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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Myth12遥かに古き刻に在りし騎士の末裔~Sir WorcsteD~

 
前書き
VS騎士ゲルト・ヴォルクステッド戦イメージBGM
STAR OCEAN: Till the End of Time「Influence of Truth Appearance」
http://youtu.be/BMzq7l-_xfo 

 
†††Sideアギト†††

マイスターからイリュリア騎士団の迎撃を任されたあたし達は、マイスターの張った結界から出て、国境防衛騎士団と合流するために空を翔けてる最中。あたし達の住まうアムルを守るために、そしてマイスターの期待に応えるために、絶対に侵攻を食い止めないといけない。だから「シグナム」って、あたし達の先頭を飛ぶシグナムに呼びかけると、「どうした」って少し速度を落として、あたしが隣に並ぶのを待ってくれた。

「マイスターが居ない今回の戦い、絶対に負けられない」

「そうだな。この一戦は重要だ。シュトゥラの懐深くまで侵攻を許せば、今までこの地を護ってきていたオーディンと国境防衛騎士団の頑張りを無駄にしてしまう」

「うん。負けられないから、始めから出し惜しみしない方が良いと思うんだ」

「融合か?」

シグナムはそれだけで察してくれて、あたしは「うん」って頷き返す。融合しての短期決戦。マイスターが居なくても勝ってみせる。ヴィータやザフィーラ、それに広域型のシュリエルも居てくれるんだから。
あたしとシグナムの話を聴いていたヴィータが「なあ、シュリエル。お前さ、どうしてオーディンと融合しないんだよ?」ってシュリエルに訊いた。シュリエルが目に見えてビクッと反応。脇に抱えている“闇の書”をギュッと握りしめた。

「闇の書を完成させないよう、オーディンから言われているのだ・・・。わ、私とてオーディンの役に立てるよう闇の書を完成させ、あの方と融合したいのだが」

「ふ~ん。ま、お前と融合しなくてもオーディンは十分すぎるほどに強いし、いいんじゃね」

「むぅ。しかし融合騎としての私の存在意義を思えば、やはりは・・・」

「シュリエル。お前の実力は確かだ。我が主と融合し戦力としての数を減らすよりは、融合せずにいた方が助かる。それと、お前は単なる融合騎ではない。忘れるな。我らは主の平穏を守る家族だ。そして共に戦う戦友。お前の存在意義は、融合騎ではなく、主を支える者・支天の翼のシュリエルリートだ」

今までずっと黙っていたザフィーラがそう言うと、シグナムは「そうだな」って微笑んで、ヴィータは「良いこと言うじゃん、ザフィーラ」って大きく笑う。そうだよね。シュリエルはあたしと違って、単独でも十分強いし。
俯いてしまっていると、「お前はお前だ、アギト」ってシグナムはあたしの頭を撫でた。シグナムの言いたい事は判るから「ありがと」お礼を言う。あたしはシュリエルよりずっと弱い。それでもいい。オーディンとみんなの家族として戦友として、そしてシュリエルには出来ない融合騎としてのあたしを貫けばいいんだ。

「すでに交戦しているな。急ごう」

「「「応っ」」」

あたし達は拳を突き合わせてすぐ散開して、激しい戦域に突っ込む。参戦する前にシグナムと融合。あたしはシグナムの内で、シグナムの力となるために・・・闘志を燃やす。

『行こう、シグナム。相手が誰であれ勝つ』

『ああ。もちろんだ・・・!』

†††Sideアギト⇒ヴィータ†††

――テートリヒ・シュラーク――

「うぉぉおおおおおらぁぁあああああッッ!!」

“アイゼン”で10人目のイリュリア騎士の鎧を粉砕、吹っ飛ばす。コイツら、今まで戦ってきたイリュリア騎士団の連中とそんな大差ねぇ実力だ。戦船も無いし、こりゃオーディンが居たら速攻で終わってたな、この戦い。
“アイゼン”をブン回し「おらおらぁッ! 鉄槌の騎士のお通りだぞっ!」連中に突貫する。吹っ飛ばして、吹っ飛ばして、吹っ飛ばして、吹っ飛ばし続ける。これならすぐに終わりそうだ。

「と思ったところに出てくんだよな、テメェらみたいなヤバい奴らってのが」

青色の甲冑で統制された騎士が、さっきまで相手にしていた連中の合間に少しずつだけど現れ始めて、徐々に数を増やしていく。手に持ってんのは剣や槍とかの武器じゃなくて鏡の様なデカイ盾。

(アレで何すんだ? 盾であたしを押し潰して制圧でもすんのか?)

とりあえず様子見か。具現した鉄球4つに魔力を纏わせて、「いっけぇッ!」“アイゼン”で打ち出す。

――シュワルベフリーゲン――

フリーゲンは真っ直ぐ青騎士たちへ真っ直ぐ飛んで行って、ソイツらは盾に隠れるようにして身構えた。着弾はしたんだが、フリーゲンは炸裂する事なく反射されて、あたしのとこにまで戻ってきやがった。結構、衝撃だったな。フリーゲンには障壁貫通の効果もあったんだけど、効果を発揮しなかった。跳ね返って来たフリーゲンをまた“アイゼン”で打ち返す。また連中の盾に着弾するまでの間に、“アイゼン”をカートリッジを1発ロードして、ラケーテンフォルムへ変形させる。

「ラケーテン・・・!」

ヘッドのブースターを点火、その場で高速回転して、「ハンマァァーーーーッッ!!」突撃する。標的は青騎士の1人。フリーゲンで突破できねぇなら、ラケーテンでその脆そうな鏡の盾をブチ貫いてやるまでだ。盾と“アイゼン”が衝突する。ただの盾じゃねぇと思ってたけど、まさか「ヒビ1つ入らねぇだと!?」粉砕できねぇなんて。

「ざけんなッ! 鉄槌の騎士ヴィータと鉄の伯爵グラーフアイゼンに、破壊出来ねぇものなんて無ぇッ!」

さらに力を込める。でも一対一じゃないのが現状だ。周囲に殺気立ってる青騎士たちや他の連中が居る。結局、鏡の盾を破壊せず(出来なかったとも言うけど)に、標的にした青騎士を吹っ飛ばすだけになった。足腰が弱い。
そんなんで「あたしを討てると思うなよッ!」突っ込んできた騎士の武器をぶっ壊して、一回転して胴体に一撃入れて吹っ飛ばす。それを繰り返して、青騎士以外の騎士を蹂躙して行く。クソ、やり辛いな、コイツら。

「はぁはぁはぁ・・・」

「疲労を見せているぞ。制圧しろ」

一斉に青騎士たちが鏡の盾を構えて、あたしに突撃してきた。防御力に関しちゃ今までの奴ら以上だ。それは武器の性能だけど、それでもソイツらの実力のうちだ。あたしは空へと上がる。空戦の出来る騎士はかなり少ない。だから空に上がっちまえば、一時的な退避場になる。
思わず「チッ」舌打ちしちまう。これは逃げだ。守護騎士ヴォルケンリッターの鉄槌の騎士のあたしが、グラオベン・オルデンの一員であるこのあたしが、退避なんて手段を取るなんて。

「んあ? なんだ・・・?」

怒りをぶつける前に、青騎士たちが鏡の盾にいろんな角度を付けて隊列を組んだ。

――ツァオバー・ゲショス――

どこからともなく金色の魔力弾が数発飛んできた。直接あたしを狙った魔力弾が2。それは直線軌道だったから簡単に回避。そして連中の鏡の盾に向かって9。その9つの魔力弾は盾に反射して、バラバラな軌道であたしに飛んできた。
なるほどな。敵の攻撃を反射するだけじゃねぇってわけだ。味方の攻撃をも反射して多角攻撃をする事も出来るってか。魔力弾を回避しながら、青騎士たちをどう倒そうかと考えを巡らせる。まぁそんな中でも鏡の盾を使った多角攻撃が続けられるわけだ。

「メンドクセぇなぁもうっ!」

襲ってくる魔力弾を回避し続ける。コイツらを放置する事も出来るけど、それは完全な逃げ。出来ねぇ真似だ。ラケーテンでもダメってんなら、しゃあねぇ。“アイゼン”のカートリッジを2発ロードして、ギガントフォルムに変形させる。すぐさま消費しきったカートリッジを装填。再ロード。サイズを大きくした鉄球を具現。

「こいつでどうだっ!」

――コメートフリーゲン――

単発だけど、その威力は折り紙つきのコメートフリーゲンを打ち出す。馬鹿みたいに魔力を消費しちまうけど、「はっ、見たかっ」直撃を受けた鏡の盾を粉砕してやった。着弾時の爆風と炸裂した破片で、周囲に居た青騎士たちにもダメージを与えた。甲冑は他のと同じ硬度なわけだな。それが判れば、あとはもうこっちのもんだぜ。

――フェアーテ――

両脚に魔力の渦を発生させる。効果は高速移動だ。

――ツァオバー・ゲショス――

直接・間接と迫って来る魔力弾を回避しつつ地上へ最接近。青騎士たちへ突っ込む。鏡の盾に固執しなけりゃどうってことはねぇはずだ。“アイゼン”をハンマーフォルムに戻して、シュワルベフリーゲンを打ち出す。標的にした青騎士は盾と構えた。よし。あとは・・・・

「しまった!」

「遅ぇよっ!」

そんな重そうなデカイ盾、速度にものを言わして背後に回り込んじまえばいいだけだ。シュワルベフリーゲンに対処しなけりゃいけないソイツは、なんとかフリーゲンを反射防御する事には成功。だけど、あたしの接近に対応できないだけの隙を生み出す結果になった。ギリギリで反転が間に合うかどうかってところであたしは“アイゼン”を振るって、ソイツの横っ腹に打ち込んで鎧を粉砕、「おおおらぁぁぁあああッ!」勢いに任せて吹っ飛ばす。

「次っ!」

「調子に乗るな、小娘ぇぇーーーーッ!!」

ここで、青騎士たちが剣とかの武器を装備した。あたしが一番望む展開だ。デカイ鏡の盾の防御力が最大の厄介の種だった。なのに怒りに任せて鏡の盾を退かして武器を装備。

「(そいつは自殺行為だっつうの)来いよ、経験の差ってぇのをその身に刻んでやらぁっ!」

見た目はまぁガキなあたしだけど、戦歴ならそこらの騎士よりはるかに長い。その経験の差ってぇのを見せてやる。“アイゼン”を肩に担いで、前面に魔力球を4基展開。「掛かれぇぇーーッ!」って指示が出されて、青騎士たちは盾を放っぽって突撃してきた。

――シュワルベフリーゲン――

魔力球を“アイゼン”で打ち出す。青騎士たちに面白いほどに着弾して行く。ほらな、盾があってこそのテメェらの強さなんだよ。「次っ!」3人目の青騎士を吹っ飛ばす。ここまでやられりゃ向こうも思い知る。また鏡の盾を装備した。あ~あ、あたしの無双時間はここまでか。

――シュランゲバイセン――

そんなところに鞭のような連結刃が、あたしの周りに居る青騎士たちに襲いかかった。完全に油断――じゃねぇな。あたしに集中し過ぎていたせいで気配を察知する事が遅れたんだろうな。成す術なく直撃を喰らって鎧を切断されて、血を撒き散らしながら倒れ伏していく青騎士たち。
シグナムと話をする前に、またどっかからか魔力弾が飛んできた。3つはシグナム、2つはあたしに。シグナムは“レヴァンティン”をシュベルトフォルムに戻して、「破っ!」魔力弾を切断。あたしはフリーゲンの要領で、「おら、戻っとけっ!」魔力弾を“アイゼン”で打ち返す。

「で? なんであたしんとこに来たんだよ」

「特に理由は無いな。ザフィーラとシュリエルは別段心配する必要はない。ならば――」

「んだよ、それ。あたし1人じゃ心配ってか?」

あたしだって単独で十分やれてんじゃんかよ。見てみろよ、周囲に倒れてる騎士たちをさ。シグナムは「いや。お前の事もさほど心配していない。が」って言って、“レヴァンティン”の剣先をある方向に向けた。
剣先の方に視線を移す。そこには、いつの間にここまで近づいて来ていたのか判んなかったけど、派手な桃色の髪をした男が1人佇んでいた。青を基調とした、あたしらと同じ衣服型の騎士甲冑。武装は、持ってないな。ザフィーラやシュリエルのような格闘型の騎士か・・・?

「前線の防衛騎士の者から連絡があってな。この侵攻部隊の指揮官がこちらへと向かっている、と」

「アイツか・・・・確かに今まで相手にしてきた奴とは違うな」

あたしらを包囲していた青騎士たちは口々に「団長!」って歓喜する。団長って呼ばれてるソイツは「はじめまして。グラオベン・オルデンの騎士方」ってあたしらに向かって一礼。

「僕は、強暴なる氷盾騎士団(アムレット・オルデン)の団長・ゲルト・ヴォルクステッドと言います。此度の侵攻の総指揮を、イリュリア騎士団総長グレゴール閣下から任されています」

ゲルト・ヴォルクステッド。オーディンから聞いていた名前だ。派手な桃色髪、確かに派手だ。にしても礼儀正しい奴だな、こんな命のやり取りをしてる戦場の中だっつうのに。調子が狂うなぁ、って思っているところに、シグナムと融合してるアギトから『気を付けて、シグナム、ヴィータ』って思念通話を送って来た。
シグナムと2人して、心配するな、って応えておく。オーディンからゲルトの話を聴いた時に、アギトからも詳しい事を聴いた。ゲルト・ヴォルクステッド。コイツは氷結の魔導を得意とする騎士で、部下の青騎士たちが武装してる鏡の盾を、魔導もしくは能力として発動する事が出来る。オーディンの話じゃ能力の方が可能性大って事だ。能力なら魔力を消費しないから、魔力切れを狙うって事は出来ねぇ。

「ゼクスお姉ちゃん。久しぶりだね、フフ」

アギトからのもう1つの情報にあったソイツが居た。真っ白な髪は腰くらいまであって、水色の目はツリ目。腰の辺りからは白い翼が一対。表情は・・・正直、狂気って言葉が合うような笑みを浮かべてやがる。
アギトが、『ズィーベン・・・。フュンフにも言ったけど、あたしの名前はアギトだ。ゼクスじゃない』ってズィーベンに言い放った。融合騎プロトタイプの末妹・氷の七番騎ズィーベン。氷結の魔導に特化していながら、炎熱のアギトに勝つ奴。だけど・・・・

「そうなの? そっか。うん、じゃあアギトお姉ちゃん。わたしね、アギトお姉ちゃんを壊せって言われたのね。だからねアギトお姉ちゃん。今日、ここでね、わたしに壊されちゃってよね♪」

「ごめん、六番騎アギト。そういうわけだから、君を、破壊するよ」

ゲルトとズィーベンが融合する。シグナムとアギトが融合したような姿になって、背中から冷気の翼を三対展開した。だけど、ゲルトっつうのは残念ながらシグナムとアギトの相手じゃねぇ。融合した姿を見りゃ一目瞭然だ。

『あたしは死なない。ズィーベン。イリュリアに居た時、あたしはお前に負けっぱなしだった。でも、もうその記録はここで終わる。今度は、あたしがお前に敗北を与えてやる』

ああ、そうさ。もうアギトはゼクスじゃない。アギトの言葉を聴いたズィーベンから『うん、いいよ。じゃあどっちが先に壊れちゃうか、フフ、試してみようね♪』っつう心底戦うのが好きって感じ取れるような思念通話が送られてきた。

「ヴィータ。ここは私とアギトで抑える。お前は――」

「判ってんよ。別んところでイリュリア騎士をブッ潰してくる。でも、引き受けるんだから負けたら承知しねぇぞ、シグナム、アギト」

『大丈夫。向こうの融合は、あたしとシグナムのように上手くいってないから』

「たとえ上手くいっていたとしても、元より負けるつもりはないがな」

そりゃそうだ。ゲルトとズィーベンの事はシグナムとアギトに任せる事にして、あたしは別の地点でイリュリア騎士を相手にするためにそっから離れた。

†††Sideヴィータ⇒シグナム†††

VS―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦
其は強暴なる氷結騎士ゲルト&ズィーベン
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦VS

私とアギトが対峙するのは、此度の侵攻を指揮する男、ゲルト・ヴォルクステッド。アギトの妹に当たると言うズィーベンと融合を果たし、その姿を大きく変えている。髪は派手な桃色ではなく、桃色がかった白へ。瞳は灰色から完全に水色へ。
ゲルトは完全にズィーベンに呑まれている。姿がズィーベン寄りになっているのが良い証拠だ。融合騎。名の通り術者(ロード)と融合する事で、術者に圧倒的な力を与える事が出来る者だ。しかし、他の魔導端末――私のレヴァンティンやヴィータのグラーフアイゼンなど――とは違い、適性と言うものが必要となってくる。
その適性が無ければ、

『さぁ行くよ、アギトお姉ちゃん! どこまでもつか、見せてよね♪』

術者は融合騎に意識を乗っ取られてしまう。融合事故。ゲルトが良い例だ。融合中の外見によって、その融合が上手く制御されているかどうかのレベルが判る。今のゲルトは、ズィーベンに全てを乗っ取られているはずだ。哀れだが、しかし腑に落ちん。なぜゲルトはズィーベンとの融合を承諾した、か。乗っ取られるのを知っていたのか否か。どちらにしろ今の私に出来る事は、ズィーベンもろともゲルトを討つのみだ。

――ヴァイゼ・シュピーゲル――

ゲルトの周囲に、鏡の盾が13枚と現れた。それらが一斉に動き出し、6枚はそのまま、残り7枚が私を包囲するかのように配置された。ふむ。相手の攻撃を反射し、その上防御力も高い・・・それが武装としての鏡の盾だったが。オーディンから聞いた限りだと、ゲルトの創り出した鏡の盾は転移も可能との事だったな。全ては鏡の盾の面が基点になる、とも。ならば『行くぞ、アギト』と私の内に居るアギトに声を掛ける。

『うんっ。猛れ、炎熱!』

――烈火刃――

アギトによって生み出された炎が“レヴァンティン”の刀身を包み込む。オーディンの武装・“エヴェストルム”の機能試験のために、オーディンと戦ったあの日。互いに全力ではなく勝敗がつかなかったとは言え、私はまだまだ上が居る事を思い知った。
魔導では負けようとも剣ならば。ゆえにあの日より、私はある想定をして剣と魔導を磨いた。そう、対オーディン。魔導有りでのオーディンとの戦闘では、どのような戦術を、魔導を組み立てればまともに戦い合えるか。それらを常日頃考えていた。

「(1つ目の答えが、この一撃だ!)行くぞッ!」

“レヴァンティン”をシュランゲフォルムとし、

――煌竜――

火炎を纏ったシュランゲバイセン――煌竜を放つ。狙うは鏡の盾の面ではなく薄い側面。面が全ての効果の基点ならば、その効果が出ないであろう側面に攻撃を加えて、粉砕する。“レヴァンティン”の剣先は真っ直ぐゲルトの周囲に在る鏡の盾へと向かう。
ゲルトではなくズィーベンから『おお、火だね♪ アギトお姉ちゃんの炎だね♪』と思念通話が送られてくる。鏡の盾が即座に動き、煌竜の行く手を拒もうと立ち塞がる。動きは早い。が、連携は下手だ。本来はゲルトの魔導か能力。それをズィーベンが扱っているのだ。当然の結果か。

「甘い!」

煌竜の軌道を変更。側面をギリギリ斬りつけるようにして鏡の盾を再襲撃。想定通り鏡の盾を真横から斬り裂き、その1枚を粉砕する事に成功した。そのままゲルトへ剣先を突き進めようとしたところで、

――ツァオバー・ゲショス――

ゲルトを護るよう鏡の盾が移動。そして放たれる魔力弾が五基。それらが私ではなく、私の後方に控えていた鏡の盾へと向かう。反射させて私を背後から襲うつもりだろう。一時ゲルトへの攻撃を中断し、その場で半回転しつつ“レヴァンティン”を振るい、

――シュランゲバイセン・フェアタイディグング――

螺旋状の軌道で高速回転する“レヴァンティン”による剣刃結界を展開。反射してきた魔力弾が剣刃結界に拒まれる。ここで私はシュベルトフォルムへと戻す。半回転しつつ、“レヴァンティン”を背後に向けて振るう。

――シュテルメン・リッター――

私の背後に配置されていた鏡の盾から現れたゲルトの迎撃のためだ。転移。見た目からしてシャマルの旅の鏡のようなものだな。オーディンから聞いていなければ、反応が遅れていたかもしれん。ゲルトに一撃入るかどうかというところで、私とゲルトの間に盾が割って入る。剣先が盾に触れる。しかし盾に触れた衝撃は伝わって来ず、代わりに「っ!?」“レヴァンティン”が盾に呑まれる。

『フフ♪ もう逃げられないよ、アギトお姉ちゃんのロード』

徐々にズブズブと呑まれていく。逃れようと腕を引いてもビクともしない。

『大人しく呑まれた方が賢明なの』

ズィーベンの笑い声が頭の中に響いてくる。そんな中、ゲルトの足元に白く光るベルカ魔法陣が展開された。魔導発動の証だ。この状態では回避は出来んし、魔導の種類によっては防御も難しいだろう。仕方ない。

『アギト。覚悟は良いか?』

内に居るアギトに訊くと、『ただ転移されるだけだからきっと大丈夫、なはず』という少し弱々しい返答。抵抗を止め、自ら鏡の盾に突入する。視界が一瞬真っ白に染まり、気が付けばそこは空の上。頭上には1枚の鏡の盾。地上からその鏡へと転移させられたようだ。

『シグナムっ、下!』

――ウンオルドヌング・ゲヴァルト――

幾つも展開された鏡の盾に反射された無数の光線が、私に向かって飛来してきた。地上より行動範囲が広くなった空。容易く避けられる。が、それにしても「数が減らんな」嘆息する。回避したは良いが、回避した光線は別の盾によって反射され、改めて私を討とうと戻って来る。迎撃しかないようだ。カートリッジを1発ロードし、刀身に炎を纏わせる。

――紫電一閃――

迫る光線を斬り屠っていく。アギトが『さすが剣の騎士』と称賛を送ってくれた。それに礼を告げ、鏡の盾の破壊に移ろうとした時、1枚の盾よりゲルトが出現した。手には一振りの大鎌。奴の武装のようだ。カートリッジを1発ロードし、

――零斬風――

冷気の斬撃を放ってきた。面白い。こちらも“レヴァンティン”を振り払い、

――シュトゥルムヴィンデ――

衝撃波を放ち、相殺する。そのまま互いを斬り払おうと接近。ゲルトの武装は長柄の大鎌。攻撃範囲で言えば向こうの方が広い。が、その優位性など崩してくれる。振るわれる大鎌を捌き、一撃を入れようとした時に、またもや鏡の盾が邪魔に入ってきた。二度も同じ手を食うか。今度は面ではなく、軌道をギリギリで変え、側面から盾を一閃し粉砕する。

『居ない!?』

「どこかの盾に転移したか・・・!」

周囲を見回すが、ゲルトの姿を確認できない。

――アイス・ランツェ――

全ての鏡の盾から氷の礫が飛来してきた。先程の光線よりかは速度も威力も無いゆえに容易く迎撃が出来る。迎撃している間にもゲルトの奇襲に備え警戒しているのだが、なかなか姿を現さない。このまま私とアギトを空に留めておくつもりか? その間に地上を。とも考えられるな。
一度降りた方が良いのかもしれん。だが、『行っちゃヤ♪』ズィーベンの思念通話。ようやく姿を現したか、ゲルト。盾から盾へと転移を繰り返しながらこちらへ向かってくる。その間にも、

――ツァオバー・ゲショス――

魔力弾を放ち、鏡の盾に反射させての多角攻撃。それに対しパンツァーシルトを展開し、魔力弾を防御し消滅させる。下手に“レヴァンティン”を使って迎撃すれば、その隙を突いて来るかもしれんからな。ここで待ち構えていてもいいが、常の後手に回るのも癪だな。とりあえず側に近付いて来た盾を粉砕する。こちらも動き、盾を次々と粉砕して行く。その途中で、

『もうっ、新しく作るの大変なんだよね、ヴァイゼ・シュピーゲル! 判ってるっ?』

ヴァイゼ・シュピーゲルという名らしい鏡を破壊していると、ズィーベンから不機嫌丸出しな思念通話が送られてきた。

『んべー。壊されるのが嫌だったら止めてみろ、ズィーベン!』

『ぅくく・・・アギトお姉ちゃん・・・こんの・・・!』

大鎌のカートリッジが3発とロードされた。大技を使うつもりのようだ。こちらも大技覚悟で装填されている残りのカートリッジをロードする。対オーディンの為に組んだ魔導その2。『これで決まれば良いんだけど』とアギトが言う。私としてもその方が良いが、おそらくこれで決まるとは思えんな。直接、斬らねばなるまい。ゲルトの周囲に今までに無い程の鏡の盾が出現した。数は・・・・26枚、か。

「ごふっ・・・!」

『ゲルト!? んもう、使えないロードね、しっかりしてよね』

ゲルトが吐血しようとも容赦なく叱咤するズィーベン。ゲルトは袖口で口端から流れる血を拭い去った。

『それでいいよ、ゲルト。仮とは言え、さすがわたしのロードね❤』

『ズィーベン、お前・・・!』

アギトの怒りはもっともだ。しかしズィーベンは無視。融合騎(ズィーベン)の操り人形と化したゲルトはそれらに向けて、冷気の光線を無数に放った。回避も防御も出来ない程の圧倒的物量による多角攻撃でもする気か。光線は盾を幾度も反射しているが、一向に私に向いて来ない。別の攻撃手段を取るようだ。

『シグナム、いつでも行けるよっ!』

アギトからの合図に『ああ』と応え、左手に火炎の剣を生み出す。アギトとの融合時でのみ発動出来る、この魔導。アギトの炎熱加速、そして私と“レヴァンティン”の炎熱変換があって行える一撃だ。剣の騎士シグナムと炎の融合騎アギトの烈火の一撃、受けてみろゲルト、ズィーベン。

『剣閃烈火!』『真技!』

アギトとズィーベンの言葉が重なる。左手の炎剣を振りかぶり攻撃態勢に入る。ゲルトの前に1枚の鏡の盾が配置された。そして、周囲を飛びかっていた光線すべてが反射されず転移を行った。

「『火龍一閃!!』」

『エクリプセ・ハルモニーっ!!』

全てを薙ぎ払うように炎剣――火龍一閃を横一線に振るう。転移された光線はゲルトの前面に配置された鏡の盾より集束された状態で、光線ではなく砲撃として発射された。冷気の大砲撃と火炎の大斬撃。相性で言えば、我々の火炎の方が有利だろうが。油断できぬのが目の前のズィーベン。一切合切の余裕や油断はおそらく命取りになる。

「『おおおおおおおおおおおおおおッッ!!』」

『消えろぉぉぉぉーーーーーーーーッッ!!』

衝突し、互いを喰い合おうと我々の間で拮抗している。アギトが『やっぱりズィーベンの氷結は強力だよ』と過去を思い出しているのか気弱な事を言う。ああ、そうだな。ここまで強化した火炎と拮抗できる冷気など聞いて事がない。
しかし・・これ以上この場に留まるのも危ういな。向こうは鏡からの盾からの攻撃ゆえに術後も移動は可能だろう。仕方ないな。火龍一閃を撃ち終え、その場からすぐに離脱する。それとほぼ同時に2つの攻撃が大爆発を起こし、煙幕が周囲一帯を覆い隠す。

――シュテルメン・リッター――

突如として背後に気配が現れたのを察知。やはり来たか、と驚くにも値しない。とは言え、見ずに下手に攻撃を加え、鏡の盾に呑まれて強制転移と言うのも避けたい。仕方なくその場から前へと離れる。離脱の中、振り向きざまに横目でその場を見ると、確かにそこにはゲルトが居た。大鎌を振り抜いた姿で、だ。むぅ、選択を誤ったか。振り向きざまの一撃を入れていれば決まっていたかもしれん。

『あん、外しちゃったみたいだね』

――ウンオルドヌング・ゲヴァルト――

鏡の盾に反射する光線が私に殺到する。パンツァーシルトで防御し、途切れたところでゲルトへ突撃。するとズィーベンは『こっち来ないでよねっ』とさらに大鎌のカートリッジを何度もロードし、魔力弾をバラ撒いて盾に反射させて襲撃させてきた。
こちらも再装填したカートリッジを1発ロード。『アギト、頼みがある』と言うと、『何でもやるよ、シグナム』と快諾。私の考えた手を話すと、アギトは『難しいけど、やってみる』と少し不安そうだったが、賛同してくれた。

『では頼むぞ、アギト』

『シグナムもちゃんと決めてよ』

『任せろ』

ここで私とアギトは融合を解除し、散開した。ズィーベンが『え? 融合解除? 投降するの?』と訊いてきた。それに対しアギトが「違うよ、ズィーベン。お前を倒すための一手だ」と告げる。

『わたしを倒す? フフ、無駄だね。融合状態のわたしとゲルトを相手に、融合解除したアギトお姉ちゃんとそのロードが勝てるなんて思ってないよね?』

「勝つ! 守りたいものを守るため、救いたいものを救うため。その信念に集うグラオベン・オルデンの騎士に、敗北は無いんだから!」

――スターレンゲホイル――

アギトから放たれる魔導スターレンゲホイル。アギトがオーディンと共に過ごし始めてから組んだ魔導なため、効果を知らないズィーベンはそれを攻撃と考えたようで鏡の盾を配置した。ゲルトや盾との距離はおよそ20mほど。まぁそのくらいの距離であれば、効果はそれほど落ちないはずだ。
私はスターレンゲホイルが盾に着弾するギリギリで目を閉じ、耳も塞いだ。直後、閉じたまぶたの向こうが明るくなり、塞いでいる耳にも轟音が届いた。なんの防御策も無く、閃光と轟音で周囲の対象の視覚と聴覚を麻痺させるスターレンゲホイルの効果の直撃を受ければ、感覚に大打撃を被る事になるだろう。

「レヴァンティン」

具現させた鞘を“レヴァンティン”の柄頭に連結し、カートリッジを1発ロード。“レヴァンティン”は剣の形態シュベルトフォルムから大型弓の形態ボーゲンフォルムへと姿を変える。魔力弦を引き絞り、“レヴァンティン”の刀身の一部を流用した槍の如き矢を番える。

『見えない! 聞こえない! ヴァイゼ・シュピーゲル、自動防御!!』

案の定スターレンゲホイルが攻撃だと勘違いしたズィーベンは視覚と聴覚を一時的とは言え麻痺に襲われ、慌てふためきつつ、鏡の盾を自動で防御するよう指示を出した。ここでアギトが「フランメ・ドルヒ!」火炎の短剣を10基と放ち、それに反応した全ての盾が一斉にゲルトより離れる。射線確保。弓本体の上下にあるカートリッジスロットが1発ずつロードを行う。これで終わりだ。ズィーベン。

「翔けよ、隼!!」

≪Sturm Falken≫

矢――シュツルムファルケンを射る。ファルケンは一直線に突き進み、

『あが・・・っ!?』

ゲルトを貫き、そのまま貫通して後方へと飛んで行き爆散した。確実に致命傷。腹に大きな穴を開けたゲルトは力なく落下し始める。
ズィーベンに意識を乗っ取られ、最期まで自分の意思で戦う事の出来なかったゲルトへ向け「恨むのなら恨んでくれても構わない。こちらも必死なのだから」そう告げる。落下の途中、ゲルトの体からズィーベンが勢いよく飛び出してきた。

「こんの役立たず! 何が自動防御!? あっさりかわされて負けてるじゃない!」

今まで好き勝手操ってきたロードたるゲルトに掛ける言葉は、最後の最後まで辛辣なものだった。ズィーベンは「アギトお姉ちゃん! 今度はもっとマシなロードを連れてくるからねっ!」と言い、この場から退却しようとアギトに背を向けた。

『シグナム。ここからはあたしたち融合騎の問題だから――』

『判っている。手は出さん。好きにやれ』

『・・・・ありがとう、シグナム』

アギトがズィーベンへと突撃して行く。その形相は怒りに満ち、止められる雰囲気ではなかった。もちろんそんな雰囲気が無くとも止める気など毛頭ない。アギトが行かなければ私が向かっていたところだ。
融合騎ズィーベン。アレは好き勝手にやり過ぎた。その果てに敗北の責任をゲルトに押し付けた。あれではどのような者がロードになろうと結果は変わらん。術者と融合騎。その関係があそこまで崩れている間は、私とアギトに勝つなど決して出来ん。

「ズィーベン!」

――フランメ・ドルヒ――

「アギトお姉ちゃん!?」

――パンツァーシルト――

「お前はもうここでちゃんと倒しておく!」

「っ! フフ、いいよ、イリュリアの時みたくメチャクチャにしてあげ――」

「煉拳!」

「あぐっ!?」

火炎を纏わせた拳打をズィーベンの横っ面に叩きこんだアギト。ズィーベンは何が起きたのかさえも判らないと言った風な顔で、直撃を受けて吹っ飛んだ。宙で体勢を立て直したズィーベンは殴られた右頬に手を添え、フルフル震えだし、涙目になって行き、終いには嗚咽も漏らし始めた。

「今はもう六番騎(ゼクス)じゃないけど、でも、だけど、お前の姉として、七番騎(おまえ)をもう放っておけない。融合騎は、ロードと一緒に戦うものなんだ。それを忘れて操って、最後には役立たずなんて言うお前は、融合騎じゃない」

姉のアギトが人差し指を突きつけ、妹ズィーベンを糾弾する。

「・・・のくせ・・・」

「なに?」

「うらぎ・・・に・・・」

ズィーベンは俯き、両拳をグッと握り締め、何かを呟いている。そして背に在る一対の翼から冷気が溢れだす。まずい。そう思い、すぐさまアギトの元へ急ぐ。

「わたしを見捨てて裏切り者になったくせに!!」

――氷牙――

我々の頭上に巨大な氷塊が創り出される。顔を上げたズィーベンは「フヒ、ヒヒ、融合騎の在り方とか、もうどうでもいいよね?」涙を流し、泣き笑いの表情を浮かべる。だがすぐにハッとし、涙を拭い去った後で氷塊を破棄、破砕した。

「ズィーベン・・・?」

「・・・わたしも、もう裏切り者みたいだしね・・・」

「なに? 聞こえないよ、ズィーベン!」

「・・・・わたしたち融合騎を造った奴らは、親のようなものだって解るよ・・・。だから言われた事は聴いてきた。でもね、だからって、わたしだって生きてるんだ。アギトお姉ちゃん。解るよね? アギトお姉ちゃんが一番酷い目に遭っていたんだもんね?」

「そうだけど・・・でも・・・」

「ムリばっかり言われた三番騎(ドライ)お姉ちゃんは壊れて廃棄された。一番優しくて、温かくて、わたしやアギトお姉ちゃんにも優しかったのに」

「・・・・うん・・・」

「だから許さない。イリュリアの人間は全員敵。でもわたしが生きるにはイリュリアが必要なのね。だから利用する。ゲルトはその1人。今はイリュリアの言う事を聴いて、いつかは・・・って思っていたんだけどね・・・」

ズィーベンの表情に陰りが生まれる。そして「わたしね、廃棄されるんだって」と自嘲気味に告げた。ズィーベンは続ける。ゲルト・ヴォルクステッドの件で危険思考の持ち主と判断され、たった今廃棄処分されると思念通話が来たのだそうだ。「ど、どうするんだよズィーベン!」と焦りを見せるアギトだが、対するズィーベンはただ「ここまでみたいだね」と嘆息するのみ。

「あ、諦めるのか・・・!?」

「だって・・・わたしを潰しに来るのが、かなり危ない奴ってね。アギトお姉ちゃんだって噂で聞いたことあるよね? 超古代の技術の一部を使った新兵器が、技術部で造るられてるって話・・・」

「えっと・・・テウタの為の融合騎開発と並行して進められてるっていうアレ?」

「うん。アレ噂じゃなくて本当だったのね。でね、その試作機の一機が、試験運用の名目でわたしを破壊しに来るんだって」

「じゃあ逃げろよっ。勝てないなら逃げれば――」

「逃げられるわけないって、アギトお姉ちゃんだって解ってるよね」

「解ってるけど! でもだからってお前を見捨てるなんて出来ない!」

「フフ♪ アギトお姉ちゃんを壊そうとしたわたしを見捨てないなんて。どこまでお人好しになっちゃったの?」

ズィーベンが満面の笑みを浮かべた。しかし「悔しいけど、でももう諦めるね」とズィーベンはアギトに背を向け、地上を見下ろす。私とアギトもそれに倣い、地上を見下ろす。今なお続いている戦闘。一人一人の顔など識別できないが、ヴィータ達の居場所くらいは感知できる。

「ん・・・?」

イリュリア方面より強大な魔力が近付いて来るのが判る。砲撃ではない。地上を移動している。目を凝らすもののやはり見分けがつかんな。「来た」とズィーベンが言う。どうやらこの魔力反応が、ズィーベンの言う兵器らしいな。
うんうん唸っていたアギトが「そ、そうだ! ズィーベン、シュトゥラに来ればいいよ!」そう提言した。オーディンなら招き入れそうだが。しかしズィーベンを受け入れた場合、グラオベン・オルデンの動きに乱れが生まれるかもしれん。

「イリュリアの敵になるんだったら、あたし達の味方になるって事だもん! マイスターだって助けを求める人が居れば、絶対に助けるし救うはず! だから!」

ズィーベンは少し考える仕草を見せ、そして・・・・

「わたしは――」

†††Sideシグナム⇒ザフィーラ†††

「どうやら空での闘いは終わったようだな」

シグナムとアギト、そして氷結の騎士(シグナムらと渡り合うとなると団長級の騎士だろう)の戦闘の終結を、地上でイリュリア騎士を討ちつつ確認した。

「くそっ。何なんだ、この理不尽な防御力は!?」

「我は盾の守護獣ザフィーラ。かような温い一撃など、我が盾の前には無意味と知れ」

――守護の拳――

「おごぉっ!?」

また1人の騎士の甲冑を粉砕し、殴り飛ばす。あまりに単純な作業と化し、少々物足りなくなってきてしまった。いや、そのような事を思うのはいかんな。戦を好むなど、我が主の信念に連なる者として許せん。

「む? なんだ、この魔力は・・・?」

徐々にこの戦域に接近してくる魔力反応を感知。今まで戦場で相見えた敵性騎士より確実に上だ。最大警戒で待ち構えている間、周囲に居るイリュリア騎士が次々と離れていく。奇襲の心配をせずに済むのは助かるが、その分これより来るイリュリア騎士の実力の程が判る。
巻き込まれるのを恐れているのだろう。離れていく者たちの顔色は青褪めている。そして、ようやく姿を視認できるほどまでにその者が接近してきた。性別は男。歳は、おそらく青年と呼べるほどに若いだろう。

「イリュリアの新手か・・・?」

「・・・・なあ、アンタ、これくらいの小さいチビ、見てないかい?」

その者は、両手の平を上下に向かい合わせ、我にそう尋ねた。アギトほどのものだろう。この者の狙いは、裏切りの融合騎アギトか・・?
その問いに対して我は「知らぬな」と簡潔に答える。するとその者は「そうかい。邪魔したな」と背を向けようとした。我を討つつもりはない、ということか? しかし正確な目的が判らぬが、アギトにとって危険であると思える以上は放ってはおけまい。

「待て。我はグラオベン・オルデンが盾の守護獣ザフィーラ。このままお前を行かせるわけにはいかん」

――鋼の軛――

名乗りを上げ、その者の行く手に拘束条――鋼の軛を突き出させ、行く手を封じる。その者はゆっくりと我へと向き直り「邪魔しないでくれよ、おっさん」とやる気の見えぬ双眸を向けてきた。

「そうはいかん。お前がイリュリアの者であると判断した以上、討つべき敵だ」

「そうかよ。そんなに死にたいなら付き合ってやるよ」

構えらしい構えを見せず、棒立ちするその者に「名は?」と尋ねる。

「名前? 騎士の決闘の前には名乗りが要るんだったか。面倒だな。ま、いいや。俺っちの名は、ゼフォン。エグリゴリ・シリアルヌンマー・ツヴァイ、ゼフォン・エグリゴリ」

「エグリゴリ・・・?」

“エグリゴリ”。我が主オーディンがこの世界に訪れたその理由の中に出てきた名称だ。この者が、我が主が身命を賭してでも、破壊という形での救いを与えたいという“エグリゴリ”なのか・・・?

「お前、オーディ――」

「無駄口叩いてる暇あったら、避けな!!」

――岩衝鉄破(フェルゼン・ベルク)――

我の足元より岩石の剣が4基と突き出してきた。危うく串刺しになるところだったが、紙一重で後退する事で回避でき・・・

「うぐ・・・っ!?」

腹に強烈な痛みと熱。視線を下へ向け、我が身に起こっている異常を視界に収めた。我の腹より突き出ている岩石の剣。「呆気ないもんだな」と背後よりゼフォンという男の声。
知覚できぬ速度で背後に回り込まれ、背後から我が体を岩石の剣で貫いたのか・・・?
我がただの人間ならばこの一撃で命を落としていただろうが、生憎我は人ではない。我は「ぬ・・・ぅぐ・・・!」腹より突き出る岩剣を鷲掴み、破壊もしくは抜こうとするが、

「よしな。傷口が広がって苦しみが強くなるだけさ。大人しく助け来るのを待ってろ。別に俺っちはアンタを討ちに来たわけじゃないんだ。裏切りの融合騎ズィーベンの破壊。それが、今の俺っちの仕事。アンタんところに寝返ったゼクスの始末じゃない。ほら、アンタが頑張って俺っちとやり合う理由は無い。だから足掻くな」

我を置いてどこかへ向かおうとするゼフォン。アギトの心配は無くなったが・・・。むぅ、いかん。意識が閉じかけて来ている。だが、落ちる前に、これだけは訊かなければ・・・。

「オー・・ディン・・・知って・・・いるか・・?」

「オーディン? シュトゥラの魔神だろ。有名だから知ってる」

オーディンでは通じないのか・・・? ならば・・・

「セイン・・・テスト・・・は・・・」

「あ? なんだアンタ、セインテストの仲間か? 」

我は、この場で死ぬ事を覚悟した。それほどの覚悟を強いられるほどに、ゼフォンより放たれる殺気が強すぎた。ゼフォンは我へと振り返り、距離があるにも拘らず、蹴打を放つ体勢を取った。

「セインテストは最優先でぶっ殺す。それが、俺っち達エグリゴリの役目だ。アンタがセインテストの関係者なら、ここでぶっ殺してセインテストに挑発すんのもありかもな」

――破岩砲弾(コメート・フェルス)――

ゼフォンが地面を蹴り上げることで造られた岩塊が、我へと放たれた。

(申し訳ありません、我が主。我ザフィーラ。この場でこの命を散らすことになるようです)

高速で飛来したその岩塊が我の胸に直撃した瞬間、我は全ての知覚を失った。


 
 

 
後書き
ヨー・レッゲルト、ヨー・ナポット、ヨー・エシュテート。
ここまでが小説家になろう・にじファンで掲載していたものですね。
次回からが、掲載できなかった話となります。ほぼ戦闘パート続きです。
過疎りそうでとっっっっっっっても恐ろしいです・・・。 
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