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トップアイドルからプロデューサーへ

作者:遊び人
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ちょっとした一日

 
前書き
なんとなく思いついたので書いてみました。面白くなかったらすいません… 

 
宣材も無事に撮り終わりアイドル達も心機一転頑張り始めた今日この頃。朝目を覚ますと誰かが給湯室にいるようで覗いてみると雪歩がいた。

「よぉ雪歩、速いな」
「ひ!は、春翔プロデューサー…お、おはようございます」

そう言いながらも俺との距離をしっかりと離す雪歩。雪歩は大の男性恐怖症で俺や赤羽根ですら距離を取りながら会話するのがやっとだったりする。

因みに俺に対する呼び方は春香、やよい、千早、あずさ、美希が春翔さん、響、雪歩、真、伊織が春翔プロデューサー、双海姉妹が春翔兄ちゃん、そして貴音が春翔殿に別れている。

「あ、あの、寝起きにコーヒーでもいかがですか?」
「そりゃ、嬉しいけど渡せるの?」
「うっ…が、頑張ります!」

そう言ってコーヒーを淹れ始める雪歩。完成してカップを手に持ち分速1メートル程の速度で近づいてくる。俺は慌てずこの場で待機だ。ここで動くと雪歩はとんでもない速度で俺から離れていく。

実はコレ、最近毎朝行っていることではあるが未だ一度も雪歩からコーヒーを手渡されたことはない。いつも決まって残り2メートルほどで雪歩がギブアップする。

「あ、あと少し…」

そう言いながらもやはり2メートルから距離が縮まらない。今日もここまでかな?と思っていると雪歩が一歩を踏み出した。これで新記録更新だ。

「ど、どうぞ…」

そして雪歩が腕を伸ばして俺にカップを渡してくれる。こちらも腕を伸ばせば届く距離だ。

「おぉ、ありがとよ」

これを手渡しと言っていいのかは疑問だがなんとか雪歩からカップを渡された。これ以上ストレスを与えないように俺は自分の席へと戻る。雪歩はまだ給湯室にいるようだ。

雪歩にもらったコーヒーを飲んでいると小鳥がやってきた。

「春翔さんおはようございます」
「おはようさん」
「そのコーヒー自分で淹れたんですか?」
「雪歩が淹れてくれた」
「雪歩ちゃんが!?本当ですか!?」

この驚きは至極当然だろうと思う。

「ああ」
「すごいですね」

小鳥が来ると他のメンバーも徐々に集まるようになってくる。オーディションを受けるかレッスンをする以外は基本的に仕事がないので事務所に勢ぞろいしている。たまに仕事もあるのだが。

「ねーねー春翔兄ちゃん、亜美達暇だよぉ」
「つまらないよぉ」

などと言いながら亜美と真美が服をぐいぐいと引っ張る。俺はこれでも仕事をしているんだがな。

「そうか、そんなに暇なら仕方ないな。亜美と真美には任務を言い渡そう」

ここで仕事をしてるからなどと言っても亜美たちが引かないのは分かっている。なので適当なことを言ってあしらうのが一番の方法だ。

「「任務!?ちょー格好良いじゃん!!」」

とまあこんな感じで乗ってくるのだ。

「いいか、お前たちの任務は…」
「えー!?それ本当!?」
「あぁ本当だ。だからな…」

説明すること3分ほど。

「わかったよ春翔兄ちゃん!亜美たちに任せといて!」
「行くよ亜美!真美たちの手で地球を救うんだ!」

といって亜美と真美は意気揚々と給湯室へとかけていく。その直後赤羽根の悲鳴が事務所に響いた。

これが現在の765プロなのだ。基本的に一日アイドルが居る状況がどうなのかと思わなくもないがこれはこれで貴重な時間だろう。

昼頃になるとプロデューサー陣は営業へと出かける。レッスンが入ってる連中なんかも基本的に昼から行動が始まる。

営業のスタイルはいろいろだ。スタジオなんかに挨拶回りに行ったりお偉方に挨拶したりとまぁ基本的に挨拶だな。俺は挨拶というよりも軽い談笑といった感じだが。

「そういえば春翔君」
「ん?なんすか?」

現役時代に何度か世話になった人との談笑を終えてそろそろ事務所に戻ろうかとも思っていたが急に呼び止められた。

「本当は君に回そうかとも思ったがさっき765のプロデューサーが来てね。ついでだから面白い仕事を回しといたよ」
「面白い仕事?」
「降郷村でのミニライブだよ」
「降郷村…確かに面白いかもしれないですね」
「そうだろう?」
「ありがとうございます」

談笑も終え本来ならここで事務所に帰るのだがここは1つお土産でも買って帰ろうかと思い寄り道をする。

お土産の定番といえばケーキあたりが無難だがそれでは面白くない、ということで面白さを求めてやってきたのは古河パンと書かれた看板があるパン屋だ。

看板を確認すると俺は店内へと入る。中に入ると「いらっしゃい」という微妙に気の抜ける声をかけられるがこれがこの店のスタイルだ。

「どうも、お久しぶりです」
「おお!お前もしかして春翔か!?久しぶりだなオイ!」

店番をしていた古河秋生さん。このパン屋を経営している1人だ。奥さんの早苗さんの作るパンがあまりに独創的な上に味も微妙ということで苦労していたりもする。

「この間見た雑誌でアイドルのプロデューサーってのになったってのは知ってたが…」
「はは、まぁ、いろいろありまして」

などという会話をしていると秋生さんの奥さんである早苗さんが戻ってきた。

「あら、お客さんですか?ってもしかして春翔さんですか?」
「どうも、お久しぶりです早苗さん」
「まあ、本当に久しぶりです!5年ぶりくらいですか!?今日はどうされたんですか?」

パン屋にパンを買いに来る以外にすることがあるなら教えて欲しい気もするが。

「パンを買いに来たんですよ」
「あら、本当ですか!?ゆっくり見ていってくださいね」
「そうそう!なんなら早苗のパンはタダで持ってって構わねえぞ。どうせ売れねえから」

そう、この秋生さんという人は本人を前にしてもたまに本音を言ってしまう。確かに早苗さんのパンが売れているのを俺はあまり、というか全く見たことがないがそんなことを本人に言ってしまうと…

「私のパンは、私のパンは古河パンのお荷物だったんですね~!」

と言いながら店を飛び出してしまった。こうなるのは予想の範囲内で次に秋生さんが…

「俺は大好きだ~!!」

と言いながら早苗さんのパンを何個も口に頬張り早苗さんを追いかける。5年前と全く変わっていなかった。

しかし困ったことになった。店の人が2人ともいなくなると俺はパンを買うことが出来ないのだが…

「しかも早苗さんのパンを買っていってどんな反応をするか見たかったのだが秋生さんが何個も咥えていくから6個しか残ってない」

先程秋生さんが咥えていったパンはカレーうどんパンなるものらしく名前からして恐らくカレーうどんが入っているのだろう。

「パンとうどんって炭水化物と炭水化物かよ」

しかし炭水化物同士というのを除けば意外と美味そうなパンではある気がする。気のせいだろうか?

「あれ、お店に誰かいます」
「オイオイ、客ほっぽっておっさんは何やってんだ?」

これからどうしようかと思っていると学校の制服を着た少年と少女が店に入って来た。少年の方は見覚えがないが少女の方は見覚えが有る。

「もしかして渚ちゃん?」
「ほへ?えっと…」
「あ~、俺のこと覚えてないかな、5年前までよくこの店に来てた南春翔だよ」
「…は、春翔さんですか!?お久しぶりです!」
「南春翔!?南春翔ってあの!?」

名前を言うと渚ちゃんは思い出してもらえたようだ。少年には驚かれたけど。

「あ~、まぁ一応5年前までアイドルやってた南春翔だよ」
「す、スゲエ…本物」
「今日はパンを買いにこられたんですか?」
「そうなんだけど秋生さんたちがどっかに飛び出して行っちゃって…」

それを聞くと渚ちゃんは苦笑を浮かべ少年は頭を抱えていた。そういえば少年の名前を聞いてないな。

「名前を聞いてもいいかな?」
「え、ああ、岡崎朋也です」
「岡崎君か…しかし渚ちゃんもお年頃だねぇボーイフレンドまでできちゃって」
「お、岡崎さんはそ、そんなのじゃ、ありません!」

手をわたわたと振りながら渚ちゃんが否定する。まあ、顔を見るあたり満更でもなさそうだがそんなに否定すると岡崎君もへこむぞ?ほら、微妙に辛そうな顔してる。

「でもまあ、渚ちゃんが戻ってきたし渚ちゃんに会計してもらおうかな」
「はい、任せてください!」

というわけでカレーうどんパンなるものを6個と普通のカレーパンを8個購入して事務所へと帰る。形はほとんど変わらないのでロシアンルーレット的な形にすることにしよう。

しかし折角なので岡崎君には一言残していこうかな。

「渚ちゃんはこう見えて昔から体が弱くてね。良かったらこれからも仲良くしてやってくれ」
「…はい!」

昔はよく熱で寝てると聞いてたが今は割と元気そうで安心だ。ボーイフレンドも出来てようだし。

「凄いです。お母さんの焼いたパンが無くなるのなんて初めて見ました」
「俺も奇跡を見ているようだ」

などという会話をされているのは俺は知る由もなかった。


――事務所にて――


「うあうあ~!このパン中にカレーうどん入ってるよぅ!」
「え?私のは普通のカレーパンだけど…」
「うわ!これもだぞ!」

カレーうどんパンを食べたメンバーはとても面白い反応をしてくれた(笑)
一言感想を聞くとカレーうどんというよりもうどんを食べてる感じだったらしい。 
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