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小出しにしていって

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第二章

「丁度よかったですね」
「うん、それじゃあ有り難く」
 頂こうと応えてだ、優斗は智秋からのプレゼントを笑顔で受け取った。その後でだ。
 智秋は同僚達にだ、笑顔でこう言った。
「まずはね」
「そうね、まずはね」
「第一段階ね」
「そう、何とかね」
 ほっとした顔での言葉だった。
「成功したわ」
「課長さん甘いもの好きだしね」
「これで智秋のこと頭に入ったわね」
「それもいい意味でね」
 これまでも頭に入っていたがそれは社員としてだ、そこに加えてというのだ。
「智秋仕事もそこそこ出来てるし」
「元々悪い印象はない筈だから」
「こうして少しずついい印象を上書きしていく」
「そうしていくのね」
「どうもね、会社に入ってからずっと課長さんばかり見ていて」
 それ故にとだ、智秋は自信なさげな顔で言った。
「こうした恋の駆け引きというか作戦はね」
「ご無沙汰だったのね」
「その間」
「そう、だからね」 
 それでだとだ、智秋はその自信なさげな顔で話していく。
「上手くいくかどうかわからないけれど」
「それでもねのね」
「少しずつやっていくのね」
「そのつもりだけれどどうかしら」
「いいんじゃない?それで」
「恋愛ゲームでもそんな感じだしね」
 同僚達は智秋の問いにこうそれぞれ返した。
「一気にいかず少しずつ」
「それもいいと思うわ」
「そうよね、じゃあ次は」
 智秋は皆の言葉を受けて少しだけ自信を持った、それを表情にも出して。
 そしてだ、こうも言ったのだった。
「仕事が終わった後で」
「誘うの?」
「そうするの?」
「ううん、いきなり二人だとまずいから」
 それには早い、そう考えてだ。
「やっぱりね」
「少しずつね」
「そうしていくのね」
「そう、今もね」
 こう言ってだ、次に彼女がしたことはというと。
 仕事の後の付き合いで皆でカラオケに行った時だ、優斗も一緒に来ていたが。
 何気なくを装ってだ、智秋はデュエットの曲を入れた。そしてその曲を歌う時に演技をしてこう言ったのだった。
「あっ、しまったわ」
「どうしたの?」
「何かあったの?」
「この曲デュエットだったわ」
 こう言うのだった、しまったという顔を作って。
「間違えたわ」
「えっ、けれどもう演奏はじまるし」
「それならよ」
 OL達が彼女の演技に合わせて言う、やはり演技をして。
「歌うしかないわよ」
「誰かとね」
「そういえば」
 OL達はここで優斗をを見て言った。
「課長さんまだ歌ってなかったですよね」
「そうでしたよね」
「あっ、そうだね」
 優斗も言われて気付いた、実は彼はカラオケではあまり歌う方ではない。どちらかというと飲む方である。
「今日はまだだったよ」
「それじゃあどうですか?」
「智秋とデュエット」
「それどうですか?」
「ううん、けれどね」
 ここでだ、優斗は遠慮を見せて智秋を見て言った。 
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