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不思議な縁

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第六章


第六章

「彼女だよ」
「はあ」
「モモちゃん」
 先輩の彼女の方も桃子に声をかけていた。
「え、ええ」
 そして達之と同じ様に桃子も唖然としていた。
「彼が堀達之君よ」
「彼女が西峰桃子さんよ」
 だが二人はこの時点ではそんな二人に気付いていなかった。
「っておい」
 最初に気付いたのは河村さんであった。
「御前どうしたんだよ」
「モモちゃん、どうしたの?」 
 そして次に先輩の彼女が気付いた。
「なあ久美」
 そんな二人を見て河村さんは彼女に声をかけた。
「どうしたんだ、この二人」
「さあ」
 先輩の彼女の久美もこれには首を傾げていた。
「何かあったのかしら」
 実際に何かあった。だから二人は呆然としているのだ。
「まあいいか」
 それでも河村さんは合コンをすることにした。ここまで来ておじゃんというのは好きではなかったからだ。
「入ろうか」
「そうね」
 久美もそれに頷く。そして店に入る。その時に二人に声をかけた。
「二人も早くいらっしゃい」
「機種はハイパーダムでいいよな」
「え、ええ」
「あたしはそれで」
 二人は呆然としたままそれに応えた。先輩達が店に入っても二人はまだ呆然として店の外で顔を見合わせていた。
「まさかさあ」
 最初に口を開いたのは達之であった。
「用事って。これだったんだ」
「それはこっちの台詞よ」
 桃子も戸惑いながら応えた。
「何でここで」
「まさかとは思ったけど」
「こっちもよ」
 とにかく二人は今こうして会っているのが信じられなかった。
「モモを助けてくれたけど」
「ここで会うなんて」
「ちょっと・・・・・・」
 戸惑いのあまり何と言っていいのかわかりかねていた。
「彼女、いないのよね」
「うん」
 達之は答えた。
「君もだよね」
「ええ」
 そしてそれは桃子も同じであった。
「そうよ」
「そうじゃないとお互い合コンなんて」
「出ないわよね」
「おい」
 ここで店の中から河村さんの呼ぶ声がした。
「早く来いよ」
「あっ」
 二人はそれを受けて顔を河村さんに向けた。その動作も同時であった。
「はい、今行きます」
「もうジュースも頼んだわよ」
 久美も声をかけてきた。
「コーラでいいわよね」
「はい」
「それでいいです」
「じゃあ早く来いよ、もう歌うぞ」
「スミ君何歌うの?」
「ケミストリーにでもするかな」
「ビーズがいいわよ、ビーズ」
「じゃあ久し振りにウルトラソウルいくか」
「あっ、いいわね」
 二人はもう自分達で楽しみだそうとしていた。何はともあれ合コンははじまろうとしている。主役ということになっている二人がそれに参加しないわけにはいかなかった。こうして二人は店に入った。合コン自体は互いの当たり障りのない紹介と後はジュースとビールを飲みながら、カラオケしながらのパーティーとなった。
「じゃあ次私ね」
「モーニング娘。だよな」
 先輩達でもう盛り上がっていた。二人は主役である筈なのにどうにも大人しい。それにこんなところで再会するとは思わなかったので何を話していいかわからなかった。それでもちょこちょこと話をしていた。
「猫、好きなのよね」
「うん」
 達之は桃子の言葉に頷く。
「だからね。あの時」
「そうなんだ」
「黒猫も。好きだから」
 達之は小さな声で言った。
「本当!?」
 桃子はそれを聞いて嬉しそうな顔になった。
「そう言って貰えると」
「そうなの」
「ええ。だって黒猫嫌いな人多いから」
 不吉だというのである。なお大阪では黒猫はお客さんを呼ぶとして人気がある。こうしたことは地域差があって一概には言えないものがある。
「モモって可愛いでしょ」
「うん」
 桃子の言葉に頷く。彼女の問いは賛成を求めているものであったが彼はそれには賛成であった。
「黒猫嫌いなんて信じられないわ」
 口を尖らせて言った。
「あんなに可愛いのに」
「黒猫だって可愛いよね」
「そうそう」
「おい、次御前等が歌えよ」
 しかしここで河村さんと久美が二人にマイクを渡してきた。
「俺達ですか」
「ああ。何かデュエットでもよ」
 河村さん達はあえて二人に気を使ってきたのである。
「何かあるだろ」
「っていっても」
「ええと」
 二人はあまりデュエットを歌ったことはなかった。それを振られて少し困ってしまった。
「何がいいですかね」
「俺に言われてもわからねえよ」
「二人で選びなさいよ」
 そう仕向けるのが二人の狙いであった。達之も桃子もそれに乗ってしまった。
「それじゃあ」
「何がいいかしら」
 二人はそれを受けてナンバーを見て探しはじまた。それこそが河村さん達の狙いであった。
 ナンバーが書かれたカタログを見ながら探す。そして一つ見つけた。
「これなんかどうかな」
「それがいいわよね」
「何選んだんだよ」
 河村さんが二人に尋ねてきた。久美もその横でにこにこしている。

 
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