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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第六話 ピアニストの入居その十一

「チーフシェフの小野鉄二です」
「はじめまして」
 皆挨拶を返した、当然僕も。
 そしてだ、僕は大家として皆を代表して小野さんに言った。
「いつも美味しい食事を有り難うございます」
「楽しんで頂いていますか」
「はい、とても」
 その通りだとだ、僕は小野さんに答えた。
「こんな美味しい料理他にないです」
「有り難きお言葉。ではこれからも」
「作って頂けるんですね」
「お任せ下さい、料理を作ることが」
 それこそが、というのだ。
「私の楽しみですから」
「だからですか」
「これからも作らせて頂きます」
「畑中様の好きなものはお料理なのです」
 畑中さんも僕に説明してくれた。
「そして走ることも」
「中学の時から陸上部でして」
 小野さんは僕にこのことも話してくれた。
「今も毎日仕事の合間には走っています」
「あっ、そうなんですか」
「実は私は朝食の後は。夕食まで暇でして」
「ああ、僕達がいないからですね」
「お弁当を作らせて頂いた後は」
「夕方まで、ですか」
「はい、時間がありますので」
 そしてその時間の間にというのだ。
「その間に走っています」
「そうされていたのですか」
「ただ、義和様にも入居されている方々にも」
 僕達にはとも言って来た小野さんだった。
「ご迷惑をおかけして頂かなければ」
「はいl、そのことはです」
 早百合先輩は畑中さんの言葉に落ち着いた声で答えた。
「弁えています」
「それは何よりです」
「ピアノは人を幸福にさせるものです」
 先輩はご自身のピアノへの信条も語った。
「決して。不幸にするものではありません」
「そのお考え故にですね」
「はい、許可を頂いた時間に」
 その時間にだけ、というのだ。
「演奏させて頂きます」
「それでは」
「これからも宜しくお願いします」
 こうしてだった、早百合先輩も八条荘の入居者となりピアノを演奏することになった、そうした話をしてだった。
 僕達はこの日はゆっくり休んだ、そして翌朝。
 まだ寝ている僕の耳に心地よい音が入って来た、それはピアノの音楽だった。その音楽を聴いて僕はすぐにわかった。
「早百合先輩の」
 ピアノの音だ、間違いなかった。
 そしてその音を聴いて目を覚ましてだ、それからだった。
 服を着替えて部屋を出て三階の渡り廊下のところから一階を見た、するとそこのピアノのところにだった。
 早百合先輩が私服で座っていて演奏していた、実に楽しそうに。
 その演奏を聴いているうちに僕も気がよくなった、そうしてだった。
 一階に降りてだ、そのうえで早百合先輩に声をかけた。
「先輩、おはようございます」
「おはようございます、義和様」
「あっ、様付けはいいです」
 僕は先輩にすぐにこう返した。
「他の呼び名でお願いします」
「そういえば大家さんとお呼びしてくれと」
「他の入居者にもお話していますので」
「ではこの呼び名で」
「はい、お願いします」
 こうしたやり取りをした、そしてだった。
 僕はここで早百合先輩の今の服装を見た、その私服は。
 白い優雅な感じのブラウスに青いロングスカートだ、その服でだった。
 演奏していた、そして手袋はというと。 
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