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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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大宴会

<ラダトーム>

「イェ~イ!!今日は最高だぜー!」
自らのギター伴奏でDOESの『修羅』・『陽はまた昇る』・『ジャック・ナイフ』・『サンダーライト』と祝賀会にはそぐわない歌を4曲続けて披露したリュカ…
最初は皆も引き気味だったが、娘のマリーがノリノリで彼氏のウルフもつられてノリ出し、瞬く間に会場のボルテージは最高潮へと上昇する。

すると今度はマリーまでもがステージへ上がり歌を披露し始めた!
『残酷な天使のテーゼ』に始まり、『ゲキテイ!』・『愛をとりもどせ!!』・『CAT'S EYE』と此方も4曲披露する。
流石のリュカも『ゲキテイ!』だけは知らず伴奏出来なかったが、『愛をとりもどせ!!』等は一緒にハモって会場を沸かせた。






そんな会場の喧噪を余所に、オルテガ・アメリア夫妻が娘のアルルと彼氏のティミーを静かなテラスへと呼び寄せ、改まって話を始めた。
「アルル・ティミー…大切な話があるのだが…」
「どうしましたお義父さん?」
珍しくリュカの巻き起こす騒動(コンサート)にノリノリだった2人は、少し上気した面持ちのままオルテガと対峙する。

「今後の事なのだが…」
オルテガは妻のアメリアと寄り添い、目を見て頷きながら話を切り出す。
「俺は此処…ラダトームに残らねばならない。ローリアの事もあるが、人々を安心させる為にもな……だがお前等にはそんな義務は無い!ティミー…お前は国に帰れば王子として、国家を支える重要な使命があるのだろう?本来なら俺はゾーマの城で死んでいた…アメリアも、アリアハンに残っていればお前等と二度と逢う事も無かったはずだ。だが我々家族は奇跡的に再会出来た。全部リュカちんのお陰…いや、あの野郎の所為だろう!」
そこまで言うと一区切りつけ、夫婦は娘カップルを抱き寄せ温もりを堪能する。

「こんなに素晴らしい瞬間をくれたリュカに、お礼という名の嫌がらせをせねば気が済まん!だからお前等は、リュカ達と共にグランバニアへと行き、そこで共に幸せを掴むんだ。結婚して早く子供を産んで、あの野郎を『お爺ちゃん』と呼んでやれ!」
「そ、そんな…イヤだよ…折角家族が揃ったのに…」
完全に祖父の事を忘れているアルルの言葉…だが誰も気にしてはいない。

「そうですよ…お二人がラダトームに残るのでしたら、僕もグランバニアには帰らず、此処でアルルと共に幸せになります!僕程王子に向かない人材は居りません!あの国には僕以上の人材が沢山居ますから、お気になさらず…今後も『お義父さん・お義母さん』と呼ばせてください」
瞳を潤ませ、共に生きる事を告げるティミー…
アルルもティミーの言葉が嬉しくて、抱き付いて泣き出してしまう。

「ティミー君…そう言う訳にもいかないのよ」
夫に寄り添い寂しそうにアメリアが呟くと…
「今はまだ世界が平和になった事で、人々の心は喜びに沸いているが、時間がたち平常を取り戻すにつれ、大きな力を持つ『勇者』と呼ばれる者達は、疎ましい存在へと変わって行くんだ…」
オルテガが人々の心と言う物を語り出す。

「そ、それは…(リュカ)が先程やらかした所為ですか!?」
リュカの『プランB』を思いだし、慌てて問いかけるティミー。
「いや違うよ。リュカちんのお陰で、あの場にいた奴等に対しては、俺達に敵意を向ける事は無いだろう…だがそれ以外の者達には、俺等『勇者一行』は何時か権力を持ち、自分たちを排除するかもしれない存在…と認識するんだ」

アルル達はラダトーム城のテラスで、沈黙に包まれる…
遠くからは祝賀会場で歌うリュカの歌声が響いてくる。
アルル・ティミーにもオルテガの言いたい事は理解出来るのだ。
でもだからといって、今生の別れを簡単に受け入れる事など出来る物ではない。
今はただ、黙って抱き合い涙を流すしか出来ないのである。






祝賀会場の一角に、不思議な空間が出来上がっている…
その空間の中心には、精霊神ルビスがアップルジュースを片手にポツンと椅子に座って呆けている。
会場にいる皆が、リュカが巻き起こす騒動(コンサート)にノリノリになりながらも、ルビスの近くにくると、恭しく頭を垂れて崇拝して行く。

「明らかに『早く帰りたい』ってお顔ですね(笑)」
オレンジジュースを片手に持ったハツキが、愛らしい笑顔でルビスの横に座り会話を持ちかけてきた。
「そうですね…私にはこう言う騒がしいのは向かないのかもしれません…リュカ達と共にゾーマの城へ乗り込んだのは、とても良い経験になりましたが、人々の行う宴にはちょっと………」

「うふふ…だったらムリせず、一旦帰れば良かったんじゃないですか?」
「そう言う訳にもまいりません…私は彼等を呼び寄せた責任があります。彼等をちゃんと元の世界へ帰さねば、神としての示しがつきませんから!……それに、あの(リュカ)が一旦帰る事を了承するとは思えませんしね…」
少し笑いながらリュカという人物を語るルビス。

「確かに…リュカさんならそう言う事を言いそうですね(笑)」
ハツキも笑いながら元愛人について語り出した。
「ふふふ…ホント、厄介な男ですよ彼は!」
共に顔を見合わせ笑い出し、同じ会場のステージで気持ちよさそうに歌うリュカを見つめるルビスとハツキ。

「ハツキさん…貴女はリュカと一緒に、彼方の世界へ行くのですか?アリアハンに帰れない以上、アレフガルドに残る理由は見あたらないですが…?」
「う~ん………正直一緒に行く気はありません。リュカさんと別れるのは寂しいですけど、一緒にいると頼っちゃって、自身の修業の妨げになると思うんですよね。…私はもっと強くなりたいんです!だからもっと修業をしたいんですよ!」
ハツキはルビスの問い掛けに、寂しさを纏った決意の言葉で返答する。

「強く…ですか……ですが此処アレフガルドで、これ以上強くなれますかね?ゾーマもいなくなり、モンスターも凶暴性を失いましたし…そんな状況では限度があると思いますが………?」
「そうなんですよ!…実はそこでお願いがあるんです。ルビス様のお力で、もっと強くなれる世界へ私を送って頂けませんか?」
「な、何を言っているのか解ってますか!?私の力だけでは送る事は出来ても、戻る事は出来ないんですよ!?それでもよろしいんですか?」
ルビスは驚き、ハツキの顔を覗き込み問いただす。

「問題ありません!私は強くなりたいんです…それが私の生きる道だと考えてます」
しかしハツキの意志は揺らぎ無い物だった。
強い決意を込めた瞳で頷き、ルビスの問いにキッパリと答える。
「……………分かりました。では0からの再スタートになってもよろしいですね?」
「……………はい!」

宴が終わり、明日になればリュカ達はグランバニアへと送り返される…
その時にハツキも、別の世界へと行く事が決定する。
本人の意志を尊重し、別の世界で新たなる冒険をハツキは望んだのだった。



 
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