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ロックマンX~5つの希望~

作者:setuna
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第三十一話 紺の狙撃手

 
前書き
暇なアクセルを書いてみました。 

 
エックス「………」

ゼロ「…………」

ルイン「…………」

アクセル「今頃、ルナは何してるのかなあ…」

ヤコブを警備していたアクセルのぼやきに全員の視線が集中する。

ルイン「アクセル、ルナのこと心配してるの?大丈夫だよ、ルナなら」

エックス「基本的に事務仕事だから危険なことはないはずだ。」

ゼロ「それからその言葉はもう10回は聞いた。何度同じことを言うつもりだ?」

アクセル「だって気になるじゃんか、軌道エレベーターの警備するのはいいけどさ。僕らは周りの見回りなのに、ルナはヤコブの管理局で事務仕事。何で一緒じゃないのさ?別にルナじゃなくてもいいじゃん」

ゼロ「向こうの希望だからな、聞き分けろ」

ルイン「まあ、何でルナなんだろうとは思うけどね」

アクセル「うん、ルナがいないと何か調子が出ないよ。何か違和感バリバリ」

エックス「…確かに」

いつもならルナも含めた5人で行動することが多い彼らにとっては、1人抜けているこの状況がなんともやりにくい。
今では自分達は5人でイレギュラーと死闘を繰り広げているのだから尚更。
関係ないが、他のハンター達の中には、彼らならマグマに突っ込んでも雪崩に巻き込まれて生き埋めになっても必ず脱出して無事生還するだろうという謎の確信を持っている者すら居るほどである。
特にアクセルに至ってはイレギュラーハンターの中で1番歳が近いために一緒にいることが多い。

アクセル「そういえば、今日で終わりだよねルナ」

エックス「ああ…っ!!」

何となくヤコブを見上げたエックスは、はっと息を呑んだ。
エレベーターを取り巻く輸送レールの上を滑っていくコンテナ、その1つが、爆発と共に落ちていく。
エックスはさっと落下地点を目算すると、直ぐさま駆け付けた。




































『下り4番コンテナに事故発生……周辺の係員は…』

ヤコブからオペレーターの声が響く。
現場に辿り着いたエックスは、その凄惨さに顔を顰めた。
コンテナは原形を留めておらず、激しく炎上している。
あの中には、月面作業から地上に戻ってきたレプリロイド達が乗っているはずだ。
エックスはキッと顔と気を引き締め、左腕の通信機をかざした。
ヤコブの係員も事故発生は把握しているが、いち早く現場に到着したエックスが指示する方が迅速に対応できる。

エックス「こちらエックス……軌道エレベーター、ヤコブ警備中に事故発生」

ヤコブの回線と接続し、整然と告げていく。

エックス「至急、救助用メカニロイドを……」

ガシャン、と。
炎が燃え盛る音が気になって体の向きを変えたその時、コンテナから聞こえた音。
勢いよく振り返ったエックスの瞳が、驚愕に染まった。
コンテナの割れ目にかけた手で広げた隙間から、そのレプリロイドが出てくる。
屈強な足でコンテナの破片を踏み付けたレプリロイドは、這い出るために折っていた腰を伸ばした。
その巨体を見上げ、エックスは声をなくす。
見間違えるはずもない、その顔。
ゆっくりと近付いてくるレプリロイドを見ていたエックスは、驚愕のあまりにバスターを構えることさえできなかった。
最初に出てきたレプリロイドも、それに付いて出てきたレプリロイドも、その次も。
コンテナから出てきた全てのレプリロイドが。

エックス「シ……シグマ……!!?」

史上最悪のイレギュラー、宿命の敵。
滅んだはずの、シグマ、だった。
何体ものシグマが、炎を背に不気味に揺らめいている。
その倍の数の目がギラギラと輝く。
立ち尽くしてしまうエックスの正面で、不意にシグマたちが動いた。
シグマ達の中心にいたのは、シグマではないレプリロイド。
現れたその姿に判断力を取り戻したエックスは、切り換えたままだったバスターを構えようと左手を引く。
瞬間、語りかけてきた涼やかな声は、エックスの動きを止めるに充分だった。

ルミネ「事故から身を守るために……」

声に違わず、紫の髪のレプリロイドが上げたその顔は美麗と言わずにいられないもの。
顔と共に上げられた瞳。
その優雅な動作の流れのまま、金色の瞳がエックスを見据える。

ルミネ「頑丈なシグマボディをコピーしていたのです」

静かでありながら天を貫くような声は、神秘ささえ漂う。
薄い笑みを携えて、紫の髪のレプリロイドは続けた。

ルミネ「私達、新世代型レプリロイドには完全な耐ウイルス性能がありますから……」

声に導かれるように、エックスと向かい合うように並んだシグマたちが光を放った。
思わず身構えるエックスの目の前で瞬時に縮む身体。
元に戻ったのだと理解するまでに時間はかからなかった。

ルミネ「シグマボディをコピーしても、何の問題もありません」

新世代型レプリロイドが持つ、コピー能力。
自分と同程度の大きさのレプリロイドでなければ姿のコピーは出来ないアクセルとは違い、ルナのコピー能力よりも完成度が高いそれ。
目の当たりにするのは初めてだった。
エックスはバスターを解除し、構えと警戒を解く。
白と紫を基調とした出で立ちのレプリロイドに、ほとんど無意識で問いかけていた。

エックス「君は……?」

薄い笑みを絶やすことのない唇が、ゆっくりと開く。

ルミネ「私は、ルミネ」

金色の瞳が、真っ直ぐにエックスを見つめた。

ルミネ「この軌道エレベーター、ヤコブの管理者です」

新世代型レプリロイド達を付き従わせ、 揺らめく炎とそびえ立つエレベーターを背に堂々たる態度で立つヤコブ管理官・ルミネに、エックスはしばらく言葉が出なかった。
半ば呆然としているエックスが喋るのを待っているのか、ルミネもなにも言わない。

『イレギュラーハンター、応答してください』

突如聞こえた声に、エックスは慌てて通信機をかざした。

エックス「……すみません。救助用メカニロイドは必要ありません。壊れたコンテナの処理を願います」

『了解しました。今後、通信の途中で切るようなことがないようにお願いします』

プツリと切られた通信にエックスが苦笑するより早く、誰かが駆け付ける足音。

ルナ「おい、大丈夫か?」

エックス「ルナ!!」

ヤコブで事務仕事をしていたはずのルナの登場にエックスは目を見開いた。

ルミネ「ルナですか。ええ、シグマボディをコピーしたことで、被害は大したことないようです」

ルナ「そうか…」

バレットを下ろすルナにルミネは微笑むとエックス達の方に視線を遣る。

ルミネ「ルナ、コンテナの処理は我々がしておきますので、あなたはハンターベースに戻られても結構です。今日までお勤めご苦労様です」

ルナ「ん?ああ」

ルミネ「いい返事を期待していますよ」

そう言うとルミネは去っていく。
ルナは溜め息を吐くと、エックスと共にこちらに向かっているゼロ達の元に向かうのだった。







































ハンターベースの自室に戻ったルナは物思いに耽っていた。

アクセル「ルナ、どうしたの?」

様子がおかしいルナに疑問符を浮かべながら、アクセルが問い掛ける。

ルナ「…なあ、アクセル。新世代型レプリロイドのことなんだけどな………」

コピー能力を持つ完全な新世代型レプリロイドが世に生み出され、人類の存亡を懸けた宇宙開発には新世代型レプリロイドが登用され、計画の要である軌道エレベーターには特に数多く集結している。
つい数年前まで、アクセルとルナしか持っていなかったコピー能力。
それを巡って全面戦争まで起こされたその能力は、今や珍しい物ではなくなった。

アクセル「何?どうしたの?」

ルナ「……」

アクセルが疑問符を浮かべながらルナの言葉を待つが、ルナ自身、ルミネから感じたあの違和感をどう表現すればいいのか分からなかった。
しばらくして……。

ルナ「ごめん……何でもない……」

アクセル「ええ?何それ?」

待っていたアクセルは不満そうな顔をしたが、止めたということは大したことではないだろうと、解釈して、武器のチェックをする。
ルナはルミネの“進化”という言葉の意味を考えた。 
 

 
後書き
X8のオープニングです 
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