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世にも不幸な物語

作者:炎花翠蘇
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第四章『白玉楼』

 
前書き
風と零がメインの話です。 

 
 時を(さかのぼ)り、輝を生贄もとい置いて行った風と零はこまっちゃんこと小野塚 小町から白玉楼の行き方を教えてもらい、今彼岸から歩いている途中だった。
「にしても、未だに幻想郷にいるだなんてしんじられねぇな」
 歩きながら風が零に語りかける。
「そりゃそうだ。俺だって驚いている」
「でも、もしここが本当に幻想郷ならあのこまっちゃんは本物だよな?」
 風が言うと、零が変なものを見たような目を風に向けている。
「お前、頭大丈夫か?もしかしてさっきの衝撃でおかしくなっちまったか?」
「んなわけあるかっ!ちゃんと正常に動いとるわっ!」
「え!?」
 零が初めて知ったように大袈裟に驚く。
「『え!?』じゃねぇよ。『今初めて知った』みたいな顔すんなっ!」
「ダメ?」
 やや可愛げのあるような声で言う。
「いや、ダメだから」
 こっちがさらにツッコミを入れたのに、いつの間にか無表情に戻っていて『何も会話していませんよ』的な雰囲気をかもし出している。
「おまっ!」
 風は軽く零の頭を叩くが、零はすかさずそれを受け止めるだけじゃなく反撃をする。それに対応できなかった風はまともに喰らう。
「いてぇ!何気に反撃すんなっての」
 零は目線をずらし、口笛を吹いて誤魔化そうとしている。
「誤魔化すんじゃねぇって」
 すかさず風が零の頭を叩く。がしかし、また零は受け止めて反撃をする。
「いや、だから何で受け止めんだよ」
「そりゃもちろん、気分」
「気分かよっ!」
 そんなやり取りをしながら二人はどこまで続いているか分からない道を歩いていく。
 ようやく辿り着くと、どこかの貴族が住んでいるじゃなかろうかと疑いたくなるくらい豪華な屋敷がそこにはあった。
「さすがは白玉楼だな」
 と零は賛美の言葉を送る。
「確かに。これほど立派な屋敷は外の世界にゃねぇぞ」
 風もそれに同意する。そして改めて屋敷を見上げる。かなり大きく、そこらの家とは比べ物にならないくらいに大きい。築何十年もありそうなくらいで作りは全て木材だ。所々腐っていたりしているがさほど影響は無さそうだ。存在感のあると言うのはまさにこのことだろう。
「そんじゃ、さっさと行くとするか」
 零は再び前を向いて歩き出す。
「そうだな」
 風もそれに続いて歩き出す。
「待て!ここから先は一歩も行かせはしない!」
 不意にどこからか女の子の声が聞こえた。
「これはもしかしてもしかするとあれか?あの妖夢に出会えるのか!?」
 期待いっぱいという感じに風が言う。
「どう考えてもここは妖夢しか考えられないだろ。つか、ここで腋巫女とか出てきたら逆にリアクションに困るっての」
「それもそうか。取り敢えずここは絶対に手を出すなよ」
「分かっているって。流石に他人の嫁に手を出すほど落ちぶれちゃいないさ」
「それを聞いて安心した」
 そうしてようやく声の主である妖夢を探す。
「にしてもどこだ?さっきから妖夢の姿が全然見当たらないんだが」
 二人であたりを見渡すがそれらしき人影が全く見当たらない。
「どこを見ている。私はここにいるぞ」
 再び声がしたのでそれを頼りに探してみると存外なことにすぐ見つかった。どうやらずっと屋敷の入り口の前に立っていたようだ。銀髪のショートカットで緑色が所々入った服を着ている。背中と腰の辺りに長さの違う刀が鞘に収められている。
「全く。お前たちは先ほどからどこを見ているんだ?すぐ目の前にいたと言うのに此方(こちら)に視線を一度も向けてくれないとはどういうことだ?」
 と、ややご立腹なご様子。
「いや、大体いきなり声がしたし目の前にいるとは思わないでしょうから」
 と、風がすかさず反論する。
「そんなことはどうでもいい」
 が、あっさり流された。
「お前たちが誰であろうと関係ない。先ずは斬る。話はそれからだ」
 そう言って妖夢は腰と背中にある長さの違う刀をそれぞれ抜く。
「やっぱ楼観剣(ろうかんけん)白楼剣(はくろうけん)って長さちがうんだ」
 と、素直に感想を言う。
「!?この刀知っているのか?なぜ知っている!?」
 いきなり刀の名を言われて驚きを隠せない様子の妖夢。
「いやまぁ、それぐらい知っておかないとこの世界じゃやっていけないし」
「・・・まぁいい。取り敢えず斬る」
 妖夢は刀を構え風と零に斬りかかる。
「ふむ、ならばよかろう。戦争だ」
 と、一回目の攻撃を避けて呟いた風だったが手元に何も無いので取り敢えず妖夢の次の攻撃を避けた。ちなみに零は風が呟いている間に妖夢からそれなりに距離をとっていた。
「そういや俺・・・・。何も武器もってなかった!!」
 妖夢の三回目の攻撃をどうにか避けながら零に叫ぶ。
「オマエハバカナノ?シヌノォ~?」
「おまっ!俺を助ける気ねぇだろ!?」
 妖夢の猛攻を必死に避けながら叫ぶ。
「うん、ないよ(てへぺろ☆)」
「このっ!裏切ったか!?」
 叫んで言ったつもりだが零は口笛を吹いて聞かなかった振りをしている。
「ちっ、ちょこまかと!!」
 じれったくなったのかさらに妖夢はさらに攻撃を仕掛ける。
「わぁっぶな!?」
 妖夢が水平に斬りにかかり風はギリギリのところで避けた。
「ちっ、そのまま死ねばよかったのに・・・」
 それを遠くから見ていた零が風に聞こえるように舌打ちをする。
「貴様!!それでも味方か!」
「味方?何それ?古代文明に使われていた言葉?」
 やや笑いながら零が言う。零に頼った俺が馬鹿だった。と、妖夢の攻撃を必死に避けながら後悔する。
「まぁ、流石にヤバそうだから助けてやるよ、仕方ないから」
 面倒臭そうに立ち上がる。
「お前!今仕方ないからって言ったろ!」
「ナンノコトカナー?」
(こいつ・・・・)
 微かに殺意が芽生えた風であった。
「ほい、武器」
 零はいつ手に入れたか(気にしたら負けだぞ☆)、その手にはよく時代劇とかで見るような日本刀を風に投げ渡す。
「おまっ!状況をよく考えろよ!下手すりゃぁ妖夢に妨害されるだろ!」
「いや、(むし)ろそっちが狙いwwwみたいなwwwwww」
 無表情でさらりとひどいことを言う零。
「させるかっ!」
 案の定、零の投げた刀に気が付いた妖夢はそれを楼観剣で弾き飛ばす。
 ああ、これで俺の戦う術は無くなった・・・・・と風は思った。
 刀は風のいる場所とは反対方向に飛んでいってしまった。
「これで終わりだ!」
 妖夢が風を追い詰める。
「くっ!」
 取り敢えず自分の身を守ろうと腕を前で交差させる。
「無駄だ!」
 妖夢の声が間近で聞こえた時、俺はもうだめだ、と風は諦め瞳を閉じた。
 がその時。
 バチバチッ!!
「な・・・に・・っ!!」
 何かが放電した様な音と妖夢の苦痛に耐える声が聞こえて、風は閉じていた瞳を開けた。
 すると目の前には黒い煙を立ち上がらせていた妖夢が風から少し離れた所で片膝を着いていた。
「え?何が起きた?」
「くっ、お前能力を持っていたのか」
 妖夢が何を言っているかまるで理解できていない。状況の説明をしてもらおうと零の方を見る。
「お前はおそらく能力が覚醒したんだ。うん」
 と、不満そうではあるが納得をしている。
「能力?」
「そう。お前は雷を操る程度の能力らしい。多分、危険を察知して無意識のうちに使ったんだろうな」
 零にしては珍しく真剣な眼差しで分析をしている。
「くっ!」
 ダメージが大きいのか、よろけながらゆっくりと立ち上がる妖夢。
「まさか能力が使えたとは・・・。しかもこれほどの威力とは、油断した」
 どうやらまだやる気のようだ。いくら能力が覚醒しても自分の思い通りに使えるわけがなく、また妖夢の猛攻を避ける羽目になってしまった。
「そろそろ止めなさい、妖夢」
 と、不意に別の場所から女性の声が聞こえた。
「しかし幽々子様、この二人は白玉楼に勝手に侵入してきたんですよ?」
 幽々子様と呼ばれた女性はゆっくりとした足取りで妖夢の隣に行く。
 幽々子は風の前で立ち止まる。見た目はおっとりしていて、ピンク色のショートヘヤーが特徴的だ。それに幽霊が被っていそうな三角形のハチマキもどきをつけた帽子を被っている。その三角形の真ん中に渦巻きが書かれている。
「悪いわね。うちの妖夢が迷惑をかけたみたいで」
 幽々子は妖夢を無視して二人に語り掛けた。
「いえ、妖夢の性格じゃ仕方がないですよ。少なくとも、白玉楼を守るという意味では妖夢の行動は正しいですし」
「そうね。それにしてもあなた、どうして妖夢がこういう性格なのを知っているのかしら?」
「俺たちは外の世界から来たんです。ゆかりんに連れて来られました。主にスキマに落とされて」
「ゆかりん?ああ、紫のことね。それなら御もてなししなきゃいけないわね、妖夢」
 幽々子はくるりと後ろを向いて妖夢を呼ぶ。
「何ですか。幽々子様」
「彼らを御もてなしして頂戴。白玉楼の・・・いいえ、幻想郷の大切なお客様だからご丁寧にね」
 そう言い残すと幽々子は白玉楼に戻っていく。
「分かりました、幽々子様」
 妖夢は刀を収刀し風と零に向き合う。
「先ほどはすみませんでした」
 と、律儀に頭を下げて謝罪する。
「別に気にしないって。まぁ俺としては色々と楽しめたからそれで十分」
 風は陽気的に答える。
「取り敢えず一件落着か」
 やや遠くから眺めていた零が風の近くまで歩み寄りながら言う。
「おまっ!散々人をけしかけた人間が何を言う!!」
 またしても視線を外して口笛を吹く真似をする。
「取り敢えず幽々子様が中に居ますのでついてきてください」
 妖夢にそう言われ、風と零は妖夢の後ろについていく。白玉楼は想像よりも老朽化しているわけでもなく、かといって貴族が住んでいそうな装飾がなされているわけでもなかった。よく時代劇に出てくる民家とほぼ同じ造りになっている。唯一違う所は広さだ。居間・台所・寝室・普通の民家の二倍の広さはある・・・・と思う。(実際の時代劇の民家を知らないため予想で言っています)
「広いな。やっぱ」
 と、誰に言うでもなく呟く風。
「おい、風」
「どうした?折角仲良くなれたってのに」
 話の腰を折られてやや不機嫌になっている。
「んな事はいつでも出来るだろうが。まず妖夢に幻想郷の地図書いてもらえっての」
 本来の目的を今まで忘れていたらしく、ワザとらしいくポンと手を叩き思いだした仕草をした。
「全く、これだからじじぃは・・・」
「じじぃじゃねぇ!!」
「エ、ナニ?ボクナニモイッテナイヨ?」
 視線を外しておどけて風をあしらう。こうなると繰り返し(てんどん)してしまうので零を無視して妖夢の方を向く。
「フフフ」
 前を見ると妖夢が口元を押さえて笑いを堪えている。先に戻っていた幽々子は腹を抱えて笑っている。
「笑わないでくれよ。こっちは以外と傷ついているんだ」
 泣きごとを言うかのように妖夢に言う。
「ごめんなさい。貴方たちの会話が面白くてつい」
 と言いなが笑いを堪えている。
「はぁ~、取り敢えず頼みたいことがあるんだが」
「頼みたいこと?」
「ああ、俺たちはまだこの幻想郷に来て間もない。(キャラ)に関しては完璧だが地理に関してはド素人と言っても過言ではない。下手に歩けば迷うこと間違いなしだ。それに妖怪もさまよっているこの状況で動き回れば確実に死ぬ。だから妖夢に幻想郷の地図を書いてもらいたい。地図を見れば大体の(キャラ)の滞在場所が解かる。そうすれば妖怪が何処にいるか何となくだが把握できる。だから地図を描いてもらえないだろうか」
「なるほど」
 妖夢は静かに頷き、考え込んだ。
「無理とは言わない。ただ出来たらやってもらいたい」
 藁にもすがる思いだ。このまま断れれば白玉楼を出ても近場の場所に行くしかない。まぁ、書いてもらってもどの道行くけど。
「書いてあげなさいよ。妖夢」
 幽々子が妖夢に言う。
「え!?」
 いきなり声を掛けられて素っ頓狂な声を上げる。
「だって、勘違いとはいえ彼に攻撃をしてしまったのだからそれくらいの罪滅ぼしがあってもいいじゃない」
「・・・・そうですね、分かりました。その頼み、受けさせてもらいます」
「「マジ!?」」
 予想外の展開に驚く。一瞬無理かと思ったが幽々子が助け舟を出した御かげで何とかなった。
「ですが、すこし時間を貰えないでしょうか。幻想郷と言えどかなり広いですから一日では書き終わりません」
「それは承知の上。ついでと言っちゃなんだけど冥界も書いてくれないかな。もしかしたら行くかもしれないから」
 だろ?と後ろで会話を聞いていた零に同意を求める。
「ああ、そうだな」
 さすがの零もボケする真似をせずにまともに返事を返す。
「では、早速取り掛かりますから夕飯は少し遅くなると思いますけどよろしいですか?幽々子様」
「別に構わないわ~。私は彼らに興味があるから少しはいい暇つぶしになるわ」
「分かりました。では、お二方幽々子様の暇つぶし相手になってください」
「ああ、任せておけ」
「暫くここに居ることになるから、家事の事とかもいって」
「ありがとうございます」
 妖夢は「それでは失礼します」といって自室と思われる部屋に入っていった。


 
 

 
後書き
初のバトル如何でしたか?
バトルシーンを書くのは大変という事を実感しました(汗)
 
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