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ロックマンX~5つの希望~

作者:setuna
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第二十六話 Cooking Panic

 
前書き
エックス達が調理します。 

 
イレギュラーハンターとなり、エックスにビシバシと扱かれ、クタクタとなっていたアクセルはテーブルに並ぶ料理を口に運んだ。

アクセル「うわ、美味しい。ルインって料理も出来るんだね、戦闘型なのに」

ルイン「あ、それエックスが作ったんだよ?」

アクセル「え…?」

信じられず、アクセルはこっそりと厨房を覗き込む。

エックス「圧力鍋の用意急げ!!君は食材を刻んで、君は…」

部下にテキパキと指示を飛ばすエプロン姿のエックスの姿があった。

アクセル「ねえ、ゼロ。第17番精鋭部隊って…お料理部隊だったっけ……?」

ゼロ「いや、イレギュラーハンターきっての戦闘の腕利きが集まる最強部隊なんだが…」

ゼロはフルーツジュースを一口飲む。
ちなみにこのフルーツジュースを作ったのはエックスではなくビートブードだったが、これがまた嘘のように美味い。
だがそれもフリルがついたピンク色のエプロンをつけたビートブードの視覚精神攻撃によって相殺されてしまい、結果、普通のフルーツジュースになってしまっていた。
実にもったいないと言えよう(失礼)。

ルイン「エックスのお兄ちゃんとお姉ちゃんは家庭用ロボットだからねえ」

アクセル「エックスってお兄ちゃんとお姉ちゃんがいるの?」

ルイン「そうだよ。100年前に亡くなったんだけど…」

アイリス「エックスのお料理も美味しいけれど、ルインのも美味しいわよ?」

ルイン「アイリスには敵わないよ~」

ゼロ「俺はアイリスの料理が1番美味いと思うが?」

アイリス「ゼロ…」

見つめ合う両者。

ルナ「なあ」

全員【?】

ルナ「前々からやってみたいと思ってたんだ。一度全員、調理の技術を上げた方が良いと、思ってさ」

エイリア「簡単に言えば…全員の料理の腕を振る舞えってこと?」

ルナ「そういうこと。」

ゲイト「なるほど、確かにそれは興味深い」

何故かいるゲイトも頷きながら賛同する。

アクセル「ルナは料理出来るの?」

ルナ「当たり前、じいさん直伝の腕を見せてやる。」

ゼロ「(じいさん…女神か…女神直伝ということはまさに神懸かりか…)」

少し興味が沸いてきたゼロ。
全員が厨房に向かう。



































最初に出て来たのはゲイトである。
ゲイトが作ったらしい、料理らしき物。
赤紫色の何かが皿の上で踊っている。

ゼロ「何だこれは?」

ゲイト「ふっふっふっ…あらゆる栄養素とナイトメアウィルスを改良した物を合わせた特別の秘薬…げぶぅっ!?」

直後にゼロ(強化形態)、エックス(グライドアーマー&レイジングエクスチャージ)、ルイン(オーバードライブ)、ルナ(イグニス)、アクセルの鉄拳がゲイトを黙らせた。




































次に、ルナが厨房から出て来る。
ルナが大量の料理を運んで来た。
テーブルに1つ、また1つと並べられていく。

ルナ「イタリア料理のフルコースだぜ」

呆然とする一同。
開いた口がふさがらないとは正にこのことだ。
最初に復活したゼロが一口食べる。

ゼロ「美味いな…」

それを聞いて皆が次々口に運ぶ。
それぞれから美味しいと称讃の声が聞こえる。

ルナ「へへ~ん。俺はじいさんから料理を習ったんだ。このくらい当然だぜ」

えへんと、勝ち誇るルナ。
だがしかし。

ルイン「普通のハンターベースの食事にはフルコースは出ないよ…?」

ルインの言葉にルナも気づいてはっとなる。

ルナ「わりぃ、つい張り切って作っちまった」

落ち込むルナにアクセルは慌てる。

アクセル「別に責めてる訳じゃないんだしさ。そんな顔しないでよ。これスッゴく美味しいよ?」

アイリス「本当、凄く美味しいわ」

ゼロ「アクセルやアイリスが言うんだ、間違いない」

エックス「俺もこんな豪華な料理は初めて食べたよ」

シグナス「うむ、見事だ」

アクセル、アイリス、ゼロ、エックス、シグナスが言った。

ルナ「そうかな…」

エイリア「本当よ。だって凄く美味しいもの」

エイリアが断言すると、ルナの表情が喜びのそれに変わった。

ルナ「実はじいさん以外の人に食べてもらうの初めてなんだ、そう言ってもらえると嬉しい」




































次に出て来たのはゼロであった。

ゼロ「俺は、簡単な物しか作れんぞ…」

ゼロが出した料理はありふれたフルーツサンド。

アクセル「うわ、意外。ゼロって甘いもの駄目そうに見えたのに。」

ルイン「頂きま~す」

フルーツサンドを一口食べるルイン。
次第に満面の笑み。

エックス「クリームは甘さを控えているのかな?果物の酸味とよく合うな」

アイリス「美味しい。凄いわゼロ」

生クリームの控えめな甘さに果物の酸味が程良く効いて、更に甘さをしつこくない物にしていた。

ゼロ「こんなものでよかったらまた作ってやる。」



































次に出て来たのはアクセル。
出して来たのはチキンライスである。

ルナ「うめえや」

ゼロ「意外だな…」

チキンライスを一口食べて思わずルナは何の捻りも無い素直な感想を漏らす。
米がパラパラとほぐれており、ほど良くケチャップが絡んだケチャップライスとチキンは脂っこくなく香ばしい風味が広がる。

アクセル「驚いたでしょ?レッドアラートじゃあ、自分に出来ることは自分でやる方針だったからね」

だから割と何でも、一定のレベルまでは出来ると言ったアクセルの笑顔は、久々に見る少し大人びたそれだった。
ルインは何か慰めの言葉を言うべきか迷ったが、料理の感想を言う。

ルイン「これ凄く美味しいよ。一定のレベルなんてもんじゃないよ」

アクセル「へへ、まあね。次はルインだよ。頑張って」

ルイン「うん。任せて!!」

エックス「楽しみにしているよ」

厨房へと入っていくルインにエックス達は静かに待つ。



































ゼロ「遅いな…」

いくら手の込んだ料理でも遅すぎるような気がする。

ルイン「お待たせ~、ポークが見つからなくて時間かかっちゃった」

アクセル「いいよいいよ。ルインの家庭の味を食べたいし」

エイリア「美味しそうなロールキャベツね」

全員がロールキャベツを口に運んだ。

ぐちゃ…。

全員(ルイン除く)【(何だこれ…?)】

異様な歯ごたえに、全員の心が1つとなる。
ゴリッとしながらぐちゃっと。
それでいてふわっと、蕩けるような。
そんな味が口の中で広がる。
他の仲間も同じように、微妙な表情を浮かべていた。
ルナはゆっくりと……それでいてギラリとルインへ視線を移す。

ルナ「ルイン…何だこの歯ごたえは…?」

静かに、だが威圧感のあるその言葉に、思わずルインは怯む。
傍から見ればか弱い少女を睨む不良娘。
まったく持って危険爆発である。
ルインはルナの真意が分からず、ただおろおろと戸惑う。

ルイン「え?えと…何のこと?」

ルナ「何のこと?じゃない!!何だこの微妙MAXな歯ごたえはよ!!?キャベツは普通だ!!問題は肉だ!!ポークでもチキンでもないな!!一体何の肉を使った!!?変な物だったらプラズマサイクロン確定だ!!」

それでもロールキャベツを食べながら問い詰めるルナを、全員が止めに入る。
放つのがプラズマサイクロンだけなのは、一応彼女なりの気遣いだろうか?

ルイン「わ、私は確かにポークを使ったよ?信じてよ!!」

必死に言うルインに全員が頭を悩ませる。
嘘をつけない真っ直ぐな性格の彼女が嘘をついてるとは思わなかった。

ゼロ「なら、この微妙な歯ごたえは一体…?」

ゼロが呟いた直後にケイン博士がやってきた。

ルナ「あ、ケイン爺さん。どうしたんだ?」

ケイン「少しのう」

ケイン博士は厨房の冷蔵庫から肉の入った袋を取り出し、出ていこうとするが、ゼロに止められる。

ゼロ「待て爺、その肉は何だ?」

ルイン「あ、それロールキャベツに使った…」

ケイン「ん?ああ、この肉か?これはとある施設から送られた絶滅した生物のサンプルじゃよ」

ブハッ!!

その発言に全員が噴き出し、ある者は口元に手をやり、ある者は顔色を悪くし、ある者は無言でセイバーを取り出す。

エックス「何でそんなものを厨房の冷蔵庫に…」

ケイン「保存場所がなかったからのう、まあ、もし食べられてもレプリロイドじゃから死にはせんだろうと思って…」

ゼロ「爺、お前ちょっと来い!!」

ケイン博士をずるずる引きずって行くゼロ。
そんな彼を黙って見送る仲間達。




































しばらく引きずって離れたゼロは、ケイン博士と共にその辺の物陰に隠れた。

ゼロ「せい、はっ、とう!!龍炎刃!!三日月斬!!旋墜斬!!爆炎陣ーーーーッ!!!!」

ケイン「ギャアアアア!!?わしが何をしたと言うんじゃあああああ!!!!?」

物凄く手加減(多分)した歴代の技をケイン博士に浴びせたゼロ。

ホーネック「ケイン博士、この書類…って、何やってんですかゼロ隊長!!?」

ゼロ「真の力を…ん?何だお前か!!ちょうどいい、ホーネック。お前も手伝え!!」

ホーネック「ええ!!マジっすか!!?」

ゼロ「手伝え!!でないと…」

ホーネック「は、はいぃぃ!!」





































何やら気になる轟音に、一同閉口。
数分後、ゼロが今まで見せた事のない素晴らしい笑顔で戻ってきた。
ちょっといつもよりアーマーが紅いのは、きっと気のせいだろう。

エックス「ゼ、ゼロ…ケイン博士は?」

ゼロ「ああ、ちょっと用があると、どこかへ行ったぞ」

ルナ「…どこかって……どこだよ?」

彼女の呟きに、ゼロは答えなかった。
寧ろ全員にとって、はっきりとした事実を言い渡されなかっただけマシだろう。
ただ誰もが、心の中で星になったであろうケイン博士にさよならを告げていた。






































アクセル「何だか途中でわけ分かんなくなっちゃったけどエックス、頼んだよ」

色んな意味で衝撃をもたらしたロールキャベツの味を忘れたいがためにアクセルが最終兵器エックスを始動させた。

エックス「あ、ああ…分かった」






































しばらくして厨房から出て来たエックス。
エックスの料理はグラタンだった。
マカロニとエビの入ったものだ。

アクセル「うわあ…美味しそう」

まずはルナがフォークを伸ばす。

ルナ「火も通ってるし、クリームソースの出来もいい。いい仕事だぜエックス」

褒めるルナ。
エックスは嬉しそうに笑う。









































そしてアイリス。
しばらく後、出て来た彼女の手に乗っていたのは…。

ゼロ「サラダか?」

アクセル「なんて言うかさ…ちょっとヘルシー過ぎない?」

厨房を覗けば、他にも野菜ばかりが使われている。

ルナ「アイリスって菜食主義だったのか…意外」

アイリス「野菜ばかりだけど、栄養バランスはいいと思うんだけど…」

結果。

1位エックス

2位ルナ

3位アクセル

という結果になった。





































アクセル「はあ…」

屋上で夜空を眺めていたアクセル。
グラタンとサラダである程度は相殺したが、まだロールキャベツの衝撃が残っているのを感じた。
雲1つない快晴だったためか、美しい月が見えた。

アクセル「月が綺麗だなー…」

らしくないことを言っているのは分かってはいる。
しかし何となくそう思った。

アクセル「…………」

月を…正確には月の光を見ていると何故か高揚感が沸き上がって来る。
何故かは知らないが、力が漲るような感覚を覚えた。





































ルナ「久しぶりに屋上に行きますかっと」

たまには夜空を眺めるのも悪くない思い、屋上に出たルナが見たのは。

ルナ「アクセル?」

アクセルの姿だったが、どこか違う。
いつもの漆黒のアーマーは純白で、ボディの赤いラインと髪の色は紫に、変化していた。
そしていつもの翡翠色の瞳は血を思わせる紅へと変わっていた。

ルナ「アクセル!!?」

アクセル「…何?ルナ?」

次の瞬間にはアクセルは普段の姿になっていた。

ルナ「え?あれ…?」

目を擦ってもアクセルは黒いアーマーのままだ。

アクセル「何?どうしたの?」

尋ねて来るアクセルにルナは急いで首を横に振った。

ルナ「い、いや…何でもない…」

疲れているのだと自身に言い聞かせて、ルナは夜空を見上げた。 
 

 
後書き
久々にギャグ書けましたよ。 
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