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『自分:第1章』

作者:零那
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『一時帰宅』

『顔だけ見せに帰るか?土庄からの高速艇ならまたコッチ来れるやろ!なぁ?』

えっ!!
反対側向いたら兄ちゃんが頷いてた。
なんか自分にムカついた。
悟られてしまうくらい迷惑かけてるやん。
涙出てきた。

『ほな眉毛描いたら行こか。』

オッチャンは洗面所で電気シェーバー。

兄ちゃんが言う。

『夜はあの店やで。終わったら来る。てか、その前にまた逢えるけどな♪』

また涙出た。

『しゃあない妹やなぁ~』って言いながら眉毛描いてくれた。
戻ってきたオッチャンが『怖い怖い!!ツリ上がり過ぎよオマエ!!コイツ女ぞ!!あかんやろ!!描き直したろっ!!』って、描いたらタレ眉なった。

『いやいや、遊ばんといてな?』

『わざとちゃうんでホンマ!!まぁ先出よう。港行こ!!』

なんか淋しい。
おかしい。
またすぐ逢えるのに。
父さんの面影を映して、都合良く父さんにしてる。
父さんはオッチャンみたいにいっぱい墨入って無い。
あるんは昇り龍だけ。

ハッキリ鮮明に覚えてる。
大阪居った頃、1回だけ、父さんと銭湯に行ったことがある。
そのとき、お決まりの如く言った。

『父さん、背中の絵なんなぁ~ん?』

『昇り龍ってゆうんや。カッコエーやろ?』


『うん♪昇り龍!ごっつカッコエー♪好きやで♪』

『良かった♪』

父さん、カッコ良かった。
昇り龍もやけど父さんが...
逢いたい。
父さん、今、生きてんの?
何処おんの?
死んでんの?

父さんのフルネーム検索したりな、ほんまアホみたいな事しよんで。
ヤクザに聞いたりな。
ホンマあほやんな。
目の前のこの人が父さんやったら良いのに...
どんだけそぉ思ってきたか...
昔、お世話になってた組長。
今、お世話になってる組長。

やっぱヤクザの偉いさんは大好きや。
組長してても、そんな器じゃないバカな人間も居る。
下っ端ヤクザでも、マトモな人間も居る。
たまたま出逢えた人達が、自分にとって良かっただけ。
人間、出逢いで人生変わる。
良くも悪くも。

逃げてばっかの人生やったけど、オッチャンに出逢って、兄ちゃんが出来て、何かが動くんかな。
何かを変えなあかんのんかな。
ちゃんとシッカリ前を向かなあかんねやろな。
でも、何をどうするべきか解ってない自分がはがいたらしい。


とりあえず今は母さんの顔見て、顔見せて、高松に泊まるって伝える。
無駄な心配はかけささん。
以前なら母さんやかホンマどぉでも良かった。

でも、抵抗したって目ぇ反らしたって現実は親やし、事実は消えん。
考えが少し変わった。
家着いたら、母さんも帰ってきてすぐやったらしい。
花いじりしてた。


『おかえり。』

『あら零那ちゃんおかえり。昨日何処居たの?』

『高松。またすぐ行く。』

『フェリー無いよ?』

『高速艇で行く。』

『そ、気を付けなよ。ユウ君にも電話したげ。昨日帰ってない言うたら心配してたから。』

『わかった。ほな行ってくる。一応、顔みせに帰ってきただけやから。』

『そ?わかった。行ってらっしゃい。』

母さんも少し変わった気がする。
でも、いざ向き合おうと思った時は...
酒入るとグダグダやから全部が台無しになる。
土庄行きのバス乗って、高速艇乗って、高松港に着いた。

 
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