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妖精の義兄妹の絆

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六つの鍵

「おいで、エルザ。君の本気を見せてくれ。」
ミッドナイトは挑発まじりにエルザに言った。だが、エルザは静かに立っているだけだ。
「…と言っても、ボクに攻撃は当たらないケドね。」
(「そうだ…。奴の屈折はいかなる攻撃も曲げてしまう。」)
その時だった。

ダッ

「!!!」

ドッ

エルザは一瞬でミッドナイトとの距離を詰めた。
(「速い!!!」)

ギュン

そのままエルザは攻撃に移る。周りから見ればその動きは刹那の出来事だ。
だが、自分の魔法に絶対の自信を持っているミッドナイトは余裕の笑みを浮かべた。
「いくら素早く動けてもボクの屈折は破れないよ。」

カクン

「ホラ。」
やはり、エルザの薙刀はミッドナイトに当たらない。だが、それは次の攻撃で大きく戦況を変えた。

ドッ ゴォォン

エルザはすかさず掌打を繰り出しミッドナイトの左胸を捉えた。ミッドナイトはそのまま吹き飛ばされ壁へめり込んだ。
「なに…。」
ミッドナイトは自分が尻餅をついている事に驚いている。当たるハズない攻撃を食らってしまったためだ。
「貴様の魔法には二つの弱点がある。」
ジェラールとミッドナイトはエルザの言ったことに驚いた。
(「二つの弱点だと…?このわずかな時間の中で…。」)
「一つ目は魔法や武具を曲げる事はできても、人間の体は曲げる事ができないという事だ。
もしも可能ならば、私の鎧ではなく体を狙った方が早い。」
「フン。」

ミシ ミシミシ

ミッドナイトはその場に立ち上がり、エルザの装束を再び締めつけた。
「そうだとしても、本気を出せば衣服で君を絞め殺せるんだよ。」
そう言いながらさらに締めつける。

みし みし みしみし

「二つ目はこれだ。」

キィィィン

「!!!」
すると、ミッドナイトの上空から無数の剣が降り注いできた。
「なっ。」

ズガガガガガガ

「ぐはァっ!!!!」
ミッドナイトを無数の剣たちが襲いかかる。ミッドナイトはダメージを受けた。
「私の鎧をねじ曲げている間、貴様は剣をよけてかわした。」
「!!!」
「なぜ、剣の軌道を曲げてかわさなかったのか。つまりは曲げられる空間は常に一か所という事だ。
自分の周囲か敵の周囲のどちらか一か所だけ。私に魔法をかけてる間は自分の周囲に屈折を展開できない。」
「ぬう。」
ミッドナイトは辛うじてまだ立てるようだが、やはりダメージが大きかった。
(「なんという洞察力…。」)
「そして、この悠遠の衣は伸縮自在の“鎧”。その魔法は効かん。」

ギュルルルッ

「ん?この鎧を含めると弱点は三つだな。」
悠遠の衣はミッドナイトの屈折を無効化し、元の姿に戻った。
「くそォ…。あと少しだったのに…。」
「勝負はついた。」
しかし、ミッドナイトは言葉とは裏腹に笑って見せた。
「あと少し早く死んでたら、恐怖を見ずにすんだのにね。」
ミッドナイトが意味深なことを言ったその時だった。

ゴォーン ゴォーンゴォーン ゴォーン

どこからか、鐘の音が響いてきた。そして、目の前のミッドナイトの姿が突然変貌を遂げていく。
「真夜中にボクの歪みは極限状態になるんだ。」

ゴォーン ボボボボボボボボ ゴォーン

「何だ!!?」

ゴォーン

「ああああああ。」

ゴォーン ボコボコ ゴォーン

ミッドナイトの体はみるみる巨大になっていき、手足が太く、強靭なものになっていった。

ゴォーン ゴォーン

「ハハハハハハハハッ!!!!」

ゴゴゴゴゴゴ

エルザの目の前にいたのは、人間の原型をとどめていない悪魔のような巨人だった。
「な。」
「もうどうなっても知らないよ。」
そう言うと、ミッドナイトは手に魔力を凝縮し、解き放った。

ドゴォォォン ズゴォォォン

その威力はこれまでの比じゃなかった。ニルヴァーナの三分の一は有に消し飛んだ。
「あう。」
「ぐあっ。」
エルザとジェラールは威力に耐えきれず、吹き飛ばされる。

じゅる ズサッ

そこにミッドナイトの爪が伸びてきて、ジェラールの体を貫いた。
「ジェラール!!!!」
ジェラールの体からは大量の血が吹き出した。すぐに出血多量で死んでしまう。
そう心配してジェラールの元へ行こうとするが、

ズッ

「ぐはっ。」
エルザの体もミッドナイトの爪が突き刺さり、大量の血が流れた。
「おっと…簡単には死なないでよ。ここからが楽しいんだ。」
ミッドナイトはジェラールとエルザを持ち上げ、さらに爪を食い込ませる。

ズズズ…

「あああがはっ」
エルザはたちまち血まみれになっていった。

ズブズブズブ

「エルザーー!!!!」
ジェラールは大量の血を流しながらエルザを名を叫んだ。

ズシュッ グジュ

「うあああああ。」
「ハハハハハハッ!!!!」
ミッドナイトは高らかに笑い続けた。








ザン








「は?」
「!!?」
ジェラールには何が起きたのか分からなかった。
自分とエルザはさっき死ぬ寸前だったハズが、今は目の前でエルザがミッドナイトを斬っている。
(「な、何が起きたんだ!?オレは確か、体を貫かれて…、エルザ…。」)
「ボ、ボクの幻覚が効かない、のか…。」
(「幻覚!!?あれが!!?」)
先程まで体験していたのは、鐘が鳴っている間だけ見せられていた幻覚だったのだ。
「残念だが、目から受ける魔法は私には効かない。」
「そ、そんな…。」
ミッドナイトは血を吐き出し、空に手を挙げた。
「ボクは最強なん、だ…。父上をも超える最強の、六魔。誰にも負けない最強の魔導士。」
「人の苦しみを笑えるようでは、その高みへはまだまだ遠いな。」
(「うう…ボクの祈り…。ただ眠りたかっただけなんだ…。静かな所で……。」)

ドッ

そして、ミッドナイトは倒れた。
(「これが、エルザ…。」)
「誰にも負けたくなければ、まずは、己の弱さを知る事だ。






そして、常に優しくあれ。」
こうして、エルザとミッドナイトとの戦いはエルザの勝利で幕を閉じた。

















一方こちらは王の間の最下層
ここではナツたちとブレインの杖との戦闘?が行われていた。

ゴキィン

「んがっ!!!」

ゴッ ガッ

ナツは杖に殴り飛ばされ地面を滑った。
「な!!」
グレイはナツが飛ばされた事に驚いている内に、接近していた杖によって殴り飛ばされた。

バコォ

「ぐはっ。」
「ナツ!!!グレイ!!!」
ルーシィがナツとグレイの心配をしている時だった。
「!?」
何かおしりの辺りに違和感を感じたルーシィがそこへ目をやると、

ピロン

「きゃあああああああっ!!!!」
「ほう。」
杖がルーシィのスカートを下から覗いていたのだ。
「ヘンターイ!!!」
ルーシィは杖に殴りかかるが空振りに終わってしまう。

すかっ

「ハハハッ。小娘の下着など見ても萎えるわ。」

ガコン

「ひどっ。」
ルーシィは少し涙を流しながら、やはり殴り飛ばされた。
「こいつ…。」
「棒きれのくせに。」
「やらしい奴…。」
「大丈夫?ルーシィ。」
なかなか素早い動きを見せた杖に意外なほど苦戦を強いられてしまった。
「む。」
「!」
ナツは杖から違和感を察知した。
「六魔が…







全滅!!!?いかん!!!!いかんぞ!!!!」
突如、慌て出した杖が体を震わせながら言った。
「あの方が…来る!!!!」
「あ?」
「あわわわ…。」
「何だっていうんだよ。」
杖は震えながらグレイの問いに答えた。
「ブレインにはもう一つの人格がある。」
「!?」
「知識を好み“脳”のコードネームを持つ表の顔と、破壊を好み“無”のコードネームを持つ裏の顔。」
「ゼロ!?」
ハッピーは得たいの知れない人物の名前を聞いて驚く。
「あまりに凶悪で強大な魔力の為、ブレイン自身がその存在を六つの鍵で封じた。」
「それが六魔将軍!?」
つまりはゼロの人格を封印するために六魔将軍を作り上げたのだ。
「生体リンク魔法により、六つの“魔”が崩れる時…“無”の人格が再び蘇る…。」

ぞわっ

杖は背中から溢れるばかりの恐怖に支配された。そっと後ろを振り向くと、誰かがこちらに歩いて来るのがわかる。
杖は誰が来ているのか容易に理解できた。
「お…おかえりなさい!!!!マスターゼロ!!!!」
杖は声を震わせながら頭を深く下げた。
「マスター!?」
「ずいぶん面白ェ事になってるな、クロドア。あのミッドナイトまでやられたのか?」
「はっ!!!も、申し訳ありません!!!!」
「それにしても、久しいなァ、この感じ。この肉体、この声、この魔力、全てが懐かしい。」
ナツたちは緊張を走らせる。目の前の凶悪なまでの魔力を目の当たりにしているからだ。
「後はオレがやる。下がってろ、クロドア。」

ばさっ

「ははーっ。」

ふおおお…

ゼロはボロボロの服を捨て、体に魔力を漂わせた。

ボシュ

それは次第に新たな服へと姿を変え、ゼロの身に纏わせた。
「小僧ども。





ずいぶんとうちのギルドを食いちらかしてくれたなァ。マスターとしてオレがケジメをとらしてもらうぜ。」
「こいつがゼロ!!?」
姿はブレインにそっくりだったが、魔力の質、量はブレインの比ではない。
「燃えてきたろ?ナツ。」
「こんな気持ち悪ィ魔力は初めてだ…。」
ナツでさえ普段なら強者を前にすれば笑顔を見せ飛び込んでいくが、今回の相手は今までとは別格なのだ。
「そうだな…。まずは、この体“ブレイン”を痛みつけてくれたボウズから…消してやる。」
「動けねぇ相手に攻撃すんのかよ、てめぇは!!!!」

バッ

グレイはジュラを守るため、一点に魔力を集中させる。
「動けるかどうかはたいした問題じゃない。形あるものを壊すのが面白ェんだろうが!!!!」

ズアァッ

ゼロはジュラに向けて攻撃を仕掛けた。だが、それはグレイも分かっていた事だ。
すかさず防ぎにいった。
「盾“シールド”!!!!」

ガキィン

グレイは氷の盾を造りだし、ゼロの攻撃を防いだ、だが、

バキ バキバキ

盾はみるみる内にひび割れていく。
「オレの盾が!!?こんな簡単に…。」
そして、

ドガガガ

「ぐああぁあぁっ!!!」
グレイの盾は意図も容易く粉々に砕かれ、ゼロの攻撃を防ぎきれなかった。
だが、軌道は逸れたため、ジュラには当たらなかった。

ブォォオ

「!!」
ナツはゼロの一瞬の隙を突き懐に忍び込み攻撃を繰り出した。

ギュルルル ボッ

だが、ゼロは体を回転させナツの攻撃をかわし、反撃する。

ドゴォ

「ぐあああぁぁ。」
その威力はたかが裏拳だけでナツを吹き飛ばす。
「そんな…。」

がくがく がく

(「体が…動かない。」)
ルーシィとハッピーは体を震わせるだけでその場から動く事が出来ない。恐怖で足がすくんでしまっていたのだ。
ゼロはグレイとナツを倒し、残ったルーシィを見た。
(「怖い…。」)
目を向けられて改めてゼロの凶悪な魔力を知る事になる。ルーシィは涙を浮かべながら逃げる事ができずにいた。

すっ ドゴォン

「わあああ。」
「きゃああああ。」
ハッピーとルーシィは地中からのゼロの攻撃をもろに食らってしまい、吹き飛ばされた。
ほんの数分でナツたちは全滅してしまった。
「さ、さすが、マスターゼロ!!!!お見事!!!!このやっかいなガキどもをこうもあっさり、」
「まだ、死んでねぇな。」
「へ。」
その時のゼロの顔は狂喜の塊だった。
「まだ死んでねぇよなァ、ガキども!!!!だって形があるじゃねぇか。」

ドッ バキ ドゴッ バキ ドガッ

「ガハハハハッ。」
ゼロはその後数分の間、ナツたちを殴り続けた。自らの手が血に染まるまで。
「ひいいいっ!!!マスターゼロ!!それ以上は…。」

ぐしゃ

辺りは血で塗り潰されていった。

























「う…。」
一方こちらは、謎の男にやられ倒れていたタクヤが意識を取り戻した。
「くっ…。痛ェ…。」
体を起き上がらせようとするが、ダメージが酷すぎるため、立ち上がる事すら出来ずにいた。
「…ぺっ。あの、やろう…。くそっ。」
タクヤは口の中に残っていた血を吐き出し目で見渡せる範囲で辺りを見る。
「エマは…逃げれたのか…。」
エマの心配をしてエマを探す。だが、すぐ近くにボロボロのエマを見つけた。
「…おい…!!エマ!!しっかりしろ!!!」
だが、返事はない。息はしているため生きてはいるようだが、油断は出来ない状態だった。
「くそっ…!!!許さねぇ…!!!ぜってぇ許さねぇ!!!…沈めてやるっ!!!!」
タクヤは体の傷をかえりみず、気合でその場に立ち上がった。
「待ってろ…、すぐにウェンディに看てもらうから。それまで頑張れよ…。」
タクヤはエマを抱え、おぼつかない足取りでウェンディを探した。





















ズシン

ここは王の間
ニルヴァーナは目的地である化猫の宿の目の前までやって来ていた。
「マスターゼロ。化猫の宿が見えて参りましたぞ。」
「ふぅん。」
ゼロは興味無さそうに返事をする。
「ニルヴァーナを封印した一族のギルドです。あそこさえ潰せば、再び封印されるのを防げますぞ。」
「くだらねぇな。」
「え?」
「くだらねぇんだよ!!!!」

ボキッ

「がっ。」
ゼロはクロドアの杖の部分を粉砕した。
「な、何を…マスターゼロ!!!」

バキ

「おぐはっ。」
そして、クロドアの本体はゼロの足で砕かれた。
「オレはただ破壊してぇんだよ!!!!何もかも全てなァァー!!!!」
「相変わらずうるせェなァ、ゼロ。」
そこに現れたのタクヤを倒した謎の男だった。
「ランス。なんでお前がここに?」
ランスと呼ばれた男はゼロにここに来た経緯を伝えた。
「ブレインに依頼されたからな。光のギルドの殲滅しろってよ。」
「けっ!余計な真似しやがって。」
ゼロは舌打ちをして若干怒りを見せた。
「別にお前の邪魔なんざしねぇさ。オレは金さえ貰えればそれでいい。」
「相変わらずの金の亡者だな。吐き気がする。」
「さっき、碧髪のボウズとネコ一匹始末してきた所だ。」
「本当に殺したんだろうな?」
ゼロはランスを睨みながらそう訊ねた。
「あぁ、死んでると思うぜ。生きてたら生きてたで楽しみが増えるだろ?」
ランスはうすら笑みを浮かべながらゼロに言った。
「…まぁいい。雑魚を殺られても困りはしねぇ。オレもさっき小僧どもを壊してきた所だ。」
ゼロはゲラゲラ笑いながら、ランスに言った。だが、ランスにはそのような事に興味はないようだ。
「それで、ニルヴァーナは準備できてんのか?」
「あとは発射するだけだ。しかし、こんなもんのどこがいいんだか…。」
ゼロは素っ気なくランスに言った。
「ブレインにはブレインの考えがあるんだろ。」
「ふーん。」
「ま、小せぇの事には変わりないがな…。」
「あ?」
ゼロはランスの言った言葉をよく聞き取れなかった。
「なんでもねぇよ。じゃあオレは心臓のとこにいるからな。」
「あ?雑魚を殲滅しに行かねぇのか?」
「じきに来るさ…。」
そう言い残してランスは王の間を後にした。
「ちっ、…まぁいいさ。これで雑魚どもは全滅だからな。アイツは金のためならどんな残虐な事でもするからな。
例えそれが実の弟だとしても…。」





















そして、少し時を戻してニルヴァーナ城下町
ウェンディとシャルルはジェラールを探して、走り回っていた。
「どこだろう…。」
「街一つだからね。探すのも大変ね。」

くんくん

ウェンディは何かの匂いを嗅いだ。
「この匂い…。」
「どうしたの?ジェラール?」
シャルルはウェンディに訊ねる。
「…お兄ちゃんとエマの匂いだ。」
「え!?どうしてこんな所に!!」
「それに、」
ウェンディは少し声を震わせながら、最後の言葉を口にした。
















「強い血の匂いがする…。」

ダッ

「ちょっと、ウェンディ!!待ちなさいよ!!!」

ダッダッダッダッダッ

シャルルの静止を聞かずにウェンディはただ匂いがする方へひたすら走った。
(「お兄ちゃん……!!」)
5分くらい走り、角を曲がったその先に、倒れている二つの影が見えた。
「おに…!!!」
ウェンディはタクヤを呼ぼうとしたがすぐに口が詰まった。
そこにはエマを抱えたまま血塗れで倒れているタクヤの姿があったからだ。
幸い、エマはまだ軽症で済んでいたが、タクヤの方は重症だった。
「…お、お兄ちゃん…?」
ウェンディは唾液を飲み込み、声を震わせながらタクヤを呼んだ。
だが、返事はなかった。指先一つ動かない。
「ねぇ…お兄ちゃんってば…。」
ウェンディはタクヤの体を触ってみたが、タクヤの体はひんやりと冷たかった。
ウェンディは涙をボロボロこぼしながらタクヤの名前を呼び続ける。

ぽた ぽた

だが、それでも返事がなかった。
「…いやだよ。…いやだ!!いやだ!!いやだ!!お兄ちゃん!!!起きてよ!!!!起きてよ!!!」
ウェンディは治癒魔法をかけながらタクヤの体を揺する。しかし、何も反応がない。
「起きてよぉ…。私を一人にしないでよぉ…。」
ウェンディの顔は涙と鼻水でグシャグシャになっていた。
少し遅れてシャルルもやって来たが、リアクションはウェンディと一緒だった。
「うえっ、ひっ。」
シャルルは泣きじゃくるウェンディをただ背中から見る事しかできなかった。
シャルルの目にも涙が滲んできた。
「うわぁぁぁぁぁぁん!!!!」
「っ…。」
「「!!!!」」
二人はタクヤの指が動いたのを見逃さなかった。
「ったく……、…うるせぇな……。ちょっと、気絶してた…だけだよ…。」
「お兄ちゃん!!!!」
「なんだよ…ウェンディ……。顔、ひでーこと…になってるぞ……。」
タクヤは笑いながらウェンディの顔を見てそう言った。ウェンディは涙と鼻水を腕で拭い、タクヤに笑って見せた。

ムクッ

「ダメだよ!!!まだ立っちゃ!!!!」
「そうも言ってらんねぇ…。アイツに、まだ…!!」
「それでも回復するまでダメ!!!今度は本当に…。」
ウェンディは涙を浮かべながらタクヤを止める。タクヤもそんなウェンディを見て思い止まったのか、素直に横になった。「なら、最初にエマを回復させてくれ…。エマも怪我してるから…。オレはその後でいい。」
「…わかった。すぐに回復させる!!」

パァァ

そう言ってウェンディはエマに治癒魔法をかけ始めた。
「…ん。」
「エマ!!気付いたんだね。」
エマは意識を取り戻した。エマの回復にはそれほど魔力と時間がかからなかった。
「終わったよ。これでエマは大丈夫。」
「ったく、しっかりしなさいよ。」
「すみません…。はっ、タクヤは!!!」
エマは体を起こしてタクヤを探した。
「ここにいるよ…。」
「タクヤ!!!」
エマは涙を流しながらタクヤに抱きついた。
「痛っ。」
「わっ!ご、ごめんなさい…。」
「今からお兄ちゃんの治癒をやるから少し離れてて。」
「はい…。」

パァァ

エマはタクヤから少し離れてシャルルの横に並んだ。
「あの、タクヤ…、」
「ごめんな。」
「え。」
治癒をかけてもらいながらタクヤはエマに謝った。
「エマに辛い思いさせちまって…。エマを守ってやれなくて…。」
「そんな事ないです!!タクヤはいつだって私を守ってくれてます!!!私こそタクヤを守れなかった…。」
エマは顔を下げ、涙をボロボロこぼした。
「…泣くなよ。今出来ない事は次出来るようになるだけだ。だから、お互い次出来るようになろうぜ…。」
タクヤはそう言いながら笑顔でエマに拳をつき出した。
「タクヤ…。」

コツン

エマも涙を拭い、笑顔で拳を合わせた。
「ウェンディ、大丈夫なの?」
シャルルがウェンディの顔を見ながらそう訊ねた。顔色が先程より悪くなっている。
治癒魔法を使いすぎればウェンディの方が危なくなるのだ。
「私は大丈夫…。こんな事しか出来ないから…。」
ウェンディはそう言って治癒魔法をさらにかけようとしたが、
「もういい、ウェンディ。」
「え?」
タクヤはそう言ってウェンディの治癒をやめさせた。
「でも、まだお兄ちゃんの怪我が!!」
「それ以上魔力を使ったらお前の方が危なくなる。体もだいぶ動けるようになったし、これ以上はいいよ。」

ポン

タクヤは立ち上がり、ウェンディの頭にそっと手を置いた。
「オレはお前が苦しんでるとこなんて見たくないからな。」
「お兄ちゃん…。」
「それじゃあ、早くジェラールたちを探しにいくぞ。」
そう言ってタクヤたちはジェラールを探しに行ったのだった。
























そして、
「これが最初の一撃!!!!理由などない!!!!そこに形があるから無くすまで!!!!








ニルヴァーナ発射だァァ!!!!」
地鳴りを立てながらニルヴァーナは発射されようとしていたのだった。









 
 

 
後書き
20話かんりょー!最近雨ばっかりで全然暑くないからいいですけど、
これ…9,10月とかなっても真夏並みに暑かったら嫌だな。暑いのはやだ…。
はよ冬来てくれ。冬物ファッションさせてくれ。と思う今日この頃でした。
というわけで、感想とかありましたら書いてくださーい。待ってまーす。 
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