少年少女の戦極時代Ⅱ

　同時刻。フルーツパーラー・ドルーパーズの前にて。

　イナゴ怪人を前に、真っ先に動いたのはパティシエ師弟、凰蓮と城乃内だった。二人してイナゴ怪人に突撃し、胴にしがみついて動きを封じた。そこをザックが向かって行き、殴ろうとした。
　だが、ザックの腕はイナゴ怪人にあっさり捻り上げられ、凰蓮と城乃内も振り解かれてしまった。
　チームワークが無理なら、と彼らは個々にイナゴ怪人に立ち向かうが、それも全ていなされた。

『どうした、アーマードライダーども。変身しないのか？』

　碧沙は現れたそのアーマードライダーを前にして、膝から崩れ落ちてしまった。

「ちょっと、ヘキサ？　ヘキサ!?」

　トモが碧沙の肩を掴んで揺さぶった。

（ヘルヘイムの森にいた時と、同じ、甘ったるい香り。どうして？　ヘルヘイムもインベスも、ぜんぶ葛葉さんと高司さんが連れてったはずなのに）

　貴虎が晶をビートライダーズの輪に預けてから、黒紫のアーマードライダーの前に出た。

「貴様、何者だ。何が目的だ」
『決まっている。復讐だ！』

　復讐。されるとしたら、それはアーマードライダーが滅ぼしたオーバーロード――フェムシンムの民からしかない。少なくとも碧沙には彼らしか思いつかない。

「みんなは下がって！　兄さんは碧沙を！」

　光実が戦極ドライバーを装着し、ブドウの錠前を開錠した。

「待て、光実！　一人では…！」
「変身！」
《　ブドウアームズ　　龍・砲・ハッハッハッ　》

　龍玄は変身するなりブドウ龍砲のレバーを引き、連射した。イナゴ怪人は胸部に紫の弾丸を食らって下がった。

（もしかしてそんなに強くない……ううん、違う。まだ何か。何かある。気をつけて、光兄さん）

　イナゴ怪人は、くわっ、と叫んで態勢を持ち直した。

『まだだっ！』

　龍玄はブドウ龍砲のレバーを再び引いた。

『ふん。――はぁ！』

　マゼンタの大橙丸と無双セイバーを繋げたダブルセイバーを、黒紫のアーマードライダーが揮った。
　剣閃はソニックブームとなり、斬撃となり――後ろにいた碧沙らビートライダーズに向かってきた。

『危ない！』

　ビートライダーズに向けて放たれた斬撃を、龍玄はその身を盾に受けた。

『あっ、ぐ！』
「ミッチ！」
『簡単には楽にしてやらんぞ。守ろうとしたものが壊される、その痛みをここで味わえ』

　幾度となく斬撃が放たれ、龍玄は後ろの仲間を守るためにそれを我が身で受ける。
　やがてダメージは限界に達したのか、変身が解け、光実が地面に転がった。

「光兄さん！」

　碧沙と貴虎が急いで光実に駆け寄った。貴虎が助け起こすだけでも、光実は苦痛の声を上げた。

　貴虎は光実と碧沙をビートライダーズに預け、前に出た。

（ゲネシスドライバーはもう処分して、貴兄さんは無力。それでも、光兄さんが傷つけられて、貴兄さんが黙ってるわけがない）

　貴虎が常人離れしたスピードで、黒紫のアーマードライダーに殴りかかった。だが、黒紫のアーマードライダーはあっさりと拳を手の平で受け止め、逆に貴虎を殴った。

「貴兄さんッ！」

　後ろにいたビートライダーズの女子組が、さらに大きな悲鳴を上げた。

『今日はここまでにしてやる』

　黒紫のアーマードライダーが変身を解いた。碧沙は驚きに息を呑んだ。
　変身者は、どこにでもいそうな、ただの少女だったからだ。
　この少女が、変身していたとはいえ、元ライダーを退けた？

「大切なものをじわじわと壊されながら、フェムシンムのように滅んでいけ。サルどもめ」

　少女にイナゴ怪人が近づくと、無数の黒いイナゴが彼女らを包んだ。黒いイナゴごと、少女とイナゴ怪人は消えた。

　残されたのは、ボロボロになった元アーマードライダーたちだけだった。 

　皆さん、貴虎はゲネシスドライバーをお持ちだと思ってらしたでしょう？
　申し訳ありません<(_ _)>　実は処分済みだったんです。

　悪用された場合のリスクは戦極DよりゲネシスDのほうが高い。その考えの下、貴虎は真っ先に自分のゲネシスDを処分しました。
　そしてご存じ、彼の戦極Dとメロンの錠前はレデュエに壊されました。

　つまり貴虎さんもまた、この時点で「元」ライダーになってしまってるんです(T_T)

　皆さんがあまりに貴虎の斬月・真に期待してくださったため、今日まで言い出せずに来ました。誠に申し訳ありません。