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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第六十三話






「──…九百八十一っ…九百八十二っ…九百八十三…っ!」


──バンエルティア号の甲板…晴れ渡る空の下、僕は木刀を手に素振りをしていた。
最後の封印次元を作る材料であるウズマキフスベのドクメントを採取して数日…遂に残りは封印次元の展開作業のみとなった今…僕達はハロルド達研究組みの封印次元展開装置の完成を待っていた。


「…九百九十九っ…千っ…と」


素振り千回を終え、僕はゆっくりと息を整えていく。ふう…やっぱりこの日課も止められないなぁ…。
…ただ…。


「…この日課も…あと何日になるのかな…」


手にした木刀を見ながら、僕は静かにそう呟いた。
始まりは唐突な事。残すは封印次元展開のみとなった時…誰かが出した一言だった。

『ジルディアを封印して世界が平和になったら…伝承通りディセンダーであるメリアは世界樹に戻ってしまうのか』

この言葉に、メリアはどこか複雑そうに苦笑を浮かべていたけど…恐らく、きっと…彼女は『今までのディセンダー』同様、世界樹に戻るのだろう。
ただ、この時にイアハートが『自分の世界のディセンダーは帰ってきてくれたから、きっとメリアもいつか帰ってくる』という一言でこの話は終わったのだが…僕はただ、その言葉が残っていた。

この世界が平和になった時…果たして僕はどうなるのだろう。
今までのようにこの世界で暮らしていくのか…はたまた元の世界に戻るのか。

…別に元の世界に戻るのが嫌なわけではない。向こうには家族がいて、友人がいて…そして僕の生まれた『世界』だから。
ただ…此方の世界でも今は同じなんだ。…家族といえる人達がいて、友人がいて…そして大切な人がいる『世界』。

もし…『元の世界』と『この世界』…そのどちらかを選ばなければならない時が来た時…僕は何を選ぶか、選ばされるのだろうか。


「…やめよう…こんな事考えるの」


溜め息一つと共に、僕は気を取り直すように見ていた木刀を軽く自分の額にコツンと当てるとそう言葉を出した。
まだ本当にそんな事になるのか分かってる訳じゃないんだ…今は目の前の最後の作業になるであろう封印次元展開を成功させることに目を向けないと。


「…もうしばらく、よろしく頼むね…相棒」


再び一つ溜め息を吐き、僕はこの世界に来てから今まで共に戦ってくれている木刀をそっと撫でるとそう言葉を出した。
この先に何が待っているかはわからないけど…ただ、今は目の前の事を解決させないと…。





──────────────────────



「──封印次元展開装置が完成したわ」


──バンエルティア号のホールにて、リタがアンジュの前でそう口を開いた。
ジルディアを封印する為の封印次元展開装置…それが遂に完成したのだ。


「そう…ようやく終わるのね」


「えぇ…後はこれをラングリースの奥のボルテックスで発動させれば…ジルディアを封印する事が出来るわ。それで、早速行くためのメンバーを集めたいんだけど…」


「わ、私が行ってもいいかな…これで最後になるかもしれないんだし…」


アンジュの出した言葉にリタが頷きながら説明していくと、カノンノが手を上げてそう言った。
カノンノの言葉にリタはカノンノを見ると頷いて口を開いた。


「そうね…分かったわ。それじゃ、メンバーはメリアと私にカノンノ…後は…」


「…僕も行くよ。最後はちゃんと…メリアを手伝ってあげたいから」


「…衛司…」


リタが言っていく中、僕もカノンノと同じように手を上げて同行する事を願った。本当にこれで最後になるのなら…せめて最後くらい、メリアと一緒にいてあげたい。


「…アンタならそう言うと思ったわ。それの為に準備もしてたしね、っと」


「っ…これは…?」


僕の言葉を聞いてリタが呆れたように溜め息を吐いた後、僕を見てそう言うと僕に向けて二つほど『何か』を投げてきた。
僕はそれを受け取ってみると…一つはペンダントのような物で、もう一つは手の平サイズの小さな箱であった。


「…アンタにとっちゃ、ラングリースはまだ危険だからね。ペンダントの方は一時的に外部からのドクメント干渉を防ぐ物よ。ラングリースに入るときにつけてなさい」


「あ、ありがとう…よくそんなの作れたね…。…それで、こっちの箱の方は…?」


ペンダントの方の説明を聞き、僕は少し苦笑して言うと如何にも『どやっ』と言いたげな表情を見せるリタ。僕はそれに更に苦笑しつつも箱の方を聞くと、リタはどや顔を止めて真剣な表情で口を開いた。


「それはいざって時の物よ。そうね…私が合図するまで絶対に出さないようにしてて」


「…分かった。でも…それって一体…?」


「そうね…。それはね…あのサレに対する唯一の『切り札』よ」


僕の問いにリタは真剣な表情から、ニヤリという効果音が出そうな笑みでそう言ったのだった。




───────────────────────



「──ふぅ…リタの言った通り、中々大丈夫そうだよ」


「そう…でもなんか不調を感じたらすぐにいいなさいよね」


──聖地ラングリース。僕はリタから受け取ったドクメント干渉を防ぐペンダントを首に付けて歩きながらリタに言うと、リタは僕の様子を見ながらそう言った。
初めてくる聖地ラングリースは、まるで水晶で構成されているような景色で思わず見入ってしまうけど…時々水晶を眺め続けていると体を少し不快感が襲ってくるのを感じた。
リタに聞いてみたらどうやらその不快感が、ドクメントに干渉しようとしている状態らしいが…今の所は特に問題はないのでこうやって奥のボルテックスに向けて進んでいる。


「…そう言えば、さ…メリアはこの封印が終わったら…やっぱり世界樹に帰っちゃうの?」


不意に…僕とリタの前を歩いていたカノンノが不安そうな表情でその隣を歩くメリアに静かにそう聞いた。
カノンノのその問いにメリアは一度立ち止まると小さく首を横に振った。


「…私…考えてみたけど…やっぱりまだ帰れない…。…やらないといけないこと…まだいっぱい残ってる…」


「やらないといけないこと…?」


「…ラザリスを封印した後も世界の復興に向けてまだまだ頑張りたいって事じゃない?」


メリアの言葉に僕とカノンノが首を傾げると、リタがそれを代弁するように言い、メリアはそれに小さく頷いた。
そっか…ラザリスを封印したからって、まだ完全に平和になるってわけじゃないからね…。


「…手伝って…くれる…?」


「も、勿論だよ!アドリビトムの皆も、手を貸してくれる。皆で世界を変えられるよ!」


「そうそう。ラザリスを封印した後…これからこの世界をどんな世界にするかは、あたし達一人一人にかかってるんだからね」


メリアの問いにカノンノは頷いて答え、リタもそれに小さく笑って応える。
その返答にメリアは安心するように小さく笑い、そしてメリアは僕の方に歩み寄ると僕の手を取った。


「…衛司も…いっしょだよ…?」


「っ…うん…僕も手伝うよ。皆で…ラザリスと生きていける世界を作っていこう」


僕をじっと見てそう言葉を出したメリアに、僕は少し驚いてしまったが頷いて答えた。
これが終わったら…僕はどうなるのか分からない。けど、そんな僕の心境を知ってか知らずか出したメリアの言葉に…僕は自然と嬉しく感じれた。
僕の返答にメリアとカノンノ…そして心なしかリタも嬉しそうな表情を浮かべた。
まだ僕は…此処にいても良いことを…望まれているんだ。


僕達は少しして再び奥に向けて歩き出した。
…世界を、変えていくために。




─────────────────────



──しばらく奥へと進み続け…僕達はよくやく世界樹の根に繋がり、マナを渦のように吸い込んでいる場所…ボルテックスに到着した。


「…此処が…ボルテックス…」


「えぇ…後は、あのマナを吸い込んでいる渦の場所にこの封印次元展開装置を起動させて、封印次元に必要なドクメントを此処から世界樹に流す。それで世界樹に封印次元を完璧に展開してもらうだけよ」


「それじゃ、早く始めよう!」


リタの説明を聞き、カノンノがそういうとリタが封印次元のドクメントを送り込むために渦の方へと歩み寄ろうとする。

──だが、その時だった。


「──おっと…そうはいかないねぇ」


「っ!ライトニング・シェルっ!」


突如、耳に届いた嫌な声と明らかな殺気に僕は皆の後ろに立ってライトニング・シェルを張ると、展開されたライトニング・シェルに風の刃が数発、直撃した。
風の刃が飛んできた方向…僕達が来た方の道には案の定、その男が居た。


「…っ…サレっ!」


「っ…やっぱり出てきたわね…」


「フフッ…君達を見つけたからつけてきてみたら…中々面白そうなことをしてるじゃないか」


男…サレは人型の姿で不気味に笑いそう言うと僕達の方に歩み、少しして立ち止まる。


「もうすぐこのルミナシアは僕とラザリスの世界…ジルディアが飲み干すというのに、君達は封印なんて…中々本当に…めんどうな事をしようとするじゃないか」


「っ…この世界をジルディアに飲み干させは…ラザリスやアナタの好きにさせる訳にはいかないんだっ!」


不気味に笑みしたまま言葉を出すサレに、僕は真っ直ぐとサレを睨んでそう告げる。
『僕とラザリスの世界』…どうやらサレは完全にジルディアの世界の住人と化しているようだ。


「フ…フヒャッ…!中々言うじゃないか。まぁいい…そろそろ君達の悪あがきも目障りになってた所だし…此処で君達の希望を終わらせて、メリアちゃんと衛司君…揃ってラザリスに献上してあげようじゃないか」


そう言ってサレはより一層、サレは笑みを強めて指を鳴らして赤い煙を出現させ、その煙に身を包め…身体の至る所から結晶を生やした『『狂風』サレ』へと姿を変える。
サレの姿が変わったのを見て少しリタの方を見るとリタはそれに気付いて小さく首を横に振った。
…まだ使うなって事か。
僕は改めてサレを見直して、星晶剣を抜き構えた。


「僕達は此処で負けるわけにはいかない…希望を終わらせるわけにはいかない。だから…今此処で、絶対にアナタを倒す…サレっ!」


「フヒャヒャっ!面白いじゃないか…いいよ、もうお遊びは無しだ。此処で終わりにしてあげるよ…君達アドリビトムも、希望も、この世界…ルミナシアもねぇっ!ヒャァーハハハハッ!!」



僕の言葉を合図にカノンノ達はそれぞれ武器を構える。そしてそれと同じように不気味に笑い、結晶で作られた細剣を出現させて構えるサレ。


──ルミナシアの命運を賭けた闘いが始まった。


 
 

 
後書き





──以上、第六十三話…如何だったでしょうか?


不安ダナー←



【衛司の想い】
果たしてすべてが終わった後、衛司はどうなってしまうのか。
元の世界と今の世界、どちらかを選ばなければならない時、どちらを選ぶのか。
決して避けられない選択が来たとき…果たして彼は何を選ぶのでしょうね?(何←


【封印次元展開へ】
封印次元展開…原作ではドクメントそのものですが、此方では装置型にしています。
何故装置型にしたかは色々ありますが…ヒントはリタが衛司に渡した物です。

後…ドクメント干渉無効化については『本当にそんなん作れるのか?』と聞かれたら『研究組がやったから仕方ない』と答える私である←
マイソロ版のリタ達研究組は多分某超機械大戦版のアス○ナージさんばりの技術力があると私は思ってる←←←


【『狂風』サレ、再び】
門番ではなくストーキングで登場←
一応ここで彼とは決着つけとかないと色々と面倒になるので←

次回は遂に『狂風』サレとの決着戦となります。
果たして衛司達はサレを倒すことが出来るのかっ!?←

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