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憎まれ口

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第二章


第二章

 遂に顧問の先生が来て二人を引き離す。京介は一人ランニングに出た。 
 小真はふてくされた顔で一人になった。こんな有様だった。
 そんな二人を見ながらだ。部員達はさらに話す。
「クラスでもあんなのだしな」
「もう休み時間暇があったら言い合ってな」
「何から何まで喧嘩で」
「困ったものよね」
「どうにかならないのかね」
 一人がこうんなことを言った。
「せめて会わないとかさ」
「無理だろ。あの二人の腐れ縁は幼稚園の頃からだしな」
「だから何をやっても巡り合う運命なんだよ」
「そんなのだから」
 殆どの面々は諦めている調子であった。
「もう放っておくしかね」
「ないからな」
「やりたいようにやらせるしかね」
「もうね」
「やれやれだよ」
 こんな言葉も出る。しかしどうしようもないのは確かだった。
 部活だけでなくそのクラスでもだ。席はよりによって隣同士だ。それで普段は顔を背け合っていてもそれでもなのであった。
 世界史の授業の時だ。小真が当てられてだ。こう言ってしまったのだ。
「ええと、ユエサル=カニサルですか」
「ユリウス=カエサルよ」
 女の先生がすぐに訂正してきた。
「間違えないでね」
「す、すいません」
「そんなの初歩の初歩だろ」
 ここで横から京介の言葉が来た。顔を彼女から背けさせながらの言葉だ。
「普通間違えるかね」
「何よ」
「間違える御前が馬鹿なんだよ」
 顔を背けさせたまままた言う彼だった。
「馬鹿なんだよ」
「くっ・・・・・・」
 今は歯噛みするしかない小真だった。しかしだった。
 その世界史の後の物理の授業ではだ。問題を当てられた京介は全く答えられなかった。小真はその彼に対して言った。やはり顔を背けさせたままだった。
「こんな問題もわからないのね」
「何!?」
「こんなの簡単なのに」
「簡単!?物理がかよ」
「あんたには難しいのね」
 意地悪い言葉で言う小真だった。
「所詮はね。馬鹿だから」
「手前・・・・・・」
「ふん、馬鹿」
 こう言うのであった。そしてその物理の授業の後だった。
 二人は授業が終わると同時にだ。最後の礼で立ったそのまま顔どころか身体も向け合ってだった。まずは京介が言うのであった。
「誰が馬鹿だ、誰が」
「私の目の前にいる奴よ」
「ほお、そいつの名前言ってみろ」
「秋本京介っていう馬鹿よ」
「そうか、じゃあ俺も言ってやるよ」
「何をよ」
「俺も今目の前に馬鹿がいるぜ」
 小真を見据えながらの言葉だった。
「カエサルの名前を間違える馬鹿がな」
「それは誰よ」
「だから言ってるだろ。俺の目の前にいる奴だよ」
「そう。じゃあ言うわよ」
 小真も負けていなかった。彼女も言い返す。
「理系赤点ばかりで短距離走れない馬鹿はね」
「そういうそっちは何だ?文系駄目で長距離になるとばててな」
「マネージャーだからいいのよ」
「いい訳ないだろ」
 こんな調子だった。とにかく何処でも言い合う始末だった。
 そんな二人がいるクラスも陸上部もこれには困っていた。しかしである。
 
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