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ソードアート・オンライン 神速の人狼

作者:ざびー
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「なぁ、キリトよ。知ってるか?最近噂になってる奇妙な姿をしたプレイヤーのこと」

いつも通りアインクラッド第50層の主街区【アルゲート】にあるエギルの店でアイテムの鑑定をしてもらっていると唐突に話題を振られ、思わずハァ⁉︎と声が裏返ってしまった。興味があるのでそのままエギルの次の言葉を待つ。

「どうやら知らねぇらしいな。コレでどうだ?」

人差し指を立て、こちらに見せつけてくる。要するに情報料として1000コル払えということだ。さすがぼったくりの異名は伊達ではないようで料金がぼったくり…

「たく、それで大した話じゃなかったら訴えるからな」

睨みを効かせつつ、金を払うと満面の笑みを浮かべる。褐色の巨漢が笑みを浮かべるとこれほどまでにキモいのか…

「じゃあ話すぜ。そいつは目撃した奴らの間では人狼って呼ばれててな。とにかく神出鬼没らしい。現れたと思ったらすぐに姿が消えていなくなってるらしい。」

「それはただに《隠蔽》のスキルが高いだけじゃないのか?」

スキル《隠蔽》は使えば、姿が消え周りからは見えなくなる。そして、発動している間は隠蔽率というゲージが表示されそれが0%にならない限り発見される事はない。それに熟練度が高ければ高いほど隠蔽率の数字は上がり、見つかり難くなる。ただそれよりも熟練度の高い《索敵》をもってすれば容易に発見できる。それに隠蔽を使ったところでプレイヤーに視線を向けられれば、隠蔽率は自然に減少していき発見されてしまう。

「まぁ、姿が消えるっていうのはその線が濃厚だろうな。あと、そいつは終始黒をフードを被って顔を隠してるだとよ。なんでだと思う?」

「さぁな?」

「まぁ、わからんか…実はな、そいつを目撃した奴の中でフードの中身を見たやつがいるんだよ。なんか戦闘中に激しく動き回ってて、フードが捲れ上がったと思ったら頭にコレがあったんだとよ。」

「お前がそんなことやったって、キモいだけだぞ。

エギルは頭の上に手をやり、うさ耳みたいなポージングをする。素直に感想を述べてやると額に青筋を浮かべて睨まれた。

「巫山戯てやってるわけじゃねぇよ!頭に獣耳があっんだよ!」

「へぇー、なるほどな。それで人狼か。」

「ちっ、もっと驚けよ。」

いや、ただその前のポージングがキモ過ぎて驚くのを忘れたなんていえない。
それでと先を促す。

「あぁ、あとはめちゃくちゃ強いらしいぜ。急に姿を見せたと思ったら、見たことのねぇ技を使って最前線のモンスターを一撃で屠ってるらしいぜ。」

「へぇ〜、なるほどな。他には?」

「お?黒の剣士様も興味をもったみたいだな。武器は刀を使ってるっていうことと最前線の迷宮区でよく目撃されるらしいぜ。」

「そうか……。よし、今度行ってくるか」

「おうよ。いい報告を待ってるぜ」

エギルから買取料を渡されるとそのまま帰路につく。すでに外は暗くなっており、元々薄暗いアルゲートの街がさらに闇を濃くする。

「さて、明日は人狼探しだからさっさと帰るか…」

ポツリと呟くと自分が宿泊している宿へと足を向ける。





























現在、最前線の迷宮区。自分でマッピングしてあるところまでくるとスキル《索敵》をフルに発動しながら、周囲を警戒する。視界に光の点で近くに居るプレイヤーやモンスターの位置がわかる。その光の点に注意を向けつつ、移動を開始する。
探索を開始し始めておよそ3時間が経とうし、ため息が漏れてくる。そう簡単に会えるわけないよなぁと諦めつつ、帰路に迷宮区から出ようとすると、索敵に反応が現れる。そのの光点小刻みに移動をしているところから戦闘中だとわかる。
まさかと思い、駆け足でその場へと向かうと……


「ん⁉︎……あれか!」


キリトの視界に黒のフードを被ったプレイヤーがリザードマン三体を相手に刀一本で戦っている様子が映る。

(目深く被ったフード、刀……エギルの言ってた通りだな。しかし、まさか探索初日で遭遇するとは思わなかったな)

心の中で自分の幸運に感謝すると再び噂の渦中にあるプレイヤーを観察する。敵の攻撃を華麗なステップで躱し、カウンターで攻撃を当てていく。激しい動きの中でコートの端が宙を舞い、その奥から何やら白い物が見える。だが、キリトはそれではなく、人狼の動きに注目をしていた。

(さっきから動きに全く無駄がない。それに三体に苦戦するどころか圧倒している!)

そいつの戦闘技術の高さに舌を巻く。基本モンスターと戦闘を行う際はメンバーと同数またはそれ以下の数を相手にする。そうしなければ、死角から一撃もらい、それが致命傷となりゲームオーバーなんて事が容易にありえるからだ。黒の剣士と呼ばれる自分でも一体より多くの敵を相手取る場合は滅多になく、ありえたとしてもレベルの差がそれなりにある場合である。
しかし今、目の前で戦っているプレイヤーは雨あられと降り注ぐ相手の攻撃をひらりひらりと躱していく。まるで舞うように…

(ん?あの動き、どこかで見たことが…)

喉に小骨が引っかかるような違和感を感じ、記憶を探る。舞うような動き…あと少しで思い出せそうという時にパリンとガラスが砕ける音が同時に3つ響き、思考の海から引きずり上げられ、三体いたリザードマンたちポリゴン片へと返された後だった。
戦闘を終えたあのプレイヤーはこちらに気づき、一瞥すると溶けるように視界から消えた。

「なっ⁉︎」

突然視界から消えたプレイヤーを見て思わず驚きの声をあげてしまう。すぐに隠蔽のスキルを発動したのだと気づき、こちらも索敵を行使するが反応がない。見失った…と諦めた時、上層行きのゲートが歪んだ。つまりそこを誰かが通ったということだ。
なぜ、隠蔽を使用したままゲートをくぐったのか疑問が残るが考えるよりも早く体が動いており、気づけば消えたプレイヤーが向かったであろう方向へと走り出していた。








 
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