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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第六十五話 Zero Virus Maze-Pale Cyber Maze-

 
前書き
零空間突入。
 

 
エックス、ゼロ、ルインはハンターベースをルナに任せ、荒野の中にアディオンを飛ばしていた。
目指すは当然ポイント11F5646。
そこが例え地獄の底であろうとも今のエックス達に躊躇や逡巡は一切無い。

エックス「…ウィルス濃度が徐々に濃くなってきたな」

アディオンに搭載された計器を見ながら呟くエックス。

ルイン「…それも異常なほどにね」

ルナによって改良が施されたウィルスレーダーは、ゼロウィルスの感知も可能としているが、それが指し示す数値を鵜呑みにすれば、並みのレプリロイドなど近付くだけで即イレギュラー化してしまうだろう。

ゼロ「だが、引き返すなど今更出来るはずもない。行くぞエックス、ルイン」

目標座標に到達した瞬間、エックス達の周囲が闇に包まれていき、3人を奈落の底に突き落とすかのような落下感が襲う。

エックス「う…うわあああ!!?」

ルイン「きゃあああああ!!?」

ゼロ「くっ…!!」

落下していくエックス達はその中で既視感を感じていた。
まるでどこかで見たような…懐かしさを。



































エックス「うっ…」

ルイン「痛あ…」

次にエックス達が気がついた時、3人が立っていた場所は現実とも非現実ともつかない謎の空間であった。
手足を動かしてみる限り感覚では地上に居た時と、全く変わらない感覚で動かす事が出来る。
特に力が制限されているような感じではない。

ルイン「…ここが…零空間…」

周囲を見回すルイン。

ゼロ「この奥に…シグマが…」

そう呟くとゼロはグッと拳を握り締めた。
左右を見回して見る限り特に道らしきものは見当たらないが、付近の床に巨大な穴が開いていた。
エックス達は迷わずその空洞に向かって跳躍し、突入する。
その時であった。

ルイン「わっ!!」

ルインの目の前から巨大なビームが放たれた。
かわした訳ではない。
位置的に命中しなかっただけだ。
ふと下を見遣れば壁に沿って無数の巨大ビーム砲が設置されているのがエックス達の目に飛び込んでくる。

ゼロ「何だこれは…!!?」

驚愕するエックス達の落下に合わせる様に次々と放たれるビームの嵐。
その照準も徐々に正確になっていく。

ルイン「まずいよエックス、ゼロ。こんな出力のビームを喰らったら即死だよ!!」

ゼロ「くそ…こんな所で死ぬわけには…!!」

エックス「何とかビーム砲を止めなければ…そうだ、ダークホールド!!」

咄嗟にダークホールドを展開するエックス。
ダーク・ネクロバットから入手したこの特殊武器は一時的に時を止める能力がある。

ルイン「やった!!」

エックス「急げ!!ダークホールドの効果が切れる前に!!」

ゼロ「ああ!!」

エックス達はダークホールドの効果が切れる前に一気に零空間を突破した。



































トラップを突破したエックス達を待っていたのは、巨大な体躯を持つ、漆黒の1つ目の巨人・シャドーデビルであった。

ルイン「リキッドボーン…?」

ゼロ「同型機か。雑魚の癖に図体がでかいな…」

エックス「一気に片付けるぞ」

ルイン「待って、こいつは私に任せて、エックスとゼロは先に行って」

ゼロ「何?」

エックス「え?」

ルイン「こうしてる間にもゼロウィルスが世界中に広がっていく。あまり時間はかけられない。私もこいつを片付けたらすぐに向かうから」

ゼロ「…分かった」

エックス「その言葉…信じているからなルイン…死ぬなよ?」

ルイン「うん!!」

ボーンシリーズの共通の弱点である目のようなコアにフルチャージショットを繰り出し、直撃させる。
シャドーデビルが少しのけ反り、エックスとゼロは即座に奥へと駆け抜ける。

ルイン「さて…君の相手は私だよ。」

シャドーデビルはルインを見据えると分裂し、凄まじい勢いで彼女へと襲い掛かる。

ルイン「なっ!!?」

予想外の攻撃に目を見開くが直ぐに跳躍して回避する。
しかし、分裂した黒き塊が突如方向を変え、上空へ一斉に飛翔していく。
塊はルインの頭上で徐々に1つの塊となり、やがて巨大なプレス機の様な形に変化していた。
それをかわす暇など有りはしなかった。
プレス機の姿に変化したシャドーデビルは、凄まじい勢いでルインの上空から落下し、容赦なくルインを踏み潰したのである。

ルイン「あぐっ!!」

それは必ず1つの姿にしか合体しなかった現在のボーンシリーズ、100年前のデビルシリーズの同型機には無い、シャドーデビルならではの能力であった。
苦悶の表情を浮かべるルイン。
正直油断した。
ボーンシリーズの敵はパワーは凄まじいが動きが鈍い。
このシャドーデビルも同じだと思っていた。
しかし、分裂することで身体を軽くし、凄まじい機動力を誇っていた。

ルイン「仕方ない…」

ルインの身体が眩い光に包まれたかと思うと、再び紅いアーマーを身に纏う。

ルイン「(まさか、こんな入り口付近の門番でOXアーマーを使うなんてね……)」

ハッキリ言って予想外だった。
出来ることならこのアーマーはシグマとの対決まで使いたくはなかったのだが…。

ルイン「ここで負けるわけにはいかない。覚悟しなよ…ソニア、悪いけど全Lv解放、最初から飛ばしていくよ」

ソニア[うん]

オーバードライブを発動するとシャドーデビルが再び分裂する。
塊がルインに迫るが彼女はそれを容易く回避していく。
そしてシャドーデビルが再び合体すると同時にバスターショットを構える。

ルイン「当たれ!!」

OXアーマーはオーバードライブを発動させるとチャージせずとも1段階のチャージショットを連続で放てる利点がある。
しかもその一段階チャージショットも通常時のエックスのフルチャージショットに匹敵する破壊力を誇る。
絶え間無くチャージショットをシャドーデビルのコアに直撃させる。
徐々にだが、コアに亀裂が入り始めた。

ルイン「(よし…このまま…!!)」

ダブルチャージショットを喰らわせようとチャージを開始した瞬間。
シャドーデビルが再び分裂し、次々に襲い来る漆黒の弾丸がルインを打ち据え、チャージしていたために反応が遅れた彼女は為す術もなく顔面に喰らい、背後へと吹き飛ばされる。

ルイン「くっ…あ、あれ…?」

それでも意識を失わなかったルインはバスターショットをコアに向けようとするが、本人の意思関係なく身体が震える。
ダイナモとの戦闘で頭部を破壊されたことがトラウマとなっていた。
バスターショットを構えようとしても腕は震え、照準が合わない。
シャドーデビルはその隙を逃さずルインに攻撃を浴びせる。

ルイン「(な、何で…?何で身体が動かないの…?)」

身体だけではない。
ガチガチと歯がぶつかる音。
あまりの恐怖に慄き歯の根が噛み合わないのだ。

ルイン「(だ、駄目…た、戦わなきゃ…)」

必死に気持ちを奮い起こし立ち上がるルイン。
どうにか立ち上がってはみたものの足が竦み震え上がる。
シャドーデビルが分裂し、ルインに迫り来る。

ルイン「ヒッ…」

恐怖に悲鳴を上げ、咄嗟に顔をガードする。
全身が打ちのめされ、吹き飛ぶ。

ルイン「(怖い…怖い…エックス…た、助けて…助けて…)」

トラウマにより恐怖で動けないルインは攻撃の的になる。
シャドーデビルはプレス機の姿となり、ルインを押し潰そうとする。
プレス機がルインの視界を圧巻する。

ルイン「(エックス…)」

その時、脳裏にエックスの声が過ぎった。
優しさに満ちた声。
強さと温かさを持つエックスの声が…零空間に向かう時の記憶が蘇る。



































エックス『逃げるなルイン。君はそんなに弱くない。少なくとも今の君は紛れも無く君自身だ。今後はハンターとして目に見えるイレギュラーだけじゃなく自分の内なるイレギュラーとも君は戦っていかなくてはならない。それは想像を絶する過酷な戦いになるだろうけど、君なら確実に内なるイレギュラーを制する事が出来るはずだ。少なくとも俺はそう信じている…』

ルイン『でも、怖いよ…イレギュラー化して、もし皆を傷つけたらと思うと…自分が自分でなくなるようで怖いの…』

エックス『その時は俺が止める。誰1人死なせはしない…君を助けてみんなを守る…』

ルイン『本当…?』

エックス『ああ、約束する』

ルイン『うん、約束だよ…?エックス』




































そして自分がシャドーデビルに挑む時、エックスが言ってくれた言葉。

エックス『ルイン…死ぬなよ?』

愛しい人の声。
自分に戦う勇気をくれる人。


































エックスの姿が脳裏を過ぎった瞬間、ルインの身体は動いていた。

ルイン「…………うわあああああ!!!!」

バスターショットのエネルギー充填が凄まじい勢いで完了し、シャドーデビルのコアに向けられた。






























ダブルチャージショットをコアに喰らわせた。
液体金属に守られていたにも関わらずコアは粉砕された。

ルイン「何とか…勝てた」

何故だかエックスに無性に会いたい。
しかし身体が悲鳴を上げている。
ルインはOXアーマーを解除すると壁にもたれ掛かり、少しだけ体力の回復をするために休憩した。 
 

 
後書き
シャドーデビル撃破。 
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