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エルジアの軌跡 ~国家立て直し~

作者:天霧
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神(プレイヤー)から・・・

2014年
某日
アパート
「あああ・・・なんだ、このクソゲーは・・・!」
画面越しで低く唸る、彼はひどく憤慨し、出来るならばその画面を叩き割り、キーボードクラッシャーもしたいものだが、選んだのは自分の責任と、何とか残る自制心をフルに使って食い止める。

彼の名前は八雲誠一(やぐもせいいち)、歳は36、三流大学出身ながら、無名ながら良い中堅の企業に勤め、一人暮らしで趣味の為のミレーとモンベル、ヤマハ発動機に全振りで回しても貯金と生活に困らない程度の給料をもらい、16畳の自分の城(アパート部屋)を持ち、平凡に生きる男。
趣味としてアウトドアではマーチングで歩くのとバイクで峠越え、インドアでは政治経済、そして今やっているゲーム。
名は「peace for the war」
名の通り、戦争をやる為に平時は戦力を整え、戦争を行い、そして相手を崩したりしたら併合してまた平和の内に蓄え、逆も然りで負け戦になったらいかにして講和して、また臥薪嘗胆よろしく平和の水面下で相手にどう復讐するか考える。
大戦のhoi2要素と現代戦、そして政治要素がふんだんに使われたゲームである。
hoi2と比べて地味だが、世界でも愛好家が多く、特に日本国内の軍事、歴史マニアがこのゲームを愛用し、modなどを乱発している。
そして八雲が憤慨しているのは、出所不明のmod、「エースコンバットmod」である。
八雲自身はエースコンバットは名前のみしか知らず、気軽な気分で情報少なく、一部ムリゲーと称されていたエルジアという国家でプレイを始めていた。
結果は惨憺たるものである。
まず初っ端でユリシーズという隕石イベントで労働力、工業力が壊滅。しかも定期イベントでガリガリ減っていく。
首都が市街地プロヴィンスから廃墟に・・・。
核ゲー並みの人口プロヴィンスの減少、そして必死になって立て直ししてたら大して美味しくない難民流入イベント[労働力微増、消費財激増、国民不満度激増、政体変更を叫ぶ]
救いがあるなら、難民は長い目で見れば傷を癒せば国の労働生産、人口を根本的に増やすが・・・やはり損が多すぎる。
挙句の軍部暴走の戦争イベント。回避不可能で大陸すべてを敵に回す。
もう嫌になるが、こいつはやり直しと、modのバグか、勝つか滅びるまで別のデータが出来ない。
そう、これは情報が少ないのでなく、プレイヤーの心を完膚なきまで叩きのめす仕様なのだ。新しいソフトを買って封印も考えたが、実はなぜかやめられない。
だが、これでも何とか敵、ISAF軍を東へ追いつめた。しかし本当の悪夢はここから始まる。
メビウスの始動だ。
メビウス1、及びその中隊は規模的には航空隊未満のくせに、エルジアの練度最高峰の空軍部隊、航空団をあっという間に溶かし、また、地上部隊も万全な体制でで挑んでも指揮統制を一気に飛ばされた。
ただやられるのは趣味でないので、エースコンバット04を買い、攻略サイトを見ては情報を集め、敵有利イベントを回避して攻勢しようにも、勝てる見込みなく、撤退しようとすれば、自由エルジアなんちゃら言う青年将校の暴走、将官の怠惰、根拠のない命令で兵士の屍が増え、特に大事にするべきベテラン下士官、叩き上げ下級士官が壊滅していった。
何とか量産にこぎつけたX-02もこれも軍部によって20機近くが宙に浮いている。
なんてみじめだ、なんて不甲斐ない・・・!
「ああ、くそっ、今すぐにでも粛清してぇ!!」
国民不満度上昇にはもう慣れた。さっさと赤い国のおひげさんよろしく100人ほど将校を殺したい。
そんな折、彼の目の前にとあるイベントが流れる。

革命を!!
今のエルジアには既に力はない。後退する戦線、無能な将校の無計画な作戦、全てが破綻して、交渉の余地が減っていく
このままでいいのか?このままエルジア本国を一方的に蹂躙される展開を望むか?
否、そのようなことは断じて許されない!
あなたは今、革命の決断を出来る立場にいる。
今は無様でも革命を断行し、全てをリセットして戦いをし直すべきでないか?
戦争のための平和を!
決断を!

革命をしようではないか

選択肢は一つのみ、なんて物騒な文章だ。しかし
「面白い、もうここまで来たんだ。やるしかないだろ」
何かの講和イベントだと思った。そして八雲は特に注意書きを読まずにクリックをした。

目の前が一瞬にして暗転し、世界が回るような感覚がする。

八雲は何かに襲われたのか把握できないまま、もがくが何もつかめない・・・瞬間
「?!」
頭の中に何かが流れ込む。何かのデータ、そして見たこともない人間の顔、実際に味わったことないが、言うなれば走馬灯のような現象だ。
そして声も響く
「見つけた・・・」
「見つけたよ・・・新しい世界を作る人が」
何かいたずらめいた声が響く・・・それは子供に無邪気さと大人の冷酷さを混ぜたような、むせかえる声
「さあ、君が世界を作る番だ」
「戦争の為に平和を・・・復讐のために平和を」
耳を塞ごうにも頭の中に直接響くから止められない。
「君のやるべきことは一つ」
「戦争を・・・一心不乱の戦争を・・・しかし今の場面では負けてしまう。つまらない」
「だから戦争のために平和を作るんだ。頑張るんだ」
何か嘲笑と試すような声で攻め立てる。そして自分自身も何か異常を感じる。そう、異様なまでの高揚感、頭の中の情報が整理され、この先待っていることが分かったとき、何とも言えぬ高揚感を感じるのだ。
それを感じ取った声の主たちは喜んだ声色で
「うん?この人は自ら世界に入ってるぞ」
「やった!こんな人初めてだ!これは楽しいものがみられるぞ」
「さあ、新しい世界の始まりです。改めて言いますあなたの名前は・・・そして役目は・・・」
声は一部聞こえなかったが問題ない。もう覚悟はできた。

そして世界は明るくなり・・・・

「エルジア万歳!グランヴィル万歳!エルジアに栄光あれ!エルジア万歳!!」
何千何万の熱狂的な人間たちが目の前で異口同音に叫ぶ。
後ろにそびえる建物は荘厳だが、すでに何か枯れてるような感じで、周りの空間も近く、この周辺だけ異様だとわかる。
「これは・・・」
一瞬戸惑ってすぐにわかる。これが・・・エルジアの首都だと。
そして自分は
「現政権を打倒し!暴走する人間を粛清するグランヴィル閣下に惜しみのない声援を!!」
ハウリングや音割れするマイクでも雰囲気で察した民衆はさらに熱狂する。
そう自分は、元の名は八雲、現在はマルセル・グランヴィア。ゲームの世界の「神」のような存在によって仕立て上げられ、並行世界に飛ばされた。
2005年
7月5日
エルジア第三勢力「エルジア戦線」により、自由エルジア軍、政権、政党鎮圧・・・非常時全権委任大統領として選ばれた存在。それがマルセル・グランヴィア。

世界を大きく変える15年が始まる。






 
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