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魔法少女リリカルなのは~結界使いの転生者~

作者:DragonWill
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無印編
  誘拐事件・前篇

転校してからしばらく経った。

ここは私立だけあって、勉強のレベルが前の学校よりもかなり高い。

元々大学レベルの知識は持っているが、演算力や思考力が年相応に下がっているため、ここでの勉強はむしろ丁度よく退屈せずに済みそうである。

そんなある日のこと。

「それじゃあアリサちゃん。先に行ってて」
「分かったわ、なのは」
「なのはちゃんも日直頑張って」
「先行ってるぞ、高町」

日直当番のなのはを置いて、龍一はアリサ、すずかと先に帰っていた。

校門から出てしばらく行ったとき。

キキ―――――!!

猛スピードで走ってきた黒い車が自分たちの横に急停止し、中から黒ずくめの怪しい人たちが降りてくる。

「な、なによあんたたち!?」
「いいから来い!!」

龍一、すずか、アリサの3人はあっという間に車に連れ込まれ、車はまた猛スピードで走り出した。

この間1分の早業である。

無論、ただの小学生であるアリサやすずかならともかく、龍一は魔法を使えば誘拐自体を未然に防げただろうが、人目の多い昼間から魔法を使う訳にもいかず、下手に抵抗して彼女たちを危険に晒さないようにあえて抵抗しなかったのである。

3人を乗せた車は、そのまま市街地を抜け、何処かへと走り去っていった。





3人はどこかの倉庫に連れてこられ、縄で手を縛られて閉じ込められてしまった。

「痛わね!?何すんのよ!?」
「バニングス、落ち着け」
「・・・・・・・」

龍一たちは今の状況を把握しようとあたりを見回す。

「ここどこなのよ?」
「どこかの倉庫みたいなのは間違いないな」
「なんでこんなことに・・・」

アリサとすずかは気丈に振舞おうとしているが、恐怖が隠せず震えている。

それも当然だ。

いくら大人びた精神力を持つ彼女たちでも、誘拐は堪えるだろう。

大の大人でも誘拐されれば長年トラウマに悩まされるのだから、まだ子供でしかない彼女たちなど、恐怖を隠そうとできる余裕があるだけ大したものである。

一方、龍一はと言うと・・・。

(一応、魔力で目印を残しておいたから、父さんなら分かる(、、、、、、、、)だろうけど・・・)

とても落ち着いていた。

当然、前世においても、今世においても誘拐された経験など無い。にも拘らず、パニックにならずに冷静でいられるのは、やはり魔法の存在が大きいだろう。

いざとなれば、それに対処できる力があるということは、それだけで精神を安定させるようである。

まあ、その他にも父の古巣の人間のような、犯罪者よりも危険な存在を幼いころから見続けてきた影響の方が大きいだろう。

3人で恐怖を紛らわせようと、話し込んでいたところ。

「久しぶりだね、我が姪よ」
「あなたは、氷村遊!?」

倉庫の奥から、美男子と言っても過言ではない男性と黒服の複数の男が現れる。

(氷村遊。たしか『リリカルなのは』の元になった『とらいあんぐるハート』に登場するキャラだっけ?そっちの方は原作やってないぞ)

龍一の知識は『リリカルなのは』は大体知っているが、『とらいあんぐるハート』に至っては、2次創作物で時々、ネタを見る程度である。

「すずか!?このいけ好かない男と知り合いなの!?」
「黙れ下等種が!!いつ僕が君なんかに喋ることを許可した!?」

アリサが驚き、すずかに聞こうとするが、氷村が家畜を見るような侮蔑を込めた視線で怒鳴りつける。

「ごめんアリサちゃん。あの人は私の叔父なの」

すずかが申し訳なさそうに話しかけてくる。

「それで・・・どうしてこのようなことを?」
「ふん。そんなの決まっているだろ?あんな劣等種を伴侶に迎えようとする月村忍が頭首になるなんて気に食わないからだよ」

どうやら、何やら一族がらみの怨恨のようである。

(そう言えば、月村家って結構な資産家だったな)

『夜の一族』は優秀な頭脳や見目麗しい美貌を持つ人間が生まれやすく、社会で成功を収めるものや政界に強い影響力を持つ者も多い。

更には『夜の一族』は月村家だけでなく、氷村家、綺堂家の3つの家を始めとした大きな血族の総称である。

その頭首ともなれば、富や権力は日本でも屈指の存在となれるのは間違いないだろう。

恐らく、目の前の男はそれを手に入れようと、頭首の身内を誘拐したようである。

「恭也さんを劣等種なんて呼ばないで!!」
「何言ってるんだい?人間なんて僕たち神に選ばれた種族に比べれば劣等種じゃないか!?」
「一体何の話をしてるのよ!?」

耐え切れなくなったアリサが叫びだした。

それを見た氷村は、一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐにそれが嗜虐に満ちた表情に変わる。

「ほう?もしかして君はすずかの事を知らないのかい?その正体を知らずに友達なんて思ってたのかい?」
「やめて!!」

すずかを見ると真っ青な表情を浮かべ、瞳に涙を溜めながら震えている。

「いいかい?その女の正体は僕と同じ『夜の一族』、つまりは吸血鬼さ!!人の生血をすする人外の化物なんだよ!!」
「な!?でたらめ言うのもいい加減にしなさいよ!?ねえ、すずかも言い返しなさいよ!?・・・・・・すずか?」

アリサがすずかを見ると、すずかは大粒の涙を流してただひたすら『ごめんなさい』と呟いていた。

「う・・・そ?本当なの?すずか、何とか言ってよ!?」
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・・・ご・・・めん・・・な・・さい・・・・・・」
「あはははは!?滑稽だね!?君は今までその子を化物と知らずに友達だと「うるさい!?」・・・何?」

氷村の笑い声をアリサの恫喝が遮る。

「だから何!?すずかはすずかでしょう!?吸血鬼だの人間だの関係ない!?わたしはすずかの友達よ!?そこに何の変りもない!?」

断言した。

誘拐された恐怖は忘れてはいない。目の前の大人たちも怖い。突然知らされたすずかの正体に動揺もしている。

しかし、それでも彼女は言い切った。

私たちは『友達』だと。

「あははははははは!?いやー儚い友情だね!?でも、そっちの小僧の方はどう「ふふ、ふははははははははははははははははは!!」」

龍一は笑った。

大笑いだ。

それに二人は驚いた。

転入してから龍一は笑うどころか、大声を発することもなかったのだから。

「どうしたんだ小僧?とうとう壊れたか?」
「ただ滑稽だと思っただけだよ」
「なに?」
「吸血鬼・・・吸血鬼ね。ただ人間離れした人間風情が、その程度(、、、、)で化物を自称するのが滑稽だと言ったんだよ」
「貴様!?僕たち神に選ばれし『夜の一族』が下等な人間と同じだと言いたいのか!?」

激昂した氷村は部下に命じ、黒服の男の一人が龍一に銃を突きつける。

「ああ。そうだよ。貴様ら程度が吸血鬼を、化物(ミディアン)を名乗るなどおこがましいよ」

それが龍一の考えだ。

実際、『夜の一族』とは特異遺伝体質の人間というのが、魔法業界では一般的な常識だ。

本物の化物や吸血鬼はこんなものではない。

英国のアーカードなどのような真祖の吸血鬼は言わずもがなであるし、父の古巣にも化物のような人間から『妖怪』と言う本物の化物までいたのだ。

そんな存在に、幼いころから接してきた龍一にとって、すずかのような存在など、一般人と大差はない。

「もういい。やれ」

ドン!!

銃声が鳴り響き、放たれた弾丸が龍一の胸に直撃する。

あまりもの衝撃に龍一は吹っ飛んでしまった。

「「キャ――――――――――!!」」
「ったく。下等種の癖して生意気言うからだよ。オイ!!」
「はい!!」
「そこの金髪の女も始末しろ」
「はい!!」

今度はアリサに銃口が向けられる。

「ひっ!?」
「ヤメテ――――――!!」

そして銃の引き金が引かれる・・・・。

ガキッ!!

ことはなかった。

「な!?」

よく見ると、銃のトリガーの内側に、一本の杭のようなものが入り込んでいて、銃が撃てなくなっていた。

「そっちがその気なら、こっちも手加減はしない」
「「「「「!?」」」」」

全員が驚いて声の方を見る。

すると、そこには左手首を抑え、右手の指に挟むように4本の杭のようなものを構える龍一がいた。

「な!?どうやって縄を・・いや、どうして撃たれて死んでない!?」
「手首の関節を外しての縄抜けなんて基本中の基本だろ?どうして死んでないかは・・・まあ気合だ」
「他にも理由あるだろう!?」

実際のところは、とっさに父から教わった気功術を使ったのである。

気功術とは、中国武術のような『気』を用いて行われる3つの業の事である。

それは『瞬動』『外功』『内功』の3つである。『瞬動』は文字通り『ネギま!』に登場する高速歩法。『外功』は『ワンピース』の武装色の覇気のように物理的威力を高めたり、鎧のように纏ったりして耐久力を上げたりするもの。『内功』は体内の気の流れを活性化させて、感覚や身体能力を高めたりすることである。

勿論、この業は魔力でも十分に代用できる。

さっきは、撃たれた瞬間に外功で弾丸を受け止め、内功で衝撃を受けたところを治癒したのである。

余談だが、銃剣神父の『再生(リジェネレーション)』は、外的措置によって、内功の力を極限まで引き出し、その上から回復魔法を重ね掛けしているのである。

龍一は外した左手首を戻し、左手にも右手と同じものを構える。

「何をぐずぐずしている!?全員打ち殺せ!?」
「いいんですか!?」
「構わん!?つべこべ言わずにやれ!?」

今度は全員が銃弾の雨霰と打ち込んでくる。

「させるか!?」

だが、龍一が瞬動で二人の前に移動し・・・・。

「速記九字!!」

右手で横に5本、縦に4本の線を空中に書く。

すると、空中に書かれた陣が広がり、弾丸を受け止めた。

速記九字は『東京レイヴン』で出てきたの技で、陰陽術の防御技である九字を簡略化したものである。

本当は『臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前』と唱えながら、一本ずつ線を引くのが正しい手順なのだが、これは上級者向けの技法であるが、龍一なら軽くこなせるのである

「はっ!!」
「ぐあっ!!」
「あぐっ!!」

龍一は手に持っている杭を投擲し、男たちの腕や肩に命中させ、銃を落としていく。

そして、瞬動で近づき、男たちを内功と外功で強化して殴り飛ばしたり、逆に殴り掛かってきたものは投げ飛ばして別の男に叩き付けた。

そして、黒服全員が戦闘不能になると・・・。

「所詮、金で雇った劣等種か・・・使えんな」
「残りはお前だけだ」
「ふん!!誰が僕だけだって?」

そう言うと氷村が指を鳴らし、奥から同じ顔をした複数の女性出てきた。

「っ!?そんな!?あれって!?」
「月村、知っているのか?」
「あれは全部自動人形っていう、ロボットみたいなものよ!!」
「そうだよ!!僕たち『夜の一族』の遺産さ!!これだけの自動人形を前に貴様になすすべなどないね!!」

勝ち誇った笑みを浮かべる氷村。

「お願い、逃げて!!」
「龍一!!」

泣きそうな顔を浮かべる2人。

「くだらねえ!!」

龍一は新たに取り出した杭を部屋の至るところに向かって投げだす。

「はっ!!どこを狙っている!!」

氷村があざ笑うが気付いていない。

ここからが結界魔導師(、、、、、)守宮龍一の本気だということに。

「『nudus ara, sere nudus(裸で耕せ、裸で種を蒔け)』」

龍一が詠唱をすると杭が輝き出し、自動人形が動きを止める。

「な!?おい、どうしたんだ!?動け!?」
「もうこの部屋にいる自動人形は動かないよ」
「貴様!?何をした!?」
「『いにしえの世に帰れ(リターン・トゥ・メディーバル・スタイル)』それがこの結界の名前さ。この部屋に結界を張らせてらった。結界内にいる間は、すべての高度文明の発明品は使えない。電子機器は持ち論、火薬さえもだ」

いにしえの世に帰れ(リターン・トゥ・メディーバル・スタイル)』とは『カンピオーネ』に登場する能力であり、本来は島一体を包み込むほどの大規模な能力だが、彼の魔力ではでかくても建物一分が精一杯である。

「そんなバカなことがあるか!?何をしているんだ!?さっさとあの餓鬼を始末しろ!?」

氷村が喚く中、また杭が彼に向かって飛んでいき、肩や膝に命中する。

「がっ!?」

崩れ落ちた氷村は後ずさりする。

「く、来るな!?来るな!?」
「どうしたよ吸血鬼?化物なんだろ?まだ肩や膝に杭が刺さっただけじゃないか。かかってこい。使い魔たちを出せ!!体を変化させろ!!腕を再構築して反撃しろ!!お楽しみはこれからだ!!ハリーハリー!!ハリーハリーハリー!!」
「ば、化物め!?」

そう言って氷村は逃げようとするが。

「チッ、三下が。落とせ『蚊帳吊り狸』」

逃げようとする氷村の足元から、蚊帳が出現し、男を包み込むとそのまま消えてしまった。

『蚊帳吊り狸』とは『ほうかご百物語』に登場する狸の妖怪が使ってた技で、相手を蚊帳で覆われた異空間に閉じ込めるものである。

脱出するには丹田に気を込めて、蚊帳を36枚くぐらなければいけないので、方法を知らない彼には脱出はできないだろう。

「ふう。大丈夫かい?二人とも」
「龍一、あんたは一体?」
「龍一くん?」
「僕かい?月村が可愛い吸血鬼(ドラキュリーナ)なら、僕はしがない魔法使いだよ」

その時、倉庫の扉が開き、誰かが入ってきた。
 
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