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バカとテストと白銀(ぎん)の姫君

作者:相模
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騒がしい春の協奏曲
第一章 小問集合(order a la carte)
  第七話 完璧な聖女の家へ

 
前書き
早く雪ちゃんや薫子さんを登場させてあげたいのですが……
時期的に対A戦が終わってからの登場ですね
エピソードを大幅に加筆する必要に迫られるこの頃。

 

 
第七話
僕は午前中と同じように午後も補充試験の続行していた。
結局西村先生から「止め」の指示がでるまで合わせて200枚ぐらいのプリントと格闘していたんじゃないだろうか。
なぜ時間無制限のテストで止めの指示を出したのかと西村先生に尋ねようとしたら呆れた顔をして時計を指差された。
その針が五時半を示しているのを見て当然かと得心がいった。
校則で「延長届けを出しているクラブのクラブ員以外の最終下校時間」と五時半は定められているのだ。
生徒指導も務める西村先生にとっては校則を破らないですむ時間ぎりぎりまでやらしてくれていたのだ。
かなりの時間付き合って頂いた西村先生にお礼を言い、自分の荷物を取りにFの教室に戻るとまだ明かりが点いていた。
教室の扉を開いてみると、姫路さんや島田さんも含めた仲良くしてもらっているいつもの六人はトランプに興じていた。
もうすぐ五時半を過ぎるというのに何だって残っているのだろう。
「お疲れじゃったの、お主を待とうと思っておったらこうなっておっての。」
「そうだったのですか…ありがとうございます。」
「まぁ、明久がそういう風に頑固に主張してな。疲れた顔の妃宮さんが見たいって、なぁ?」
「雄二、本人の前でばらすなんて酷くないかなそれは。」
あはははと乾いた笑いを飛ばす吉井、この人は本当にバカなのか、それとも限りなく優しい人なのか。
(よくわからない、こんな種類の人を見たことがないからってだけじゃない)
「それでさ、千早。どうだった?」
「よくできた方だと思いますよ。」
「すごい…僕もそう言う風に一度言い切ってみたいよ……」
羨ましそうに僕のことを見つめる吉井、きらきらした目で見つめてくるのが少し気持ちが悪いが、そのこと以上に女子二人組からの絶対零度の目線が凍傷を負ってしまったように痛い。
「んじゃ、参謀が戻ってきたことだ。ちょっくら次の作戦会議でもしとくか。」
「今からでは時間が遅すぎはしませんか。」
のんきなことを言っている代表殿に諫言を呈する。
「そうじゃの、これから誰かの家でする、というのはどうじゃ?」
「そうだとすると、明久の家になるだろうな……、明久いけるか?」
吉井のマンションはファミリー向けのマンションらしいので、僕の所の方より広くて良い……らしい。
「いや、ちょっと…昨日から水道が止まってて……」
その言葉に思わず生唾を飲んでしまった。
(そんなことって現実に有るんですね……)
カルチャーショックを受けている僕と違って代表はさらりと流していた。後で聞いたところによると電気も止められたことがあるらしい。
さすがに公共サービスを止められるのは人としてどうなのでしょう。

「私の家はお父さんたちがいるからだめだと思います。」
「俺のところもそうだな。」
「ウチのとこもそうね。」
「………同じく。」
やっぱりこんな時間から集まれる場所は……
「…そう言えば、千早はアパートに妹と二人暮らしだって言ってなかったけ。」
「そうですね、みなさんを招いてもいいか、同居人の許可が得られましたなら来ていただいても何ら問題は有りませんよ。」
僕の所ぐらいだろうな。
「いいのか妃宮は、妹ってことは女二人の家だろ?」
いえ、僕は男です。
とも言うことはできず、強ばりそうになる顔を必死に笑顔で覆う。
「作戦会議をするのですよね?私もなるべく皆様のお役に立てればと思っておりますので。」
「いやいや、お主は既に先の戦の功労者じゃろ。」
「……謙遜しすぎ」
「まぁ、分かった。んじゃ参謀、確認してくれないか?」
「承知いたしました。」
一礼して僕は教室をまた出た。
ここ文月学園の教室は全般的に防音性に優れている。
それは例え我がオンボロ教室も例外ではない。(つまり壁だけは立派)
電話での口調が男言葉に戻してしまっても級友たちには聞かれないだろう。
携帯に表示される時計をもう一度見る、恐らく史の方が先に帰っているだろう。
部活動をしているかもしれないが、家に電話をかけてもし出ないようなら、メールでお客さんが来ることを伝えておけば大丈夫だろう。
「…………もしもし、史?」




「はぁ~、妃宮さんって完璧だよね。」
妃宮さんが消えていった扉の方をぼうっと眺めながら僕はつぶやいた。
「そうじゃの、優秀な成績、新しい環境への適応力、品行方正な態度。どれをとっても一流じゃからの。」
「その上、胸あるし……」
「あんなに細いなんて考えられません……」
「まぁ、優雅さってのは家柄だろうな。妃宮ってことは臣籍降下とかじゃなきゃ名乗れないからな。」
みんなもそう思ってるんだなぁ、と思っているとそういえばムッツリーニが発言していないことに気づいた。
「ムッツリーニはどう思う?妃宮さんのこと。」
「……パンチラが無いのが致命的な減点」
やはり究極のエロスを追い求めるだけある彼らしい発言だ。
「なんだかさ、僕らとは次元が違うというか。もう完璧すぎて手出し出来ない存在なんだよね。」
それを聞いていた雄二がにやりとしていた気がした。
なんだろう、気持ち悪いものを見てしまった気がする。
「明久よ、次元が違うとはどういうことじゃ?」
秀吉に尋ねられた僕は、少し考えながら答えた。
「うーん……、ほら完成した絵とかさ。何か書き加えたら汚くなるじゃんか。そんな感じでこれ以上は無いって感じで……、こう付け加えられないぐらい完璧で…本当に聖女っていうのかな。完璧な感じで僕たちとは全然違って…気になるというか……」
「気になるってそれはどういうことですか、吉井君!!」
「そうよ、どういうことなのよ吉井!!」
急かされながら僕は何となく思っていたことを言葉にしようと懸命に頭を働かせる。
「……そうじゃの、確かに妃宮は……」
そう言う秀吉は何か別のことを考えながら結論づけるようにまと…「あの、私がどうか致しましたか?」
「ええぇえぇ?!な、な何でも無いよ?」
ちょうどご本人が電話を終えて部屋に戻ってきた。
「明久…、お前それだと隠し事があるって言ってるもんだろ。」
ため息混じりに雄二に突っ込まれる。
「まぁ、お前にとって悪い話はしてないとは言っておく。」
「……そうなのですか?」
困ったような顔で僕らを見回していた妃宮さんは、やがてやれやれと言った感じで腰に手をあてた。
その一挙一動が優雅で、思わず見とれそうになったとき、隣の島田さんに膝を抓られた。
「同居人の許可は得られましたのですぐにお越しに成りますか?」
「あぁ、そうだな。今から行って一時間ぐらいご厄介に成ろうか。それぐらいでいいよな?」
それにしても。
「勿論ですよ、……あの吉井君どうかなさいましたか?」
「ん?明久、お前もそれぐらいで良いよな。」
「えっ?あぁごめんごめん、うん、それぐらいで良いよ。ありがとうね、妃宮さん。」
「これぐらいお安いご用です。皆さんのお役に立てて光栄ですよ。」
そう言いながら悠然としている妃宮さんはもはや神々(こうごう)しくすら見える。
「そういや、雄二と千早さんは何時の間にそんなに仲良く成ったんですか?知り合って間も殆どないのに、二人の距離がそんなに近いなんて羨ましいですよ。」
そういって雄二と妃宮さんを見比べる姫路さんは心なしか頬が赤く染まっていた。
あぁ、やっぱり姫路さんは雄二のことが……
ということは、昨日僕が見ちゃった手紙の相手は雄二なんだよね…
「どういう意味で言っていらっしゃるのかは敢えて聞きませんが……そうですね、代表には約束していただいたのです。その約束の履行を促す一環として、でしょうか。」
少し間が置いてから、いつもの柔らかい微笑みを混ぜながら妃宮さんが答える。
「何を約束したんだ雄二」
(ガスっ)
思わず反射的に雄二(バカ)に殴りかかってしまった。
こいつめ、姫路さんだけでなく妃宮さんまで誑かしていたのかぁ!
許さない許せない恨めしい羨ましいはこんにゃろうコロしてやる!!
「お前には関係ない事だ。」
(バキっ)
殴り返された、理不尽だ。こんなことが合ってもいいのだろうか。いやよくない。こうなりゃ徹底的に……
「ほら吉井、さっさと千早の家に行くわよ。」
島田さんに関節技を決められながら引きずり立たされる。
「では、参りましょうか。」
そういって妃宮さんは困ったような笑顔を浮かべながら僕らを先導してくれた。


そういえば下足箱で妃宮さんが固まっていたけれど何だったんだろう。
まぁ僕には関係ないか。






講義2
妃宮「今回は関西圏のとある大学の二次試験の問題を何回か解説するようにとの事なので、早速ですが始めたいと思います。」

早速ですが、始めたいと思います。

問題は次のようなものです

第一問
整数、a,b,c,d,pについて次のような条件が成り立っている。
a≦b≦c≦d ―①pは3以上の素数―②
a+b+c+d=0 ―③
ad-bc+p=0 ―④
この時、a,b,c,dをpを用いて表せ。

まず①、③より0=a+b+c+d≦4aですから、a≧0が成り立ちます。
また同様にd≦0が成立することが分かりますね。
文字が沢山出てきた場合は、文字を消去することで考えやすくなります。
今回はdを消去してみましょう。
③からd=-(a+b+c) ー⑤となります、これを④に代入しましょう。
-a(a+b+c)-bc+p=0
(a+b)(a+c)=p
pは素数であるのと①の性質から(a+b),(a+c)の組み合わせは次の二通りになります。
(a+b,a+c)=(p,1)、(-1,-p)
(a+b,a+c)=(-1,-p)だとすると
b=-1-a c=-p-a
⑤に代入すると、d=-(a+b+c)=-(-p-a-1)≧0となる。
これは先ほどのdの条件に矛盾するので不適だと判断できるので、(a+b,a+c)=(p,1)となります。
それぞれをaで表すと次のようになります。
b=p-a c=1-a d=a-p-1
①に代入しますと次の式が出てきます。
p/2≦a≦p/2+1
aは整数なので
a= (p+1)/2 
だと解ります。
これを先ほどの条件式に代入しますと次の関係式を得られます。
(a,b,c,d)=((p+1)/2,(p-1)/2 ,(1-p)/2,-(p+1)/2)  
 

 
後書き
Fクラス参謀、妃宮千早さんへ
試召戦争のことでどうしても相談したいことがある。
迷惑だとは思うけど明日の朝、HRが始まる40分前に旧校舎二階の和室に来て欲しい。
私が直接行くと目立つし、千早さんの周りも注意深く見られてる。
根本にこのことがバレると私にとっては不味いことが起こるから内密にしといて、お願い。損はさせないから。
Cクラス代表 小山友香 
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