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仮面ライダー龍騎【13 people of another】

作者:Миса
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Part One.
First chapter.
  第7話




「なんでそうなった!!?」

それが、芳樹が何故か警察に捕まったナナに言った一言だった。

「全く、あんな所にいたら間違えられるに決まってるよ。今度からは気を付けなさい」
「お世話になりました」

迎えに来た芳樹にナナはホッと安堵の表情を浮かべる。

「ナナ、お前なんで捕まったんだよ。歩美ちゃんと一緒にトワコって奴を捜してたんだろ?」
「……そうなんですけど……」
「まあ、いいか。ナナが何にも悪いことしてなくて良かった良かった!」

二人が警察署から出ると、目の前にあのスーツを着た女性がいた。

「あ、あの時の……」
「ナナ、知り合いか?」
「いえ、あの人が俺を捕まえた人です」

女性はナナのほうに近づいて来る。

「さっきは、ごめんなさい」
「いや、俺もあんな所にいたのが悪いですし…すみませんでした……」
「おいナナ、お前が謝ることじゃねぇだろ。ったく髪の色以外は本当におとなしい奴だな……」
「ところで、貴女はどうしてあそこに?」
「私、記者で…一連の行方不明事件を担当しているの」
「記者って、油島さんと一緒だな」
「え?油島さんって……」

女性は油島の名を出すとそれに反応した。

「油島総司の事?」
「油島さんの知り合いですか?」
「ええ、職場が一緒で……私の先輩」
「………」
「世の中狭いもんだな〜ってことは、城戸先輩も知ってるのか」
「城戸くんとも知り合いなの?」
「俺の高校の時の先輩です」

ナナは幼い頃のことを思い出していた。
元の世界(・・)で彼女に会ったことがある。令子と芳樹が城戸の話しで盛り上がっているのを見て、ナナは記憶の切れ端を繋ぎとめていた。



───…



「ただいま帰りました」
「おう、読川…警察に世話になったそうだな」

油島の家にやっと帰ることができたナナは緊張の糸が切れたようで、ドッと疲れたといった具合にため息をついた。

「今日はコンビニ弁当で大丈夫か?」
「あ、すみません。飯、作れなくて……」
「いいんだよ、今日くらい。お前はいつも作ってくれてるからな」

油島は自分で買ってきたのであろうコンビニ弁当をナナに見せる。
城戸に料理を教えてもらってからナナは食事を作ることが多くなった。そのため、油島はあのファミレスに行くことも少なくなっていた。

「そういえば、七月ももう終わりか……」
「本当ですね。
……早く宿題終わらせないと……」

カレンダーを見て油島がポツリとつぶやくとナナがそれに反応する。彼はまだ高校生なのだと再確認させるようなことを言ったため、油島は笑いを吹き出してしまった。それを見たナナは少しムッとする。
ナナはおとなしくて優しく、他の同年代の子供に比べて大人びているが、やはりまだまだ子供なのだ。

……高校生か……。

この子には、いったいどんな未来が待っているのだろうか。どうして、こんな戦いに参加してしまったのだろうか。

「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」

少しぼうっとしていると、ナナが心配そうにこちらを見てくる。思わず油島はナナの頭を撫でてしまった。子供扱いされたのが気に障ったのだろう、ナナはうつむいてしまった。

「……油島さん」
「な、なんだ?」
「飯、食べましょう」

ナナは冷めてしまったコンビニ弁当を温めるためにキッチンへと向かった。



───…



とある人数の少ない夜道、カードデッキをとある青年に渡す男の姿があった。

「……つまり、同じライダーを全員倒せば願いが叶うんだよな?」
「そうだ、お前の願いがなんでも一つ叶えることができる」
「へぇ……楽しそうじゃん」

青年はカードデッキを月明かりに照らして薄く笑う。

「まず、とあるライダーを倒して欲しい」
「とあるライダー?
俺の独断じゃダメなの?」
「…………」
「いや、なんでもないよ。あんたの言うことを聞くよ。人生一発逆転のチャンスをくれたんだしな」

青年は少し不満があるようだが、男の言うことはちゃんと聞くことにした。
こうして、仮面ライダーはまた一人増えた。



「仮面ライダーがまた増えた」



そうナナに伝えに来た男は窓の中にいる。
油島も寝てしまっていたため、ナナと男は心置き無く話すことができる。
それでも、ナナはこの男のことを好きになることはできなかった。


「………これであと一人か、仮面ライダーオーディンだっけ?……でも、これはあんたが使うのには無理があるだろ?神崎士郎でも呼ぶ気か?」
「それは無理だ」
「……じゃ、どうする気だよ。言っておくけど、俺の目的は……」
「大丈夫だ、オーディンの代わりは用意している」
「ならいい」

ナナは男から目を逸らす。
そんなナナを見て、男はナナのある変化を見つけてしまった。

「キミは、初めてライダーになった時のヒカリを失っているな」
「……なに?」
「あの時は、純粋に戦うことの喜びを感じていたのに、今ではそれがない」
「そんなこと……」
「なら、どうして戦わない?」
「………」

とうとうナナは黙り込んでしまった。
ナナは揺れているのだ。願いを叶えたいが、他のライダーと必要以上仲良くなってしまったせいでナナは戦うことを躊躇している。

「まあ、キミが最後まで戦ってくれるなら何にも不満はない、それまでどんな過程を辿っても……結局は目的を果たせるかどうかだ。
でも、なるべく早めに頼むよ。でないと目的に支障が出るからな」
「………わかってるよ。俺には、戦いしかないから……」

ナナはどこまでも優しいのだ。
それは幼い頃から変わらない。だが、今はその優しさが枷となっていた。



───…



「はあ、逃がした……」

日ノ岡は寮にある取り付けのベッドに寝転び天井を見ていた。日ノ岡が気にしているのは仮面ライダー王蛇のことだ。王蛇はこの今まで築いてきたライダー達の仲を一瞬にして打ち崩したのだ。

実は日ノ岡、こう見えて仲間思いなところがある。
それは彼自身に友達がほとんどいないからといってもいいだろう。だからこそ、仲間を殺した王蛇が憎い。

「読川くんが王蛇だと思ってたんだけどな……アリバイがあったら何にも言えないよ」

日ノ岡はナナが王蛇ではないかと疑っていた(実際そうなのだが……)。しかし油島はナナが王蛇ではないという証拠を持って来てしまったのだ。
それが、ナナが城戸と一緒に餃子を作った時のことだった。一応確認をしたが、城戸はずっとナナといたと言っていた。目を離したのはナナがトイレへ行った時くらいだという。

「謎が謎を呼ぶなぁ……」

日ノ岡はうつ伏せになるとそのまま目を閉じた。



──────────



ナナはとあるスーパーマーケットへ買い物をしに来た。

「えーと、今日は……茄子が安いな……今夜は夏野菜カレーか、いや焼き茄子も良いかもしれない」

顎に手を当てナナは今日の献立を考える。
ナナにとって料理は新しい趣味になっていた。大きな理由は油島があまりにもふしだらな生活を送っていたから。初めて彼の家へお邪魔した時は、まさに男の一人暮らしと言ってもいいくらいの散らかりようだった。その瞬間、ナナは居候するにあたって油島の家の家事をやることに決めた。いや、ナナがやらないときっと油島はもっとダメな男になっていただろう。

「ありがとうございましたー」

結局、ナナは今夜の献立は夏野菜カレーにすることにした。

「……あ、油島さん茄子嫌いだった……まいっか、たまには苦手な物食べさせておかないと」

スーパーのレジ袋ではなくエコバックを肩にかけたナナはこの時代には少し目立つが、ナナは気にすることなくスーパーを後にする。
家に帰ってきたが油島はまだ帰って来ていないようだ。ナナは買ってきた物を冷蔵庫の中へ次々と入れる。全部が収まった時だった。

キィーン…

「……モンスターか?」

しかし、しばらくするとその音は消えた。
ナナはその場で辺りを警戒する。
モンスターであれなんであれ、この家にミラーモンスターがいたのだ。警戒しないに越したことはない。

しかし、いつまで経ってもモンスターは現れない。
ナナは警戒を少し解き、洗濯物を取り込みに二階へと上がった。



───…



「問.課題ってなんであるんだろう」
「答.卒業するためだよ」






芳樹と亮平、日ノ岡は三人で今日出された課題を黙々とこなしていた。

「ってか、なんでここの大学二学期制なんだよ。ウェルカム夏休み」
「とりあえずクーラー付けようよ。何で扇風機なのさ」
「今、節約中なんだよ。
ただでさえ芳樹がバカやって親に仕送り止められてるから、そうするしか今月乗り切れそうになくて」
「なるほど、桑元が原因か」

日ノ岡は暑さのせいでイライラが募っていたのだろう。芳樹に攻撃を仕掛ける。

「お前のせいか、お前の!!」
「痛!?っテメェ!!」
「ああもう、ただでさえ暑いんだから暴れるよ!」
「そう言うなら亮平、お前はこの服の山をどうにかしろ!これがあるからまた暑苦しいんだよ!なんでこんな首元キツくて長袖の服が多いんだよ!」
「ファッションコンテストが近いんだ!それはボツになった服の山々だ!
いいか、絶対触るなよ!あとでナナくんに着せるんだから!」

芳樹と日ノ岡はナナを哀れに思った。

「そう言えば俺、ナナが変身したところ見たことないな」

芳樹はポツリと呟いた。
それに一番反応したのは日ノ岡、亮平はあまりその話題を出して欲しく無さそうだ。

「アイツ、何に変身するんだろうな」
「案外、王蛇だったりして」
「そんなわけないだろ!」

日ノ岡の言葉に亮平は目をカッと見開き、日ノ岡を指差す。

「な、何ムキになってるんだよ」
「あ、ゴメン」
「でもさ、読川くんって変な子だよね。いつも変な機械触ってるし」

日ノ岡は全く悪びれる様子もなく話しを続ける。
変な機械とは、いつもナナが手でなぞっているあの不思議な機械のことだろうか、隠れてやっているつもりなのだろうが正直隠しきれてない。

ピンホーン…

ナナの話しで盛り上がって(?)いた三人は顔を見合わせる。

「誰か来たね」
「こんな時間に、誰だろう?」

亮平が玄関のドアを開けると、そこにはナナが立っていた。

「あれ?ナナくん、どうしたの?」
「晩飯、まだですよね?」
「うん、そうだけど……」
「カレー、作って来たんで一緒に食べましょう」

ナナは胸の辺りにカレーが入っているであろう鍋を亮平に差し出す。

「俺、直ぐにサラダ作るんで、それテーブルに置いていてください」
「あ、うん……」

ナナはすぐに台所へと向かう。
その際、芳樹と日ノ岡の驚く声が聞こえてきた。

「………なんか、ナナくん怒ってたな」



───…



「いただきます!」

四人は少し早い晩御飯を食べていた。

「そういえば、油島さんは?
一緒に住んでるんでしょ、ご飯用意しなくていいの?」

日ノ岡はナナに尋ねる。するとナナは少し頬を膨れさせた。

「あんな人、知りません」
「え?」
「つーかよ、ナナ……お前キャベツ太く切りすぎじゃねぇか?」

ナナが千切りにしたつもりのキャベツはどちらかと言われれば短冊切りのような形になっていた。

「太くても食べれます」
「けど……」
「なんか文句ありますか?」
「あ、いや……ないです」

どうも機嫌の悪いナナを見て、三人はとりあえずその理由を探ることにした……。

ナナ曰く、油島と喧嘩をしたとのことだ。
油島が帰ってくる時にはナナは必ずご飯ができている状態にしているらしい。しかし、油島は帰って来るなり「今日は編集長と食べて来るからいらない」と言ったらしい。
しかし三人は「だからどうした?」と思ってしまった。三人は友達(約一名友達がいたかどうか怪しいが)とご飯に行くことは多々あることで、帰って来て急に、ということは当たり前だと思っていたからだ。
ナナはため息を吐くとサラダとカレーを口の中に一気にかきこんみおかわりをするべく台所へと向かった。

「………何でナナはあんなに怒ってるんだ?」
「別に、そこまで怒ることじゃないよね」
「強いて言えば、カレーが勿体無いってくらいだな」

三人はヒソヒソと話す。

「まあ、頑張って作ったカレーが余るのは勿体無いよな」
「とりあえず、油島さんの家に帰したほうが……」

台所のほうを見ると後ろから見てもナナが不機嫌だということがわかった。
三人はまたヒソヒソと話し出す。

「……ナナを今家に帰したらなんかまた一悶着起きそうだな」
「一応、理由を聞いておこう」
「誰が聞く?」
「言い出しっぺの亮平、GO」
「お前読川と仲良いいでしょ?」
「無理だって!今のナナくんは俺の知ってるナナくんじゃない!」

三人が揉めているとナナが台所から帰ってきた。
そして、カレーの入ったお皿をドンっとテーブルの上に置く。

「え…と、ナナくん?」
「なんですか?」
「あのさ、何でそれだけで怒ったの?」
「それだけ?」
「あ、いや……」

ナナはジトッと亮平を見る。
……ダメだ負けると亮平が折れかけたとにき、ナナは話題を変える。

「今日、泊まっても大丈夫ですよね」
「疑問系じゃないんだ!?」

こうして、ナナと油島の始めての喧嘩(?)が始まったのであった。
そしてこれが全ての始まりになることをこの時はまだ誰も知らなかった。









 
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