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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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GGO編
  眼鏡の少女

 
前書き
来ましたGGO編!!
 

 
冬の朝、俺は道場にいた。凍てつく空気、冷たい風を道場の壁が凌いでくれる。
しかしそれでも木の床は冷たく、身を震わせる。
竹刀を握り振り込む、ただひたすら振り込む。
一時間ほど休憩を挟みながら振り込んだ後、あがることにした。

「ふう・・・」

道場を後にし、シャワーを浴びて汗を流す。最近はこんな日々が続き、身体がだいぶできてきた。
お湯を沸かしてお茶を淹れて飲んでいるとふとカレンダーの日付に目が留まった。

2025年11月30日

特に誕生日という訳ではなくかといって何か特別な日でもない。ただ、俺はその日付を見てふと思った。

「あれからもう一年なんだな・・・」

SAOからALOにかけて起こった事件が一段落したのは今年の1月中旬、事件のことを忘れつつあるが俺は今でも覚えていた。
攻略に明け暮れた日々は今となっては思い出だが、たまに自分が生きていることが不思議に思えてくる。
先日買った雑誌を見ているとリビングに母さんが入ってきた。

「おはよう雪羅」

「ああ、おはよ。ご飯はそこにあるよ」

「ん~、ありがとう・・・」

母さんは欠伸をしながらコーヒーを沸かす。俺は再び雑誌に目を通すとある記事に目がいった。

《GGOで活躍しているBOB(バレット・オブ・バレッツ)の優勝、準優勝者のゼクシード氏と闇風氏が《MMOストリーム》に出演》

GGO(ガンゲイル・オンライン)》、雑誌やネットで何度か見かけたことはある。銃をメインにしたこのゲームは日本で唯一プロがいるMMOゲームでプレイヤーの殆どがガンマニアというALOとはジャンルが真逆のゲームである。
そんなGGOで奇妙な出来事が起きた。ゼクシードの回線が突然切断されてしまったのだ。しかし、それくらいのことなら電波障害などで起こってもおかしくはないと思う。
だが、俺が気になったのはその後だった。
ゼクシードが帰ってこなかったのだ。記事の内容からしてゼクシードはかなり喋っていた、そんな男が回線が切断しただけで帰ってこないなんてあるのか?

そんな俺の疑問の答えが数日後に出ることとなるとは知るよしもなかった。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

雪羅は近くのスーパーに買い物に来ていた。慣れ親しんだ車椅子を使い、アクアを装着したまま店内を移動する。
そんなとき、雪羅は店の外で声をかけられた女子高生が目に入った。声をかけられた女子高生は眼鏡の黒髪、制服は近くの都立校のものだった。
目線の先には少女と同じ制服の女子生徒が三人、明らかに眼鏡の少女とは違う部類の女子高生だった。眼鏡の少女はやがて、三人の内の一人が手首をつかんで引っ張っていった。

『あれは・・・』

雪羅は買い物を中断し、少女が連れられた路地の手前まで来る。すると聞こえてきたのはお金を貸してほしいというものだった。
しかし、雪羅はこんな人気のないところで金銭を借りるという状況に違和感があった。

『なるほど、カツアゲか・・・』

少女は断るが三人のリーダーのような女子高生が突っかかる。
その状況に雪羅は痺れを切らした。

『しょうがない、やるか』

雪羅は路地に入ると少女を取り囲む女子高生に声をかける。

「なぁ、何やってるだ?」 

「ぁあ?」

「誰だあんた?」

「誰だっていいだろ?それとも、見られたら何か不味いことでもしてたのか?」

雪羅は三人を挑発する。この辺りの駆け引きはSAOを通じて慣れている。案の定、彼女たちはのってきた。

「テメェ、なめてんのか?」

「感情的だな、図星か?まぁいい、見逃してほしければ選べ、“このまま去るか”、“口封じに俺をいたぶるか”」

「このッ!」

三人のうち一人が雪羅に向かって殴りかかる。しかし雪羅は冷静だった。

「いたぶるか、いいだろう。ただし・・・」

雪羅はそう言うと車椅子を動かし拳をかわす。更にかわす際に車椅子に装備してある護身用に隠してある木刀で足をかける。バランスを崩した女子高生は膝をつく、首筋には既に木刀が当てられていた。

「できるならな」

「なッ・・・」

「安心しろ、仕返しはしない。その拳、当てられるもんなら当ててみな」

「クッ、おい行くぞ」

リーダーらしき女子高生は取り巻きをつれて退散していった。雪羅は木刀をしまうと、眼鏡の少女に近づいた。

「大丈夫か?」

「え、ええ。ありがと・・・」

「お前、PTSD(心的外傷後ストレス障害)か?」

「ッ、何でそれを・・・?」

「さっきの奴がお前に手を銃のようにしたとき、お前は尋常じゃない怯え方をした。普通はあんな顔が真っ青になるなんてあり得ない」

「あなた、一体何者?」

「ただの観察力のある訳ありの高校生だ」

「そうじゃなくって、名前」

少女は雪羅に名前を尋ねる。雪羅は『ああ、そっちか』と思いながら答えた。

「高嶺雪羅だ」

「高嶺、雪羅・・・」

「お前は?」

「朝田、詩乃」

「そうか、じゃあ俺はもう行くぞ。一人で帰れるか?」

「ええ、その、ありがと・・・」

「気にするな、あいつらにイラッときただけだからな」

そう言って雪羅は路地から去っていった。残された詩乃はあの剣さばきに覚えがあった。

「あの剣さばき、あの眼、あの時の・・・」

彼女が11歳のとき、彼女の日常が一変した事件。それをきっかけとした虐めを受けていた時に、彼と同じ碧眼の少年に助けられた。名前は聞けなかったが、その透き通った瞳が特徴的だったことは覚えていた。

「まさか、ね・・・」

「朝田さん!」

「新川くん!」

雪羅が去っていってすぐに詩乃の友人、新川恭二が現れ詩乃は彼とお茶をしてから帰宅した。
頭に残る記憶を胸に───

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「あの黒髪、あの目、やっぱり・・・」

俺は先程助けた朝田詩乃を思い出す。

「朝田詩乃、か・・・」

俺は遠い記憶を思い出す、過去に彼女に似た少女を助けたことがあった。その時は部活が休みで帰路についていると一人の少女が集団の中で虐められていた。俺はすぐさまその子を庇い、助けた。そのとき助けた少女が朝田詩乃に似ていたのだ。

「人殺し、か・・・」

俺は拳を握りしめ、あのときの言葉を思い出した。少女を助けた際に言われた言葉を。

『どうして、助けてくれたの?こんな“人殺し”を』

そのときの言葉が今でも俺の頭に残っていた。
 
 

 
後書き
遂に始まりましたGGO編!いかがだったでしょうか?
さっそく詩乃が登場し、雪羅が助けるという展開になりました。
さて次回は詩乃との出会いから数日前に戻ります。

コメント待ってます!!
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ 
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