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『ある転生者の奮闘記』

作者:零戦
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TURN11





「え? 愛宕型を改装するやて?」

「改装と言っても主砲を交換するだけだよ」

 今日の朝に、茂から急に来いと言われ、ラスシャラと遊園地に行くデートはおじゃんとなっている。

「主砲を五十口径三十.五サンチ連装ビーム砲四基に交換する。何か意見は?」

「三十.五サンチに交換するのはええけど……愛宕型は巡洋艦やで?」

 巡洋艦に戦艦の主砲を搭載すれば、宇宙では問題無いかもしれへんけど大気がある惑星での航行やと転覆するかもしれん。

 旧軍の友鶴事件とか有名やしな。

「愛宕型は元々は超巡として計画、設計されていたんだ。内外から巡洋艦として疑いを剃らすために二十.三サンチ連装ビーム砲を搭載していたんだ。気付かなかったかい? 巡洋艦にしては全長や排水量が多かっただろ?」

 ……確かに多かったよな、排水量も二万二千トン近くあるし幅も二三メートルもあるしな。

「改造は(おとこ)のロマンだろ?」

「……分かるで茂。俺も作ったプラモはよく改造してたな」

 茂の言葉に俺は頷く。

「改装の期間は?」

「微調整を含むと三日だね。砲搭は既に完成しているからね。それと主砲は速射性を高めている」

 茂がニヤリと笑う。

「なら問題無いな」

「うん。そう言えば噂を聞いたんだけど……」

「噂ぁ? 何の噂や?」

「ベトナム星域に侵攻するかもしれないんだよ」

「は? 資源星域は四国星域を占領しているから十分やないか?」

「それが、ベトナム星域とインドカレー星域を無人偵察機が偵察したらエイリス東洋艦隊は空っぽで何処にもいないんだよ」

「……何やて?」

「東郷長官はアラビア星域で艦隊を編成中だろうと踏んでいるみたいなんだ。それで陸軍の山下長官が艦隊を進撃させてベトナム若しくはインドカレー星域までを占領してマレーの虎星域から日本星域までのルートを聖域化しようと言っているんだ」

「……マレーの虎でエイリスに怯えながら輸送船団を護衛するよりインドカレー星域まで占領して悠々と輸送船団を護衛するんやったら俺は侵攻すべきやと思うけどな」

「ハハハ、雪風ならそう言うと思ったよ」

 茂が面白そうに笑う。

「そういや第三艦隊はどうなったんや?」

「第三艦隊なら伊号潜航艦十八隻で再編成されたよ。提督は相変わらず田中だよ」

「……東郷長官もよっぽど甘いらしいな」

「失敗を反省しているらしいけどね。ちなみに潜航艦隊を指導しているのはデーニッツ少将だよ」

「……だろうな」

 日本海軍での潜航経験は開戦でUボートに座乗していた秋山参謀くらいしかおらんからな。

「それと色んな意味で潜航艦……潜水艦を知っているのは僕と雪風だけだからね」

「……まぁな」

 俺は頷いて御茶を飲む。

「東郷長官は伊号潜航艦を対ガメリカ戦の切り札としているよ」

「……姿無き艦からの攻撃に怯えるガメリカ艦隊……か。まぁ向こうが対潜航艦の兵器を出したら終わりやな」

「此方はまだ正規空母が少ない。虎の子の第一機動部隊を犠牲には出来ない」

「もう少し開戦が遅れていたら十分な艦隊がいたのに……」

「後悔してもあかんよ茂。今は日本の未来のためにやらなあかんからな」

 俺は茂にそう言った。



 それから三日後、第四戦隊は主砲の交換を完了させて第四艦隊がいるマレーの虎星域へ向かった。



――第四艦隊旗艦榛名――

「ベトナム星域の攻略作戦ですか……」

「そうだよ。この攻略作戦は第四艦隊、キャシー、ラスシャラの第八、第九艦隊と陸軍が共同で行う」

 旗艦榛名からの出頭命令に呼ばれた俺は南雲提督と会っていた。

「第四艦隊も無人偵察機を多数放ったけど、ベトナム星域はおろかインドカレー星域もエイリス東洋艦隊はいなかった」

「それで東郷長官が作戦を認めたんですか?」

「そうだよ。しかも第四戦隊の参加が無ければ作戦は決行されなかったよ」

 南雲提督が笑う。

「……東郷長官は余程第四戦隊を過大評価していますね」

「第四戦隊だけじゃない。狹霧、あんたも期待されているんだよ。ハワイ会戦の事は皆が知っているからね」

 南雲提督はそう言った。

「褒めても何も出ませんよ南雲提督」

「狹霧……自分を過小評価しなくていいんだよ」

 南雲提督は「あんたは何も間違っていない」そういう表情をしている。

「いえ、満州で新型艦の神通を失ったのは自分のせいですよ」

「でもそれは樋口が……」

 日本海軍を裏切ったはずの樋口提督はいつの間にかコネを使って日本海軍の提督として復帰していた。しかも自分の正統性を主張している。

 樋口の主張は「満州会戦で私は裏切っていない。いきなり狹霧艦長の神通が我々を敵だと一方的な認識をして砲撃してきた」と言ってあらゆるところで俺を攻撃してきている。

 そのため俺の評価は微妙なところやねんな。

「それよりも南雲提督。自分の心配をした方がいいですよ。ダンナさんとの仲が悪いと大分噂になってますし……」

「……こんな時まで他人の心配をしてくれるなんてね……」

 南雲提督は苦笑する。

「南雲提督は大好きですから」

 俺は笑う。

「はいはい。それじゃあ出撃準備を頼むよ」

「(軽く言われた……)了解です」

 俺は若干orzになりながらも南雲提督に敬礼をした。






 
 

 
後書き
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