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第四章


第四章

「大学でもね」
「あれっ、よく知ってますね」
「まあそれは」
「そういえば」
 話をしているうちにだ。美幸はあることに気付いた。それは。
「教授と博士って確か」
「そうなの。同じ学年なの」
 そうだと話す碧だった。
「同じクラスだったこともあるわ」
「そうだったんですか。同じクラスだったことも」
「高校三年の時ね。理系コースで」
 同じクラスだったというのだ。
「その頃から凄く高かったの」
「ですね。あの背の高さだと特撮俳優にもなれますよ」
 特撮俳優は背が高い。それが映えるからだ。それで背の高い若手が選ばれるのだ。
「ううん、そうなんですね」
「何時見てもいいわね」
 碧はほうとした様な声になっていた。
「本当にね」
「ですね。それでですけれど」
「あっ、そうね」
 碧は美幸に言われてだ。気付いた様な声になってだ。そうしてだ。
 そのうえでだ。彼女に話すのだった。
「それじゃあ用事を済ませて」
「はい、医学部の栗橋教授にお会いして」
 碧と親しい教授だ。その教授と話があってここに来たのだ。
 それでだ。彼女達はその栗橋教授と話してだ。医学部を後にした。しかしだ。
 碧は自分の研究室に戻ってからもだ。どうも様子が違っていた。それでだ。
 何処か惚けた様子でだ。美幸に話すのだった。
「あのね」
「はい、どうしたんですか?」
「私これでもね」
「これでも?」
「御料理とか得意なのよ」
 そうだとだ。美幸に話すのだ。自分の机に座ってだ。
 美幸は研究質の本棚を整理している。研究室の左右の壁はそのまま本棚になっている。天井にまで届いているそれを整理しているのだ。
 その彼女にだ。碧は言ってきたのである。
「それでだけれど。今度ね」
「はい、今度」
「お昼作るけれど」
 こんなことを美幸に言うのである。
「どうかしら」
「お昼ですか」
「それで男の人って」
 何故かこんなことを言う碧だった。
「どんな食べ物が好きかしら」
「えっ!?」
 美幸は碧の今の言葉にだ。思わず声をあげた。
 そしてきょとんとした顔になってだ。こう彼女に問うた。
「あの、食べるのは教授ですよね」
「それと美幸ちゃんだけれど」
「それで何でなんですか!?」
 目を白黒させてだ。碧に尋ねるのだった。
「どうして男の人の好みが」
「あっ、それは」
「ええと、教授って今一人暮らしですよね」
「そうだけれど」
「お父さんやお兄さんとは別に暮らしておられるのに」
 それでもだと言う美幸だった。彼女にとってはあまりにも不可思議なことだった。
 それで目を白黒させてだ。彼女は言うのだった。
「何でそこで」
「何ていうかね」
 碧もだ。狼狽しきった顔になってだ。こう美幸に話した。
「あれなのよ」
「あれって?」
「ちょっと趣向を変えたのよ」
 そうだというのだ。
「それでなのよ」
「趣向っていいますと?」
「ほら、私っていつも女の子らしいものばかり作ってるじゃない」
「そうでしたか?」
 碧のその言葉にだ。美幸は首を傾げさせて述べた。
 
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