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ダブルデート

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第三章


第三章

「せめてな」
「全くだよ。それでな」
「ああ、それで?」
「兄貴の相手誰なんだよ」
 このことをだ。兄に問うのだった。
「一体どんな人なんだ?」
「奇麗な娘だぜ」
 和弥は楽しげに笑ってその問いに答えた。
「本当にな」
「それでわかると思うか?」
「わかってくれ」
「いや、それは無理だろ」 
 すぐにこう返す直弥だった。
「その答えじゃな」
「じゃあ具体的に言うな」
「ああ」
「髪が赤くて長いのを左右でリングにしていてな」
 まずはここからだった。
「それではっきりとした目で」
「目は大きいんだな」
「ああ、大きい」
 こう話す和弥だった。
「きらきらとした目でな。それでだ」
「ああ、それで」
「鼻はあまり高くないな」
 それはだというのだ。
「それで口は小さい。けれどピンク色でいいぜ」
「そうか、わかった」
 直弥は確かめる顔で聞いていた。そうして兄に問うた。
「次にはどんな感じなんだ?」
「胸は小さいな。小柄でな」
「胸は小さいんだな」
 ここでだ。直弥の顔が曇ってきた。
「そうなんだな」
「ああ。服はいつもロングスカートでひらひらとした服なんだよ」
「あの娘だな」
 直弥は不意に窓の外を指差した。そこにはだ。
 和弥が言ったままの女の子がいた。赤とピンクのふわふわとしたワンピースのロングスカートを着てだ。そうしてそのうえで上に白いカーディガンを羽織っている。
 しかし問題はそれが一人ではなかった。二人いるのだった。
 左右並んで店の中に入ろうとする。直弥はその二人を見て和弥に話す。
「あれだよな」
「ああ、そうだって言いたいがな」
「何で二人なんだ?」
 直弥が言った。
「二人もいるんだ、一体」
「俺が聞きたいんだがな」
「しかもそっくりそのままでな」
「どういうことなんだ」
 和弥は真剣に考える顔になっていた。
「これってな」
「わからないな。何なんだ」
 二人が首を傾げさせているとだった。
 その二人が彼等のところに来てだ。彼女達も驚いた顔で言うのだった。
「和弥君が二人なんて」
「どっちが直弥君なの!?」
 こう言うのである。
「一体どちらが」
「誰なのかしら」
「いや、俺もそれ言いたいけれどな」
「どっちなんだ!?」
 二人も目を丸くさせて言う。自分達の横に立つ二人の少女を見ながら。
「どっちが平野美恵なんだ」
「平野美喜はどちらだ」
「私が美恵よ」
 まずは右側の娘が言ってきた。
「そして私が美喜よ」
「どっちがどっちなんだ」
「さっぱりわからないんだが」
「いえ、それはこっちも」
「どっちがどっちだか」
 美恵と美喜もこう返すのだった。戸惑った顔でだ。
「どっちが和弥君なの!?」
「直弥君はどちらなの?」
「俺が和弥だけれど」
「俺が直弥だけれど」
 二人はそれぞれ言った。
 
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