| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

Epos32神さまにお願いしよう~Interval 1~

 
前書き
またもや更新が遅れました。今回は難産で、たった今まで執筆してました。期限内に書き終えない事など、にじファン時代でもなかったのですがね・・・ 

 
†††Sideなのは†††

“闇の書”の復活を企んでいたマテリアルを全基打ち倒した私たち。そしてその最後に私たちは、半年前にジュエルシードを巡って争った魔導師、テスタメントちゃん――本当の名前をステアちゃんの残滓と相対した。
私たちはステアちゃんと改めてお話をして、友達になることが出来た。たとえ残滓であってもステアちゃんは最後まで優しかった。私たちを苦しませないように最期の最期まで配慮してくれて。笑顔を見せてくれた。

「「「「明けましておめでとう!」」」」

だからお別れからまだ数時間しか経ってないけどみんなで明るく笑っていられる。そんな私たちは今、アリサちゃんのお家に居る。“闇の書の欠片事件”と名付けられた今回の事件の終わり――ステアちゃんが消滅した後、私たちはみんなで泊まることの出来る広さのある家、アリサちゃんのお家へとやって来た。
すでにアリサちゃんのお父さんやお母さん、そして私たちを深夜にも拘らず臨海公園にまで迎えに来てくれたバニングス家の運転手さん――鮫島さんには魔法関係のことはお話ししてあるから、詳細な説明をすることなくアリサちゃん家にまで迎え入れてもらえることが出来た。
そして私たちは夜も遅くて疲れ果てていたこともあって、客室に案内されるとすぐにバタンキュー。そうして1月1日の朝・・・えっと、8時半、今こうしてみんなでお正月の挨拶をしてる。

「「明けまして、・・・おめでとう・・・?」」

フェイトちゃんと子犬フォームなアルフさんを抱っこしてるアリシアちゃんが小首を傾げるから、私とアリサちゃんとすずかちゃん、そしてはやてちゃんはハッとした。すずかちゃんが「もしかして、この挨拶って・・異世界には無い、のかな・・・?」ってシャルちゃんにフェイトちゃん達、そしてヴィータちゃん達といった異世界出身組にそう訊くと、フェイトちゃん達はコクリと頷いた。

「新年明けはお祝いの日っていう概念はミッドにもあるけど、特別な挨拶は無いって思う・・・」

「んー・・・ベルカでもそうかな。ルシルはフェティギア出身らしいけど、どうなわけ?」

「フェティギアも年明けは祝いの日だが、特別な挨拶は無いよ」

フェイトちゃん、シャルちゃん、ルシル君の順にそう教えてくれた。フェイトちゃん達の生まれた環境のお話を聴けて嬉しいな。とここで「新年が明けたことのお祝いの挨拶なんよ」はやてちゃんがそう話す。そして「そんじゃ改めて。明けましておめでと!」アリサちゃんが挨拶。私たちは一度顔を見合わせてから「おめでとう!」みんなで挨拶を返した。

「あ、そうだ。ねえ、はやてちゃん。はやてちゃん達って今日の予定・・・なんか決まってる?」

日本人として1月1日にやることは決まってる。初詣だ。私とアリサちゃんとすずかちゃんはずっと以前から一緒に初詣に行く予定を立ててた。シャルちゃんは誘うまでもなくついて来る(ちゃんと誘うけど、うん)と思うけど、はやてちゃん達はちょっと判らない。だから訊いてみた。

「えーっと、予定ってゆうほどでもないんやけど、本局のスカリエッティさんのトコに行こうかなって・・・」

はやてちゃんが自分の乗る車椅子を押してるリインフォースさんに振り向いてそう答えたら、「ドクターのところに? なんでまた」シャルちゃんが首を傾げる。はやてちゃんは「えっとな――」大まかに話してくれた。ドクターさんに、リインフォースさんに代わる“夜天の魔導書”と剣十字杖“シュベルトクロイツ”の開発を依頼しているって。そのことについてのお話をしに行くつもりだって。

「そっか。良かったら一緒に初詣に行こうって思ってたけど・・・」

「あー、うん。そうやなぁ~・・・」

私とすずかちゃんが、一緒に行きたいなぁ、って視線をチラッチラッとはやてちゃんに向けていると、「明日に回そうじゃないか、はやて」ルシル君がはやてちゃんにそう提案した。

「今は少しでもリインフォースと思い出を作るのが良いと思うんだ。だから、今日くらいはゆっくりと休もう」

「そ、そうだよ、はやて! 祝いの日なら、やっぱ目一杯楽しまなきゃダメだと思う!」

「そうですよ。初詣というのも気になりますし。はやてちゃん。私たちも行きましょう♪」

ルシル君とヴィータちゃん、シャマルさんにそう言われたはやてちゃんは少し考えた後、「そうやな。うん。その通りや。今日一日、のんびりしよか♪」そう言って八神家のみんなに満面の笑みを向けた。こうしてはやてちゃんたち八神家も初詣に参加することになった。
今日の予定を大まかに決めた後は、昨晩はすぐに寝入っちゃったから入ることが出来なかったお風呂を、ルシル君とザフィーラさんを除くみんなで入って(男の子なルシル君は私たちの後で入ったよ、もちろん)、お正月の定番、おせち料理をご馳走になった。そして・・・

「――そんじゃ、初詣に向けて衣装選びしないとね! 幸い、私たち人数分の着物が揃ってるから、早速着替えましょ♪」

アリサちゃんがそう胸を張った。着物で初詣。ますますお正月っぽくなった。こうして私たちはアリサちゃんのご厚意で着物姿に着替えることに。クローゼットルームっていう特別な部屋に集まって色とりどりの着物に着替えた私たちは、応接室で待ってるルシル君とザフィーラさんの元に向かう。

「ふんふーん♪ えへへ♪」

私たちの先頭をスキップで進むシャルちゃんに「シャルちゃん、すっごく機嫌が良いね」そう言うと、シャルちゃんはくるっと振り返って「異世界の服ってドキドキするんだもん❤」ってドキってなっちゃうほどに可愛い笑顔を浮かべた。

「あー、判る、判る。着物ってわたしが知ってる中じゃ、この世界、この国だけっぽいんだよね。だからこういう風にその異世界特有の何かを経験できると嬉しいんだよ♪」

アリシアちゃんもルンルンスキップでシャルちゃんの隣に並んでくるっと振り返る。そして2人でビシッとポーズ。フェイトちゃんがすかさず「アリシア可愛い・・・!」携帯電話のカメラでピロリン♪と撮影。
人形態になって着物に着替えたアルフさんが「ほら、フェイト。アリシアと並んで」フェイトちゃんから携帯電話を受け取って、2人のツーショットをピロリン♪と撮影。という私も「シャルちゃんも可愛いよ♪」自分の携帯電話でピロリン♪と撮影。

「あとでデータちょうだい、なのは」

「うんっ」

そこからちょっとした撮影会に発展。みんな携帯電話を片手に写真を撮り合いっこ。シャマルさんがはやてちゃんから携帯電話を借りて「家族写真ですね♪」上機嫌ではやてちゃんやヴィータちゃん達を撮影。

「えっと、この角度かなぁ・・・?」

とそんな中、シャルちゃんが自画撮りを始めた。携帯電話を頭上に掲げて、いろんな角度から納得のいく写真を撮り続ける。そして「よしっ。これがベストかな」って納得できる写真が撮れたようで、「どんなの?」って私とアリサちゃんで覗き込んで見て・・・ギョッとした。

「ちょっ、あんた、これはダメ!」

「見、見、見えちゃいそうだよ、その・・・アレが!」

そう言えばシャルちゃん、着物をちょこっと着崩してる。だからか頭上っていう角度から撮ったものは胸が見えちゃいそうなギリギリな写真で、それが携帯電話のディスプレイに映し出されてた。しかもそれだけじゃなく、写メールとしてあるアドレスへと送信する寸前。送信先のあて名は「ルシル君に送るつもりだったの!?」だった。

「あんた、痴女になるつもり!? というか、こんなあからさまなアプローチは逆に引くわよ!?」

「ちじょ?・・・えっと、アリサちゃんの言う通りだよ、シャルちゃん! ルシル君ってそういうのは嫌いだと思うし!」

「えー? ルシルだって男の子のなんだから、積極的なアプローチに弱いんじゃない?」

告白を断られてもなお前向きなシャルちゃんには感動を覚えるけど、少しは自重しようね。私とアリサちゃんの様子に、「ルシル君は、オーディンさんと似た価値観を持ってるから、私なら判定できるわよ~」シャマルさんがそう言って、私とアリサちゃんの間からディスプレイを覗き込んだ。一瞬の硬直。すすいーっと流れるように離れたシャマルさんはニコッと笑顔を私たちに向けた後・・・「うん、ダメ♪」両腕をバッテンにした。

「ダメよ、シャルちゃん。これはさすがにダメ」

シャマルさんがひどく真剣な面持ちだから「どれ」シグナムさんやリインフォースさんも覗き込んで「ダメだな」うんと頷いた。はやてちゃんが「わたしにもー」って言うけど、シャマルさん達が「ダメです」って即却下。

「そんなにアカンやつなんか・・・」

「ほら、シャルちゃんもそのデータ消して」

シャルちゃんの携帯電話に手を伸ばしながらそう言うと、「やっぱり・・・ダメ?」シャルちゃんが可愛らしく小首を傾げてそう訊き返してきた。いいよ、って頷きそうになったけど、「ダメ」写真を見た私たちは改めて却下を下す。

「シャルちゃんは素で可愛いんだから、そんなことをしなくても問題ないよ?」

シャルちゃんは確かに可愛い。だから普通のアプローチでも十分通用すると思う反面、チラリとはやてちゃんを横目で見る。はやてちゃんもルシル君のことをひとりの男の子として好きみたいだし。初めて会った時は、弟、って言ってたけど。

(シャルちゃんがルシル君に告白しちゃうから・・・)

それで自覚しちゃったんだね、はやてちゃん。そんなはやてちゃんはヴィータちゃんに携帯電話を渡して写真を撮ってもらってた。シャルちゃんとは違って清楚な感じで。ルシル君はどちらかと言えば、今のはやてちゃんの方が好きだと思う。

「ほら、着崩してる着物もちゃんと整えて」

流石というかすずかちゃんは手慣れた様子でシャルちゃんの着崩れた着物を直して、私はシャルちゃんから受け取った携帯電話からダメなデータを消す。データの中にはシャルちゃんらしい元気いっぱいの写真があった。これだよ、シャルちゃんって言えば。
そんなこんなで撮影会も終わって、改めてルシル君とザフィーラさんの待つ応接室へ。

「「「「「「お待たせー!」」」」」」

「ごめんなぁ、ルシル君、ザフィーラ」

「・・・おお、みんな似合っているな! な、ザフィーラ?」

「ああ。我が主、お綺麗ですよ。皆も綺麗だ」

ルシル君と狼形態のザフィーラさんが私たちみんなの着物姿を褒めてくれたから、大人なリインフォースさんとシグナムさん、あと背伸びしてるヴィータちゃん以外のみんなで「ありがとう!」お礼を返す。

「ねえねえ、ルシル。どう、私、可愛い?」

そんな中でシャルちゃんはルシル君にピトッと体を寄せて、自分だけ改めて褒めてもらおうとした。ルシル君は若干引き気味に「普段着ない服だからな。新鮮で、いいな」ってシャルちゃんの頭を撫でた。シャルちゃんは「はにゃぁ~ん❤」両頬に手を添えて、嬉しさで小躍り。でも・・・「可愛い、とは言わなかったわね」アリサちゃんがボソッと呟いたから、「うん、だね」って頷き返した。調子に乗らせる、とでも思ったのかな、ルシル君。

「ルシル君、ルシル君。あんな、わたしは・・・どうやろ?」

「ああ、すごく似合っているぞ。日本人だからかな、とても綺麗だよ」

「っ!」

ボンッと爆発したかのように一気に顔を赤くしたはやてちゃん。「えへへ」って照れ笑いを浮かべるはやてちゃんを微笑ましく見守っていたルシル君が「みんなの用意も出来たし、それじゃ、そろそろ行くか?」って応接室の扉を指さした。

「ちょっと待ちなさいよ♪」

「ふっふっふ❤」

アリサちゃんとアリシアちゃんがニタニタっていやぁ~な笑みを浮かべてルシル君ににじり寄ってく。ルシル君は若干引き気味に「なんの用だ?」って問うと、アリサちゃんは「あたし達、着物なのよ?」ってルシル君の服装、Tシャツにパーカー、ジーンズを指さす。

「こーんな綺麗どころの中にあんたみたいな私服が居たら・・・浮くわよ?」

「だからぁ~、ルシルも着替えよう!」

2人のそんな話に「ナイスアイディアや!」再起動したはやてちゃんが真っ先に食い付いた。確かに私たち全員が着物姿なのにルシル君だけ洋服ってなると、周囲から見たらルシル君がとんでもなく浮きそう。それをどうにかするための着物だね。

「うん、いいかも。ルシル君の着物姿、私も見てみたいし」

「ルシル君はかわ――ううん、綺麗だから、きっと似合うよ」

「わ、わたしも見てみたい!」

すずかちゃんと私、はやてちゃんも賛成。私たちの視線を一手に受けたルシル君は「着物か。確かに俺ひとりだけが洋服というのも浮くか。・・・頼めるか、アリサ」って着物に着替えることを決めた。渋々そうに見えるけどたぶん本音は、着てみたいって思ってるんじゃないかな。表情が晴れやかだし。

「それじゃあ、早速・・・」

「着替えよっか」

「ルシル~」

アリサちゃん、アリシアちゃん、そしてシャルちゃんがルシル君の背中を押して扉へ通していく。そして廊下に出たアリサちゃん達とルシル君。アリサちゃんがメイドさんを呼び出して何かを耳打ちした後、「それじゃよろしくね」ルシル君をさっきのクローゼットルームに案内するように伝えた。

「それじゃあ行ってくるよ。待っていてくれ」

ルシル君に私たちは手を振って、ルシル君が着替えて戻って来るのを待ちながら初詣の参拝方法についてフェイトちゃん達に口だけじゃなくて身振りで教えておく。私たちの居る応接室は広いから、みんなで横に並んで実際にその場に境内があるかのように練習。
最初は鳥居に一礼。リインフォースさんとシグナムさんは凛としてる出で立ちだから、とっても綺麗。次に手水舎で手を清める。詳しい作法はすずかちゃんが教えてくれたけど、「メンドーだな」ヴィータちゃんが面倒ぐさかった。

「ヴィータ。郷に入れば郷に従え、という言葉がこの国にはある。その土地や環境に入ったならば、そこでの習慣ややり方に従うのが良い、とい意味だ」

「誰もやらねぇって言ってねぇだろうがよ。ちゃんとやるよ。この国が今のあたしの故郷だかんな!」

「ええ子やな、ヴィータ♪」

はやてちゃんに頭を撫でられたヴィータちゃんは「えへへ♪」外見相応の笑顔を浮かべた。次はいよいよ参拝についての作法に移ろうとした時、「アリサぁぁぁぁぁぁーーーー!!」ルシル君の怒声がフェードインしてきた。そしてバァン!と勢いよく扉が開け放たれた。

「アリサ、どういうことだこれは!!?」

なんとそこには男物じゃなくて女物の着物姿なルシル君が息を荒くして立ってた。私も含めたみんながその姿に呆ける。いつもはうなじ付近で結ってる長い銀髪を後頭部でシニヨンにしてる。どこからどう見ても女の子だった。

「どういうことも何も、着替えたじゃない着物に」

「いやいやいや。お・と・こ・も・の! これ、女物だろう! 俺は、男、だ!」

「誰も男物に着替えさせるって言ってないじゃない。そもそもルシルサイズの男物の着物なんて家に無いし」

「だったら! だったら、俺を着替えさせようとするな!」

「じゃ、じゃあ、抵抗すればよかったんじゃ・・・?」

ルシル君の怒気に当てられたアリシアちゃんもさすがに狼狽え始めてそう言うと、「複数人に一斉に着替えさせられたら、抵抗する暇もなかった・・・。俺が男と知ったら逆にやる気になってたし!」ルシル君は頭を抱えた。

「まぁまぁ、落ち着いて、ルシル君。ダメよ? 女の子を怒鳴ったりなんかしちゃ」

叱りの言葉の中に優しさを含めてそう言ったシャマルさんがルシル君を後ろから抱きしめた。それでピタッと治まるルシル君の怒気。シャマルさんはそのまましゃがみ込んで、はやてちゃんの携帯電話で自分とルシル君のツーショット写真を撮った。

「えっと、何して・・・?」

「こんな機会ってもう無いだろうから記念に♪ はーい、はやてちゃんとルシル君のツーショット~❤」

シャマルさんは怒気を抜いたルシル君の両肩に手を置いて、車椅子に座るはやてちゃんの隣に移動させた後、「はい、チーズ♪」はやてちゃんとルシル君のツーショット写真を撮った。ルシル君はもう全部を諦めたのか、「もう好きにしてくれ」って大人しくなった。

「というか、ルシルってホントに女顔だよね~。ユーノもそうだけどさ」

「せ、成長すれば俺だって立派な男顔だ。見たろ?」

ヴィータちゃんやシグナムさん、リインフォースさん、ザフィーラさんと代わる代わるツーショット写真を撮られるルシル君がキリッとした表情に変えたけど、格好からしてやっぱり女の子だった。男の子であろうとするルシル君(男の子だけど)がちょっぴり・・・可哀想に見えてきちゃう不思議。

「今の格好でも十分似合うてるけど、やっぱりルシル君は男の子やからなぁ。・・・あ、そうや。ルシル君って一瞬で着替えることが出来る魔法有ったんやなかった? それで男物の着物に着替えれば・・・」

変化せしめし乱音(ディゾルディネ・カンビャメント)か・・・。あれは複製品を引っ張り出してきているだけだから、入手していないと着替えられないんだ。・・・というか、シャル。さっきからちょっと邪魔」

はやてちゃんとルシル君が話している間、シャルちゃんがちょろちょろとルシル君の周りを回って携帯電話で写真を撮り続けてる。そしてカシカシと携帯電話を操作していると、「メール?」ルシル君が袖から携帯電話を取り出して・・・「どうしろと?」シャルちゃんにディスプレイを向けた。表示されているのは、シャルちゃんらしい元気いっぱい、満面の笑顔。

「ふふん♪ わたしの、き・も・の・す・が・た❤ どうぞどうぞ待ち受け画面にしてね❤」

「・・・・無理」

「無理て!?」

ショックを受けてるシャルちゃんに「どうせ待ち受けにするなら・・・」そう言ったルシル君は私たちを一か所に集めて「はい、チーズ」パシャッと写真を撮った。

「俺は、こういった個人じゃなくて集合写真を待ち受けにしたい」

「ルシルだけ仲間外れだよ。私が代わるから、貸して」

ルシル君ひとりだけが撮影係だったからフェイトちゃんが携帯電話を受け取ろうと手を差し出すと、「いや、俺は良いよ。こんな格好の写真なんて残したくない」ってそうルシル君は断った。

「そのような髪型だからそう見えるのではないか?・・・こうすれば・・・、どうだ?」

リインフォースさんがルシル君のシニヨンを解いて、いつも通りのうなじ付近での一纏めにした。でも「やっぱり女の子だよね」アリシアちゃんが私たちの心の声を代弁してくれた。着物が女物、しかもピンク色だからどうしても女の子。少しの間沈黙が続いた後、ルシル君は「・・・いいよ、もう、うん。これが子供の俺の・・・生き様だ!」って、ちょぴり涙目で、堂々と両腰に手を置いて宣言した。

「そう言やさ、ザフィーラはどうすんだ? 狼形態のままなんか?」

「我か? 我はこのままでいい」

「でも、境内や神殿前はたぶんペット禁止だから、ザフィーラさん、参拝できないよ?」

「む?・・・むぅ。いや、我は参拝せずとも――」

「アカンよ、ザフィーラ。家族みんなで一緒に参拝せな・・。嫌、かな・・・?」

はやてちゃんが少し悲しげな表情を浮かべたら、「い、いいえ、そのようなことは。直ちに着替えて参りますゆえ」ザフィーラさんは慌てて人形態に変身。アリサちゃんが「そんじゃザフィーラにも着物に着替えてもらおうかしら」って言ったところで、「おい!」ルシル君がアリサちゃんに詰め寄った。

「有るんじゃないか、男物の着物!」

「え? あ、あー、有るわよ。大人サイズなら」

「それを早く言ってくれ! 俺が大人姿に変身できるのを知っているだろ・・・!」

「「「・・・・」」」

ルシル君がそう言うとアリサちゃん、アリシアちゃん、シャルちゃんは目をそっと逸らした。するとルシル君が「はめたな、俺を・・・」頭を抱えた。つまりそういうことだった。ルシル君に女物の着物を着せる。それはアリサちゃん達のイタズラだったのだ。

「はいはい、判ったわよ。そんじゃルシルもまた着替えればいいじゃない」

「似合ってるのにね」

「ね♪」

「憶えてろ、アリサ、シャル、アリシア」

こうしてルシル君はザフィーラさんと一緒に改めて着替えに行った。次に戻って来た時、ルシル君は大人の姿で男物の着物を身に纏っていた。なんだけど、ザフィーラさんはなんていうか極道さんみたいで、ルシル君はホストさんみたいだった。その後、改めてみんなで集合写真を撮って、それをお揃いの待ち受け画面にした。

†††Sideなのは⇒はやて†††

わたしらはアリサちゃんの家の車で海鳴市にいくつかある神社の1つ、愛染神社へとやって来た。まずは、アリサちゃんの家で練習した通りに鳥居に一礼。神さまの通り道である参道の真ん中を通らへんように歩いて、手水舎で手と口を清める。これで境内に入る準備は全部完了や。

「そや。みんなにお賽銭渡しておくな」

着物と一緒に借りた箱付き巾着から財布を取り出して、リインフォース、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラに5円玉を手渡す。最後にルシル君に、と思うたら「自分の分は自分で出すよ」ルシル君は微苦笑して袖口から財布を取り出した。

「はやてちゃん、これは・・・?」

「お参りするとき、賽銭箱に入れるんよ。そんでお願いごとを念じるんや」

「へぇ。そんじゃあこのお金は、神様へのお願い料ってわけか」

ヴィータが5円玉に開いてる穴を覗き込みながらそう言うと、「ふふ。ヴィータちゃん。お賽銭はお願い料じゃなくて、神様への感謝の気持ちなんだよ」箱付き巾着から自分の財布を取り取り出したすずかちゃんが微笑んだ。

「神様から貰った幸せや導き――私たちのように奇跡みたいな巡り合せへの感謝の為の。見て。お賽銭箱の上に綱が垂れた鈴があるでしょ? 最初にお賽銭をあの箱の中に入れて、あの縄を揺らして鈴を鳴らすの」

「ねえねえ、すずか。どうして5円玉なの? 感謝するならもっと大きな金額の方がいいんじゃない?」

「んー。お賽銭の金額は自由だよ。もっと高くても良いし。でも5円玉にはちゃんと意味もあるんだよ。5円の語呂合わせで、ご縁にありますように、って風に。これから私たちは広い世界で頑張るから、ご縁があった方が良いと思うんだ」

「えっと、それじゃあ鈴を鳴らす意味は・・・?」

「はい。晴々しい音を納めて邪気を払って、神様を呼ぶためのものなんですよ」

アリシアちゃんやシャマルの疑問にすぐに答えたすずかちゃんに「おお!」みんなで拍手を贈ると、「えへへ」すずかちゃんは嬉しそうに照れ笑いを浮かべた。それからすずかちゃんから続きの作法の仕方を教わる。わたしやなのはちゃん、アリサちゃんは再確認やけど、異世界組のルシル君たちにとっては「ありがとう、いい勉強になった」ってことや。

「あ、順番が来たよ。誰が先にする?」

「まずは大人のシグナム達から済ませた方がええと思う。わたしらが終わった後、合流するときの目印になるやろし」

そうゆうわけで、まずはシグナムとザフィーラから。2人並んでお賽銭を賽銭箱に入れた後は鈴を鳴らして、さっき教わったように二拝二拍手一拝。終えた後、「お先に失礼します」わたしに一礼した後、少し離れた木の下に歩いて行った。
次にヴィータ、シャマル。フェイトちゃん、アリシアちゃん、アルフさん。すずかちゃん、アリサちゃん。そして残るはわたし、ルシル君、リインフォース、なのはちゃん、シャルちゃん。

「それじゃ次は、わたしとなのはね」

「うんっ。お先するね」

シャルちゃんとなのはちゃんが参拝するんやけど、シャルちゃんのお願いが結構長かった。1つや2つやないな、きっと。なのはちゃんが終えてもまだ願いごとをしてるシャルちゃん。そんでようやく終えて、「お願いします!」シャルちゃんは最後にそう言って、なのはちゃんと一緒にみんなの元へ。

「どれだけ必死なんだ、シャルは」

「そうやな。でも・・・ちょお解るよ、わたしも」

シャルちゃんはお願いごとが多そうやもん。そして最後はわたし、ルシル君、リインフォース。ルシル君が「まずは俺が行くよ。はやてとリインフォースは少し待っていてくれ」って言うて、1人で参拝を済ませた。

「お待たせ。それじゃ・・・はやて、ちょっと失礼するよ」

「え? え? ひゃあ・・・!?」

ルシル君がわたしをお姫様抱っこした。家族だけの前ならそんな恥ずかしないけど、こんな公衆の面前でお姫様抱っこされるんはひどく恥ずかしい。って思う反面、嬉しいって感情もあって・・・。頭の中ごちゃごちゃや。

「これならリインフォースも落ち着いて参拝できるだろうからな。少しの間、我慢してくれ、はやて」

「あ、うん。ええよ、わたしは問題あらへん。行こ、リインフォース」

「はい」

ルシル君とリインフォースが賽銭箱前に並んで、わたしとリインフォースが一緒に参拝する。お賽銭を入れて、リインフォースと一緒に鈴を鳴らして、二拝二拍手一拝。そんで、自分の名前、住所、神様へありがとうございますを念じる。

(これからも家族みんな、仲良く元気で過ごせますように。友達ともいつまででも仲良くいられますように。あと・・・)

真っ直ぐ前を見てるルシル君をチラッと見上げる。

(ルシル君ともっともっと、仲良くなれますように。ずっとずっと一緒に、過ごせますように)

これからもみんなで仲良く過ごして行けるように、ルシル君ともっと親密になれるように。そう強く願う。こうして参拝を終えたわたしらは、次の予定として組んだ、おみくじ引きに突撃や。

 
 

 
後書き
ソブ・ベヘイル。サラーム・アレイコム。
今回は初詣をお送りしました。そして、前作でもあったようにルシルはイタズラの餌食となって女装をする羽目に。彼の災難はまだまだ続く・・・? 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧