| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

ユイと真実

暫くし、俺はユイと共に安全エリアに入ると、キリトとアスナとミザールが居た。脱出しろって行ったのに。
「「「………」」」
そのキリトとアスナとミザールは、俺を睨む。
「どうした?………まぁ、疑いを持たれるのは当たり前だが」
俺のHPバーには、今だ<ブースト>による攻防強化アイコンが残されている。茅場先生の手下と見られるのは至極当然の事だった。
「所で………ユイは記憶を取り戻したのか?」
「………ああ。そいつは俺が説明する」
つかつかと歩き、ユイを黒い石机に乗せ、キリトとアスナ、ミザールの方へ向く。
「その前に、改めて自己紹介させてもらうよ。俺の名は天城来人………このゲームのシステムを管理する者だ………と言うのは建前上の話だ」
俺は左手でウインドウを開く。
「ご覧の通り、俺のアカウント自体、元々は新規物だ。右手でもウインドウは出る。……あくまでシステム的に、だが」
俺はウインドウを消し、ユイを見る。
「そして、こいつはメンタルヘルス・カウンセリング・プログラム………俺が作った、AIなんだ」
「そんな……」
アスナが俺を掴む。
「嘘だよね………ライト君が、作った……ユイちゃんが、AI だって………」
「………済まない、これは事実なんだ」
俺がそう言うと、アスナが顔を伏せた。
「でも……でも、記憶が無かったのは何故………?AIにそんなことが起こるの………?」
「……起こりうる事態ではある。エラーを蓄積すれば、データは破損する。……カーディナルシステムの主権を持っているのは茅場先生本人だ。命令を入れ換えるなんてどうとでもなる」
俺はなるべくキリト達を見ないように言う。
「でも、どうしてユイがここに居るんだ?それこそ、俺にはどうしても解らない」
キリトが言うと、ユイが話始める。
「私は、エラーを積み重ねて行く内に、ある四人のパラメータを発見しました。他のプレイヤーとは違う、脳波パターンを発していました。喜び……安らぎ……でもそれだけじゃない。この感情は何だろう、そう思って私はあなた方のモニターを続けていたんです。……いつからか、そばにいたい、直接、私と話してほしい………そう思い、私は毎日、四人の内の二人の暮らすプレイヤーホームから一番近いシステムコンソールで実体化し、さまよいました。その頃にはもう、私はかなり壊れてしまっていたと思います」
「………それが、22層の森なのか………?」
「その通りだ。あの後、俺はシステムウインドウであの場所を捜索した。すると、驚いた事に、コンソールが配置されていたよ」
俺が言うと、ユイが頷く。
「………キリト、アスナ、ミザール。ずっと、話せなくて………隠してて悪かった。俺は、話したら関係が無くなると思って怖かった。思い出も、記憶も、無くなってしまうのかと思うと………」
「………」
キリトが俺に近付く。
「ライト、顔を上げろ」
「………」
俺が顔を上げると、
ドガッ!!
俺は殴られた。
「キリト君!?」
「キリト!?」
アスナとミザールは、キリトの突然の行動に、呆然としていた。
「………これでチャラにする。お前には幾度となく助けられたし、お前が言い出せなかったのもよくわかる。従って、殴るだけで済ませる」
「……キリト」
「ん」
キリトが手を差し出し、それをつかむと立ち上がる。
「それで、ユイ。お前はどうしたい?」
「え?」
突然会話を振られたユイはびっくりした。
「システムとか関係無い。自分で考える事が出来るなら、分かるだろ?」
「………私は………皆さんと一緒に居たいです。でも………もう、遅いんです」
「何でだよ……遅いって……」
それを聞くと、俺はユイの記憶が戻った原因がわかった。
「………ユイ、お前が座っているのは、GMがシステムに緊急アクセスするためのコンソール………なんだな?」
「その通りです、マスター………。アスナさんが私を安全地帯に退避させたとき、偶然石に触れ、そして記憶を取り戻しました」
「………つまり、あれはここにプレイヤーを近付かせないように設置されたもの………と言うことか」
ユイは頷き、先を語る。
「私はあの死神からマスターを守るため、システムにアクセスし、<オブジェクトイレイザー>を発動し、撃退しました。ですが、同時に今まで放置されていた私にカーディナルが注目してしまったと言うことでもあります。恐らく、私は消去されてしまうでしょう………」
「そんな………そんなの………」
「これが………俺が望んだ事なのかよ………」
「ライト!!」
キリトが俺に詰め寄る。だが、その前にユイが喋り出した。
「パパ、ママ、ねぇ、そしてマスター、ありがとう。これでお別れです」
「嫌!そんなの嫌よ!!」
「ユイちゃん……!!」
「さよなら、パパ、ママ、ねぇ、マスター」
「………んなこと、許容出来るかよ!!」
俺はキリトを押し退け、コンソールとウインドウを同期させ、キーボードを叩く。
「マスター………」
「………俺の前で娘を消させやしない。例えそれがAIでもだ!!」
徐々に姿が薄くなるユイ。だが、ライトはそれでも諦めなかった。
「カーディナル………てめぇの好きにはぁああああああ」
そして、最後のエンターキーを、
「させねぇええええええええ!!」
押した。否、殴り付けた。
すると、ユイの姿が再び見えるようになり、実体をちゃんと持ったユイが、そこにいた。
「マスター………何を馬鹿な事を………」
「あん?これが馬鹿なことか?」
ユイが姿を取り戻したのには、理由がある。
1つは、一部権限を俺からユイに譲渡した。これにより、ユイは俺と同じ扱いとなる。そしてもう1つは、システム自体の書き換え。元々、俺も<ソードアート・オンライン>の制作に携わってはいたので、システム自体の書き換えにはさほど苦労をしなかった。
以上の理由により、事実上、ストレアと同じくプレイヤーとして認められたことになる。ただし、レベル的には低いため、モンスターとは戦闘しない方がいい。まあ、パーティ組んでやる分には問題は特にないが。
「ユイ、お前は生きろ。キリトやアスナの為に」
「………はい、ありがとう………ございます、マスター………」
ユイは目に涙を作り、笑った。






























「なぁ、来人さん」
帰り道、ユイを肩に乗せたキリトが俺に聞いてくる。
「別に今まで通りライトで構わない………で、何だ?質問なら受け付けるぞ?」
「ならお言葉に甘えて。………もし、ゲームがクリアしたら、ユイはどうなるんだ?」
「ああ……その事か。それについては心配要らない。キリトのナーウギアにクライアントプログラムの環境データの一部として、ローカルメモリに保存される手筈になっている。向こうで展開は難しいが………まぁ、どうにかするさ」
「じゃあ、向こうでもユイちゃんに会えるんだね。私たちの娘に」
「そういうこった。その為にゃ、とっとと茅場先生の造り上げたこの城を突破しちまわねぇとだが」
俺は背にある太刀を少しだけ抜く。
あの時、ユイが破壊した死神が遺した太刀、死斬(しざん)鬼神刀(きじんとう)、そして、ユイが俺の譲渡したシステムで造り上げたユイティア。
「………茅場先生、俺は貴方を全力で倒しにいきますから」
聞こえない声でボソッと呟き、俺はキリト達の後を追った。 
 

 
後書き
苦労した挙げ句、ユイちゃん生存。
ライト「………良いのかこれ」
………少しだけ反省してる。
ライト「そうか、なら死ね」
作者に死ねって言えるお前は何様だ。
ライト「作者のチートキャラクター二号だ」
因みに一号は流星君………って、話それとるやないかーい!!
ライト「次回、最後の休暇。超短い俺とミザールのお話。よろしく」 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧