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小さいのは嫌いじゃない

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第二章


第二章

「髪の毛は」
「そうかな」
「そう思うよ。けれどそんなに小柄なのが気になるの?」
「なるわよ。当然じゃない」
 困った顔で大樹を見上げてだ。そのうえで彼に言い返すのだった。
「私、一四五ないから」
「それでもっと背が高くなりたいんだね」
「こんなのじゃ。子供扱いされて」
 実際にそうされてきたからこその言葉だ。彼女にとってはいい話ではない。小柄なことが何よりのコンプレックスであるからだ。
 それでだ。大樹に対してその大きな目を顰めさせて話すのだ。
「誰かと恋とかそういうこともできないから」
「だから背が高くなりたいんだね」
「そうよ。こんなのじゃ」
「何だ、じゃあ背が高くなる必要はないよ」
 笑顔で言う大樹だった。幸恵に対して。
「恋がしたいんならね」
「どうしてなの?それは」
「じゃあ言うよ。よかったらさ」
 その笑顔でだ。幸恵に対して続ける。
「僕と付き合ってくれない。ずっと前から好きだったんだ」
「えっ、それって」
「だから。どうかな」
 また告げる大樹だった。
「僕とね」
「えっと、じゃあ」
 幸恵は最初は言葉を飲み込めなかった。しかしだ。
 次第にその言葉を理解していって。顔を赤くしてだ。そして彼を真上に見上げたままで。こう答えたのだった。
「私でよかったら」
「有り難う」
 大樹も満面の笑顔で応える。こうしてだった。幸恵はそれから自分が小柄であることを前程意識せずに済むようになったのだった。彼女にとっても大樹にとっても幸いなことにである。


小さいのは嫌じゃない   完


                2011・3・17
 
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