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仮面ライダー龍騎【13 people of another】

作者:Миса
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Part One.
First chapter.
  第4話

キィーン

小さい頃からその音はよく聞いていた。


ナナは深夜に目を覚ます。
目だけを動かし、部屋に備え付けられた鏡を見た。

「またお前か……」

鏡の向こうには昼間にナイトが逃がしてしまったモンスターが映っていた。
ナナは起き上がると鏡に布を貼り付け見えないようにする。
ナナは窓や鏡が幼い頃から嫌いだった。



──────────



「ああ、くそっ!あいつまた勝ち逃げかよ!」
「芳樹あんまり叫ぶなよ」

芳樹は亮平に支えてもらいながら道を歩いていた。
あれから芳樹は何度もあの時負けたモンスターと合間見えたが……結果は負け越しだった。

「あ、亮平さん、桑元さん」
「ナナくん!ごめんね…遅くなって」
「いえ、大丈夫です。
それより、勝てましたか?」
「負けたよ……あいつ強過ぎて、マジ意味わからねぇよ。いつもならパパぁ〜と倒せるのに」

ナナはたまモンスターと戦うことを放棄した。
よほど戦うのが嫌なのだろうな…と二人は思っていた。
ナナは先程まで二人が戦っていたビルの自動ドアを見る。

「ファミレス行こうぜ。腹減ってしょうがねぇ……」
「ハイハイ。ナナくん、どうしたの?」
「いや、何でもありません」

ナナは振り返り芳樹と亮平のもとへ駆け足で向かう。
自動ドアの向こうには、またあのモンスターが映っていた。



───…



「腹減った。おい城戸、なんか作ってくれよ」
「油島さん、アンタ俺を料理人か何かと勘違いしてません!?」
「餃子食べたい、餃子」
「……わかりましたよ。明日作ってきますから」
「頼んだぞ……」

油島はモバイルニュース配信会社「OREジャーナル」の記者だ。今日も華麗に後輩である城戸(きど)真司(しんじ)をこき使っているところだ。

「そういえば、城戸……お前、高校の時家出したことあるか?」
「え、何ですか……いきなり」
「いやな……俺の知り合いに高校生の子がいるんだが……今、家出しててウチにいるんだよ」
「え、油島さん…知り合いに高校生って……」
「変な誤解すんなよ。その子は男だ」
「あ……そう、ですよね」

全くこの後輩は、先輩を何だと思ってる。と油島はタバコに火を付けながら思った。

「でな、まあ進路の事で親と喧嘩したらしいんだ。こういう時って、どうしたらいいもんかね?」
「どうって?」
「んー……一回あいつに会わせてみるか」



───…



──翌日──


「───と言うわけでだ……」
「ちょ、ちょっと!ちょっと、油島さん!?」

油島の自宅にて、城戸とナナがエプロン姿でキッチンに立っていた。

「どうした城戸、餃子作ってくれるんだろ?」
「いや、だからって……なんで油島さんの家!?」
「このパツ金坊主が例の家出少年の読川ナナだ」
「よろしくお願いします」
「あ、こちらこそ……じゃなくて!油島さん、餃子作るなら自分の家で……」
「城戸、読川。俺は仕事場に行ってくるから、その間に飯頼むわ」
「油島さん!?俺の話し聴いてます!?油島さん!」

城戸はこうして見ず知らずの金髪少年・読川ナナと餃子を作ることになった。

「ギョーザ、作るの得意なんですか?」
「あ、うん……得意っていうか、料理はまぁ、全般……」
「……へぇ」

そのナナは部屋を凍りつかせた。

(や、ヤバイ、会話が続かない。せっかく話しかけてきたのに、いやそもそも会話をぶった切ったのはこいつなんだけど……なに?最近の高校生ってこんなもんか?なんか、冷めてるって言うか、取っ付きにくいって言うか。そもそもこいつなんで家の中で帽子被ってるんだ?)

などと考えながら城戸は餃子を作る準備に取り掛かる。それを冷静そうに見ているナナだったが、内心ではかなり焦っていた。

(や、ヤバイ、会話が続かない。この人、確か龍の(・・)にーちゃん(・・・・・)だよな?違ってたらどうしよう、12年前の事なんかほぼ覚えてねぇよ。ってかなんでここにいるんだ?そもそもなんで俺はあの時会話をぶった切ったんだ?すっげぇ緊張する……でも、この人俺のこと知らないんだよな……この世界じゃ、俺には会ってないはずだから……)

「そ、それにしても…部屋暗くないか?」
「え?」
「カーテン開けるぞ」

城戸はリビングの窓のカーテンを開けようとする。

「だ、駄目!」

いきなりナナが大声をあげた。城戸はポカンとナナを見る。それも当たり前だ、カーテンを開けようとしただけで、これだけ怒鳴られたのだから……。

「……すみません…俺、窓とか嫌いなんで……」
「あ、いや……何か理由があるのか?」
「……」
「俺で良かったら相談に乗る!」

城戸はナナの目を見てそう言った。
ナナは堪えきれず笑った。
なんだよ……と少しムッとしている城戸を見て「この人は龍のにーちゃんだ」と確信した。

「すみません、城戸さんはいい人ですね」
「いい人?」
「ギョーザ、作りましょう。油島さんがビックリするくらい美味しいの!」



───…



「ちょこまかと……!」
「だから、芳樹!頭に血が上りすぎだって!」

龍騎はあのモンスターを追いかけていた。
その後をおうライアは息を切らしている。もうずっとこの調子なのだ、無理もない。

「あいつには三つの罪がある……俺を負かしたこと、俺を苔にしたこと、俺の昼食時間をめちゃくちゃにしたこと……」

こうなった龍騎は止められないことをライアは長年の経験でわかっていた。どこまでも負けず嫌いで中身は中2の夏休みのような男だ、ライダーになって人々の平和を守っていれば、変にプライドが付いてしまうことくらい、理解していたつもりだっが……。

「ここまでとは、予想してなかったな」
「許さねぇ!!」
「頼むから落ち着けよ、お前22だろ!?」

血気盛ん過ぎてこの友人との付き合い方を少し考えたライアであった。

「それにしても、あのモンスター……さっきから金髪の奴しか狙っていない……?」

ライアは思い出した。
そういえば、あのモンスターは金髪の若者を狙っている。昨日遭遇した時も、明らかにナナを狙っていたのだ……。

「芳樹」
「なに!?」

龍騎はイライラしているようだが、それに構わずライアは話しを進める。

「……あのモンスター、誰かを狙っている。
多分、そこを付けば上手くあのモンスターをおびき寄せることができると思う」
「え、マジかよ…流石俺の相棒。ところで……その誰かって……?」
「おそらく、金髪の男……だと思うんだけど…」
「金髪の男……」
「危険な賭けだけど、やってみようと思うことがある」



───…



「油島さん、帰って来ませんね」
「昼はもうとっくに過ぎてるのにな…」

ナナと城戸は餃子を作り終え、後は油島が帰ってくるのを待つだけだった。

「先に食べますか?お腹空きましたし」
「そうだな、食べとくか」

と、その時、家のインターホンが鳴った。

「誰か来たみたいですね。俺、ちょっと出てきます」

ナナが玄関へ向かい扉を開けると、そこには芳樹と亮平がいた。ナナは突然の二人の訪問に驚いた。

「ナナ、ちょっと一緒に来てくれ!」
「はい?」
「実は、モンスターの事で……」
「すみません、俺は極力ミラーワールドに行きたくないんで……」
「いや、それは大丈夫だ。ナナは来てくれるだけでいい!」
「……協力したいのは山々なんですけど……今、客が来てて……」
「客?」



「あー!城戸先輩!!」

ナナが芳樹と亮平を家に上げると、城戸を見た芳樹が城戸に指を差して驚いていた。

「桑元、塚原!?」
「知り合いですか?」
「おう、高校の時の先輩だ」

意外な再会を果たした三人は昔話に花を咲かせていた。ナナはもちろんそれについて行けるワケもなかった。



───…



「すみませんね、お時間取ってもらって」
「いえいえ、こちらこそ」

忘れている人もいると思うが、油島は記者である。

「北岡さん、この前の裁判のことで……」

北岡(きたおか)秀一(しゅういち)と握手を交わし、油島はある裁判の事について北岡に質問していく。しかし、お互い握手を交わした瞬間二人は同じことを考えた。「あ、この人苦手なタイプだ」
そしてこの夏、二人は何度も激突して行くことになるのだが、それはまだこの二人も知らない。



──────────



「───ところで、亮平さん達は何の用で来たんですか?」

つい、城戸との昔話に夢中になってしまった二人はナナのその言葉にハッとなった。

「あ……と。ナナくん、こっち来て。芳樹は先輩の相手してて」
「おう、任しとけ!」

ナナは亮平に連れられてリビングの奥でコソコソとナナにあることを話す。

「この前から俺達が苦戦してるモンスター、知ってるよね」
「ああ……はい、桑元さんがなんか騒いでましたね」
「そのモンスター、何か金髪の男を狙っているみたいなんだ」
「金髪……?」

亮平の視界にはナナの金髪が映る。

「つまり、ナナくんを囮にしたいんだ!芳樹のためにも…」
「……いいですよ」
「意外とアッサリ!?」
「いや、俺ってほとんどと言っていいほど戦わないですし……これくらいしないと」
「ありがとう、ナナくん!」

「この人は本当に桑元さんと仲良いな……」とナナは思っていた。
亮平はナナの手をがっしりと掴む。

「これで、イライラした芳樹を相手にしなくて済む!」

どうやらそれが本音だったようだ。
その頃、芳樹と城戸は……。

「俺ちょっと、トイレ行ってくる」
「あ、はい。いってらっしゃい」

城戸がトイレに行くために席を外した。

「にしても、なんでカーテン閉めてるんだ?こんなに天気がいいのに、もったいない……」

芳樹はそう言うとカーテンを開けた。
すると、芳樹のすぐ隣を何かが通り過ぎた。

キィーン…

いつもの音が聞こえる。
芳樹が自分の隣を見ると、紐のようなものが窓から出ている。

「芳樹、ナナくんが!」
「!?」

芳樹は亮平の言葉に反応して後ろを振り返るとナナがその紐に首元を絡められ、窓へ引っ張られていた。とっさに芳樹はナナを掴み窓の中へ入らないようにする。
変身をせずミラーワールドの中に入ってしまうと二度とこちらには帰ってこれないからだ。

「ナナ!」
「芳樹、俺が先に変身して、中の奴からナナを引き剥がす!」
「わかった!」
「変身!!」

ミラーワールドへ入ったライアはエビルウィップでモンスターに攻撃をする。するとモンスターは紐をナナから離しその攻撃を間一髪のところで避けた。
芳樹たちのいるミラーワールドの外では、ナナがその紐から離されていた。

「ナナ、大丈夫か!?」
「はい……なんとか……」
「よし、それじゃ城戸先輩のことは頼んだ!」

そう言うと芳樹は龍騎に変身しミラーワールドへ入って行った。

「……大丈夫かな?」

ポツリとナナが呟いた時、あの男が窓に映りナナに話しかけた。

「どうした?キミが倒すべき人間の心配をするなんて、らしくないじゃないか」
「……別に。あの人達が負けたら、戦うライダーが減るな…って思っただけだし」
「なら、今が戦うトキだろう?数が減る前に、その前にキミが倒すんだ、仮面ライダー王蛇」

ナナは黙り込んだ。目の前の男の言っていることは最もなのだ。自分は戦いが好きだ。だからこそ、ナナは仮面ライダー王蛇として戦った。だが、ナナは基本優しい子だ。

「あれ?桑元達は?」

城戸が帰ってきた。

「あ、城戸さん……えっと、桑元さん達は、なんか急いでどっかに行きました」
「?」

もう一度ナナは窓を見る。
しかしそこにはあの男はいなかった。

「読川?」
「いえ、なんでもありません。城戸さん、油島さん迎えに行きましょう」
「え?でも……」
「いいから、行きましょう!」

ナナは城戸の腕を掴んで家を出た。
ミラーワールドから帰って来た時、城戸がその時の二人を見てしまったら大変なことになってしまう。

「だからと言って、なんであんな事言ったんだろう……他の事でも良かったのうな……」



───…



prrrr…

「あ、すみません。出ても構いませんか?」
「どうぞ」

北岡宅で油島の携帯電話が鳴る。

「もしもし?」
『あ、油島さん?城戸です』
「ああ…どうした?」
『今、どこにいるんですか?』
「取材中…弁護士の北岡秀一さん。知ってるだろ?」
『あの、悪徳弁護士の……』
「それ本人の前で言うなよ」
『わかってますって……今からそっちに向かいたいって読川が言ってるんですけど……』
「読川が?まあいいけど、取材ももうすぐ終わるし……」
『あ、おい!読川!?』
「?
おいどうした、城戸?」

そこで連絡が途切れてしまった。
油島は首を傾げながら携帯電話をしまう。



───…



城戸は携帯電話で油島が今どこにいるのかを聞いていた時だった。
少し暇だったナナが少し視線を城戸から逸らした時。
帽子の隙間から見覚えのある男が見えた。

おに(・・)ーちゃん(・・・・)……?」

ナナは城戸の制止の言葉に耳を傾けず走り出した。






 
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