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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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初戦

 
前書き
BOB初戦、久しぶりの戦闘描写です!! 

 
少女に問い詰められること数分後、シオンたちは今、試合開始の時間を待っている。少女は先程のことを根に持っているのかまだご機嫌斜めの模様。
ボックス席で向かい同士に座るキリトと少女は気まずい雰囲気にあった。

「なぁ、いい加減許してやってくれないか?何も言わなかったのは謝る、だがお前が勘違いしていたのにも非はある。ここはおあいこということでこの場を修めてくれないか?」

シオンの言葉に少女はピクリと反応し、少し考えた後シオンの方に視線を向けた。。

「・・・解ったわ」

「ありがとう、それでBOBの基本ルールについて聞きたいんだが・・・」

「わかった、まず・・・」

その後の少女の説明だと、カウントダウンがゼロになるとエントリー者は全員どこかにいる予選一回戦の相手と二人だけのバトルフィールドに自動転送される。
フィールドは1km四方の正方形、地形や天候、時間はランダムで決められ、最低500m離れた場所からスタートし、決着したら勝者は現在いる待機エリアに、敗者は一階ホールに転送される。負けても武装のランダムドロップはなし。勝ったとして、その時点で次の対戦相手の試合が終わっていればすぐに二回戦がスタート。終わっていなければそれまで待機。
キリトたちFブロック、シオンのEブロックは64人なので五回勝てば決勝進出で本大会の出場権が得られるということだ。

『五回、か・・・。結構多いな・・・』

「これ以上の説明はしないし、質問も受け付けない」

「わかった、ありがとう。つまり・・・」

シオンは待機エリアで待つプレイヤーを眺めながら言った。

「ここにいる奴らを叩き潰せばいいってことだな」

「ッ!!」

シオンの言葉に少女は身を奮わせた。
ここまでの殺気を感じたのは久しぶりである。少なくともこの前対戦したベヒモスよりも上だと彼女は感じていた。
しかしその感じはすぐに収まり、少女はその殺気が何だったのか分からなかった。

「BOBはそこまで甘くないわよ」

「別に過小視している訳じゃない、だが分かる。おそらく、この中で銃をストレージから出しているヤツらは、おそらくは予選落ちすると考えている」

「それは何故?」

「お前も解っているはずだろ?待機エリアだってのに自分の武器(獲物)を見せびらかすのは馬鹿のすることか、よほど強いヤツの2択だ。そうだな、アイツを見てみろ」

そう言ってシオンが指差したのは彼らと同じボックス席で話している迷彩の筋肉質な男性プレイヤー。

「アイツは見た感じ、重装備で攻守ともに優れているように見える。だが実際は重量の負荷がかかり、スピードが落ちる。対して、そうだな・・・」

シオンはまた違うプレイヤーを指差す。その先にいたのは銀の髪を腰まで伸ばした女性プレイヤーだった。
ローブを着てはいるが、決して自分の武器を晒しているわけではない。

「あのプレイヤーは自分のスタイルをあまり見せないようにしている。少なくとも、初戦から対策されることはないだろう。お前は既に理解しているはずだ。『メインアームを晒しているお調子者は、どうぞ対策してくださいと言っているような大馬鹿だ』って」

「ッ!!」

まるで自分の心を見透かされたような気分になった少女は息が詰まるような感じになった。
シオンは微笑をすると、ネームカードを少女に送った。

「この借りは本選で返す、だから必ず上がってこい」

シオンの言葉に少女はピクリと眉間にシワが寄った。少女は立ち上がり、言い放った。

「上等よ。貴方こそ、本選まで生き残りなさい!最後にもうひとつだけ教えてあげるわ」

「ほう、それは?」

「“敗北を告げる弾丸の味”・・・」

『敗北、ねぇ・・・』

シオンは少女の言葉を聞いた後、「覚えておく」とだけ言ってシオンは視線を少女から逸らしながら思った。

『生憎、敗北の味は知り尽くてるんでね・・・。失った辛さの味もな・・・』

「一応名乗っておくわ。それが、いつかあなたたちを倒す者の名前」

シオンとキリトの目下に少女のキャラネームが表示された。キャラネームは【Sinon】───

『シノン・・・』

「俺はシオンだ。お手柔らかに頼む」

シノンはシオンの自己紹介の後に差し出した右手を無視してそっぽを向いた。何か話そうとしたがシオンはそれをやめた。
残り時間が5分となったところでシオンたちのいるボックス席に一直線に向かってくる人物があった。銀褐色の長髪を垂らした迷彩の男性プレイヤーはシオンよりも少しだけ背が高く、肩にはアサルトライフルをぶら下げている。

「やあ、遅かったね、シノン。遅刻するんじゃないかと思って心配したよ」

「こんにちは、シュピーゲル。ちょっと予想外の用事で時間取られちゃって」

どうやらこのシュピーゲルという人物はシノンの知り合いらしく、シノンは柔らかい表情を浮かべた。

「そうなんだ。それで予想外の用事って?」

「ああ、ちょっと、そこのヒトたちをここまで案内したりとか・・・」

シノンは冷たい視線をキリトたちに向けられキリトとシオンは顔を見合わせてから苦笑する。

「どーも、そこのヒトです」

「あ、えーと・・・、シノンのお友達さん、かな?」

「シュピーゲルだったか?勘違いしているようだがコイツは男だ」

「えっ」

シオンの言葉にシュピーゲルは目を丸くする。

「あー、キリトと言います。男です」

「俺はシオンだ、シノンには武装に関してアドバイスをしてもらった」

「そ、そうなんだ・・・」

「ちょっとやめて、私はアドバイスなんてしてないでしょ。自分で選んだくせに・・・」

「そんなわけだ、お前の仲間が世話になった。感謝する」

シオンはシュピーゲルに礼を言い、立ち上がった。

「さて、そろそろかな」

『大変長らくお待たせしました。ただ今より、第三回バレット・オブ・バレッツ予選トーナメントを開始いします。エントリーされたプレイヤーの皆様は、カウントダウン終了後に、予選第一回戦のフィールドマップに自動転送されます。幸運をお祈りします』

アナウンスの声がドーム内に響き渡ると盛大な拍手と歓声、そして銃声が沸き起こった。

「本選まで上がってくるのよ。こんなところで負けたら許さないんだから」

「その言葉、そっくりそのまま返すよ」

シノンの言葉にシオンは少し挑発的な口調で返す。

「こ、このッ・・・!」

20秒のカウントダウンを背にシオンはニヤリと不適な笑みを浮かべる。
その笑みは明らかにこの状況を楽しんでいるものだった。

「さぁ、始めようか。BOB(バレット・オブ・バレッツ)、硝煙と弾丸の輪舞を!!」

シオンがそう言い放った直後カウントダウンがゼロになり、エントリーしたプレイヤーが次々と自動転送されていった。
僅かに敵意のある視線を感じとりながら───

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

転送されたのは真っ暗な空間にポツンと浮かぶ六角形のパネルの上だった。
目の前にはホロウインドウがあり、上部には【Shion VS Chris】と表示されている。クリスと読むそのプレイヤーに俺は覚えがなく、まったくの初対面のプレイヤーである。
ウインドウの下部には【準備時間:残り58秒 フィールド:廃れた市街地】と書かれている。右手でメニューを呼び出し、装備ウインドウから《コルトガバメント》と《M945》をセットし、更にショップで購入した《あるもの》を装備して装備忘れがないことを確認し、メニューを閉じた。

俺はふとシノンの表情を思い浮かべる。
武装を選んでいるときの真剣な顔をするかと思えば、バギーに乗ったときのように子供っぽい笑顔も見せる。その表情はどこか昔のエリーに似ていた。彼女もまたエリーと同じく繊細な人物なのかもしれない。
しかし、だからこそ俺は危機感を覚えていた。繊細というのは完璧を求めるゆえに故に壊れやすい、昔のエリーはまさにその状態になったことがあり、ツバキが居なくなってしばらくは自暴自棄になっていたほどだ。
彼女ももしかすると・・・

『あの子のように・・・』

俺は以前助けた朝田詩乃という少女を思い出す。

『いや、考えすぎか・・・』

俺は首を横に振り、再びホロウインドウを見る。準備時間は残り15秒。
俺は今回依頼にあった死銃について頭の中で確認した。菊岡から渡された音声メッセージだと、金属が軋むような機械的な声だった。
あんな声ならすぐに見つかりそうだが、そこまで相手も馬鹿ではないだろう。おそらく多数のアバターを使い分けいるのだろう。

「まあ、考えても仕方ないか・・・。答えは、コイツ()が教えてくれる」

俺は閉じていた瞼を開けるとカウントダウンがゼロになった。俺の体は転送エフェクトに包まれ、フィールドへと転送された───

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

次に転送されたのはさびれたビルの中だった。窓ガラスは割れ、壁には弾痕が付いている。外を覗いてみると自分は現在三階建てのビルの二階にいることを確認する。
最低500m離れた位地からスタートしているので自分と相手との差はまだ数百メートルだと確認した後、再び近くの柱に身を潜める。
シューティングゲームの景品として手に入れたシューティンググラスの縁に触れる。ゲームの後に確認したのだが、どうやらこのシューティンググラスはスコープのように遠くのものを見ることができる機能が備わっているようでスコープまではいかないが、遠視のスキルよりは遠くが見えるらしい。

「さて、どこから来るか・・・」

俺はビルを降りてフィールドの路地に出ようとした次の瞬間、左肩に赤い光線がロックされる。

「ッ!!」

俺はすぐにその位地から離脱した次の瞬間、俺がいた場所には複数の弾丸が通過した。俺は弾丸が飛んできた先を見た。そこには特殊部隊の格好を扮したプレイヤーがそこにいた。

「アイツか・・・」

俺の視線の先にいる特殊部隊の格好をしたプレイヤーこそ今回の対戦相手、クリスだと認識すると向かいのビルに隠れた。

『さっきのが《弾道予測線》・・・、今のは避けられてラッキーだったな・・・』

俺は先程クリスのいた場所を確認するが、そこには既にクリスはおらず移動したのだと確認した。

『どう攻める・・・。相手が持っていたのはアサルトライフル、となると相手は近・中距離タイプ。しかもこのフィールドは障害物が多い故に死角が多い、下手に動けば蜂の巣だ・・・』

俺は今ある知識で戦略を考える。するとある一つの考えに行き着いた。

『アレなら、殺れるか・・・』

正直考えている時間はない。今できることをやるしかない!

『それならまずは・・・』

俺はビルの階段を駆け上がり最上階まで来ると柱を背にして呼吸を整える。目を閉じて全神経を研ぎ澄ます。不意に吹く風、それによって舞い上がる砂煙、自分の息づかい、心音、全てが聞こえてくる。
両手に握られた二丁の銃は冷たく、買った時よりも重く感じた。それは弾を込めたからではなく、自分にのし掛かる重圧だった。
この感覚は久々だ、SAOで感じた時の同じ重圧。命をかけた戦いをするときにいつも感じていた重圧。

『久しぶりだよ、こんなの・・・。だからこそ・・・』

俺の感覚は研ぎ澄まされる。そして俺のギアは完全に戦闘モードに切り替わった。
そして次の瞬間、俺は隣のビルで僅かに動く影を捉えた。

「そこかッ・・・!!」

俺はビルの割れた窓から勢いよく飛び出す、ビルとビルとの間は数十メートル。相手は不意を突かれ急いでこちらに銃口を向ける。赤い弾道予測線は俺の額と左足を捉えていた。
放たれる弾丸、俺はその二発をかわすと、コルトガバメントの銃口をクリスに向けた放った弾丸はクリスの持つアサルトライフルの銃口を貫き、破壊する。

「何ッ!?」

「チェックメイトだ・・・!」

俺はクリスの背後に着地し後方からヘッドショットを決めた。
クリスは糸の切れた操り人形のごとく倒れ、ポリゴン片となって拡散した。
コングラチュレーションの表示が浮かび上がったところで俺はようやく長い溜め息をついた。

「あ゛ぁぁぁぁ・・・。なんとか勝ったぁ~・・・」

俺は銃をホルスターに収めると、首をコキコキと鳴らす。
久しぶりに緊張感のあった戦いだったためか、神経がもう悲鳴をあげていた。

「こんなのがあと四回もあると思うとしんどいな・・・」

俺は苦笑を浮かべて転送エフェクトに包まれ、待機エリアへと転送された。
懐かしい感覚を噛み締めながら───
 
 

 
後書き
久しぶりの戦闘描写、いかがだったでしょうか?
前回でもお見せしたシオンの射撃、これが勝利の鍵となるのか?
今後の展開をお楽しみに!!

コメント待ってます!
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ 
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