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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第八十三話 Weapon Laboratory

 
前書き
次はゼロ。 

 
液体に満たされたカプセルの中でゼロは眠るように瞳を閉じている。
彼を包むナノマシンは破損したアーマーを着実に修復していくが治療溶液が中枢まで浸透するにはある程度の時間を要する。
加えて、外装と異なり複雑な構造を誇る内部組織には効き目が薄いためにここまで修復するのに時間がかかる。

ピピッピピッ!!

ルナ「お、終わったか」

カプセルから溶液が抜けていき、それと共に身体に付着したそれも取れる。
カプセルを解放するとゼロが出て来る。

ルナ「ん~と、身体は異常なし、電子頭脳も影響なし。オールグリーンだ。気分はどうだゼロ?」

ゼロ「悪くない。だが…」

身体を動かすが関節が所々ぎこちなさを感じる。

ルナ「はは、お疲れ。ハンターベースにパーツとナイトメアソウルを持って行ったし、後は…」

ゼロ「後は悪夢を止めるだけだ。次はウェポン研究所に向かう。調査員から黒幕の居場所を聞き出してやる。アイゾックのこともな」

ルナ「OK、残り2体…そろそろクライマックスだな…」



































研究所では許可なく強力な兵器が造られていた。

『侵入者発見!直チニ迎撃セヨ!!』

ゼロが足を踏み入れるのと同時にやかましい警告音が鳴り響く。
巨大メカニロイドがゼロに攻撃を仕掛けてきたが、ゼロはシールドブーメランで攻撃を凌ぐ。

ゼロ「イルミナか…確か廃棄されたはずだが…」

厄介な物を…。

ゼロ「こんなメカニロイドで俺を止められると思うな!!」

ルナから授かった数々の武器を駆使してイルミナを逆に返り討ちにする。

ゼロ「すぐに終わらせてやる…こんな戦いは」

数え切れない悪夢を見てきたゼロは己に言い聞かせるように呟くとこのウェポン研究所の調査員、インフィニティー・ミジニオンの元に向かう。


































ミジニオン「あれー!!死んだんじゃなかったのー?ゼロって人だよね?」

ミジニオンがゼロを見遣り、素っ頓狂な声を上げた。

ゼロ「ナイトメア調査員、インフィニティー・ミジニオンで間違いないな?」

ミジニオン「そうだよ。もー、他の調査員はなーにやってんのかな?ったく、僕が苦労するんだよね」

ゼロ「(その喋り方、何とかならんのか…)」

ゼロは呆れてものが言えなかったが、とうのミジニオンは自信たっぷりで語尾を伸ばしただらけた口調で続ける。

ミジニオン「まーいっかー。君を殺してゲイト様に褒めてもらおうっと!!いっくよー!!」

ゼロ「望むところだ」

リコイルロッドを構えるとミジニオンの分身を1体ずつ破壊していく。
ルナはリコイルロッドをトリプルロッドの劣化版だと言っていたが、セイバーと同等の出力でありながらトリプルロッド、チェーンロッドなどより小回りが利き、使い勝手の良さはロッド系の武装で特に優れている。
分身と泡はシールドブーメランを投擲することで一網打尽にしたが、本体のミジニオンが光の雨を降らす。
黄金の光がゼロの背中を穿つ。

ゼロ「ぐっ!!」

ミジニオン「あっはっは!!」

ゼロを嘲笑いつつ再び攻撃を仕掛けようとするが、ゼロはリコイルロッドを戻し、ゼロナックルのエネルギーをセイバーに収束させる。

ゼロ「舐めるなあ!!」

擬似チャージセイバー。
ルインのチャージセイバーより一回りでかい衝撃波を繰り出す。
まともにチャージセイバーを受けたミジニオンが分身する瞬間をゼロは見逃さない。
ゼロナックルで分身を破壊し、ミジニオン本体の頭を掴む。

ゼロ「鬼ごっこは終わりだ」

背の低いミジニオンの足が地面を離れ、プラプラしている。

ミジニオン「何すんだよー!!」

ゼロ「ゲイトの居場所を教えろ。そうすれば命だけは助けてやる」

ミジニオン「何だって!?」

ゼロ「喋りたくないのならそれでもいい。お前の頭を破壊してメインメモリーからゲイトのデータを奪えばいいだけだからな…」

チップが埋め込まれた箇所を中心に掌にエネルギーが収束されていく。
余裕に満ちていたミジニオンの顔が青ざめていく。
蒼白の面の次は身体を震わせる。
震えはゼロのせいだけではなかったが。

ゼロ「…来たか」

セントラルミュージアムで対峙した漆黒のレプリロイドだ。
ミジニオンを放り投げると天井を破壊して現れたハイマックス。

ハイマックス「オリジナル…消えろ…消えろ…」

ゼロ「いきなり狂ってるか?」

初めてハイマックスとまともに対面したゼロはハイマックスの強大なエネルギー反応に顔を顰める。
まともにやり合えば互角か、見たところ上等の合金で造られているボディはダメージを与えにくそうだ。

ゼロ「お前達の目的は何だ?」

ハイマックス「…俺の目的は貴様を処分することだ。オールドロボットは消えろ」

ゼロ「何の理由があって…それにオリジナルだと?どういうことだ」

答えはない。
ハイマックスは巨大な光弾を腕に纏わせながら突っ込んで来る。

ゼロ「気に入らないな。質問には答えるものだぞ」

軽口を叩いていられるのもそれまでだった。
敵は広げた手から光弾を放ち、更に青い輪のようなものを纏いながらゼロに突進する。

ゼロ「チッ…」

光弾はシールドブーメランで防御しながらリコイルロッドの連撃を浴びせるがハイマックスのアーマーには傷1つ付かない。
ならばリコイルロッドのチャージ攻撃を喰らわせるが、結果は同じだった。

ゼロ「チッ!!リコイルロッドのチャージアタックも効かないのか!!?」

リコイルロッドのチャージ攻撃の最大の特徴は相手を吹き飛ばすことと、衝撃による内部破壊である。
いくら上等な合金とはいえ、衝撃までは緩和出来ないというのにハイマックスは顔色1つ変えない。

ゼロ「ダブルチャージショット!!」

バスターショットから放たれるフルチャージショット2連発。
しかしそれもハイマックスの防御性能の前には無力である。

ハイマックス「無駄だ。デスボール」

巨大な光弾をまともに受けたゼロは意識を持って行かれる苦痛を受ける。
電流が身体を駆け巡り、ゼロは身体から火花を散らしながら床に倒れる。

ゼロ「くっ…」

ハイマックス「オールドロボットの力など所詮この程度だ」

ゼロ「何を…」

オールドロボットとは、年代古くに造られたレプリロイドに対する蔑称である。
ハイマックスは優越感に浸るでもなく、無表情でゼロを“オールドロボット”と見下す。

ハイマックス「俺は俺1人で充分だ…。オリジナルのオールドロボットなど必要ない…」

ゼロ「(何だと…!?)」

ハイマックスはとどめとばかりに突進してきた。
その時、脳裏にウェポン研究所に向かう前にルナとした会話が過ぎる。





































ゼロ『強化形態?』

ウェポン研究所に向かう前にルナに言われた言葉を言う。

ルナ『ああ、お前の修理をしてる時に偶然発見したんだ。ほら、いつも大戦の時になると色が変わるだろ?』

ゼロ『あれか?あれがどうかしたか?』

ライト博士に力を引き出してもらうことで発現する強化形態。
このコピーボディではあれが使えるということなのか?

ルナ『その強化形態なんだけど、今までとは違うんだよ。』

ゼロ『?』

ルナ『今までの強化形態は攻撃力、防御力をバランスよく強化されていたけど、これは防御を限界まで削って攻撃力と機動力に特化した形態。いわば高火力&機動力紙装甲の形態だ。攻撃力が通常の2倍で機動力が通常の1.5倍の強化になる。その代わり受けるダメージも通常時の2倍になるけどな。だから使う時は防御強化のパワーアップパーツつけとけ。無いより遥かにマシだろうからな』

ルナが手渡してくれたのはダメージを緩和してくれるショックアブソーバーであった。

ゼロ『分かった。』

ショックアブソーバにより、強化形態を使った後でも通常時とほぼ同じ防御力だ。

ルナ『かなり扱いに困る強化形態だろうけど使いこなせば異常なまでに強いぜ?攻撃は最大の防御って言葉を体言したようなもんだな。因みに俺はこの形態を“ブラックゼロ”と名付けてみた』

ゼロ『…そのままだな』

ルナ『小難しい名前よりシンプルな名前の方がいいだろうが!!』



































ゼロ「…強化形態プログラム、作動開始。」

額のレンズにWの文字が浮かんだ瞬間、ゼロの全身から立ち上るエネルギーがより強大さを増していき、周囲の空気を凍てつかせていくかのようだ。

ハイマックス「!?」

凄まじいエネルギー反応にハイマックスは思わず距離を取る。

ゼロ「真の力を見せてやる!!」

ゼロのアーマーが漆黒に、その金色の長髪が冷たい輝きを湛える銀色へと徐々に変わっていく。
身体中に漲るエネルギーがスパークし激しい火花を散らした。
放出される強大なエネルギーは比類が無く、前回の大戦で覚醒したゼロに匹敵するエネルギーを内包する漆黒の闘神がハイマックスの目の前に降臨していた。

ゼロ「ブラックゼロ…全システムオールグリーン…」

閉じていた瞳を開くとどこか怯えた表情をしているハイマックスを見据える。

ゼロ「さて…第2ラウンドだ!!行くぜ!!」

ハイマックス「ば、馬鹿な…俺は…ゲイト様の最高傑作…最強のレプリロイド…ハイマックスだ…貴様のようなオールドロボットなどに!!」

ゼロ「オールドロボットか…まあ、否定はせんがな。俺は100年前に造られたロボットだからな!!」

自分が造られたのは今から約100年前。
骨董品に部類されてもおかしくない年月だ。

ハイマックス「消えろおおお!!」

光弾を連射するハイマックスだが、ゼロは強化された機動力でそれをかわしてみせる。

ゼロ「当たるものか!!ダブルチャージショット!!」

出力が大幅に増大したフルチャージショット2連発。
1発目は障壁で阻まれるが、2発目で障壁が掻き消される。

ハイマックス「何!?」

障壁を掻き消されたことに動揺するハイマックス。
ゼロはその隙を見逃さず、リコイルロッドを構えてエアダッシュでハイマックスに肉薄する。

ゼロ「はああああああ!!」

リコイルロッドの連撃をハイマックスの腹部に連撃を浴びせるゼロ。

ハイマックス「ぐううう!!」

通常時のリコイルロッドとは比較にならない威力はハイマックスの特殊合金のアーマーさえも容易く貫く。

ゼロ「ふんっ!!」

回し蹴りをハイマックスの側頭部に炸裂させ、吹き飛ばす。

ハイマックス「デスボール!!」

すぐさま体勢を整え、巨大な光弾をゼロに放つ。
シールドブーメランを構え、巨大な光弾を掻き消す。
シールドブーメランはショットイレイザーとショットリフレクター機能を持っている。
簡単に言えばエネルギー弾を消滅させる能力と跳ね返す能力をこの武器は持っているのだ。
ハイマックスのデスボールのように高出力のエネルギー弾は跳ね返すよりも消滅させた方が負担が少ない。
更にビーム発生源の本体もアルマージのアーマーにも使われた特殊合金が使われているため、強化形態によって大幅に弱体化したゼロのアーマーの防御力を補って余りある防御性能を誇る。

ゼロ「こいつも思っていた以上に使えるな…感謝するぞルナ」

ハイマックス「消えろオリジナル!!」

全てのエネルギーを拳に収束させ、ゼロに殴り掛かる。
ハイマックスの最大最強の攻撃。
シールドブーメランの防御力を持ってしても耐え切れないだろう。
ゼロもセイバーを握り締め、ハイマックスを迎え撃つ。
ゼロナックルのエネルギーを限界までセイバーに収束させる。
ゼロはハイマックスがぶつかる直前でダッシュし、左足を軸足に凄まじい速度で身体を回した。
丁度独楽が遠心力でスピードが増すように。
スピードで破壊力を上乗せしたチャージセイバーはハイマックスのボディを横一文字に両断した。

ハイマックス「ば、馬鹿な…俺はゲイト様の最高傑作…お前のようなオールドロボットに負けるなど…有り得ない!!」

ゼロはセイバーをバックパックに戻すとハイマックスに歩み寄る。

ゼロ「…俺達ハンターは力がなくては務まらない…。だが力だけでは足りない。お前達のような悪に負けないという、強い心が必要だ…大事なのは心なんだよ」

ハイマックス「戯れ言を…」

ゼロ「お前にゲイトの居場所を聞いた方が早そうだ…。さっきの調査員は逃げちまったしな。お前は…ゲイトを知っているのだろう?」

ハイマックス「………」

ハイマックスはゼロを無言で見つめ、しばらくして重い口を開いた。

ハイマックス「ゲイト様は俺の生みの親だ。親はお前のDNAを元に造られたレプリロイド…」

ゼロ「何だと?」

ハイマックス「コロニーの破片落下地点でゲイト様はお前の残骸を拾い…DNAを解析した。ゲイト様はお前の残骸に付着していたデータを突き止め…ナイトメアウィルスを作り上げた。同時に最高のレプリロイドを追い求め、最高傑作として俺を造ったのだ。」

ゼロ「…………」

ハイマックス「俺はお前のコピーのようなものだ。ゲイト様は俺を最高傑作と呼んでいたが、俺はお前が消えない限り最強の“存在”を証明出来ない…だから俺はお前を倒し…“存在”を示したかった」

ゼロ「ハイマックス…」

ハイマックス「ゲイト様はお前に何の興味も示さなかった。お前に執着したのは寧ろアイゾックというレプリロイド…だった…」

それだけ言うとハイマックスは機能停止した。

ゼロ「アイゾック…か」

ナイトメア調査員を組織し、大仰な演説を披露した科学者レプリロイド。
あのレプリロイドが自分を…。
そう思った矢先、正面から靴音がした。
靴音は主の姿を伴い近づいてきた。
噂をすればアイゾック本人が姿を現した。
アイゾックはゼロを見つめると含み笑いをする。

ゼロ「何がおかしい?」

笑いは高笑いに変わる。
老人にしては酷く騒がしい笑い方であった。

アイゾック「アーハハハッ!!笑わずにはおられんわい!!あのエックスでさえ歯が立たなかったハイマックスを、ルインに続いて倒してしまうとはな!!ハハッ、笑いが止まらん!!」

事実、アイゾックはいつまでも笑っていた。
何故かゼロは彼が酷く気に入らなかった。

ゼロ「…気でも狂ったか?お前の仲間がやられたんだぞ?何がそんなにおかしい?まあいい…お前にゲイトの居場所を答えてもらう。力ずくでな!!」

一足飛びにセイバーを構え、アイゾックに斬り掛かった。
しかしアイゾックは余裕の笑みを浮かべていた。
ここで女神はある失敗を犯していた。
彼女がゼロに与えたボディはオリジナル・ボディを似せた物である。
彼女はロボット破壊プログラムとゼロの夢に介入するプログラムが無いコピーボディを与えたのだが、1つだけ外していない物がある。

アイゾック「ヌハハハ!何か言ったか?小僧!!」

手を突き出すと、ゼロの身体を電流が襲う。
それは彼がゼロの動きを止めるプロテクトプログラムである。

ゼロ「うわああああ!!な、何だ!?身体が…動かん!!くっ…」

苦痛に膝をつくゼロを悠然と見下ろすアイゾック。
その様子はまるで抵抗する子供をひらりとかわす親のようだった。

アイゾック「ゼロ…貴様のことはこのわしが1番…フン、まあいい。生きていることさえ分かれば貴様などいつでも捕らえることが出来る」

アイゾックはそう言うと空間を捩曲げる。

アイゾック「(しかし、誰がやったのか分からんがわしが造り出したプログラムが一部無くなっておる。これは保険の製作を急いだ方がいいかもしれんな…)」

ゼロ「まっ、待て!!逃げるのか?くっ!か、身体が…」

必死で身体を起こそうとするが身体が麻痺して満足に動けない。

アイゾック「ふん、今の貴様に何が出来る?ポイントTRUL13にゲイトの研究所がある。逃げはせん。また会おう。約束する」

嫌味たらしく言うとアイゾックの姿は消え、ハイマックスの残骸と擦り切れた床や壁といった戦いの後だけ残された。





































アイゾックが現れたのはアイゾックが所有している研究施設。
自身の研究室にある“A”の文字が刻まれたカプセルを見遣る。
中にはまだ製造中の少年型レプリロイド。
配線が組み込まれ、半分剥き出しの金属だった。
レプリロイドは瞼を閉じて眠っている。
ボディパーツの各所には紫色のラインが輝いて、純白の身体を彩るアクセントになっている。
深く被ったヘッドパーツの後ろから、撫でつけられるのに反抗して飛び出した紫色の髪。
取り分け特徴的なのは胸部と頭部に付いた大きな水晶状の球体だった。
センサーの類だろうか。

アイゾック「わしの最後の作品よ。お前はエックスと…もし奴が役目を放棄した時、奴らを倒し、奴らのDNAデータを手に入れるのじゃ。そうすればお前は最強のレプリロイドとなる。“Accelertor”よ。」

Accelertor<アクセラレーター>と呼ばれた少年は固く目をつぶっていた。

アイゾック「ワシの最後の息子よ…奴が駄目な場合はお前が倒すのだアイツを!!わしの敵、わしのライバル、わしの生きがい…!!」

自身の正真正銘、最後の作品に異常なまでの期待を秘めながら叫ぶ声が響き渡るのだった。 
 

 
後書き
新ブラックゼロ降臨。

性能はコマンドミッションのゼロに近い。
更に身近な例でいうならX8のブラックゼロやロクゼロ4のガラクタセット装備のゼロ。
攻撃力2倍。
防御力半減。
この新ブラックゼロはスピードムーブ、ハイパーダッシュ、ショットイレイザーが標準装備になっている。
 
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