| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

『自分:第1章』

作者:零那
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

『浮気』

零那は、秋の想いのままに成り下がった。
逆撫でせんように。
従える範囲は従った。
周りに危害加えささん為の犠牲なら安いもんや。
零那が受け入れてから秋は安定した。
でも、凄い勢いで彼氏面した。
ユウがまた急に来たら...
不安は常にあった。
罪悪感も勿論...


秋は色んなこと話した。
単車との出逢いから族に入るキッカケ。
頭になってからのこと。
頭ヤメたときのこと。
ヤクザに入るキッカケ。
シンさんとの出逢い。
シノギの内容。
鑑別、少年院の中でのこと。
親との確執。
いろいろあった。


心臓が痛かった。
掴まれたような...
抉られたような...

同情?
人情?
友情?
愛情?
理解?

放っとけんかった。


零那は歪んでる。
秋も歪んでる。
お互い、理解し合えた。
あかん...
単なる傷の舐め合いに意味は無い。
ズルズルいきそぉで怖かった。
どっちつかずの自分は汚物そのもの。
ユウを裏切ってる。
それでも秋を受け入れるのは、少なからず情を捨て切れて無いから。


1階の部屋では母さんがビール飲みながらテレビ。
じぃちゃんちは台風で飛ばされた。
此の家は、台風で家が無くなった人用の家。
食事、テレビは、じぃちゃんの寝室。


2階が母さんと弟の寝室。
今は零那も。
2階は2部屋あるけど、1部屋は物置状態。


弟は母さんのつまみをつまむ。
この日は零那も下降りてテレビ観てた。
パッと見、普通の家族っぽい。
笑えるわ。

理想の母親像とか家庭とか妄想してた。

ジリリリリリ―ッ!!

古い黒電話が煩く響いた。

前からMJの人からの電話が何回かあった。
違う番号書いたのに此処にかかってくるって事はバレたんやな。

声変えて対応してたけど...


煩いから受話器を取る。
弟に『シーッ!』って合図した。
『零那さんの身内の方ですよね?』
咄嗟に切ってしもた。
やばいっ!
部長だった。

秋が変やなって気付く。
誰でも気付くわなぁ...
母さんも不思議な顔してた。

弟は、いつの間にか秋と仲良く?なってた。
『次鳴ったら取って!もうかけて来んといてって言って!』
弟が秋に頼んでた。

すぐに煩いベルが響いた。
秋は、相手がさっきの奴やって解った瞬間に脅し出した。

用件は、事務所に置いてる荷物...でも、番号解ってるって事は他に理由がある筈。

確認の為に誓約書内容チェックしたんやろ?
嘘書いてたからどうにかしたろ思たんちゃうん?

二度とかかって来んかった。



携帯が止まってるから誓約書の番号にかけた。
ほな違うかった。
で、探しまくったんやろな...


秋が帰った後、公衆からユウに電話。
罪悪感しか無かった。
いっそ現状を暴露したかった。
嫌いになって欲しい。
棄てて欲しい。
でもそれは傷つけるだけの行為でしか無い。
言ってしまえば愛媛に連れて帰ろうとする。
高校も辞めるやろ。
ユウはそうゆう子やから。
だから言えん。
高校辞めさしたくないから、あの時離れたんやし...
今辞めたら何の為に今迄耐えてきたんかってことになる。


周りの、ごくごく普通に生きてる人達を羨んで、憎しみが生まれる。
汚れて醜い心の自分が一番憎い。大っ嫌い。
真っ黒で歪で汚い自分。


生きることも疲れて、諦めて、それでもやっぱ生かされ続けていく。
自分の全てには過去がビッシリ付き纏う。
終わりを告げるにしても、受け止めるにしても、どれほどの強さを要するか...



秋を思い切り突き放すと決めた。
何が起きるか解らん。
死ぬ覚悟をした。
殺される覚悟。


秋は弱い。
依存されてた。
蝕まれてくのが怖かった。
流されてく。
お互い駄目になる。
過呼吸も酷い。
リストカットも無意識でしてる。

秋は別れを拒否。
受け入れれず暴れた。
此処にも来て欲しく無い。
ハッキリ終止符を打ちたいと。


弟には、危ないから迎えに行く迄いつもん所で遊んでてって言うてた。
弟は勘が鋭い。
若干8歳。
巻き込むワケにはいかん。


秋は最終的に理解してくれた。
ユウの存在も知ってた。
2番目なんも解ってた。
零那が秋を切り離すべき。
せやないと終わらん。
情が邪魔してた。
突き放せれなんだ。
零那の甘さが在った。


秋は、基本心が優しい子。
傷つけた。
解ってくれると信じてた。
けど、感情が振り切った場合は解らん。
だから死ぬ覚悟で向き合った。
殺されても良い。
それで秋が楽になるなら。


最初は暴れた。
心が痛かった。
抱き締めた。
酷いよな...
ごめんな...
秋の純粋な想いが重いとか怖いとか、失礼よな...


誰かが、温かい大きな心で受け入れてくれる。
優しく優しく守ってくれる。
秋は幸せになれる。
零那には、そんな器も心もチカラも無い。


さよなら...

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧