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少年少女の戦極時代Ⅱ

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後日談
  第140話 vs邪武! 「あの日、決めた」


『葛葉紘汰ならともかく、貴様ごときではどうにもできん』

 コウガネと相対した戒斗に、コウガネは嘲笑を隠さない言葉を投げた。

「確かに葛葉はもういない。だが、あいつが何も残さなかったと思うな」

 戒斗は自身の奥底にある力を意識した。オーバーロードの力。この先自分がどうなったとしても、この街を守るために、その力を解き放つ。

 オーバーロードへの「変身」に集中していた戒斗は、後ろから迫る脅威に全く気付かなかった。

 いざ、という時に、うなじを大きな衝撃が走った。全身から力が抜け、立っていられず倒れていく。
 パッションフルーツアームズの月花を見たのを最後に、戒斗は意識を失った。




 あらかじめ変身していた月花は、ロード・バロンに変身しようとした戒斗の、うなじに、短針を模した剣の峰を力一杯叩き込んだ。
 戒斗は気を失い、道に倒れ伏した。

『ヘキサ。戒斗くんのこと、おねがいね』
「まかせて」

 物陰からヘキサが出てきて、倒れた戒斗の肩に腕を回し、再び物陰に戒斗を引きずって行った。

(ごめんね。戒斗くん。あたし、どうしても、戒斗くんがバケモノ扱いされるなんてイヤなの)

 そこでコウガネが嘲笑を上げた。

『愚かな娘よ。自ら戦力を減らすとは』
『あんたなんか、あたし一人でじゅーぶんよ。金メッキ』

 月花はコウガネをふり返り、長針と短針を模した双刃をコウガネに向けた。

『ほざくな、小娘!』
『でぇやあああああ!!』

 大橙丸より長針の刃のほうがリーチが長い。ゆえに月花はあえてパッションフルーツの錠前を使って変身した。
 だが、コウガネの大橙丸は幾度となく月花を斬り裂く。これは月花自身が剣という武器を使い慣れていないがゆえのイージーミスだった。

 何度斬られても月花は食いつく。自身も双刃を揮ってコウガネを斬る。どうせ斬られるならばと防御は捨てた。

 斬って斬られて。
 先に必殺の一撃をくり出したのは、月花のほうだった。

《 パッションフルーツオーレ 》
『だああありゃああああ!!』

 パッションバースト。双刃による連撃をコウガネに揮う。腕が軋むが、止めない。
 限界を超えた連撃は、ついにコウガネに膝を突かせた。

 月花は息を切らしながらも、長針の刃をコウガネの目の前に突きつけた。

『とどめよ』

 するとコウガネは、何を思ったのか、剣先を目の前にして変身を解いた。少女の姿が露わになる。

「いいのか。今の私はこのガキの体を乗っ取っているに過ぎない。私を殺すならこのガキも死ぬぞ」

 薄々分かっていて、それでも目を背けていた事実。

(どんなに悲しくなっても、最後まで。インベスと戦う時、あたしはそう決めた)

 長針は突きつけたままに、月花は短針の刃を振り被った。コウガネの表情が初めて崩れた。

(お父さん、お母さん、ごめんなさい。今からあたしは、ほんとにほんとのヒトゴロシになります)

 戒斗にも光実にも城乃内にもやらせない。月花が、室井咲が、この少女ごとコウガネを――殺す。


 “ダメだろ。咲ちゃんがそんなことしちゃ”


『え――?』

 聞こえた声は、月花の集中を掻き消すには充分すぎた。

 月花に生じた隙をコウガネは見逃さなかった。コウガネは素早く、再び変身して月花を殴り飛ばした。

 道に転がった月花は、コウガネに背中を踏みつけられ――なかった。
 どこからか飛んで来た黄金の球体が、コウガネを捕えて離れたところに接地した。黄金の球体の中で、コウガネは爆ぜ、球体から弾き出されて道に転がった。

 やがて球体の中に、青い光が人型を象っていく。

(まさか、そんな、まさか!)

 黄金の輝きが消えた。そして、立っていた人間は、“はじまりの男”となって宇宙の果てへ旅立ったはずの、葛葉紘汰だった。 
 

 
後書き
 泣いてるコドモがいたら、ヒーローは駆けつけなきゃいけないっしょ(*^^)v 
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