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ファイナルファンタジーⅠ

作者:風亜
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17話 『自称・愛の冒険家』

「あなた方は、あの時の……! お元気そうで何よりです。12賢者様方に御用がおありで、参られたのですか?」


 クレセントレイクの町を再び訪れた4人はまず、以前お世話になった屋敷のメイド・テューテの元を尋ね、白魔道士のシファが率先して切り出す。

「この辺りの山岳から火柱が上がったのが見えたけど……、大丈夫でした?」

「はい……、地震のような揺れを感じて窓の外を見ましたら、ここから西側の空が赤黒く染まっていましたが被害などはありませんでした。……折角いらして下さったのですから、皆様にお屋敷へ上がって頂きたいのですが、実は今旦那様が旅からお戻りになられてまして──── 」


「俺っちが屋敷に戻ってちゃいけないってかい、テューテ?」

 眠た気な声がしたかと思うと、奥の方からひょろっこい体形で縮れた焦げ茶色のボサ頭、半袖半ズボン姿のだらしない中年男が出て来た。

「お、お目覚めでいらしたのですね、シド様……!」

「ほっほ~、べっぴんさんだねぇ」

 邸宅を構えた主人とは思えない男はすぐ赤マント姿に目を奪われ、白銀の長髪流れる羽付き帽子の鍔に隠れた顔立ちを覗き見るように腰を屈めた。

「お言葉ですがシド様、その方は女性とは限ら─────」

「どっちにしたって"べっぴんさん"には違いないってさ、俺っちの眠気も吹っ飛んだってもんよ!」

 メイドのテューテが訂正しようにもシドは気に留めず、4人を凝視する。

「 ……ところであんた方、見たとこヤングな手練れの冒険者っぽい感じだけんど、シニアな俺っちだってバリバリの好奇心旺盛な[愛の冒険家]でな! ここで会ったが何かの縁ってもんよ、こっから北西の氷の洞窟にお住みになられてる────"氷結の女王様討伐"っての引き受けてみないかい?」


「え、え? 急にそんな事云われても、わたし達……… 」

 マイペースな中年男に付いてゆけず、シファは戸惑う。

「そりゃ無理にとは云わんけど、腕試しってのはどうだい? 数ある冒険先で俺っちがゲットしたのを報酬にくれてやるけんな!」

「ンな義理ねェぜ、オレたちゃ火柱上がった場所に行くトコなンだからよ」

 妙な勧誘を疑るシーフのランク。

「なるへそ、グルグ火山に行くつもりなのけ! だったら尚更引き受けて貰わんと!」

「それって、どういう事でスか……?」

 黒魔道士のビルも訝しまずにおれない。

「まぁ、話だけでも聞いておくんな!」

「シド様……、やはりまだ諦めていないのですね」

「そうともさテューテ! クレセントレイク愛の冒険家シドの名に掛けて……、氷の洞窟に存在するとゆう伝説の[浮遊石]を手に入れるまでわ!!」

「勝手に云ってろっつの、テメェで何とかすりゃいーだろ」

「それが出来んから頼もうとしてるんじゃないけ!……あいや、逆ギレはいかんな? グルグ火山より北側の氷の洞窟って場所にはな、氷結の女王様がお住み着きになられちょるのだ!」

「そンだけじゃ分かンねェぜ、大体ソイツぁモンスターなのかよ?」

 ランクは面倒そうにしながらも、シドの話を聞いてやる。


「まぁ噂によると[氷結の精霊]様だそうだけんどすっかり居着いてらっしゃるみたいで、何でも浮かしちゃうとゆう伝説の[浮遊石]欲しさに洞窟入った俺っちと同じような物好きな冒険家ってのは、

猛烈な吹雪で見通し利かずに戻るしかないか、はたまた氷付けにされて入口に戻される奴ばかりなんさ!

そんでいつしかその洞窟にだぁれも近寄らんようになったとこに! 俺っちが歴史を塗り替えちゃろうって訳なんだけどもな……

どうにも吹雪に敵わんで、俺っち寒いのは得意だのに見通し利かんし前進してるつもりがいつの間にか入口に戻されてやんのさ!

日を改めて何度挑戦しても同じ有り様でな? 俺っち魔法はてんで使えんし、それでも諦められんのだい!!

────そこで、だ! 魔法使えそうな冒険慣れしてるっぽいあんた方に、氷の洞窟の奥で吹雪起こしてらっしゃる氷結の女王様を討伐……とゆうか鎮めてほしいのさ!!」


「あなた方が向かおうとされているグルグ火山は熱地獄で、"氷結精霊の加護"がなければ暑さで参ってしまうのでは? シド様の依頼を引き受けて下されば、あなた方の為にもなると思われますが──── 」

 4人の身を案じつつ、テューテも勧める。

「伝説上のお姿は妖艶極まりないときたもんで、力を示してその精霊様を鎮め、認められさえすれば! 灼熱除けの加護を受けられる訳だし火山の暑さも何のその! オマケに俺っちからの報酬もあるかんな! そんでもって吹雪の治まった氷の洞窟内で俺っちは気兼ねなく[浮遊石]探索が出来るってなもんよ!!」


「 ────引き受けた」

 他の3人の意見も聞かずに決定を下すマゥスン。

「オマエ、また勝手に……ッ」

「おう、べっぴんさん! やってくれるんか!! ここはひとつ、アッツイ炎かまして大人しくさしておくんな! そいでもってあんた方のお名前……、教えといてくんない?」


「あ、わたしはシファって云います」

「ぼ、ボクはビルでスっ」

「 ……オレぁランク 」

「 ────── 」

「なるへそ! 白魔のシファっちゃんに黒魔のビル公、スィーフのランク坊に赤魔のべっぴんさんってこったな!!」

「妙な呼び方すンなっつのッ!」

「俺っちもお供して氷結精霊様をひと目拝みたい所だけんど、あんた方のお邪魔虫にならんよう屋敷で待ってるかんな!」

「皆さん、どうかお気を付けて……!」

 屋敷の主シドとメイドのテューテに見送られ、4人はグルグ火山とは異なる氷の洞窟を目指す。





「それで、今から向かう事になったけど……町外れの東の広場で、12賢者の人達に会っていかなくていいの?」

「そうでスよぅ、土のカオスを倒した事もご報告したいでスし……っ」

「ンな必要ねェだろ、奴らにゃお見通しだろーしな。……いちいち助言なンぞ頂かなくてもオレらのやり方でやってきゃいいンだよ」

 シファとビルに対しぶっきらぼうに云うランク。

「マゥスンは……どうなの? 予言者ルカーンの事覚えてるかどうか分からないけど、女賢者のエネラって人しか会った事ないよね」

「 ────彼等に承らなくとも、今は為すべき事は知れている。先程の依頼を優先し、その後グルグ火山へ向かえばいい」

 シファの問いに淡々と答えるマゥスン。

「オマエも"予言者紛い"ってのが気に食わねーのか?」


「 ………貴様と一緒にするな」


 ランクに一瞥もくれず、マゥスンは先を行く。

「何でェ……、アイツにしちゃ妙に機嫌わりぃな」

「ふぇ? ボクにはいつも通りに見えまスけど……」

「ランクには"そういう感じ"が分かるようになったのね?」

「ンなつもりねェよッ」 
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