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【IS】例えばこんな生活は。

作者:海戦型
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例えばこんな感じで今日も学園は平和です

10月14日 箒の日記

ゴエモンにあんな秘密があるとは、知らなかった。
ゴエモンに対するイメージ像が崩れなかったと言えば嘘になる。いつもマイペースで、あいつの前では何でも言いたいことを素直に言えてしまう。そんな人間があのような隠し事をしていたなどと、想像もつかなかった。その、実の母親と・・・・・・私も何度か会ったことがあるが、あの人とゴエモンがまさかその、ごにょごにょ・・・・・・と、とにかく刺激的・・・じゃなくて衝撃的だった。

でもゴエモン。
お前ものすごく卑怯だぞ。
あんないじましい顔で「こんな人間だと知って、友達でいてくれますか?」などと言われたら・・・・・・いいえとは言えないじゃないか。庇ってあげたいと思うだろう、普通。おかげで「友達じゃなくてもっと近しい関係に・・・・・・」といえばよかったと今少しだけ後悔しているぞ。

「大切な話がある」なんて言い出すものだから、ちょっとだけあらぬ想像をしてしまったのは秘密だ。




10月15日 オウカのデータメモリー

複雑化した感情回路が確実な正解を導き出せずにエラーが累積している。思考ルーチンの簡略化と一部ルートをロジックブロックすることで暫定的な指針を算出することにした。前提情報としてゴエモンの「一緒にいたい」を固定し、私がISであることを追加することで私の今するべき最優先行動を割り出した。

それは、男性IS操縦者としてのゴエモンを護衛しつつ、そのIS及び操縦者の有用性を周囲に示す事。
可能な限り感情ハレーションが複雑化しないバイタル状態に保つには、今はこれしかない。この情報を最優先情報と指定する。同時に、今までのゴエモンの行動、言動データから逆算するに、これが最もイレギュラーとエラーの発生しにくい行動である。

これでいい。これでもうゴエモンは私の事で悩まない。
悩まない、筈だよね。




10月16日 千冬の業務日誌

最近学園に急に部外者や子供が増えたような気がしてならない。しかもその殆どを束が無理のない形で処理してくれる。何だこの有能人間・・・・・・
お前は他人に迷惑かけてナンボだろう、と言ってみると顔を真っ赤にして「む、昔は昔で今は今なのッ!!」と反論された。何だその真人間らしいリアクション。
お前もっと何考えているか分からない笑みを浮かべてどっかに行くのがパターンだったろう、と言ってみると更に顔を赤くして「ちーちゃんのイジワルッ!」と叫ばれた。
どうしよう、からかい甲斐があって楽しいのだが。人間の感情を理解しただけでこうも違うものなのか。

今日なんか機業でコアエミュレータを作らされていた少年に名前をつけたいと相談しに来た。
あの子もかわいそうな子だ。所謂天才なのだが、その才能を見込まれたのが不運だった。彼は自分のやりたいことをずっとやらせてもらっていて幸せだと考えていたかもしれないが、それは彼のやりたいことを洗脳で限定的に狭めた結果に過ぎない。彼の世界はあの研究室の中で完結させられていたのだ。だから外に出してあげようと束は言い出したのかもしれない。

だが束よ。お前ピーマンくらいは食べられるようになっておけよ。それじゃ子供のお手本にならんだろう。




10月17日 生徒会長日記

会長室に泥棒が入った。どうも機業とは関係のないスパイだったらしいけど。それ自体は別に驚くことでもなんでもない。だってこの学園、元から産業スパイ多いんだもの。会長室に何か重要な情報があるかもと考えるのは不自然じゃない。・・・・・・実際には学校の運営以外の書類は何にもないんだけど。

でもね・・・・・・そのスパイは私と同類だった。
彼女を拘束しようとした瞬間に理解したわ。
血は繋がっていないし役割も違うのに、確かに同類だと感じたの。
不思議よね、でもシンパシーは強く感じた。
だってあの子・・・・・・

水槽から脱走したカエルのゼゼーナンに睨まれて一歩も動けなくなってたんだもん!

カエルに睨まれた蛇状態よ、マジで。捕まえようにも近くにゼゼーナンがいるものだから怖くて近づけないし。思わず通りかかったうしおちゃんとほむらちゃんにゼゼーナンの回収を頼もうかと思ってた矢先、ゼゼーナンは自力で水槽へ戻っていったわ。2人して腰を抜かしちゃった。
結局捕まえたんだけど、なんだか友情芽生えちゃうわね。

それにしてもゼゼーナン・・・・・・貴方、水槽から脱走なんて一度もしたことないくせに、なんでスパイが入り込んだ今日だけ中から出てきていたの?謎だわ・・・・・・本当にただの蛙なのかしら。




10月18日 リューガの無差別ファイル

前々から思ってたんだが、ゴエモンはこのままではいかんと思う。何がいかんって、多分再びオウカが暴走した時にゴエモンはきっとそれを抑えられないと思うのだ。今日も様子を見てみたが、戦いを嫌がるゴエモンは、結局オウカの個人的な考えに流されていやいやながら戦うことを決めた。

オウカはゴエモンの言う事ばかり聞くが、暴走している際は聞こえていない節がある。つまり今現在も軽い暴走状態にあると考えられるだろう。そんな時に彼女を正気に戻させてあげるのは、一番近くにいるゴエモンの役割だ。なのに彼はそれを果たせていない。
分かってるのか、ゴエモン?お前がこの調子だと、文化祭のあの事件を何度でも繰り返すことになるんだぞ?

・・・・・・いっそ戦わないなら戦わなくていい。それも選択の一つだ。だけど、たった一つだけ君は決める事があるんじゃないのか?君は結局オウカのパートナーなのか、そうではないのか。


彼女の暴走を止められないのならば、君はパートナーとしてオウカと共に過ごすべきではない。
次の模擬戦で、はっきりさせようじゃないか。俺は他の皆ほど優しくないからな?




10月19日 ラウラのドイツ軍人日記

うしお、ほむら姉弟は――この二人の両目は越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)と似ているようでまったく異なるようだ。私の目はナノマシン・インプラントによって後天的なIS適合率引き上げと、ナノマシンによる眼球の擬似的ハイパーセンサー化を狙ったものだが、この2人の目はナノマシンによって変えられたものではない。

2人は「産まれたその時点で、既にナノマシン無しには成し得ない筈の擬似ハイパーセンサーを目に宿していた」のだ。そのように遺伝子レベルで構造が変わっているのだ。2人も恐らくデザインチャイルドではあるのだろう。だが、産まれる前から「こう」なるように仕組んだのだとしたら・・・・・・妹の遺伝子もそうだが、ゴエモンの遺伝子には一体どれだけの可能性が秘められていたのだろう?末恐ろしくて、心底2人の誕生を「監修した」ヒポクリットという男が恐ろしくなる。

・・・・・・そんなことを考えていたら、焔の方に眼帯を奪われてしまった。あ、ちょっと、返せー!!と叫んで追い掛け回したのだが、構ってほしいから盗んだのなら追いかけず待っていれば飽きて返しに来るのでは?と思い直して待つことにした。
暫くしたら返しに来た。ふふふ、これが年の功だ。

しかし2人とも・・・・・・私の目を見て「おそろいだー!」とはしゃぐのは止めてくれ、可愛いから。可愛くて鼻からなんか熱いものが垂れてきそうだ。この感覚は、そう、妹がミニ妹に形態移行していたあの時に感じた・・・・・・

「・・・・・・き、今日は2人とも私の隣で寝てみないか?」
「やだー!」←ほむら ↓うしお
「・・・えっと、おとーさんかおかーさんが横に来るなら」

どうも私、この2人に同列のヒエラルキーと見られていないか?
  
 

 
後書き
実は、リューガくんはラスボス担当なんですよ。
つまり対リューガ戦こそがこの物語のラストを飾る最終イベントになります。 
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