| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

先送り

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「手抜き工事が問題になったりな」
「橋が落ちたしな」
 ある島国での話だ。
「あんなことが続いてるからな」
「我が国の評判は落ちる一方だ」
「それが外交にも影響しているからな」
「ワールドカップもだ」
 その時もだった、強引に開催したが。
「無茶をやり過ぎた」
「ああ、審判まで買収してな」
「ラフプレイにサポーターの応援」
「幾ら何でも相手チームの遺影や人文字はなかった」
「あのワールドカップはそのまま我が国の評判になっている」
 悪評の、である。言うまでもなく。
「あれは容易には覆せないぞ」
「野球でもやったしな」
「この前のオリンピックもやってしまった」
「誰だ、あいつにあの島の旗を渡した奴は」
 よりによってだ、南東の経済大国と領土問題で揉めているがだ、その係争地に対する領土権の主張をオリンピックにおけるサッカーでの試合に勝った時にしたのだ。その旗を誇らしげに掲げて。
「他国のオリンピックを台無しにしたぞ」
「サッカー以外でも暴れたしな」
「フェシングでも水泳でもバスケでもな」
「バトミントンでもやった」
 もっと言えばやらしてしまった、選手達が。
「あの国の女王陛下の即位六十周年記念でもあったがな」
「見事にぶち壊したからな」
「あの国は恨んでるぞ」
「恨んでない筈がない」
 自国が開催するスポーツの国際大会をぶち壊されて怒らない者はいない、恨まれて当然と言う他ない。
 しかもだ、彼等の国がやらかしたスポーツはこれだけではなかった。
「野球でもやったからな」
「マウンドに旗立てたな」
「あれもまずかったぞ」
「いい加減あの国を意識したら駄目だ」
 その経済大国をというのだ。
「もうな」
「その方がいいな」
「スポーツでもな」
「ああ、しかもな」
 それに加えてというのだ。
「経済でも何でもあの国に絡めるからな、我が国は」
「文化でもな」
「だから起源の主張とは何だ」 
 このことについてだ、一人が忌々しげに主張した。
「剣道だの盆栽だの折り紙だのな」
「ねぶた祭りもあったぞ」
「北西の大国にも言っていやな」
「ああ、文字だの孔子だのな」
「そう言っていたな」
「端午の節句とかな」
 起源の主張も問題だった。
「野球でも言ってるしな」
「サッカーでもだ」
「世界の言語の基とも言っていたぞ」
「起源の主張も各国の顰蹙を受けるだけだ」
「お釈迦様やキリストがどの国の人でもいいだろう」
「もうそんなことを言っている場合か」
 今の彼等の国の状況では、というのだ。
「スポーツでも旅行でもまずマナーを守ることだ」
「起源の主張は止めるべきだ」
「経済の抜本的な立て直しだ」
 その危機的な経済のことにも言及された。
「財閥を弱めるべきだ」
「中小企業を育成して雇用を確保して労働条件の保障だ」
「あと暴力的な労働組合も抑えよう」
 彼等の問題もあった、この国では労働組合の過激な主張やデモも非常に深刻な問題となっているのだ。
「さもないとまともな話にならない」
「このままでは財閥だけが肥え太るぞ」
「他の企業は壊滅する」
「それだけ経済がおかしくなる」
「失業率が増加してそれが治安の悪化に直結している」
「特に若年層の雇用だ」
 彼等のことも考えなければならなかった。
「彼等に希望がないとな」
「折角過酷な受験戦争を乗り越えてそれではな」
「その受験、学校制度も見直さないとまずいぞ」
 今度は教育の話だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧