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SWORD SUMMIT

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第四章

「私の家はかつてその方に仕えていました」
「紅雪を持っていた武将にですね」
「はい、徳川家の家臣だったのですが」
 その武将はというのだ。
「私の家はその家に仕えていたのです」
「では貴方のお家は武士の家になるのですね」
「左様です」
 主はこうリチャードに答えた。
「昔のことですが」
「左様ですか」
「持ち主は戦国の世を生き抜き大坂の陣も生き抜き」
 そしてだったというのだ。
「天寿を全うしたのですが」
「そして紅雪は」
「大坂の陣の前後に私の祖先に預けられたと聞き長きに渡ってお預かりしていましたが」
「それが、ですか」
「関東大震災の時に家が半壊し」
 主は残念そうに話していく。
「蔵も乱れまして」
「その時に行方知らずになったのですか」
「お仕えしていた家の方は許してくれたのですが」
 江戸時代が終わり随分経っていた、それで主からの預かりものという意識もかなり薄くなっていたのだ。
 それでだ、その震災の時からだったのだ。
「長きに渡り行方知れずになっていたのが」
「それが何故見付かったのでしょうか」
「はい、先日家の改築の時に蔵も壊しまして」
「そこから出たのですか」
「左様でした」
 そうだったというのだ。
「それで見付かりました」
「そうでしたか」
「しかし。公には言っていなかったのですが」
「私がインターネットで噂を聞きまして」
 トーマスが主に答えた。
「噂ですが若しやと思いまして」
「直感ですか」
「直感に頼るのはどうかと思いましたが」
「それでもですか」
「若しやと思い探偵の方にも調べて頂きました」
「そこまでされたのですか」
「個人情報はと思いましたが」
 それでもだったとだ、トーマスは主に確かな顔で話すのだった。
「是非にと思いまして」
「紅雪を頂きたいと」
「お願い出来ますか」
 今度はリチャードが主に言った。
「あの刀を」
「左様ですか、紅雪を」
「お金でしたらあります」
 リチャードは身を乗り出さんばかりにして主に言った。
「お譲り頂けるでしょうか」
「私は構いません。ただ」
「ただ、ですか」
「まずは御覧になって下さい」
 その刀をというのだ。
「そのうえでお決めになって下さい」
「刀をですね」
「そうです、お気に召されたものでなければ」
「手に入れてもですね」
「仕方ありませんので」
 それ故にというのだ。
「まずは御覧になって下さい」
「わかりました、それでは」
 リチャードは主の言葉に頷いた、そしてだった。
 彼は主に案内されトーマスと共に刀が保管されている居間に入った、その奥には飾られていた一本の刀があった。
 刀は鞘に収められかけられていた、その刀を見てだ。
 リチャードは一呼吸置いてからだ、案内をしてくれた主に問うた。
「この刀が」
「はい、紅雪です」
 まさにそれだとだ、主は彼に答えた。
「この刀こそが」
「正宗、村正と並び称されている」
「現存しているものは十振り程ですが」
「その十振りとは別にですね」
「この度この刀も見付かりました」
「左様ですか」
「では、です」
 その刀を見つつだ、主はリチャードに言った。
「刀見を御覧になって頂けますか」
「お願いします」
 これがリチャードの返事だった。 
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