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刃物語 プロローグ

作者:龍刃
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刃物語 二話

 
前書き
覚醒回 

 
昼休み、のほほんとしているとやっぱり北島が話しかけてくる
「昼休み・・・・・・かわいい女子がわき合いあいとしている・・・・
その桃源郷が目の前にあるのにお前は・・・・・!」
正直言おう、健全な学校の場でそんな発言するな
女子を熱く語る北島、特に女子の容姿に注目している。
真面目にどうでも良いので静かに読書させてくださいと言いたかったが
・・・・・何も話さないオレにここまで話しかけてくるヤツは嫌いにはなれなかった
そしてオレが極度の刃物オタクだという事を北島は知っている
どう考えても危ないヤツだ、それを知っていても・・・・・・・・
コイツはオレの近くにいてくれている、友達としてココにいる
何も話す事はなくたって、オレを嫌いにならずに女子克服の為に頑張ってくれている
だからオレは『迷惑だ』なんて言わない、むしろ『ありがとう』と伝えるべきだ
まあ迷惑には変わりないが多少話に付き合ってやろうと言ってみた
「じゃあ、どんなのが好きなんだお前?」
女子の話である、特に意味深と感じさせない様な感覚でそう言うと
「・・・・・・・・・・・・・・・」
頭を抱え沈黙してしまった、選べないほどかよ・・・・・・
何というか話題を変えようと思った時、断腸の思いで北島は言った
「・・・・・・・髪の色!!」
手を拳に変えてサムズアップでカッコ良い感じな雰囲気を出してそう言いきった
「・・・・・・髪の色か、良いセンスだな」
当たり前だが色は正直オレにとってはどうでもいい
マジでどうでもいい話題でここまで真剣になるのは多分コイツくらいだろう
「くっ!肌のツヤならピックアップできんのに!!」
本気で悩みぬいた男のひどい姿である
それは結構難しいんじゃないかとツッコミを入れたらコイツと同類と思われる
いや、すでにそう思われているハズだけどあえてつっこまない
そして休み時間が終わる。その時、席に着く前に北島は言った
「話題にのってくれてサンキューな、つぎはお前の好きな刃物の話も良いかもな」
それなりに気を使ってくれた事に驚いたけど、今言わなくても良いんじゃないか?
何か周りが「刃物?」「何言ってんだアイツ?」「もしかして神埼君、アブナイ系?」という風評被害が飛び交う声が聞こえる
いや、別に良いんだけどさ。どうせオレって刃物についてぐらいしか話す事ないし
はぁ・・・・・・もう良いや・・・・・・


放課後、調理実習の包丁や果物ナイフのおかげで女子への視線が逸れメンタルゲージがいつもより高い時
北島は他の友達と帰った様だ、まあその方が良いだろう
それよりも、最近通り魔事件がこの近くにあるという事を先生から聞いた
集団下校はなぜかしなかった、高校生ならば問題ないと思ったのだろう
そんなワケがない、小学生だろうが中学生だろうが大学生だろうが
危険には変わりない。先生の判断ミスとしか言い様がない
すると
たまにあるありえない事がまた起こった
「ねえ、君一人?良かったら私と一緒に帰らない?」
スタイルの良い女子が気軽に声をかけてきた
身長はオレの方が大きい。しかし北島がいたらこう言うだろう
『このモテ男がァ!』と言いながら泣く姿が思い浮かぶほど可愛く可憐で
クラスで一番人気のある女子『影島真衣(かげしままい)』である
どうやら他の女子とは帰らずオレと帰る気の様だ、意味不明だ
正直全力で断りたい、だが狙いが分からない・・・・・・・・・・
もうすでに全員が帰っている時刻、そしてこれはオレが帰るまで待っていた様子
クラスで陰気なオレに優しくして人気を得ようとする作戦か、この子出来る!
そして断ったら嫌な目で次の日見られそうで嫌だ
目に映らない様にする為に陰気になっているのにそうなってしまっては台無しだ
そして多分コレは試練だ。女子克服の為の!クラスで一番かわいい女子と一緒に下校すれば今までと比較にならないほどのメンタルが強くなる
目を伏せていても分かる。この子は人気がある人なんだと
・・・・・・良し、リスクは高いが賭けには丁度良い
「お、オレで良ければ・・・・・・」
どもりながらもそう答えた、すると影島さんは嬉しそうな声を上げた
さすがとしか言い様が無い、人気を獲得する為にオレと下校するなど次元が違う
そしてオレは影島さんと一緒に下校した



「るんるるるーん♪」
・・・・・・本当に楽しそうにオレと下校している・・・・!
この子レベル高すぎだろ!と疑いたくなるほどオレは彼女の元気な姿に驚く
いつも目を伏せていて陰気で変態な友達といるオレと楽しく下校するなんて
そして本当に愉快そうに振る舞うその姿はもう役者になれるんじゃないかと思う
・・・・・この子がオレに話しかけたのは北島と友達になる前だ
彼女はオレを青春への道を作ってくれる人に見えた、でもオレは拒絶した
気絶したのだ。血圧が上がり目が覚めたら保健室だった
そして嫌がらせにもほどがあるだろとつっこみたくなるほど保健医さんは美女だった
さっそうとオレは保健室を出て誰もいないところでカッターナイフを見つめて気を静めていた
そうだ、オレにはナイフや包丁、刀や剣などの刃物だけで良い
こんなかわいい子は格好良く性格も良い男といれば良い、オレは蚊帳の外にしてしまって
すると目を伏せていた視線に彼女はオレと視線を合わせた
オレの目の前に立ちしゃがみこんでいるのだ
心臓が高鳴る、血液が沸騰する。だが彼女の眼差しから逸らしてはいけないと思い
目を背けなかった、そして彼女は言う
「ふふふ♪どーしてそんなに黙っているのかなぁ?」
「え、えーと。顔近いです・・・・・・・・」
女性免疫の無いオレには崖を背にしている様なものだ、その気になれば飛び降りたいくらいに
そして彼女は不思議そうにこう言った
「ねえ?どうして他にもっと友達を作らないの?神埼君ならもっと友達作れるのに」
・・・・・・・質問の意味が分からなかった、オレが友達が作れるタイプ?
話すのさえ呼吸困難に陥りそうになるが話しかけてくれる彼女に申し訳が立たない
そして同時に疑問に思った、なぜそんな事を聞くのだろうと
オレは答える、しどろもどろな口調だが彼女に伝えられる様に
「・・・・お、オレは別に、か、影島みたいに元気じゃないから・・・・」
「ふーん?北島君と話していた神埼君はすっごく!格好良かったよ!」
!!!!!!!!!!!!???????????????
聞き間違いだと思いたかった。オレが格好良い?天地がひっくり返ってもありえない
何気なくそう話した彼女はまるで自然にそういう言葉を発したかの様な感覚がする
そして言葉間違いだ、『元気』かどうかの話題なのに彼女は『格好良い』と言った
言い間違いは誰にでもある。しかし、いきなりで本当に心臓が止まるかと思った
その事について問い詰めたいと思ったがしょせん言葉の選択ミスだと思い
「そ、そんなワケないじゃないですか・・・・・オレなんか・・・・」
怯えて震えて、臆病で変な趣味を持っているキモい男だ
だが彼女は言う、オレが考えた自分の像とは反対の言葉を
「だって、私が一番友達になりたかったのは神埼君だもん♪
・・・・・・・・・実を言うとね」
「?」
???????????????????????????
何を言っているのかさえ把握出来ない。オレが一番友達になりたかった!?
そして彼女は顔を赤らめる、何か告白する様に
「こんな時しか、言えなかったから言うね!私は!神埼双君が!!」
_________________________________
瞬間、心臓と右腕が共鳴するかの様にドクンッと響いた
その言葉を聞いて俺は気絶しかけた。だけど、それ以上にオレは



『後ろに刃物を構えている男に気付いた』




突き刺そうとする前に彼女を守ろうと避けた
「え!?なに!?」
動揺する影島さん。間違いなくコイツは通り魔だ
だが普通なら殺人未遂の結果に陥れば顔を隠して逃走するハズ
しかしこの男は『殺さないと気がすまない』という表情でこちらを見た
その表情で影島さんは気絶した。まずい、彼女を守りながら逃げるのは。
正当防衛でこちらもカッターナイフを出すか?
だが相手が持っているのは『牛刀』
確実に肉を削ぐのに最適な手持ちな刃物だ
カッターナイフで歯が立つ相手じゃない・・・・・・絶体絶命
そして興味を示しているのは影島さんだった、だからオレは
気絶して倒れている影島さんの前に、通り魔の前に立った
「・・・・・・・・・・・」
通り魔は何も言わない。そしてオレは通り魔に言い放った
「殺すのはオレだけにしろ!影島さんは駄目だ!!」
クラスで人気者、そしてオレに話しかけてくれた人
刃物ばかりにこだわるオレなんかと比べるまでもない
オレを殺した後影島さんにも切りかかるだろう、そうだとしても
「世の中には死んじゃいけない人間と死んで良い人間がいる
例えば、死んで良いのはお前とオレくらいだけどな」
臆病でも、強がってみせた。例え何の意味がなくたって強がりたかった
こんなヤツに!影島さんの様な人が!関わっちゃいけない!!
こういうヤツはオレの方が丁度良い。ごめん影島さん、何を言おうとしてたか
てんで分からなかったけど、どうやらオレの死に場所、死んで良い人間の末路が見られそうだ。
下らない人生だった。特撮や時代劇やアクション映画で登場する格好良い剣に憧れて
熱中していた、それ以外はどうでも良いくらいに。家族で一人で別れたのもオレだけ
刃物に熱中していたオレを気味悪がっていたんだろう、それでもオレは刃物が好きだった。
下らないヤツには下らない末路を、オレなんか・・・・・
『いらない』、そう言おうとした瞬間
_そんな事ない!ご主人様は立派な人だって私知ってるもん!!
右腕から、そんな声が響き、瞬間
輝き、腕の色が変わった




黒い、腕が『刃物』になった。見た瞬間からこれは『ギロチン』の部類だと認識した
『刀』などの部類ではない、そして夢の中で唯一登場していなかった刃物
いや、あった。だがオレはそれをギロチンだと思わなかった
小指先から肘までに刀身が造り上げられ、間違いなくオレの右腕は『刃物』で出来ていた
軽い、重たいギロチンのハズなのに・・・・・まるで自分自身の腕と完全に融合している
そして不思議に思った。なぜこうも冷静に分析できるのか
黒く染まった腕、ギロチンを見ておののく通り魔。だがこの光景を前にして
「・・・・・・・・・・・・・・・」
まるで不思議な体験に酔ったかの様に景気良く『牛刀』を振りかざす
だが、『すでに結果が出ている時点』ではそれは無駄で滑稽そのものだった
『牛刀』の刀身は一瞬で裂かれる
「!?」
理由、それは振り回す直前無意識にオレが危険と察知した『牛刀』の刀身を
腕の刃で切り落とした
動作は一瞬、空気抵抗すら斬り音速は音を切って凌駕する
その時のオレは時間が停滞したかの様な感覚に陥り。いや、『限りなく時間が止まった様に時間の速度が薄らいでいる』状態で通り魔の後ろに回り、峰打ちを喰らわせる
殺されると思った時間より限りなく早く、通り魔は気絶した
瞬間腕は元に戻り、スマホで警察を呼んだ



その後事情徴収を受けたがあまりにも現実味の無い例だったのでオレは疑われなかった
刃物が刃物で斬られている形跡があるが証拠がなければどうしようもない
その後影島さんは介護されオレは不思議に思い病院に行ったが腕には何も異常はないと言われそのまま帰った
何だったのか分からない、刃物すら『斬る感覚すらなく』切り落とすあの腕のギロチン
腕を持っていた時は知っていたが消えた瞬間記憶も曖昧になっていた
・・・・・とりあえず、無事で何よりだ


『ターゲット1『スライサー(切り落とす者)』判明
決行を継続しますか?』
『帰還しろ、偽装工作しておいて成功だったな。
あの通り魔が『エサ』とも気付かずに』
ビルの屋上で監視していた何者かは言う
『私が出向いてもよろしかったのに』
『いや、今の貴様で敵対できる相手ではない』




さて、と。右腕をオレは眺めた
何だったんだろう、ただそれだけが疑問だった
するとそのままオレは目蓋を閉じた。今日は、疲れ・・・・・
「お疲れ様!ご主人様!」
夢で出会った銀髪で青い瞳の少女が目に映った 
 

 
後書き
読んで下さってありがとうございます! 
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