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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  八十六話 靄

 
前書き
はい、どうもです。

今回は……美雨さんの回……かな?
まぁ短いですが。

では、どうぞ!!

 

 
「はい終了!こっち……あぁ部活連中か……おいおい、消耗品の出費でかかくねぇ……?もうちょい使いまわしで何とかなんねぇのかよ、私立じゃねぇぞこのがっこ」
「それでも押さえてると思うよ~?吹部とかはリードなんか自分たちで買ってるし」
涼人の愚痴に、隣の副会長事、天松美雨が答えた。

「はいはいそうですねーっと……」
言ってからまたカタカタと涼人はキーボードを叩く。現在、生徒会室には美雨と涼人の二人だけが居た。現在時刻は五時を回ったところだ。最終下校時刻までは後三十分程だ。急いで今日出来る仕事は片づけてしまいたい所である。

「…………」
「~♪」
無言で……まぁ美雨は鼻歌を歌っているが、とにかく黙々と二人はキーボードを叩く。涼人としては数字とにらめっこするのは非常に不本意であり今すぐにでも帰路に付きたいのだが、隣に美雨が居るためそう言うわけにもいかない。彼女はそう言ったルールに厳しいため、後が怖いのだ。

『こっちは……こんなにいらねぇだろこれ……』
『また……あー、これで足りんのか?』
あーだ、こーだと考えながら次々に計算やら纏めやらをこなす。事務の方々の仕事ではないのかと思う仕事も混じっているが、気にしない。

やがて…………

[あーあー、最終下校時刻となりました。延長届を出していない生徒もしくは団体は、速やかに下校しなさい。今から施錠の先生が身回りをします。繰り返します……]

「終~了~!!」
「はい。おつかれさま~」
見知った老教師の声で下校を促す放送が流れ、今日の業務の終了を告げた。椅子を引いて体を伸ばすと、同じく椅子を引いた美雨が微笑んで量の端末を覗き見る。

「……桐ケ谷君ってさ」
「ん?」
帰り支度をしようと椅子から立ち上がりかけていた涼人に美雨が声をかけ、涼人は首をかしげる。

「真面目に仕事すれば凄いスピードで仕事終わるのになんでいっつも嫌がるの~?」
「……お前、苦手な食いもんあるか?」
ふん。と一度息を吐いた涼人が、美雨に聞いた。

「え?うーん、あんまりないけど……牡蠣かな?」
「アレルギーか?」
訪ねた涼人に、美雨は首を横に振る。

「ううん。唯ちょっと生臭いと言いますか……」
「食えない訳じゃねぇけど、嫌いな物積極的に食いてぇとは思わねぇだろ?」
今度は、首を縦に振った。

「うん」
「そう言う事だ」
「あ、成程……嫌なことはしたくない~。ってことね?」
「まぁな」
首を縦に振ると、涼人はリュックサックを背負おうと、後ろのそれに手を伸ばす。

「じゃあ……」
その後ろ姿に、彼女の声がかかる。

「あの時は……どっちだったのかな?」
「…………」
涼人の手が止まった。一度深く溜息をつくと、美羽に一つ向き直る。
眼鏡の奥に光る彼女の青み掛かった黒い眼は先程までの柔和な光ではなく、鋭く差し抜くような眼光を宿している。

「あの時、っていつだ?あっちでの事はこっちじゃ掘り返さないセオリーじゃなかったか?」
「はぐらかさないで欲しい、かな」
「…………」
互いの目を合わせながら、美雨と涼人は向き合う。否。睨みあうと言うべきか。この学校に入学し、顔を始めて合わせた時から、彼等の関係は互いに嫌い合わずとも相容れず。と言ったところだ。と言っても、美羽がこのような態度をとるのは二人で居る時のみだ。普段はのんびりとした態度で、涼人にとっては多少煩いが面倒見は良い。
が……

「答えによってはどうなるんだ?俺、リアルPKでもされんの?」
「桐ケ谷君の事、嫌いにはなるかもね」
「そりゃ恐ろしい……ったく、全部終ってまで敵討ち狙いたぁご苦労なこって……」
「…………」
美雨は答えない。このまま答えなければズルズルと帰る時間を引き延ばされる気がして、涼人は口を開く。

「死に目に好きも嫌いもあるかよ。レッドじゃねぇだけ、まだましだろ」
「っ……!」
本気で睨みつけながらそう言うと、美羽はようやく目をそらした。

「……もういいか?じゃな」
少しだけ沈んだような顔をする彼女を見て多少罪悪感を覚えつつ、涼人はバックを背負い、生徒会室を出る。

「……すまん」
「……」
言い訳のように一言言うと、美羽は首を小さく横に振った。

────

「…………」
今にも吐き出されそうな溜息を何とか呑み込んで、涼人は暗い校舎の中を昇降口へと向かう。

繰り返しになるが、涼人と美雨は決して決別しているわけでも、嫌い合っている訳でもない。しかしお互い、一定以上の距離を設けることが最良の選択であると理解している。
喧嘩とも、いがみ合いとも違う。恨んでいるのか、憎んでいるのか、憤っているのか、また恨まれ、憎まれているのか。それ自体本人達には分からない。靄のような、互いの間に横たわる小さく大きな、浅くて深い。溝。

「ったく、どうしろって……?」
苦笑しながら、涼人は呟く。と、携帯端末が、ポケットで振動し、着信を伝える。

「ん……?ふーん……土曜、ね」
そこにはおかしな依頼人からの、「準備が出来た」と言う報告が、書かれていた。
 
 

 
後書き
はい!以上です!

えっと……まぁ過程回ということで。
短かったですが、今の涼人と美雨の距離感を知っていただければ幸いです。

ではっ! 
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