦しくなった。

『コイツは本気で殺しに来る』と───

ボロマントがその場から幽霊のように消えた瞬間、シオンはその場に膝をついて思わず胸を押さえた。

「ガハァッ、ハァ、ハァ・・・」

荒い息を無理矢理整えようとシオンは大きく息を吸う。額には冷や汗が大量に流れ、雫は床に落ちていく。
シオンは荒い息のままボックスシートに腰かけ、天井を見つめる。

『あのタトゥー、間違いない。殺人ギルド《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》・・・』

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》、SAO内では史上最悪の殺人ギルドである。リーダーの《PoH》を中心とし、2024年の元日に結成、その八ヶ月後のとある夏に消滅した。
攻略組50人規模の討伐部隊が組織され、武力によって壊滅させられたのだ。よその討伐部隊の中にシオンはもちろん、キリトやアスナも加わっていた。
なぜ壊滅に八ヶ月もの月日がかかったのか、それは《ラフコフ》のアジトが見つからなかったからだ。やっとの思いで見つけたアジトでの戦闘でも、敵側に情報が漏れていたらしく奇襲を受けてしまう、しかしそこは攻略組の対応力で建て直し、反撃はできた。
だが、攻略組とラフコフには大きな差があった。

“殺人への忌避感”───

狂騒状態となったラフコフのメンバーが、HPが削られても降参しないと悟ったとき攻略組のメンバーは激しく動揺した。
しかし、その中で唯一それをものともしなかった人物がいた。
それがシオンである。シオンだけはその感情を一切捨てていた。
ただ目の前の敵を斬って、斬って、斬りまくった。

戦いが終わってみればシオンはその手で21人中7人のラフコフのメンバーを斬っていた。

『奴はおそらくあの時の捕らえられたメンバーの中の一人。あの途切れ途切れの口調、まさか・・・』

シオンは大きく息を吸って立ち上がる。

『このまま考えても埒があかないか。今はトーナメントに集中しよう、考えるのはそれからだ』

シオンは二回戦に望むべく再びフィールドへと自動転送された───

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

それから俺は二回戦、三回戦、準決勝へとなんとか勝ち進み、遂に決勝戦へと駒を進めた。
決勝の相手は《Alia(アリア)》、準決勝まではアサルトライフルを中心とした中距離タイプで勝ち進んできた。
俺は一分間の準備時間を終えて今はフィールドに転送されている。決勝のフィールドは一回戦と同じく市街地エリアで時間は無制限。
俺は転送されたビルの中で相手の出方を見ている。

「・・・・・」

辺りは静寂に包まれる、相手が半径500m以内にいると思うとここまで静かなのが嘘に思えてくる。
俺は隣のビルに移動し視点を変えてみる、しかしアリアの姿は視界に捉えられない。

『どこにいる・・・?』 

俺は再び大通りに目をやる。そのときだった、俺の鼻先を弾丸が掠めたのだ。

『ッ・・・!』

完全に不意を突かれた、俺は近くの壁に移り体勢を低くする。
弾の着弾点を見てみると、そこはかんぜんに抉れていた。

『この弾痕。まさか、スナイパーライフル・・・!?』

ここに来て遠距離武器に切り替えてきたことに俺は緊張が走った。

『あの角度からしておそらく狙撃ポイントはあの高いビル、距離にして800mといったところか・・・。しかもあの軌道、外れたものじゃない、外したんだ(・・・・・・)。どうして?あれほどの威力の対物ライフルがあれば柱の端を多少掠めても俺をそのまま倒せた。俺の買い被りなのか?・・・いや、そんなこと考えてもしょうがないか、答えは・・・』

俺は俺はコルトガバメントをホルスターに戻し、M945だけを手元に残す。

「アイツに聞くしかないよな・・・!」

俺は壁から飛び出ると窓に向かって走り出す、そこから一気に飛び出すと相手は既に下で待ち受けていた。
赤い弾道が俺の心臓を狙う、俺はM945をアリアに向ける。
放たれた弾丸のタイミングは同時だった。ほぼ同じ射線上にあった二発の弾丸は僅かなズレによってかするように軌道を変える。
軌道を変えた弾丸は両者の頬を掠め、赤いエフェクトが走る。
地面に着地すると銃口は両者共に自分の倒すべき相手に向いていた。

「・・・・・」

「・・・・・」

静寂が辺りを包む、そんな静寂が破られたのはすぐのことだった。

「いやー、君強いね~♪」

アリアという少女は砕けたような感じで俺に声をかけた。
意外に思いながらも俺は彼女に問いかけた。

「アンタこそ、随分と粋な真似をしてくれるじゃないか。わざと弾を外すなんて」

「あれ?やっぱりバレてた?」

「なぜ外した?それほどの技量を持っていてなぜわざと外したんだ?」

「そうだね、強いて言うなら・・・君を見極めるためかな?」

「見極める?」

アリアは銃を下ろすと頷いた。

「そう、『白の剣士(・・・・・)』がどれ程の実力か」

「ッ!お前、死銃か!」

俺は引き金を引こうとすると、彼女は手で慌てて止めた。

「ちょッ!待って、待って!!私は死銃とかいう奴じゃないって!」

「本当か?」

「本当だよ。まったく、君は昔から疑り深いな・・・」

「昔から、だと?」

俺はそう言うと、アリアは手を口に当ててしまったという表情を浮かべる。

「はぁ、本当はこの勝負が終わってから言おうと思ってたけど、しょうがないか・・・」

「どういうことだ?」

「シオン、いえ、高嶺雪羅。久しぶり」

そう言ってアリアは中指と薬指を離すような独特のピースサインをする。そのピースに俺は見覚えがあった。

「お前、まさか・・・」

「そう、シエルだよ。久しぶり、雪羅」

そう、俺が昔オーストラリアで出逢い、剣の教えを得たシエル・キャンベラーである。

「お前、なんで・・・?」

「以前からこのGGOをしててね、今回のBOBにも出場することにしたんだ♪」

「そう、なのか・・・」

俺は銃を下ろし、ホルスターに収める。するとアリアもといシエルはある提案をしてきた。

「ねぇ、シオン。このまま銃で決着をつけるのも良いけど、どうかな?久しぶりに手合わせ、しない?」

「それは剣でってことか?」

「そう、剣なら持ってるでしょ?」

どうやら彼女は俺が光剣を持っている事を分かっているらしい。

「ああ」

「私も持ってるから、どうかな?」

「いいぜ、勝負は最初に一太刀入れた方が価値ってことで」

俺はM945から弾を一発抜くと、アリアに見せた。

「この弾が地面に落ちたらスタートだ。いいな?」

「ええ、何時でもどうぞ?」

「それじゃあ・・・」

俺は弾を上空に指で弾く。クルクルと回転する弾は最高到達点まで上がるとそのまま重力に従って落下していく。
俺は白い光剣のスイッチを入れ、構える。
そして───

キンッ。

小さな音が響いた瞬間、二人は同時に踏み込んだ。
ぶつかり合う光剣は激しくライトエフェクトを散らせる。赤の光剣を持ったアリアは俺の懐を狙ってくるが俺はそれをかわしバックステップをし、再び距離を詰める。何度もぶつかり合う光剣の応酬、二人の実力は互角だった。
しかし、勝負はいつかは決するもの、終わらせなければならない。

「そこッ!」

「ッ!!」

アリアはシオンの光剣を上に弾き飛ばし、彼の首筋で光剣を止める。

「勝負あったね」

「ああ、そうだな・・・」

しかし、シオンは直後予想だにしない行動に出る。

「俺の勝ちだ!!」

「ッ!!」

シオンはアリア弾き飛ばしたシオンの光剣を“足”で蹴り飛ばしたのだ。
光剣はアリアの頬を掠め、後ろのビルに突き刺さった。

「勝負あり、だな」

「そうみたいね・・・」

アリアは両手を上げ、降参のポーズをとる。

「まったく、まさか“降ってくる光剣を蹴り飛ばす”なんて・・・」

「生憎、こっちは命懸けの戦いを二年もやってるからな。生き残る術は知り尽くしてるんだよ」

俺は光剣をビルから抜き取り電源を切る。

「で、降参(リザイン)のコールはまだか?」

「そうだね、でも・・・」

アリアは俺を指差して言った。

「次は負けないから!」

「・・・上等だ!」

そしてアリアは空に向かって「リザイン!」と大声で叫んだ。

試合時間、19分27秒。
第三回バレット・オブ・バレッツ予選トーナメントEブロック決勝戦、終了。

優勝者《Shion》
 
 

 
後書き
はい!予選トーナメント終了しました!!
死銃も登場して、物語も本格的に動き出しました。
これからもフルスロットルで執筆していくので応援よろしくお願いします!! 

コメントお待ちしてます!!
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ 
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