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永遠の空~失色の君~

作者:tubaki7
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EPISODE33 帰還

 
前書き
福音戦のエピローグなので短いです 

 

「じゃ、帰ろっか」


誰かがそう呟いた。それは口調からして鈴か、一夏か、はたまたシャルロットか。それすらも今のライにはわからなかった。落下した無人島から覗くことのできる朝日はどこまでも眩しくて暖かくて、一刻の戦いの終焉を告げる。どうやら夜通し戦っていたようで疲労が躰に蓄積されすぎて今にもあふれ出しそうな気さえしてくる。

一夏が福音のパイロットを抱き上げ、その後にみんなが続いていく。飛んで行けるだけのエネルギーが残っているだけラッキーと思った方がいいだろう。エナジーウィングを展開し、自分も空へと上がる。

 視界が、ぶれた。

まだだ。こんなところで意識を失ったらそれこそアウトだと叱咤して躰を制御する。大丈夫、まだいけると言いきかせながらこの機体が全身装甲(フルスキン)であることに心底よかったと思う。


[だいぶ無茶をしたな。ギアスの使用にクラブTの起動と戦闘・・・・]

『これくらいどうということはない・・・・』

[強がるな。あとは私が上手いことやっておくからお前は休んでろ]


ハイパーセンサに操縦権譲渡・オートパイロットに変更とでる。こんなこともできるとはなかなかに便利だなと思いながらライは意識を手放した。









意識が浮上してくる。感覚が頭の天辺から足の先までに神経を伝い脳が電気信号を送っていく、腕、脚、五体満足であることに安堵して今度は後頭部にある違和感に気づく。朧げな視界のなかで、ライは緑色の髪を見て呟く。


「C.C.・・・・?」

「しーつー?なんですかそれ?もしかいて、ねぼけてるんですか?」


クスクスと笑う声で彼女ではないことを理解する。ようやく視界がまともになった頃に見えたのは、緑のショートカットと眼鏡の容姿が二つの“山”に遮られながらもギリギリ見える。ISスーツに身を包んでいる辺りきっと出撃準備をしていたのだろう。そのことからやはりあの時の判断は正しかったんだと思うと同時に“嘘をついたこの人に申し訳ないと思う”。


「真耶先生…僕は――――」

「あ、動かないでください。意識が目覚めたばかりで躰が言うことを訊きませんから」


彼女の言うとおり躰にうまく力が入らない。これほどまでに疲労していたのかとそれなら仕方なく彼女の言葉に甘えることとする。


「私の膝で申し訳ありませんが・・・・少しのあいだ我慢してくださいね」


優しく撫でられることに少しのくすぐったさを感じながらも聞こえてきた声に意識を向ける。どうやら無断で出撃した一夏達が怒られているらしい。そういえば自分も色々と命令違反したような気がするがあそこにいなくてよいのだろうかと多少疑問を持ちつつうまく働かない思考が次に捉えたのは先ほど呟いた名前の少女だ。


[あれが今のおまえの友人たちか]

[ああ。みんな心優しい子達だ]

[・・・・おまえ、記憶はどれくらい戻っている?]

[ちょっとだけ、かな。凄くちぐはぐで曖昧なんだ。思い出せるのはきみとギアスの使い方くらいで変わらないよ]


そうか、とC.C.がため息をつく。プログラム体の彼女の姿はライ以外見ることも触れることもできない。機体を展開していない現在の彼女は元の身長であろう姿に戻っており隣に足をぶらぶらさせながら座っている。


[いいものだな。おまえの友人たちは]

[ああ。僕にはもったいないくらいのね]


織斑一夏。篠ノ乃箒。凰鈴音。シャルロット・デュノア。モニカ・クルシェフスキー。ラウラ・ボーデヴィッヒ。一人一人を眺めながら、その姿を目に焼き付けていく。これが、いまある世界だと、いまいる世界だと思いながら。


「…なんだか、いい顔してますね。ライ君」

「いい顔?」

「なんというか・・・・そう、人間って感じです。そうやって笑った方がなんだか似合ってますよ」


それを聞いて自分のなかで何かに気づく。


  ああ、まだ笑えたのか。僕は・・・・











そうして、長いようで思い返せば短かったような気もする臨海学校は幕を閉じた。荷造りをしてバスへと荷物を積み込み席へと向かう。帰りのバスは席順等決められてはいないので一番後ろの席へと座る。


「ライさん、隣よろしくて?」

「セシリア。どうぞ」

「失礼しますわ」


隣にセシリアが腰掛ける。そしてその隣に箒、一夏、シャルロット、モニカ、ラウラの順で座っていく。いつもの一組仲良しメンバーだ。鈴がいないことを残念に思いながらこの三日間のあれやこれやに花を咲かせる。この光景を誇らしく思いながらふと窓が叩かれた。気になって外を見る。金髪の黒いスーツに身を包んだ見覚えのない女性だ。


[ナターシャ・ファイルス。銀の福音のパイロットだ]


なるほど、と納得して窓を開ける。


「あなたが“あの子”と私を助けてくれたのね?」

「あ、いや、えっと、まあ、はい」

「そう。もう一人のナイトさんはいるかしら?」


多分一夏のことだろうと名前を呼ぶ。同じく顔をだし彼女のことを説明する。


「この前はありがとう。おかげで助かったわ」

「いえ、そんな・・・・」


紅くなる一夏。それをみて面白くないと頬を膨らませる者が数名。そんなことはいざ知らずに一夏はナターシャの美しさに鼻の下を伸ばす。といっても、実際に伸ばしているのではなくあくまでも表現だが。


「これはお礼よ。ありがとう、二人のナイトさん」

そう言って、頬に当たる柔らかい感触。ナターシャは最後にウィンクして「またどこかで会いましょ」と言って去って行った。しば茫然とする二人。最初に口を開いたのは一夏だった。


「ライ・・・・」

「なに?」

「女の人って、案外恐いんだな・・・・」

「奇遇だね。僕もそう思ったよ」

[やれやれ、これだから男は・・・・]  
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