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転生赤龍帝のマフィアな生活

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三話:すーぱーごさいじ

兵藤一誠、五歳です。
俺は今、母親の実家である日本の駒王町に里帰りしているところだ。
祖父母は特にマフィアとは関係のない一般人で普通に暮らしている。
そして呆れるべきか、褒めるべきなのか分からないが母さんが素で自分の嫁ぎ先がマフィアだという事実にいまだに気づいていないという衝撃の事実が判明した。

最初はわざと嘘をついているのかと思っていたが余りに自然に話すのでまさかと思って父さんに聞いてみると薄々気づいてはいたが母さんは極度の天然属性でファミリーは父さんの仕事の部下で他の人達は父さんの友達だと思っているらしい……。

一目でその手の人だと分かる人達だと言うのにただの友達扱いする母さんすげえ……話している際に父さんが遠い目をしていたのは気にしなくてもいいだろう。
それと母さんは誰とでも分け隔てなく接するのでファミリーからの信頼は厚いらしい、天然がなせる技なのか、それとも母さんが出来た人だからなのかは分からないが、正直、息子としては頭が痛いところだ。

まあ、そんなことよりも現在進行形で頭が痛いことがあるんだが――

「悪の怪人イッセーマン覚悟しなさい!!今日こそ正義の味方イリナライダーが成敗して見せるわ!!!」
「はっ、カスにやれるもんならやって見やがれ!!カスライダー!!!」

はあ……俺は何をしているんだ?
何やらジャングルジムの上でポーズをとるイリナ――紫藤イリナを見ながら内心溜息をつく。俺が今泊まっている家、まあ祖父母の家なんだがその隣に住むイリナは数日前から暇なのか、なんなのかは分からないが同い年の俺を拉致して(ここ重要)公園まで連れてきているのだ。

最初は面倒なので抵抗していたが母さんの一緒に遊んできなさいという笑顔――もとい脅迫の元、渋々付き合うことにした。
まあ、おままごと位なら付き合ってもいいかと言う俺の甘い考えをいとも簡単に打ち破りイリナが要求してきたものはヒーローごっこだった。

思わず『お前本当に女か?』と言った後から記憶がごっそりと抜け落ちているのはいまだに謎だが、女性を怒らせてはいけないと言うことだけは体に刻み込まれたような気がする。

「行くわよ!!とうっ!!!」

イリナが回転しながら飛び降りる姿を見ながら構える。
……というか俺が言うのもあれだがこいつは本当に五歳児なのか?
今の行動にしろ、俺がどこに行こうが隠れようが俺を拉致る姿はとてもじゃないが五歳児とは思えない。
余りにも俺の場所がばれるので本気で俺の体にGPSをつけているのではないかと疑ったほどだ。

「くらいなさい!!イリナちゃんキック!!!」
「はっ、遅えな、蠅が止まるぜ」

口ではそう言うものの俺の首を刈り取ろうとする上段回し蹴りに冷や汗を流す。
こいつ……本気で俺を殺しに来てるだろ?
五歳児がこんな危険な技を覚えているのは、まあ目をつぶるとしよう。
だが一発目から当たれば即死級の技を放ってくるのはどういうことだ?

「やあっ!!」
「効かねえな!!」

可愛らしい声と共に放たれる右ストレートを両手で押さえるがその行き先は間違いなく俺の鳩尾だ。
……冗談抜きでこいつ俺を殺す気だろ?
さっきから全部急所攻撃じゃないか、まだ男にとっての急所は狙われたことはないがいつ狙ってくるか分かったものじゃないので油断は出来ない。大体相手が俺じゃなかったら死人が出てるぞ?
俺が来るまでにイリナの相手をした奴がいるならご愁傷様としか言えない。

「今度はこっちから行くぜ!!!」
「負けないんだから!!!」

掴んでいた右手を使い、イリナを背負い投げで容赦なく地面に叩きつける。
幼女虐待?それはこいつと一度でも拳を交わしてから言うんだな、ほら見ろ、言ってるそばから何事もなかったかのように立ち上がってるぞ。
それにしても今日のイリナはやけに気合が入ってるな、何かあったのか?

「やるわね、でもイリナライダーは負けないんだから!!!」
「弱えカス程良く吠える……うだうだ喋ってねえで、かかってきやがれ!!!」

そこからはシンプルかつ複雑な拳と拳のぶつかり合いだ。イリナが俺を殴ったと思ったら俺がイリナを殴る、そんな激しい拳の押収が繰り広げられるがお互いともが一歩も引かずに殴り続ける。

(相棒!!なぜ神器を使わん!?今日のイリナは手を抜いて勝てる相手ではないぞ!!!)
(うるせえ!!俺が目指すのは最強だ!!意地のぶつかり合いで負けられるか!!!!!)

そう、これは俺とイリナの意地のぶつかり合いだ。卑怯なまねはしたくない。

「はあああっ!!!」
「がっ!?」

イリナのアッパーが俺の顎に決まり脳が揺れる……くそ!!足がふらつく!!

「これで止めよ!!!」

イリナの拳がまるでスローモーションの様に映り俺の顔面に迫ってくるのが分かる。
このままじゃ――このままじゃ終われない!!!

「はっ、蚊でも止まったか?」
「えっ!!?」

根性でイリナの拳を顔面で受け止め耐える、唇が切れて鉄くさい味が口に広がるが気にしない。
なぜなら、俺はまだ立っているからな!!!

「これで終わりだ!!カスが!!!」
「きゃっ!!?」

全体重を乗せイリナのおでこ目掛けて頭突きを食らわせる。流石のイリナも頭突きは予想していなかったのか衝撃を逃がすことが出来ずになすすべなく崩れ落ちる。
俺の――勝ちだ!!!



「もおーっ、また負けちゃった!!今日は絶対勝ちたかったのに!!!」
「カスが俺に勝とうなんざ百年早いんだよ、鍛えなおしてこい。」
「でも……今日で最後なんだ……。」
「……最後だ?」
「うん……私、パパの仕事の関係で引っ越さなきゃいけないの……良く分からないけど、外国に行くみたいだからイッセー君とはもう会えないの……。」

イリナ……それで今日はやけに気合が入ってたのか……そういう理由なら危うく現世とお別れになるところだったのはまあ許してやるか。
それにしても里帰りで来た俺を初日から拉致ることが出来るイリナの性格なら別にどこ行っても困ることもないだろうし、新しい友達(サンドバッグ)も直ぐに出来るだろうに何を不満に思っているのだろうか?

(そういう問題ではないと思うのだが……。)
(あ?てめえは黙ってろ……後でお仕置きだからな。)
(なっ!?俺は相棒のためを思ってだな――)
(ドライグ黙りなさい、ご主人様、このマダオが大変なご無礼をいたしましたことをどうかお許しください)

突如現れドライグを縛り上げるエルシャ。

(エルシャ!?貴様何をする!!?)
(上出来だ、エルシャ、そのままマダオを縛り付けておけ……後で地獄を見せる。)
(かしこまりました。)
(エルシャ!!貴様裏切ったな!!!)
(ドライグ……人間、自分が一番可愛いのよ……私の平穏のための礎になって頂戴。)
(ぬうっ!!離せ!!離せっ!!離せえええええっ!!!!!)

さて、ドライグは後で叱っておく(小指にタンスの角を落とし続ける)ことにして今はイリナだな。イリナが悲しい顔してるなんて調子が狂うからな。

「なんだって俺にそこまで執着する?別にてめえならどこ行っても大丈夫だろうが。」
「だってイッセー君位だもん本気で遊んでも気絶しないの。」

名前も知らないイリナの友達(サンドバック)のご冥福をお祈りいたします。
それとイリナが引っ越す先に居る奴には同情と線香をあげます。

「それに………。」
「それに?」
「今日勝ったら……い、言いたいことがあったの。」

何やら顔を赤くするイリナ……何だいったい?

(相棒は鈍感だな……いや、そういうことは年相応と言ったところ――小指がっ!!小指があああああっ!!!)

ドライグが何やらうるさいが、まあ、気にしなくてもいいだろう。

「何だ?言ってみろ、餞別に聞いてやってもかまわねえぞ。」
「勝たなきゃ意味ないもん!!!」
「………何、泣いてやがるんだ。」
「な、泣いてなんか…ない…もん……」

下を向いて震える声で否定するイリナ……。
今日はホントに調子が狂うな……普段は男勝りなくせにこういう時は普通の女の子みたいに泣くなんて……卑怯だろ。

「ちっ……おい、イリナ、小指出せ。」
「え?こ、こう?」
「てめえが何を言いてえのかは知らねえが、俺に勝たなきゃ言えねえんだな?」
「うん……。」
「なら、また戦やいい。」
「で、でももう会えないんだよ?」
「バカが……一生会えねえってわけじゃねえだろ?いつになるかは知らねえがまた会った時に戦ってやってもかまわねえぞ……その約束だ。」
「ほ、ホント!!?」
「ルールは破っても約束は破らねえ……まあ、カスがいくらがんばったところで俺に勝てるわきゃねえがな。」
「むっ!!次はぜーったい勝つんだから!!!イッセー君の方こそ覚悟しておいてよね!!!……色々と。」

何だ?最後の方が声が小さくて聞き取れなかったんだが……まあ、いいか、イリナの調子が戻ったんだし万々歳だ。
それにしても……やっぱイリナは笑顔の方が似合うな、何と言うか周りを明るく照らしてくれるそんな感じだ。

(ご主人様も心の中の言葉を素直に出せば女性にモテるのに――あ、申し訳ございません!!小指はっ!!どうか小指だけはあああっ!!!!!)

さて余り遅くなると母さん達が心配するから帰るとするか――

「待ちなさいイリナ!!パパは絶対に認めないからな!!!」
「パパッ!!?」
「何をやってんだあのおっさんは……。」

俺は娘がしたようにジャングルジムの上でポーズをとるイリナの父親を見て溜息をつく。
イリナの父親は全く恥じる様子を見せずに娘がしたように回転しながら飛び降りる……。
イリナはこいつに似たのか……というかいくら何でも同じ行動を取りすぎだろ、元ネタでもあるのかこれ?

「パパ!!私が最初に××ライダーの登場シーンをやったんだから真似しないでよ!!!」
「イリナ!!パパだって子供頃から密かに練習してたんだぞ!!!真似したのはイリナの方だぞ!!!」
「どっちもパクリだろうが!!!」

何だよ××ライダーって!!というか本当に似た者父娘だな、こいつら!!!
後、父親の方はいい年してこんなことやるなよな!!!正直俺だったら父さんがこんなことしてたら死にたくなるぞ!!!

「黙れ!!悪の怪人め!!!私の娘をよくもたぶらかしおったな、成敗してくれる!!!」
「意味わかんねえよ!!!」

猛然と聖剣を振り回し(ここ重要)襲い掛かってくるイリナの父親の攻撃を何とかかわしていく。
……こいつ!!子供相手に本気(殺す気)かよ!!!??
大人げない!!!こいつほど大人げない大人は見たことが無い!!!
仕方ない『赤龍帝の手袋(ブーステッド・グローブ)』を使おう!!

(ドライグ!!お仕置きから解放してやるから力貸せ!!!)
(任せろ相棒!!!今なら喜びでなんだって出来る!!!!!)

『Boost』
「パパ……今回だけは絶対に許さないんだからああああっ!!!!!」
『Boost』
「イリナ!?」
『Boost』
「イッセー君、一緒にパパを倒すよ!!!初めての共同作業よ!!!!!」
『Boost』
「あ、ああ。」

何やら意味を間違えて使っている言葉がある気がするがそれを指摘する勇気は俺にはない……いや、だってさ今のイリナを見ているとなんか失われた記憶が呼び起されそうで怖いんだよ、べ、別にイリナにビビってるわけじゃないからな!!

『Boost』
(相棒、どうする赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・グローブ・ギフト)でイリナに譲渡するか?)
『Boost』
(今ので六回か……ドライグ半分イリナに施してやれ。)
(承知した!!)

「施しだ!!!」
『Transfer』
「ひゃっ!?何だか力が湧いてきた…今なら――パパを星に変えられる!!!」

少しイリナの父親が可哀想になってきたな……まあ手加減する気はないけど。
だって手を抜ける空気じゃないもん。

「合わなかったら、カッ消すぞ!!」
「任せてよ!!」
「イリナ、パパの話をよく――」
「「ダブルキーック!!!」」
「おおおおおおっ!!!??」

俺達の飛び蹴りが見事にイリナの父親の下腹部にクリーンヒットし、イリナの父親は叫び声を残して星になって消え去って行った。いやー、めでたし、めでたし。
ふう……これでやっと家に帰れるな。

「イッセー君、今日は泊まりに行くね。」
「あ?何勝手に決めてんだ。」
「泊まりに行くね。」
「ちっ、人の話を聞け!!」
「泊まりに行くね。」
「ふざけてんの――」
「トマリニイクネ」
「……勝手にしやがれ」
「ホント!?ありがとうね!!イッセー君!!!」

まあ、最後なんだし少しぐらいお願いを聞いてあげてもいいだろ……別にこれ以上続けていたら俺の身に不幸が降りかかると直感したわけじゃないぞ?
RPGで『はい』を押さないと無限ループになる、あれと同じ感覚に陥ったわけでもないからな?



何はともあれイリナと家に帰り、何事もなく一緒にご飯を食べ、何事もなく一緒にお風呂に入り、何事もなく一緒の布団で寝ることになった。
……べ、別に一緒じゃないと嫌だと駄々をこねるイリナがちょっと可愛いなと思って一緒に居たわけじゃないんだからな!!!
それと、寝ているときに舞い戻ってきたイリナの父親が襲い掛かってきてそれをまた二人で星に変えたのは特別気にすることでもないだろう。

後、なにかを忘れている気がするんだが……
(いい加減お仕置きをやめてくださいよおおおおおっ!!!ご主人様ああああっ!!!!)
まあ、思い出せないなら大したことじゃないか。
 
 

 
後書き
主人公五歳の今の実力は本気を出せば中級悪魔を瞬殺するぐらいです。
何が言いたいかと言うと……わかりますよね?

報告:9/12、日間ランキング一位獲得。評価して下さって本当にありがとうございますm(__)m 
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