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支え合うもの

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第四章

「それで」
「それは」
「その」
 二人は実吉の問いに俯いてから答えた。
「しないでおこうって」
「そういうことにしようかと」
「今話しています」
「そうして」
「そうか、戸惑っているね」
 その返事は想定していた、実吉の今の言葉はそうしたものだった。
「君達も」
「戸惑っているといいますか」
「その」
「怖いです」
「どうにも」
 彼等が結婚することが、というのだ。
 そしてだ、まずは俊蔵が言った。
「私はこの目です」
「私は耳が」
 悠理も実吉に自分のことを言う。
「お互いの迷惑になります」
「かなりの負担になります」
「ですから結婚は」
「お互いの為にも」
「いや、それは違うよ」
 実吉はその二人にはっきりと告げた。
「確かに君達はそれぞれ身体の一部がよくない」
「それでも、ですか」
「私達は」
「相手の目になり耳になれるんだ」
 こう言うのだった、穏やかで包容力のある声で。
「実際に今職場でそうしているじゃないか」
「私が彼女の耳になっていて」
「私がこの人の目になっている」
 二人は実吉の今の言葉を聞いてお互いを見て話した。
「そうなっているから」
「だからですか」
「うん、結婚してね」
 そうしてというのだ。
「お互いを助け合っていけばいいよ。それにね」
「それに?」
「今度は」
「結婚とはそうしたものだよ」
 結婚そのものの話もするのだった。
「お互いを助け合っていくものだよ、負担とか迷惑とかじゃなくてね」
「助け合う」
「そうしていくものですか」
「そう思ったらいけないんだよ」
 自分がそれになるとだ。
「だってお互いなんだから」
「だからなんですね」
「助け合って、ですか」
「負担や迷惑に思わずに」
「そうして」
「そう、そうしてやっていくものだからね」
 それ故にというのだ。 
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