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転生赤龍帝のマフィアな生活

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四話:大変な変態

イリナがいなくなって三日程経ったある日いつも通り精神世界でドライグと遊んでいるとき(半殺しにしているとき)事件は起きた。

「ご主人様、ドライグばかり苛めないでどうか私の頭を踏みにじって下さい!!!」
「「………………は?」」

え!?これどういうこと!!?なんか今エルシャが爆弾発言したんですけど!!?
踏んでくださいと全力でアピールするように俺の足もとに這いつくばってハアハアと荒い息をするエルシャ……こ、怖い。

「エ、エルシャ、どうしたのだ一体……熱でもあるのか?」
「ドライグ……私はいたって健康よ、ただ、痛み(元気)が足りないの。」

そう言って俺の足に縋り付いてこようとするエルシャが恐ろしくて思わず蹴り飛ばしてしまう
が、それは間違いだった。

「ああ!!もっと、もっと蹴り飛ばしてください、ご主人様!!!」
「近寄んじゃねえ!!ド変態が!!!」
「その罵倒……素敵!!……もっと私を罵って下さいご主人様!!!!!」

顔を上気させ喋るエルシャに思わず鳥肌がたってしまう……変態がこうも恐ろしい物だったなんて知らなかった、というか出来れば一生知りたくなかった……。

「エルシャ!!目を覚ませ!!誇り高き女性最強の赤龍帝はどこにいったのだ!!!??」
「黙りなさい、ドライグ……私は残留思念となってから今までずっと考えてきたんです、自分に何が足りなかったのかを……そしてご主人様と出会って容赦なく蔑まされていくうちにようやく気が付けたんです、私に足りなかったものは――痛み(快感)だったと。」
「「絶対間違ってんだろ!!!」」
「いいえ、間違ってなどいません、だって生きているときには感じられなかった興奮がご主人様からのお仕置き(ご褒美)の度に感じられるんですもの!!!!!」

どうしようこの変態………正直手に負えないんだけど……。
何とか正常に戻さないと間違いなく俺の精神衛生上かなり有害な存在になる……っ!!
罵られて快感を感じるなら褒めて快感を感じる様に戻せばいいよな?それに懸けよう。

「エルシャ……今までてめえを罵ってきたが、別にてめえの事が嫌いなわけじゃねえぞ……修行相手になってるのには感謝してる。」
「ご主人様………では、その…お願いしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「何だ?言ってみろ」
「靴を舐めさせてください!!!!!」
「このド変態が!!!!!」

ダメだ、もう取り返しのつかないレベルで変態になってる……今度から人を踏みにじったりするのやめよう……ドライグにはするけど。

「ああ…!!上げてから落とすなんて……やはりご主人様は最高です!!!!」
「そんなことで褒められたくねえよ!!!!!」

ああ、ホントにどうしよう……これ……もう神頼みでもするしかないか……。
そう言えば少し離れた場所に神社があったな……行ってみるか……。
しないよりはマシだろ。

「もう我慢できません!!!靴を舐めさせてください!!!!!」
「近寄んじゃねえ!!大人しくしてろ!!!」
「縛られるのも……素敵…!!!」

鎖を創り出しエルシャを縛り上げて拘束する、変態にとっては御褒美になっているがこれで俺にとっては実害はなくなるので一先ず良しとしよう。

「ご主人様!!どうかこのまま私を叩いてください!!!」
「……ドライグ、エルシャを見張っとけ、俺は現実に戻る。」
「ああ了解した、相棒。……それにしても…なぜこのようなことに……誇り高き赤龍帝は一体どこにいったと言うのだ……。」

ああ……こんなことになるならエルシャにはもう少し優しくしてやれば良かった……まあ、このままそっとしておけばまた元に戻るかもしれないんだ、そう悲観することは――

「放置プレイも―――イイッ!!!」

どうすりゃいいんだよ………。



変態の声を無視しながら町はずれの神社に向かっていると妙な予感がしたので立ち止まる。

「ドライグ、何か感じねえか?」
『ああ、これは恐らくは殺気だな……相棒に向けられている物ではないが、近くに殺気を放つ者がいることは間違いない。』
「ちっ、面倒なことばかり起こりやがる……イラつかせやがって、カッ消してやる。」
『ご主人様!!どうかその苛立ちを私にぶつけてください!!!さあ、早く!!!』
「…………………いくぞ、ドライグ。」
『ああ…そうだな………。』

ドライグの声が今にも泣きだしそうな声だったのは気にしても仕方のないことだろう。
それよりも今は俺の殊勝な願いを妨げる奴らをカッ消すのが先だ。
誰だか知らないが生きて朝日を拝めなくなっても恨むなよ?

「その子を渡して貰おう、その子は忌々しき邪悪な天使の子だ。」
「この子は渡しません!!この子は私の大切な娘です!!そしてあの人の大事な娘なんです!!!死んでもあなた達には渡しません!!!」
「……お前はあの邪悪な堕天使に心まで穢されたか……ならば容赦はせん!!!」

めんどくさい、状況だなこれ……明らかに男達が加害者側だが、どちらも俺の邪魔であることには変わりはないよな?
……まとめて消すか?

(相棒、流石に助けた方がいいと思うのだが……。)
(ちっ、しょうがねえ……気にくわねえが助けてやるとするか。)

ドライグと相談していると、男が刀を振り上げ始めた。
くそっ!!時間がないか!!!

(ドライグ!!)
(承知した!!!)

赤龍帝の手袋(ブーステッド・グローブ)を装着し、母娘の前に飛び出す。

「朱乃っ!!!」
「母様ああああああああっ!!!??」

母親が娘を庇い斬りつけられる瞬間――

「カス共がごちゃごちゃとやってんじゃねえ!!!」

グローブから雷の炎を噴射し、その炎で盾を作り男の刀を防ぐ。
ふう、なんとか間に合ったか……雷の炎の硬化…結構役に立つもんだなこれ。
さて……他の炎の実験もとい――ストレス発散とでもいきますか!!

「子供!?貴様何をした!!?まさか堕天使の仲間か!!?」
「あ?誰がカラスに付き従うか……俺はただイラついてるだけだ!!!」
「あ、あなたは?」
「おい、女。俺に殺されたくねえならそのガキと一緒に下がれ。」
「っ!!……わ、分かりました。」

母娘が下がったのを確認すると同時に倍加しておいた男たちを包み込むように鎮静の雨の炎を噴射する。

雨の抱擁(アバラッツ・ディ・ピオッジャ)!!!」
「何だこの炎は!!?体の自由が効かないぞ!?貴様、何をした!!!??」
「てめえらは今全身麻酔を打たれたみてえなもんだ。てめえらはもう動けねえ。ドカスらしく這いつくばってろ。」
「貴様は化け物か!!?」
「はっ!!てめらみてえなカスになるぐらいなら、化け物で結構だ!!!ドカス共が出しゃばるからこんな目に合うんだよ!!!」
「ぐああっ!!?」
「せいぜいそこで呻いてろ。」

嵐の炎で男の腕を分解しもぎ取る。それから男の持っていた刀を奪い取る。
……妖刀の類か、結構良い物を持ってるな。

「借りるぜ。」
「ぎゃあっ!!?」
「少し斬られただけでわめくんじゃねえよ、ドカス共が。」

雲の炎の特性増殖で刀の刀身を伸ばし離れた奴に突き刺していく、雲の炎はある程度武器を選ばないと使えないな……特にグローブだと使いどころがほとんどないからな、今度考えておこう。
晴れの炎は……治癒に使うとして霧の炎はカモフラージュ系が一番有効か。
大空の炎は……まあ、今回は特性を生かす必要もないな、さて……そろそろ終わらせるか。

「安心しな……カスはカスらしく灰にしてやる。」
「ま、待ってくれ!!何でもするから命だけは!!!」
「ドカス共に生きる権利はねえ!!!カッ消えろ!!!!!」
『XBURNER!!!』
「ぎゃあああああああっ!!!??」

限界まで倍加した死ぬ気の炎を一気に解放してまとめてカッ消す。男たちは文字通り塵も残さず綺麗に消えたがついでに辺り一帯も塵も残さずに消えてしまった………。

(相棒……やりすぎではないか?)
(マダオは黙ってろ!!!後で燻製のように吊るすぞ!!!!!)
(燻製のように吊るされるっ!!……ハアハア!!!)
そう言いながら荒い息を吐くエルシャ……。
(……………確かにやりすぎだな。)
(いや、相棒が分かってくれればいいのだ………なぜこんなことに……。)

もうホントに神頼みしかないな……取りあえず参拝しに行く前にこの惨状を何とかするか。
取りあえず、携帯を取り出し電話をかける。

『セバスチャン、俺だ。後始末を頼む。』
『かしこまりました。』
(………セバスチャンは今イタリアにいるのではないか?)
(あいつなら何とかするはずだ。)
「お坊ちゃま、あちらの地形の修繕でしょうか?」
(馬鹿なっ!!!??)

流石セバスチャンだな、時差をものともせずに整然とした佇まいを崩さない、執事の鏡だな。ん?感心するところが違う?何のことかさっぱりだな。

「そうだ。」
「では少々お待ちください。」
(ドライグ今のうちに参拝に行くぞ。)
(……前から思っていたがセバスチャンは一体何者なのだ?)
「私、執事以上でも執事以下でもありません。」
(俺の心を読んだのか!!?)
「執事ですので。」

そう言い残し再び作業に戻るセバスチャン、流石だ。
そのまま俺の方をポカンと見つめる母娘を無視して参拝をすませる。
どんな神でも構わないからどうか、あの変態を元に戻してください……っ!!
もう、祟りでも何でもいいからお願いします、ホントッ!!!

(祟り?むしろご褒美です!!!私達の業界では大歓迎です!!!)
(もう……あのころには戻らないのだな……エルシャ……。)

ドライグの声が妙に哀愁に満ちているのが心苦しい……。神ですら治せない変態なんて俺の手に負えないぞ……。いっそエルシャもカッ消してしまおうか――

(ご主人様が私をカッ消す……!!!想像しただけで興奮してきました!!!!!)

どうしよう、こいつ絶対死なない気がする……まさかこんなところに人生最大の困難が待ち受けていたなんて考えもしなかった……あのころが懐かしいよ……。



「大丈夫か!!朱璃、朱乃!!!」
「あなた!!!」
「父様!!!」

あれは父親か……あいつ、強い……っ!!堕天使中でも相当上の奴だな。
超直感があいつと戦ってはならないと言っているのが証拠だ。

「すまない、お前達を守らねばならないのに……。」
「大丈夫です、あの子が全て倒してしまいましたから。」
「あの子?」

そう言って俺の方を見る父親……一気に警戒を強めたな。
俺の中の神滅具(ロンギヌス)を見抜いたのか、俺自体を危険視しているのか分からないが今ここでこいつと戦うのは分が悪すぎる……どうする。

(ご主人様……あの男――)

何だ?やけにエルシャが真面目だな――っ!!まさか普通に戻ったのか!!?

(同業者の匂いがします!!!)
「てめえもドMなのかよ!!!??」

一瞬でも期待した俺が馬鹿だった……というかお願いだからエルシャの思い過ごしであってくれ!!!

「なっ!!なぜそれを――はっ!!?」
「母様、ドMって何なのですか?」
「朱乃、世の中には知らない方がいいこともあるのですよ。」

まじかよ……そんなカミングアウト聞きたくなかっぞ、なんか一気にあの父親が弱そうに見えてきた。

(それにあの母親もドSの匂いがぷんぷんします。ああ……あの人に叩かれてみたい―あ!!安心してください私はご主人様に痛めつけられる(ご褒美をもらうのが)一番好きですから!!!!)
(俺はてめえが大嫌いだよ!!!ド変態が!!!!!)
(ああ…!!やっぱりその罵倒がイイッ!!!!!)
(相棒……もう諦めろ。)

ドライグが完全に諦めている……変態を正常に戻す方法はこの世にはないのか……っ!!

「ゴホン……とにかく、妻と娘を助けてくれてありがとう、礼をさせてくれ。」
「勘違いするな、邪魔だからカッ消しただけだ。そいつらが俺の邪魔をしてたらそいつらもカッ消してた。」
「それでもだ。」
「けっ……貸し一つで十分だ。」
「ありがとう。良ければ君の名前を聞いてもいいだろうか?」

名前か……別に言ってもいいけど教会と結びつきがあるとばれると不味いか……偽名でもいいかな?

「XANXUS……。」
「失礼かもしれないがそれは本名かね?」
「相手にも事情があることを少しは考えろドⅯ野郎、それに…ヒントはある。」
「うっ、確かに無礼だったな……しかしなぜ私がドMだと……」
「身近に同類がいるせいだ……てめえよりよっぽど重度のな。」

出来ればあんたに預かって欲しいぐらいだよ……正直俺には荷が重すぎる。
残留思念だけでも他人に移す方法がないか今度研究してみるか。この際別の物に移すことも考えた方が良いかもしれない……こういうことを才能の無駄遣いというのだろうか。

「あ、あの……」
「何だ、ガキ。」

(相棒も十分子供だと思うのだが――あああああっ!!?落雷が雨の様に降ってくるうううううっ!!!!!)
(ドライグばかりずるいです!!ご主人様どうか私にもお仕置き(ご褒美)を!!!)

もうやけだ、喋れなくなるまで痛みつけてやる。
そしてそのまま焼け死んでしまえばいい!!!
まあ……無理だろうけど……。

(ああ…!!気持ち…いい……!!!)

ほらな……べ、別に泣いてなんかいないんだからな!!!

「あなたは化け物って言われても嫌じゃないのですか?」
「カスに何言われようが所詮はカスの戯言だ、取り合う必要もねえ。」
「で、でも私はいつも化け物って言われて……凄く嫌なんです……。」
「朱乃……俺のせいで。」

たく、最近はどいつもこいつもしけた顔しやがって……イラつくな。

「てめえは自分が化け物だと思ってんのか、あ?」
「思ってない!!……でも――」
「てめえみたいな俺にかすり傷一つ付けれねえような奴が化け物だ?はっ、笑わせんな!!力のねえ化け物なんざ存在しねえ!!!」
「強くなったら化け物になるのですか?」

「てめえが考える化け物が何なのか知らねえがてめえはそこの親父が化け物だと思うか?」
「父様は化け物なんかじゃない!!!」
「そいつは俺よりも何倍も強えぞ?それでもか?」
「はい!!」
「そう思うなら、てめえが化け物じゃないことぐらい分かるだろうが。」
「そ、そうなんでしょうか……。」

ああ、めんどくさいなこいつ。自分の意見がないのか?

「てめえの生きたいように生きててめえのなりたい自分になりゃいいだけだろうが!!!うじうじ悩み過ぎなんだよてめえ!!!!!」
「なりたい……自分……。」
「後は勝手に考えやがれ!!!」

そこで話を切り上げてさっさと帰ることにする。さっき俺が壊した場所はセバスチャンが既に直していた。流石だ、セバスチャン。

「あ、あの!!」
「あ?」
「その……話を聞いてくださってありがとうございます。」
「けっ…………もう悩むんじゃねえぞ。」
「っ!?はい!!!」

礼を言われるとなんか調子が狂うな……何なんだよ、いったい。

(相棒は―素直じゃ――ないから―な)
(そうです――ご主人様は―素直じゃ―ない―です)
(てめえら痺れながら喋るんじゃねえよ!!気持ち悪いだろうが!!!)
(雷と―ご主人様―の――罵倒――気持ち―いいっ!!!!!)

今日は早く寝よう……一生分疲れた気がする……。

 
 

 
後書き
反発する→お仕置きされる 何もしない→お仕置きされる 媚を売る→お仕置きされる

何かが吹っ切れる→変態になる
ここまでのエルシャさんの変遷です……なぜこうなった。 
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