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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第三十六話







「敵連合軍が撤退しますッ!!」

「よし、砲撃中止だ」

「了解しました、砲撃中止ッ!!」

 伝令が砲隊へ駆け巡る。

「……さて、北郷は気づいただろうな……」

 俺は撤退していく連合軍を見てそう呟いた。

「クロエ、連合軍に鼠を忍ばせたか?」

「あぁ、ちゃんと忍ばせた」




―――連合軍天幕―――

「キイィィィーーーッ!! あれは一体何なんですのッ!!」

 天幕に再び集まった袁紹の開口一番はそれだった。

「……あれは俺の世界の兵器だ……」

『ッ!?』

 北郷がポツリと呟くと、天幕にいた全員が驚いた。

「あれは大砲と言って、鉄の弾を撃つ兵器だ。何であんな物がこの世界に………」

「……対処は無いのかい?」

 すると、今まで口を開いてこなかった涼州の馬騰が口を開いた。

「……正直言ってない。でも撃つ弾はそんなに無いと思う。この時代じゃ到底何千発も無いと思うからね」

 北郷はそう言う。

「……つまり落とし穴を埋めてからじゃないとその大砲とか言うのを対処出来ないわね……」

 曹操が腕を組む。

「落とし穴を埋める作業は夜中にしてはどうかしら?」

 孫策が提案をする。

「……今のところ有効な手だてはそれしか無いわね。麗羽もそれでいいわね?」

「いいですわ」

 袁紹も頷いて、案が決定された。





―――曹操SIDE―――

 ……まさか王双が天の兵器を使ってくるなんてね……。

「……という事は王双は天の世界の人間……?」

 確か母様は曹徳は拾ったと言っていたわね……。

「……何でも構わないわ。王双は王双。必ず手に入れてやるわ……フフフ……」

 曹操は自軍の天幕内で笑った。






―――馬騰SIDE―――

「翠。兵士達は動揺していないかい?」

「今のところは大丈夫だよ母様」

 馬騰の娘である馬超が言う。

「そうかい……なぁ翠、蒲公英。月が悪政をしていると思うかい?」

「……いや、しているとは思えない。一度だけ月と会った事があるけど、そんな悪い奴じゃないな」

「蒲公英もそう思うよ叔母様」

 翠と蒲公英は董卓は悪くないと判断した。

「……何かこの連合には裏があるね……」

「馬騰様、馬騰様に会いたいという方が来ています」

 馬騰がそう呟いた時、天幕に兵士が入ってきた。

「うん? 誰だい?」

「は、王双からの使者と言っています」

『なッ!?』

 いきなりの言葉に、三人は驚いた。

「そ、それは本当かッ!?」

「は、はい」

 思わず馬騰は確認までしてしまう。

「……分かった。此処へ通しな」

「は」

 それから数分も経たないうちに使者が来た。

「お前が使者かい?」

 使者だったのは王双の兵士だった。

「今回、連合軍の召集は袁紹と十常侍の張讓の謀です。これがその手紙です」

 兵士は馬騰に手紙を渡した。

「………成る程な。疑いが確信に変わったな。王双に言っといてくれ。我々は内部で争いがあれば即座に涼州へ帰還するとな。シ水関への攻撃はあまり全力ではしないように伝達しとくわ」

「は。ありがとうございます」

 兵士は頭を下げて、天幕を出た。

「母様、王双は何て?」

 馬超が聞く。

「……この戦いは、全て仕組まれているみたいだ」

「「ッ!?」」

「……場合によっては、連合軍を裏切るからね。覚悟するんだよ」

 馬騰は二人にそう言った。






―――シ水関―――

「………しかし、この大砲は凄いな……」

 クロエが言う。

「この大砲は、俺の時代から約百三十年くらい前の大砲だ」

 俺は、八門の大砲―――『四斤山砲』を見ながらそう言った。







 
 

 
後書き
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